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2024-05-04 14:00

読書ラジオ『からまる』千早茜

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からまる (角川文庫) https://amzn.asia/d/bAPLMQk
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00:06
こんばんは、ゆうこです。このチャンネルでは、私の読書ログや日々の学びを音声配信しています。
今日は千早茜さんの『からまる』について話してみようと思います。
地方公務員の武雄が、アパートの前で偶然知り合った不思議な女。
休日になるとふらりとやってきて、体を重ね帰っていくが、
彼女の連絡先も職業もわからない。ある日、武雄は意外な場所で彼女を目撃してしまう。
第一話 毎々
妻に浮気をされた中年男。不良の妊娠に悩む女子短大生。
クラスで問題を起こした少年。今を懸命に生きる7人の男女。
複雑に絡み合う人間模様を美しく鮮やかに描いた群像劇。
ということで、連作短編ですね。
からまるということで、表題作からまるをはじめ、7編短編がまさに絡み合っている、連作しているお話でしたね。
この本はですね、第1話の毎々。毎々ってあれですね、片つむりのことなんですけれども、
もう、書き出しから大好き。
野良猫みたいな女がいる。俺がベッドに転がっていると、時折スルリと入ってくる。で始まるんですね。
もうこの2行で好きって思いますね。
主人公の武雄はですね、公務員なんですけれども、割と生生活は地堕落でですね、
セフレが何人かいるような男なんですよね。
そのうちの一人がスルリと入ってくる女。
この名前もない女と武雄のやりとりがどんどん進んでいくんですけれども、
終盤の方にですね、ある事件が起きて、
武雄と女がどうなっていくかっていうのが描かれて、また次の短編に進んでいくんですけれども、
特徴的なので、この女はすごく細くて小柄で、肌も乾燥していてサラサラしているんですけど、
女の家に武雄が行かない理由はですね、女が肩つむりを飼っているんですね。
で、武雄はね肩つむりが苦手なんですよ。
で、そんなことで、本当はもう一歩踏み込みたいと思っているんだが、
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お互いにどこか線を引いて、今のこの曖昧な関係性をしろころつけてしまうのが嫌だというような、
そんな向きがあってですね、踏み込んでいかない二人という感じですね。
で、でも女はですね、武雄の家に来るのが好きなんですね。
で、武雄の肩越しに空が見えるのがすごく気持ちいいっていうセリフを言うわけです。
で、そんな女の好きなようにさせている武雄なんですけれども、
さっきも言ったように終盤にある事件が起きて、二人の関係性が少し変わっていくという話で、
この短編だけでもね、すごくいいなっていう、
あ、千早さんだなっていうお話ですごく良かったんですけれども、この後続いていく連作の短編もまた良くてですね、
共通するのは、第1話は肩つむりが出てきますけれども、第2話以降も生き物が出てきて、
特にそれがですね、海の生き物であることが多いんですよね。
で、そのどの短編にも主人公がいて、その主人公を取り巻く近い関係性の誰かっていうのが出てくるんですけれども、
なんて言うんだろうな、感覚がすごく鋭い、直感的な繊細な人と、鈍感な周りの人物みたいな、
逆に主人公が鈍感で、周りがすごくセンシティブというかね、鋭いみたいな、そういう感じがあって、
どの短編も、なんか、自分が言われているようでもあり、逆に言っているようでもある。
どっちかの立場で読んでいってしまうなという、なんかねすごく、その読む回によって、
あ、この短編を私鈍感の方の立場で読んでるわとか、これ言ってる側だなぁみたいな、そんな風に分かれていてですね。
飽きなかったし、それで揺さぶられた感がすごかったですね。
毎回千早茜さんの小説に対して思うことは、なんでこの登場人物にね、ここまで言わせるんだろうっていうぐらい鋭い、
心の傷になるような言葉を言わせたりする、もうグサッとくる一言みたいなのがあったりして、
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この短編にも多分にそういったセリフがあったなということです。
第3話のカラマルはですね、連作短編なので、タケオと関係のある人が繋いでいくお話なんですけれども、
カラマルに出てくるのはタケオの上司が出てきますね。
で、割とおじさんなんですけれども、このおじさんがある日女子高生と出会うんですね。
で、なぜか話すようになってしまって、その女子高生に言われた言葉ですね。
おじさんはどう思うの?愛があったらなんでも許せる?
私は許せるな。関わりを持たずにはいられなくなって、そのせいで他の人を傷つけてしまっても、
二人で不幸になる道を選ぶのなら、まだ潔くていい。
正気切っちゃうくらいの執着見せられたら、もう周りなんて何も言えないよね。
でもさ、不倫とかしてやっぱりあれは気の迷いでしたなんてあっさり言われちゃったらどう?
幻滅だよね。どうしたら受け入れられるのか全然わからない。
こんなことをね、ほとんど見ず知らずの女子高生に言われるおじさん。
辛すぎますよね。ただ二人の間には少し曰くつきの関係があってですね、
それが明かされていって、なるほどなというセリフではあるんですけれども、
こういうセリフはあれですよね、本当にその当事者だから言える言葉で、
不倫なんていうのは、いろんな立場の人から語る言葉というのがあって、
不倫は文化だっていうのも一つそれが真実なのかもしれないですし、
する側、される側、する側の子供、された側の子供、巻き込まれる同僚みたいな、
いろんな立場で言葉が変わってくると思うんですけど、この立場のこの人のセリフで、
一番言われたらズキュンってくるセリフみたいなのを千早さんはしっかり選んで主人公に言わせているような気がしますね。
で、最後ですね、光雄という7番目の短編ですね。
ここはくずきという女性が主人公なんですけれども、
このくずきっていうのがどういうタケオとの関係性なのかっていうのは徐々に明かされていくので、
ここでは話さないですが、この人の身体的感覚で私がすごくこれわかるなーって思ったセリフがあってですね、
昔海で死にかけたことがあるんです。その時私はすぐに諦めました。生きることを。
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水を通して光が見えたんです。光はどんどん大きくなって私を包みました。綺麗でした。
その時もうどうでもよくなってしまったんです。それからずっと生きている実感がありません。
こんな風に言うんですね。で、私はその死にかけたことがあったわけでもどうでもよくなったわけでもなくて、
この海の中で空を見た時に水を通して光が見える。
光が大きくなって真っ白になっていくという感覚を何度も味わったことがあってですね、
こういう海の底の身体感覚ってすごくよくわかるなーと思いました。
私は割と海沿いの町で生まれ育ったので、結構ね、海で泳いだりするっていうことは何度も何度も数多くあって、
夜の海に飛び込んだこともあるし、深いところまで一人で潜水していてですね、
気づいたら一人はぐれた置近いところまで行っていたみたいなことも何度もあるんですけど、
海の中って本当に気持ちが良くて、今でも不思議なことがたくさんあるんですけれど、
水深深く潜っていくと急に海水の温度が変わるそうみたいなのがあるんですよね。
あれが不思議ですよね。なんか徐々に冷たくなっていくじゃなくて、
こっから上は暖かい、ぬるい、こっから下はしんと冷えてくるみたいな境目が結構はっきり分かれていて、
その分かれる瞬間を泳いで水位置を自分の体で切り裂いていくみたいな感覚がすごく楽しかったり、
そうやって海の中に潜っていって、上を向くと鼻に水が入ってしまうので鼻をぎゅっと抑えながら水面、海面の方を仰ぎ見ると、
さっきも言ったように太陽の光で真っ白になっているというね、ああいう光景はすごく不思議でしたね。
一体自分が今どこにいるのか分からなくなる感じ?
あとは海の底に泳いでいくと、小さな魚がね、海水の温度が下がってくるあたりでは小さな魚もあったりして、
海底にはなんか穴があったりして魚が潜ったりしているところなのかなみたいな、そんな風に探検していくのが面白かったし、
潜っていけばいくほど自分の体に海の水が重くのしかかってくる。
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それを自分の体で切り裂いていくように泳いでいくっていうのがすごく気持ちよくてですね。
この主人公が感じたのは恐らく恐怖だったと思うんですね。恐怖だとか諦めだったと思うんですけれども、
そういう圧倒的な感覚を海の中で味わうということは私にも覚えがあるなぁと思って、なんだか変に共感してしまったくだりでしたかね。
あの、まあ痛々しいセリフ、言葉の暴力というかですね、ナイフのような言葉もたくさん出てくる本ではあるんですけれども、
最後はね、この光よって終わることで、なんだか幸福感に包まれる、人と人との繋がりって傷つけ合うことではなくて、
お互いを包み込んで繋いでいく、そういう優しい側面もあるんだよなぁって思わせてくれるような連作短編でした。
結構昔の、初期の頃のお話だと思うんですけれどもね、先日グリフィスの傷っていうのを読んで感想を話してみましたが、
こっちはね、心の傷を負った主人公たちが繋いでいくお話でした。
ということで今日は、千早茜さんのカラマルについて話してみました。
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今日も最後まで聞いていただいてありがとうございました。
ではでは。
14:00

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