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2020-06-16 10:28

【第13夜】すべてがリアリティショー化していく今、“感情消費”と距離を置いてみる

共感できないものは不快である、共感できないものは叩いていい、という風潮が強まる今、感情のコンテンツ化はどんどん進み、私たちはいつの間にか消費者のつもりが無償労働者になっている。”1億総配信”時代のいま、あらゆるコンテンツはリアリティショー化していくのではないか。そんなことを大塚英志さんの『感情化する社会』を読みながら掘り下げます。

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みもれ真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAウェブマガジンみもれ編集部のバタやんこと河童です。
おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになる、をテーマに、皆様からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
さて第13夜となりました。皆さんいかがお過ごしですか?今夜のテーマに参ります。
野垣さんからいただきました。尊重するけど無関心と支援について、というお題です。
はい、すごい深い考えさせられるテーマですね。尊重はするけど無関心でいること、
無関心だけど支援する気持ち、というようなことでしょうか。
野垣さんがどういう想定で、どういった事例をイメージしてこのテーマを書いてきてくださったのか、ちょっとわからないので、
まとはずれかもしれないんですけど、昨今のいろんなニュースとか事件とか話題になっているスキャンダルとかについて、尊重するけど無関心と支援が
ないまぜになった感情を持っている方が多いんじゃないかなと思って、今日はこのテーマを選びました。
今日ご紹介するのは、漫画の原作家でもあり、批評家の大塚英二さんという方による感情化する社会という本にしました。
この本は2016年に刊行されてまして、ちょっと前なんですけれども、この本が刊行された当時よりも社会の感情化が進んでいるんじゃないかなと感じていまして、
今日ご紹介したいなと思いました。感情化というのは感情的になるという意味とは少し違っていて、この本の解説をそのまま読むと、
感情化とはあらゆる人々の自己表出が感情という形で外化することをお互いに欲求し合う関係のことを意味するとあります。
ちょっと社会学の本みたいで難しいんですけど、感情が私たちの価値判断の最上位にきて、感情による共感が社会システムとして機能する状態を本書では感情化と呼んでいますとあります。
この本の始めに、当時の平成の天皇が生前大位についてお気持ちを表明されたという意見について、
そのお気持ちに国民が圧倒的な共感を持ってニュースが伝えられたという話が感情化する社会の端的な例として書かれているんですね。
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何についても、また誰に対してもお気持ちを求める、そしてそれをみんなで消費するという指摘ですかね。
そうやって感情化する社会では、共感できないものは不快であるとして消費する。消費するというのは叩くみたいなことですかね。
この本では、尾形さんとか高級議員の例が出てまして、ちょっと懐かしい気持ちですけれども、
その頃よりさらに共感できないものは叩いていいみたいな風潮が今強まっている気がしています。
それと何かにつけお気持ちを聞く被害者とか加害者とか選手とか、事実関係とは関係なくというか、
そのお気持ちの消失がニュースになり、コンテンツとなり、みんなで消費するみたいなことですね。
それを感情のコンテンツ化なんて言ったりしますけれども、
そういうお気持ちをみんなが共感する形で消失しなきゃいけない、不倫された側の人とか被害者側の人とかも、
そういう気持ちがみんなの共感する形で消失されなきゃいけないみたいな傾向が強まっているような感じがしています。
それが尾形さんの言うところの尊重するけど無関心支援とどう繋がるかというと、
尊重はするけど無関心であるってことが支援になるっていうケースもあるんじゃないかなと思ったんです。
あの人本当に許せないムカつくってツイッターに書いたら、その時点でそれを私の感情はコンテンツ化して消費のサイクルに乗っかっちゃってしまっているっていうね。
それを無償労働だってこの本は指摘してるんですけど、
無償労働、感情をコンテンツにして消費する無償労働の怖さと、
あとまたちょっと視点が違うんですけど、今あらゆるコンテンツがリアリティー消化してるんじゃないかと私が危惧していることについて、
この本の紙フレーズをご紹介しながら後半は掘り下げたいなと思います。
政治的ニュースからタレントの不倫、インスタグラムの写真から猫の動画まで、そしてあらゆる商品への反応も含め、私たちは感情を瞬時に発露するように訓練づけられている。
各網ウェブでは、人は感情の発露という形の労働を常に求められていると言える。
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それだけでなく、あらゆる形で人は自分の性をプラットフォームにおいて無償のコンテンツとして提供し続けていくことを求められる。
創作や消費だけでなく、生きることそのものが、私たちがウェブとつながった瞬間、フリーレイバー化しているのである。」とあるんですね。
こんなポッドキャストで自分の感情を発露している私こそがまさに当事者っていう感じなんですけど、
感情の発露をツイッターとかに載せる、それについてはお金は発生していないし、もらってはないんだけど、
プラットフォーマーにはお金が入ったりするみたいな仕組みはSNSに限らず、投稿型のサイトかなり多くありますよね。
その話とはまたちょっと話がずれちゃうんですけど、
この自粛期間中にいろんな芸能人の方とか女優さんとかモデルさんとかがインスタライブとかYouTube配信を始められたじゃないですか。
役柄とは違うリアルな感情の発露とかウォッチとか見れるっていうのはすごいことだなって思ってたんですけど、
毎度あっちゃんがいた頃のAKBのドキュメンタリー映画を見て、あんなにずっとカメラが回ってて、泣いても怒っても映されてて、
すっぴんもさらされて可哀想だなって思ってたんですけど、今やもういろんなアーティストさんでも女優さんでも当たり前のように、
結構舞台裏にずっとカメラが入ってて、すっぴんをさらすのも当たり前になりつつあり、
ずっとカメラが回っている状態っていうのは一般の人も含めて一億層配信時代というかね、
それがこの自粛期間中にとても加速した気がしますね。
あとリモートドラマっていうんですかね、そういう撮影の仕方を捉えしているドラマも結構あって、
柴崎幸さんが柴崎幸という役をやるとか、
広瀬すずちゃんと広瀬アリスちゃんが兄弟の役で出てるとか、
ちょっと違いますけど足立由美ちゃんが足立由美ちゃんの役をやるとか、
そういう本人の名前の役をやるドラマが最近増えたなと思っていて、
面白いなと思う反面、
本人が本人風の役をやるっていう境目が見てて曖昧になっていくのは危ないんじゃないかなと思っていて、
すごい綺麗な顔だけど嫌な人だなとか性格悪そうだなとかって、
そういう役なのに本人に対してそう思ってるっていうふうに錯覚してしまう危険性があるっていうかね、
そんなことを考えたりしちゃいました。
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共感しないものは深いっていうのがどんどん強くなっているこの世の中で、
尊重はするけど無関心でいるとか、
感情の消費に乗っからずにいるっていうことは、
その人を遠まきに支援することの一つでもあるかもしれないし、
ある種自分自身を守る自己防衛の一つなのかもしれないなと思いました。
本日は野垣さんの深いテーマをありがとうございました。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室はこんな感じで皆さんからのお便りをもとにしながら、
いろいろなテーマでお話ししたり、本を紹介したりしています。
MIMOREのサイトからお便り募集しているので、ぜひご投稿ください。
また来週水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。
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