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2020-07-08 09:44

【第16夜】友達から「恋愛相談されないタイプ」におすすめの恋愛小説

「大人の恋愛小説を」というリクエストに、しまおまほさんの新刊『スーベニア』をご紹介します。このラジオ初の恋愛もの! なぜリクエストが今まで来なかったのか! 「女子高生ゴリコ」で一世を風靡したしまおまほさんが大人になって初めて描く“大人の”恋愛小説とはいかに。

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みもれ真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAウェブマガジンみもれ編集部のバタやんこと川端です。
おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになる、をテーマに、皆様からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
さて、第16夜となりました。今日はXXXSさんからコメントをいただきました。
バタやんさんの記事、いつも楽しみにしています。大人の恋愛小説もぜひ取り上げてほしいです、というリクエストにお答えしたいと思います。
嬉しいですね。実は恋愛小説のリクエスト、今まで来たことないんですよ。なんでですかね。バタやんは恋愛に鬱陶そうなのかな。失礼ですね。
思い出してみたら、10代、ティーンの頃から、男女問わずですけど、友達からあまり恋愛相談をされたことがないタイプだったなと思って。
仲良いグループの子から、ねえねえ聞いたなんとかちゃん別れたんだってねえねえとか聞いて、え、誰かと付き合ってたの?っていうタイプだったんですよね。
なんかそういう恋愛相談されるタイプとされないタイプって言いますよね。なんでだろう。口は固いんだけどな、私。まあいっか。
さて今日の勝手に貸し出しカードは、島尾真帆さんのスーベニアという長編恋愛小説にしました。新刊です。
島尾真帆さんと聞いて、おっと思った方は同世代かもしれませんね。
1978年生まれの島尾真帆さんは、作家でイラストレーターで漫画家でもあるわけなんですが、ダサいな方ですね。
97年に女子高生ゴリコで鮮烈なデビューをされて、当時私もコギャル前世紀、ルーズソックス前世紀みたいな時代の女子高生でしたけど、島尾真帆さんは
ちょっとサブカル女子というか文化系の女子がコギャル系の女子高生をシニカルにデフォルメしたような漫画で、
確か高校の授業中にプリントの裏かなんかに島尾さんが描いてたのを同級生が回し読みして話題になって、それが本になって、
しかも帯は宵泉京子と長瀬夫妻で、本当に夢のようなストーリーだったわけなんですよね。そんなことってあるんだみたいな。
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今ならツイッターで一コマ漫画がバズって本になるとかありますけど、
当時同世代で女子高生でサブカル女子側にいた私は島尾真帆さんの才能というか天才だなというのに圧倒されたし、
そういうシンデレラストーリーが同級生にもあるんだみたいな、クラクラと目眩がするような嫉妬を覚えた思い出がありますね。
本人がまた写真見たら可愛くて、コジラセ側の女子、コジラセって言葉が当時はありませんでしたけれど、
こっち側の島の人だと思ってたら、やっぱ可愛いんだなんだみたいなね。
しかもすごく芸術家一環ね。地筋もスペシャルだったんですね。
そんな女子高生のカリスマだった島尾真帆さんも大人になられて、私も40代ですから同じですけれども、初めて書いた初の長編小説であり、大人の恋愛小説が今回紹介するスーベニアです。
今日は本の紹介にたどり着くまでが長くなってしまいました。後半であらすじとくっつくポイントについてお話ししたいと思います。
島尾真帆さんのスーベニア、簡単にあらすじをご紹介しますと、主人公はフリーのカメラマンをしている34歳の独身女性、安藤詩雄です。
7歳年上の映像カメラマンの詩雄に思いを寄せているんですが、この詩雄との関係は恋人ともいえない曖昧な関係で、そこの人側からすればいわゆる都合のいい女みたいな感じなんですよね。
そんなモヤモヤしている関係の間に、理大時代の男友達でイラストレーターの天ちゃん、彼は妻子持ちなんですけど、飲んだ帰りにキスをされてしまうんですよ。
ここまでが2010年が舞台になっていて、2011年の3月11日に東日本大震災が発生するわけなんです。
そこから物語がググッと動いていくんですけれども、震災後真っ先にメールをくれたのは文雄でも天ちゃんでもなくて、もう一人男性が出てくるんですけれども。
そこまではちょっといまいち詩雄に感情移入ができなくて、あんた34歳なんだがもうちょっとしっかりしててもいいのになと、大人でしょみたいなお母さんみたいな気持ちで読んでいたんですけど、
大震災という有事が起こって、みんながどうしていいか、何が正解かわかんなくなるわけですよね。
そしたらさっきまで私が思ってた大人って何だろうというか、何が大人の対応で、大人の判断って何なんだろうという、価値観みたいなのをグラグラしてくるわけなんです。
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このあたりの下りがすごいなと思ったので、今日はここを紙フレーズとしてご紹介したいと思います。
誰もが不安で、誰もが次の行動を決められないでいた。
自分以外の人間が正しくても、間違っていても許せない世の中になっていた。
チェーンメールに振り回される小杖を誰かが上尺と言って笑っていた。
震災後、急によく耳に入るようになった言葉。
人々のささくれだった気持ちが、そんな弥生を生んでいるのだろうか。
ここは割と震災直後の描写で、そこから多分少し時間が経過して、
無し崩しで取り戻した日常。世の中もそんな感じ。
通常運行となった電車や飛行機、コンビニ、娯楽、再び灯り始めたネオンは、
街に渦巻いていた不安を煙に巻いた。
今のコロナの状況もまさにこの描写の通りですね。
無し崩しで取り戻した日常。世の中もそんな感じ。
という感じになりつつあります。
結局、煙に巻かれて忘れていくのかなと思ったりして。
読み上げて今気づきましたけど、全然恋愛の描写じゃないところを組みフレーズとして読み直してしまいました。
だから恋愛小説を紹介してって言われたのに、そういうとこか。
結婚が決まった同級生とご飯を食べているシーンが出てくるんですけど、
結婚指輪はどこのブランドかみたいな話をみんながしていて、
スワロスキーってピーフストロガノフと響きが似てるなぁと思って、
ロシア語かなとか言っちゃう塩は、多分恋愛相談をされないタイプの女子なんじゃないかなと思ったりして、
そんな塩がどの男性を選ぶのか。表紙が赤ちゃんのイラストなんですよ。
だから誰かの子供を産むのかなと予感させるわけなんですけど、
果たしてそれは3人のうちの誰の子なのか。
最後の最後まで読者を甘やかさない、ちょっと予想を超えてくるような展開で、
さすが島尾真帆さん。そしてやっぱりちょっと大人になりきらない感じがまたいいなぁと思った一冊でした。
はい、今日はXXXSさん、リクエストありがとうございました。
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さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会、おしゃべりな図書室はこんな感じで、皆さんからのお便りをもとにしながら、
いろんなテーマでお話ししたり、本をご紹介したり、緩やかにやっていきたいと思います。
また来週水曜日の夜にお会いしましょう。今日は最後までお付き合いいただきありがとうございました。
おやすみなさい。おやすみー。
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