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2020-06-23 10:33

【第14夜】「相棒」「TRICK2」の脚本家が描く極上のエンタメ小説を堪能しよう!

「少しずつ読むつもりが、一気に読んだしまった!そんな文庫本を教えて」というリクエストにおこたえして、今夜は太田愛さんの『犯罪者』をご紹介します。太田愛さんはドラマ「相棒」や「TRICK2」の脚本家。複雑な事件背景、息をつかせぬスピーディな展開、見事な伏線回収……と上下巻の長さを感じさせない極上のエンタメ小説をご堪能ください!

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みもれ真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAウェブマガジンみもれ編集部のバタやんこと河童です。
おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになるおテーマに、皆様からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
さて、第14夜となりました。施設の休業要請も解けて、少しずつ日常が戻りつつありますね。
いかがお過ごしですか。さて、今夜のお便りご紹介します。兵庫県にお住まいの白米大好きさんからいただきました。
少しずつ読むつもりが一気に読んでしまった。そんな文庫本を教えていただきたいです。
バタやんさんのセンスが大好きです。おすすめされていた本もいくつか読ませていただき、今まで読むことのなかったジャンルにも手を出せて感謝しています。
これからも頼りにしています。いただきました。ありがとうございます。
すごい汗かいちゃいますね。プレッシャーですね。というのは嘘ですけど、とっても嬉しいです。
おすすめした本を読みましたと言っていただくのが一番嬉しいですね。お好みにあったかどうかはちょっと心配する部分もありますけど、
新しい作品との出会いとか接点に関わることができたという意味で嬉しく励みになります。
はい、さて少しずつ読むつもりが一気に読んでしまったという文庫本ですよね。
今日はこちらをご紹介しようと思います。ウォーターアイさんの犯罪者という小説です。
これ上下巻ありまして、しかも上巻も下巻も400ページ以上あって分厚くて、白米大好きさんはもっと軽い気持ちで読める文庫本をと思ってリクエストしてくださったのかもと思いつつ、
エビ級なものを出してきてしまったんですけど、これ私もウォーターアイさんという方の小説を読むのは初めてで、
読めるかなと思って上巻だけ買ったんですけど、一気に読んでしまって、なんで下巻も買っておかなかったんだろうっていう風に自分を責めた、そんな小説なんですね。
そんな時に限ってAmazonは下巻だけ売ってなかったりとかしてバカバカってなった。こんなのでぴったりかなと思いました。
ウォーターアイさんと聞いてピンときた方は相当なドラマ通過、ドラマ相棒好きかもしれないですね。
ウォーターさんはその相棒シリーズとかトリック2の脚本を書かれて脚本家なんですね。
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事件物ってエピソードによって脚本の方が違ったりするので、全部じゃないんですけど、人気刑事ドラマの脚本家が初めて書いた小説がこの犯罪者なんです。
簡単にあらすじを説明しますと、白中駅前の広場で5人が刺される通り間事件が起きて、犯人はすぐに逮捕されるんですけど、
5人のうち1人だけ助かった青年シュージは搬送先の病院で、見知らぬ男に逃げろ、あと10日生き延びれば助かると身持ちされるんですね。
なぜシュージは襲われる立場なのか、通り間事件はただの通り間じゃなかったのか、それがこの小説の鍵になっていくわけなんですけど、
この事件の捜査にあたる刑事の相場とフリーライターの槍水とシュージの3人で、事件の真相に迫っていきます。
このあたりは少し男子3人、青年3人の青春小説というか、スタンドバイミー的な要素もあって、
それもまた相棒シリーズを手掛けるバディものというか、面白さもあります。
この小説の中にメルトフェイス症候群という架空の難病が出てくるんですけど、幼児のみがかかる顔の半分が溶けてしまうという、ちょっと読むのがつらいところなんですが、
どうもそこの背景には、企業の隠蔽工作とか食品偽装みたいなものが絡んでいるらしいというようなことが徐々に明らかになっていき、
あまり言わないでおきますけれども、そこからは池井戸順さん的な世界と言いますか、企業の隠蔽体質とか、政治界との癒着とか、そんな話にまで広がっていくんですね。
刑事もののドラマの脚本家とあっても、事件の背景がすごい複雑なんですけど、1話完結のエピソードを書いてらっしゃる成果、見る人が置いてけぼりにならないですし、
伏線も見事に回収していくというところが鮮やかだなと思いますね。話が広がりすぎて全然ついていけないわってならないところがすごいと思います。
あと展開もとってもスピーディーで無駄がない。一文一文がとっても短くてスピード感のある描写っていうのは映像的だなと思います。
そんな映像的な描写を堪能する冒頭のシーンを少し今日は読みたいと思います。
その年の桜は早く、誰の目にも東京の桜は4月までもつまいと思われた。
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仁大寺駅南口にある駅前広場を縁取るソメイヨシノもすでに煙るような満開で、待ち合わせ場所の噴水の周りにはうっすらと白い花びらが散りかかっている。
重藤周二は噴水を囲む石椅子の一つに座って、アレンを待っていた。パーカーの袖をちょっと引っ張って、ごついGショックの腕時計に目をやる。
文字盤の液晶は1時55分、約束の2時まであと5分だった。もうすぐアレンに会える。
これが冒頭の部分なんですけど、生産の通り間事件が起こるっていうことは、読む側としてはあらすじを絶対読んでから読んでると思うので、
来るぞ来るぞいつ来るのかなって身構えてるこのドキドキする冒頭なんですね。
この噴水の周りに素面用紙の花びらが降り積もっているというところに血が飛び散るのかな、みたいなことを想像させてしまうというか。
重藤周二がどんな男性なのかはこの時点ではわかんないんですけど、パーカーの袖をちょっと引っ張ってGショックが出てくるってことは若い男子なのかなとか、
すごくハイキャリアな男性ではないんだろうっていうこととか、彼女を待ってるっていうかわいい冒頭のシーンなんですね。
少しページを進むと、2時8分、いつの間にか約束の時間を過ぎていたというところが出てきて、
さっき5分前って言ってたから、結構待ってるんだなって思いますよね。
彼女は来てないんですよ。
その直後に一変して男が急に人を襲い出すっていう、その通りが事件のシーンに突入していくわけなんですけど、
この時間経過を視聴者に意識させる感じとか、静寂の噴水と桜とっていうところからのクライマックスっていうのがドラマのオープニング的だなと思いました。
そしてこの太田愛さんは、実はウルトラマンのシリーズの書き本も書いてらっしゃったことがあるみたいなんですね。
こういう感じって見たことあるなと思ったら、そっか、ウルトラマンかと思って、
噴水の前の平和な日常に子どもたちとかOLさんとかいるところに、
突然怪獣というか薄薄が現れて滅茶苦茶にするっていう展開を彷彿とさせますよね。
この主人公のシュージは、そういうウルトラマンとかやるタイプの戦隊犬のイケメンなのかなと思ったりとか。
この犯罪者っていう小説は2012年に刊行されているので少し前なんですけど、シリーズ類計30万部以上出ているそうで、
この3人の活躍は、幻の夏と書いて原価とか天井の足というシリーズものになっていきます。
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天井の足は去年文庫化されていますので、もしよかったらそちらもぜひ読んでみてください。
このラジオも最近ちょっと重たい社会派なテーマばっかり喋っちゃってたので、
この小説のテーマは重いですけれども、こんな屋上の円溜め小説を今日はご紹介してみました。
白米大好きさんリクエストありがとうございます。
皆さんも見惚れのサイトからお気軽にリクエストしていただけたら嬉しいです。お待ちしております。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室は、こんな感じで皆さんからのお便りをもとにしながら、いろいろなテーマでお話ししたり、本を紹介したりしています。
見惚れのサイトからお便り募集しているので、ぜひご投稿ください。
また来週水曜日の夜にお会いしましょう。おやすみなさい。おやすみ。
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