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みもれ真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAウェブマガジンみもれ編集部のバタやんこと河童です。
おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになるおテーマに、皆様からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
さて、第49夜をお届けします。今夜のお便りをご紹介します。
ニックネーム、なべしきとみとんさんからいただきました。大学院での研究を経て、この春から会社員として働くことになっています。
新しい環境ということで楽しみでもありますが、不安も少なからずあります。
そこで、これから仕事を始める人へのおすすめの本を紹介してくださいとリクエストいただきました。ありがとうございます。
春だからですかね、大学院生、大学生や新社会人の方からのメッセージをいただくようになりました。
このポッドキャストも幅広い年齢の方に聞いていただけてとても嬉しい限りです。
つい先日、久々にOG訪問を受けたんですけど、
その子がほぼこの1年、学校に行ってない、大学のキャンパスに足を踏み入れてないって言ってて、
そっか、かわいそうだなって思ったというか、卒業コンパとかもできないんですかね、わかんないけど、
そんな中、オンラインで授業を受けてコツコツと一人就活をして、そしてこんな知らないおばさんにアポイントを取って偉いなって、もうそれだけで立派ですよね、すでに。
私なんぞにそんな言えるようなことも特にないんですけど、一つだけすごく最近そうやって若い人たちを見て思うのは、
会社に入ってうまくいかないことばっかりでも思ってたのと違っても、それはどうぞ自分の生徒をあんまり責めたり追い込んだりしないでほしいなっていうことだけなんですよね。
最初から無理ゲー、クリアできない無理なゲームなのは、あなたのせいじゃなくて会社のせいであり、
社会のせいであり、コロナとかそういう状況のせいだと思っていいんだよっていうことをお伝えしたいなと思ったりするんです。
そんなわけで、今日の勝手に貸し出しカードは塩谷舞さんの新刊、ここじゃない世界に行きたかったをご紹介したいと思います。
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塩谷舞さんは塩谷という名前で、ネット界隈ではバズライターとして知られた有名人なんですけれども、
ナベシキミトンさんはご存知かなどうかな、塩谷さんは旦那さんとニューヨークブルックリンに移住されていて、ここじゃない世界に行きたかったはそのアメリカの生活とインターネットの長寿だった頃と今の仕事、
プライベートとのバランスのことなんかを中心に綴った、私は初のエッセイ本なんですね。私は塩谷さんとして、バズライターとしての塩谷さんに注目をしていて、
そもそもなんで興味を持ったかということと、なぜこの本を今日紹介したいと思ったかということをこの後お話ししたいと思います。
私は塩谷さんのネットでバズる記事の書き方みたいなタイトルのセミナーに行ったことがあるんですよ。
漏れ編集部に移動してすぐの頃だったかな、5,6年前なんですけど、バズライターってどんなもんじゃいっていう冷やかしみたいな気持ちも、もしかしたらあったかもしれないし、
紙の雑誌の編集者をやってきて、ネット記事でバズるみたいなことをやや下に見ているような気持ちがなかったかといえば嘘になるんですけれども、
塩谷さんは1988年生まれ、私より10歳くらい下なんですけど、若くて見た目もシュッとしてて、どんな人がセミナーに来るんだろうっていう興味もあったんですよ。
そしたら塩谷さんのファンという人が多かったのかな、ビジネスっぽい人っていうよりはちょっとしたアイドルっぽい扱いなのかなと思ったりもしました。
お話の内容はネットの作法とかテクニック的な話もあったとは思うんですけれども、すごく本質的な話をされてたんですね。
詳しくは忘れちゃったんですが、ちゃんと知りたいこと、本音の気持ちに応える記事を作ることが結局は大事だっていうような話だったと思っていて、
私はすごく感動した感銘を受けたのと、ちょっとそういう冷やかし半分に来た自分をごめんなさいって思いつつ、塩谷さんが少し狂いそうなのかなっていう印象を受けたんですよ。
本当はそういうバズルテクニックみたいなことを語りたいわけじゃないっていうか、本当はもっと違うところが見えてる人なんだろうなと勝手に思ったんですよね。
これは私の本当勝手な推測ですけど、うまくやれてる自分、有名になってる自分がそんなに好きじゃないみたいな感じもあるのかなと、余計なお世話ですけれども、
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勝手に気になっちゃって、その後ノートの有料登録もして追っかけてたんですよね。
このノートの記憶に残るインターネットの使い方という連載はめっちゃ勉強になったし、今も勉強になるから上がっていると思うので、検索して気になる方はぜひ高読して見てみてください。
そんな塩炭ウォッチャーの私なんですけれども、この本の前書きにこんなことが書いてありました。
インターネット産業で3年間の修行をした後、2015年にフリーランスのウェブライターとして独立した。世に放った記事は中ファックバズっていたので、
言っときはバズライターという恥ずかしい肩書きでメディアにも手早されたりもした。
この本の話が来る数年前、私がオファーを受けていた書籍のタイトルは、SNS戦国時代、インフルエンサーに学ぶ、混ずる、売れるの必勝法なるものだった。
1年で暗くなってしまいそうな必勝法を、これまた1年で旬が終わってしまいそうなインフルエンサーが書くという構図は、なかなか皮肉が効いているって書いてあるんですけど、
こういう客観性と言うか、自分への冷ややかさ、自分に対する冷ややかさがある方なんだなって、そこが魅力であり鋭さなんでしょうね。
世間に対する目線も鋭いし、自分に対する目線も鋭い。
そしてこの本は、このバズライターの肩書き名声を一旦下ろして、それをのれんを下ろすという表現をされていましたが、
今アメリカで暮らしてどんなことを考えているか、みたいな話をエッセイに綴られているんです。
この中から気になった説をご紹介したいと思います。
いろんなエピソードが書かれているんですけれども、大学を卒業してすぐ入ったネットの会社で倒れた話が書かれていて、この章がすごく印象的でした。
きっとネットの世界に憧れていてやりがいもあったけど、パンクしちゃったんですよね、心も体も。
そのくだりは読んでいて胸がギュッとなりましたが、やれて嬉しい仕事と期待に応えたいという気持ちと体が追いついていなくて、
倒れる程度の差こそあれ、若い頃にはきっと多くの女の子があるんじゃないかなというパンクの瞬間、みたいなお話です。
塩谷さんは最近の女性活躍についてもこんなふうに書かれています。
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女性役員を3割まで増やそう。そうした目標が日本の中でも少しずつ増えている。
ガラスの天井が破られることは素晴らしい。けれども体力の限り働き続けるが必勝法とされているルールのままでは、身を子にして働く立場にどれほどの女性が耐えられるだろう。
耐えられる女性もいるだろうけど、少なくとも私は耐えられない。
本当にそうだなと思いますね。
塩谷さんは割と体が弱い方だというふうに自身で自覚されていると書かれていますけれども、
強い方だと思っていても身を子にしないと耐えられないような無理ゲーになっている世界がたくさんあって、
それが自分のせいって思っちゃってる人が多いんじゃないかなと思ったりしました。
今日はこの本から紙フレーズを最後にご紹介したいと思います。
私はもう背伸びをし、強者のふりをして働くのはやめた。
自分の弱さをちゃんと許容した上で働くことに決めたのだ。
弱くても強く生きられる。
社会で生きるための必勝法にはもっと多様性があればいい。
これから働くなべしきとみとんさんに倒れるまで働いちゃダメっていう話を急にするのもどうかなとは思うんですけれども、
必勝法も勝ち負けの勝ちの意味ももっと多様になっていくんじゃないかなと思っています。
でも一方で塩谷さんの本を読んですごく思うのは、
塩谷さんはやっぱり一度バズライターっていうノレンを勝ち取ってるんですよね。
だからノレンを下ろしても自由で緩やかな働き方にシフトしても移住しても、
誰かからお声をかかったり、ある程度の収入を得る仕事ができるっていうところもあるとは思うんですよ。
それってやっぱりすごいことです。
自分としてはもしかしたら不本意だったことだったとしても、
あるいは人から見て得意なことと自分が心地いいことっていうのは違ったりするかもしれない。
不本意な部署へとか職種への配属もあるかもしれないですけれども、
そこで小さくてもノレンを上げられるといつでも自分で上げ下げできるっていうかね、
自分の仕事になった時に過去のノレンが役に立つこともあるかもしれないと思うのです。
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そのノレンはいつでも自分で下げていいって思って働いたらいいんだなって気づかされたこの本でした。
鍋敷トミトンさん、リクエストありがとうございました。
皆さんも今日も最後まで聞いていただきありがとうございます。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな途中室はこんな感じで、
皆さんからのお便りをもとにしながら、いろいろなテーマでお話ししたり、本を紹介したりしています。
MIMOREのサイトからお便り募集しているので、ぜひご投稿ください。
また来週水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみ。