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こんばんは、ゆうこです。このチャンネルでは、私の読書論や日々の学びを音声配信しています。
今日は千早茜さんのグリフィスの傷という本について話してみようと思います。
身体は痛みを忘れない。たとえ肌が滑らかさを取り戻そうとも。傷をめぐる十の物語を通して、言えるとは何かを問いかける。
切々とした疼きと、ふくよかな余韻に満ちた短編小説。
ということで、4月26日に単行本が発売されたばかりの千早茜さんの待望の新刊ですね。
帯にはですね、傷をめぐる十の物語を通して何て書いてあって、余韻に満ちた短編小説集ということですね。
その後が伝えうるのは理由ではなく物語。直木庶作家、悪漢の心境地というふうにも書いてありますね。
確かに、千早さんの本ってよく帯に書かれるのは、ひりひりさせるとか心をざわつかせひりひりさせる。
千早茜の小説は狂おしいほど面白いなんて書かれる千早さんなんですけれども、
今回は本当にね、身体的な痛みを伴う傷の話ということで、読んでる側もね、今までの心のひりひりじゃないひりひりというか、
なんか昔の古傷ね、皆さんあると思うんですけど、その辺がちょっと疼くようなね、ゾワゾワっとするお話もあったかなと思います。
はい、新刊なのでこれからね、読もうと思っている方、まあ知識はいらないなっていう場合は配信は聞かない方がいいかなと思いますので、ここまでにしていただければなと思います。
短編集10の物語っていうことですね。
みんな皮膚の下に流れている赤を忘れて暮らしている。ある日を境に私は高校のクラスメイト全員から存在しないものとされてしまい。
流絶乱という短編から始まりますね。
あとは傷がいつの日か蘇ってあなたを壊してしまわないよう私はずっと祈り続けます。
公園で私があなたを見守る理由は。
これは表題にもなっているグリフィスの傷という短編ですね。
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まばたきをする。このまぶたに傷をつけてくれた人のことを思う。私はさやちゃん先生をめがけて渋谷の街を駆け抜ける。
これは最後のですね、まぶたの光という話で。
どれもね、痛々しい傷を負ったりする、自ら傷をつけるだとか、そういう人が出てくるお話なんですよね。
ただ、そこはやっぱり千早茜さんなので、
その単なる傷のグロテスクな感じだったり、痛みとか迷い、後悔、恨み、悲しみみたいな、そういうところだけじゃなくてですね。
そこにある、その傷が持つ物語。
その傷そのものが、その傷こそが、その人の分身のような、投影された存在かのように思わせられるというか。
そんなね、これ普通に傷の話をしているだけなのに、なんでこんな深いんだろうなっていうふうに思わせてくれるような短編集なんですよね。
で、いろんな傷のお話が出てきたりします。
最初の流舌蘭っていうのはサボテンで怪我をする女子高生のお話なんですけれども、
その身体的に傷を負うことの意味と、傷ついているということを、心が傷ついているということを、
自分でも表面化させない、周りも気づかないようするということの罪深さみたいなことを対比して書いていてですね。
最初からこう、背筋がピシッと伸びる感じのね、いつもの千早さんのね、導入の短編だったなと思います。
で、次に結露という話があって、
で、この世のすべてのリンゴの印、指の記憶。
この指の記憶が一番私はゾワゾワでしたね。
どういうことなんだろうと思って、この指の記憶っていう話がですね、一番読んでてね、うわーって思っちゃうんですね。
こんなことになって普通に生活できんの?って思っちゃうんですけど、
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まあそれでも、回復して普通に生活している男性の話なんですけれども、
その指が持つ記憶っていうのが、ほんと最後の最後でね、最後の何行ぐらいかで語られるわけですね。
俺はこの手を知っているはっきりと思ったとか言ってね。
もうそこが、うわーと思いましたね。
こういうことってあるのかなーって思いながら読んだし、千早さんなんでこんな経験してないのにこういうこと書けるんだろうってすごく思った。
指の記憶の主人公は男性なんですね。
出てくる周りの人物も男性で、千早さんって今まで女性をね、書かせたら、
自分の中にある千早茜が描く女性みたいなものがすごく反応しちゃって、
千早さんが描く女性主人公はみんな大好きなんですけれども、
とにかく女性を描くのが本当に上手い作家さんだと思うんですけど、
男性のこういうことも描けるのかと思いましたね。
そういう点ではね、心境地と言えるのかもしれないですね。
で、続いてグリフィスの傷。
これもね、なかなかゾワゾワですね。
これはもう後悔だとか罪悪感を抱えて生きていくっていうことの、
人を傷つけるということはどういうことなのかを知る主人公のお話。
続いてカラタチのですね。
で、自由、青炭、まぶたの光という。
本当にね、10作品どれも傷跡のことが書いてあるんですけれども、
主人公も背景も本当にバラバラで、
本当に読み応えのある面白い1冊でしたね。
どこだったかな、傷について書かれている描写で、
ああ、そうだなと思ったんですけれども、
死んだ人の傷っていうのはね、閉じないんですって。
まあ、そりゃそうですよね。
もう治療もされないだろうし、
人間の体が持つ治癒力というものも働かないでしょうから、
傷がついたその傷跡っていうのは開いたまんまなんですけど、
生きている人間の場合は閉じるわけですね。
手術をしたり、自然治癒力かなんかで閉じていく。
それが傷跡なんですよね。
だから、その傷っていうのはその人が生きているという証であり、
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その生き様、その傷が持つ物語っていうものを証明しているものが傷跡なんだみたいな、
そんな描写があって、確かにそうだなと思いましたね。
私は小さい頃本当に野山を駆け巡る、夜の海にも平気で飛び込むような、
本当に野生児のような子供だったので、傷だらけだったんですね。
うちの母はそれを見てね、傷は勲章だみたいなことを言ったんですけど、
それを私は真に受けてですね、今でも膝にはたくさんの擦り傷の跡が残っていて、
あとは家族で、いつだったかな、夏だったと思うんですけど、
親戚と一緒に家の庭でね、ビーチバレーを楽しんでいたときに、
ちょうど腕がですね、暖房器具から壁を伝わって外に出ている煙突の口みたいなところに腕が当たっちゃってね、
そこでグサッと5針ぐらい塗った跡があるんですけれども、これが右腕にあってですね、
ずっと目に触れるところにある傷として一番大きなこれですね。
でもやっぱり鮮明に覚えてるんですよね、その傷がついた瞬間だとか、
周りがどういう行動をしたかみたいな、すごく冷静に覚えてるんですよね。
すごく冷静な自分の頭の記憶として残ってるんですよね。
私にとってこの傷っていうのは、ある夏の親戚とともに楽しんでたときの単なる事故というかですね、
別に嫌な思い出ではなくて、むしろ逆に楽しかった思い出として残ってるんですけれども、
多くの場合、ほとんどの人にとっては傷っていうのはやっぱり忘れたい出来事だったり、
逆に忘れたくない出来事だったりもするのかなと思うんですよね。
そういう人の痛み、傷が語る物語というのが書いてある本だったなと思います。
これは本当に読んでほしいですね。千早茜さん、好きな人々、好きな方々。
単行本出たばっかりなので、まだ文庫本にはなってないと思います。
図書館にもね、もうちょっと時間かかって、人気だから中々順番回ってこないんじゃないかなと思いますが、
ぜひ読んでほしいですね。きっとね、好きな物語が必ず一つ以上見つかると思います。
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いやでも、これをこういう感じで書いちゃうってことは、千早茜さんどういう方向に行こうとしてるんだろうなぁなんて思いますけどね。
あのさっき千早茜さんのXを見たら、これは直木賞を受賞して一番忙しかった時に、
この本の想定の写真を撮られた方の写真展、傷の写真展に行って、その時に傷について、傷跡について物語を書こうと決められたそうなんですよね。
忙しかった中において、この傷のことにちょこちょこ思いを馳せながら物語を書いている。
それが自分にとっての癒しだったみたいな風にお話しされていて、これは千早茜さんにとっても自分を癒す小説にもなっていたんだなという風に思いました。
そう思えてくるとなんだか、ちょっと愛おしいというかですね、温かみも感じるような本だなと思います。
ぜひ、この想定のね、お尻から太ももにかけて大きくつけられたこの傷跡、こういう傷跡を持つ主人公たちが出てくる物語になります。
ぜひ読んでもらいたい本だなと思いました。
ということで今日は千早茜さんのグリフィスの傷について話してみました。
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今日も最後まで聞いていただいてありがとうございました。
ではでは。