【本日紹介の一冊】
『命を選ぶ 遺伝病の運命に抗ったある女性の物語』(祥伝社、下山進・著)
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【エピソード概要】
我が子に高い確率で遺伝するがんを防ぐ技術「着床前診断」。それを使いたいという母親の愛と、「命の選別である」と反対する障害者団体の尊厳の叫び。悪人が一人もいないからこそ噛み合わない「正義と正義の衝突」を描き出す。机上のマクロな抽象論に対し、今目の前にいる我が子を救いたいという当事者のミクロの事実が突きつける問いとは? 生命倫理のタブーに切り込み、科学の進化と社会のねじれを語り尽くします。
【チャプター】
() がんを防ぐことが、命の選別になる?
() 視力か? 命か? 生後3週間で迫られる選択
() 悪人がいないからこそ地獄
() 未知のテクノロジーに対する倫理的パニック
() 「内なる優生思想」と新たな「正義」の拡大
() ミクロのリアリティがマクロを突き崩す
() 命の尊さを知る医師が開いた扉
() 3つの名著が照らす構造
() 当事者なき倫理、歴史なき自己決定
【出演】
プレゼンター :内藤 順
ナビゲーター :首藤 淳哉
【関連書籍】
『科学の発見』
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【収録場所】
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サマリー
このエピソードでは、遺伝病を持つ子供にがんが遺伝する可能性を防ぐための着床前診断の使用を巡る倫理的なジレンマが掘り下げられています。主人公の野口舞子さんは、自身が幼少期に目の癌を患い、その遺伝的リスクを持つ第二子を出産した経験から、着床前診断を強く望みます。しかし、日本では障害者団体の「命の選別だ」という反対運動や、優生思想につながりかねないという懸念から、この技術の利用が認められていません。 この問題は、子供を救いたいという母親の切実な愛と、障害を持つ人々の尊厳という、どちらも正当な「正義」が衝突する複雑な状況を生み出しています。さらに、社会学者やフェミニストの一部からは、個人の選択が「内なる優生思想」を助長し、女性が社会的な圧力で選択を強いられる可能性が指摘され、議論はさらに複雑化します。著者は、この対立を善悪ではなく「ミクロ(当事者の現実)」と「マクロ(社会全体の抽象論)」という軸で読み解き、当事者の声がマクロな議論を動かす力を持つことを示唆しています。 また、障害のある命の尊さを現場で知る医師の視点も紹介されます。この医師は、当初は着床前診断に葛藤を抱えつつも、親が事前に情報を得て悩み、別の選択をする権利も重要であると確信するようになります。この本は、当事者の生きた事実と、過去の差別や歴史を踏まえた上で、どのように未来に進むべきかを問いかける「地の総力戦」であると結論づけられています。当事者抜きの倫理や、歴史を無視した自己決定は新たな暴力になりかねないという警鐘を鳴らし、分断された社会を解きほぐすための視点を提供しています。