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2021-03-03 10:59

【第48夜】仲良くないけど、察しあえる『あの子は貴族』に女の連帯を考える

「今年社会人になったばかり。地方勤務になり、同じ部署で働く同期の言動にモヤモヤ……」というお悩みにお答えして、映画公開中で話題の山内マリコさんの『あの子は貴族』についてトークします。境遇や考え方の違う二人は仲良くなれる?友達、学校、結婚などはじつは自分であまり選択できない?…など、二者択一で決めつけられない女性の人生の選択について考察したいと思います。

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みもれ真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAウェブマガジンみもれ編集部のバタやんこと川端です。
おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて、明日が楽しみになる、をテーマに、皆様からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
さて、第48夜となりました、今夜のお便りをご紹介します。
ペンネームもあいさんからいただきました。
バタやんさん、はじめまして。
はじめまして。
今年、社会人になり、同期と二人で地方に配属されて、毎日同じ部署で仕事をしています。
ところが最近、同期が仕事を辞めたい、働いてばかりの毎日から抜け出して、海外で自由に暮らしたい、とたびたび口にするようになりました。
私はこれまで、今の仕事が楽しく充実しているなと思っていました。
なんだか自分の毎日が否定された気持ちになって、働くって一体何だろうともやもやしてしまいます。
働くことについて考えられるようなおすすめの本はありませんか?といただきました。
心をくすぐられるご相談でした。
このエピソードだけで1本小説が書けそうというか、私は書けませんけれども、
山内真理子さんに書いてもらいたいなと思いながら、こちらのメッセージを少し前に配属して、
山内真理子さんの原作の「あの子は貴族」の映画公開だったと思って見に行って、これはぜひモアイさんにも見てほしいと思って今日取り上げた次第です。
本当は山内真理子さんの別の小説「選んだ孤独は良い孤独」という短編集をご紹介しようかなと思ってたんですけど、
先週末見た「あの子は貴族」がすごく良くて、今日はその話をしてもいいでしょうか。
「あの子は貴族」のあらすじを簡単にご説明すると、東京の小島生まれの喫水のお嬢様の花子、映画では門脇麦さんが演じています。
地方からも猛勉強して、慶応に入って上京して、自分で居場所を切り開こうとしている女性三木、映画では水原紀子さんですね。
2人の境遇の違う女性が出会って、同じ男性をきっかけに巡り合ってというお話なんですね。
男性は慶応出身の弁護士でお坊ちゃま、これは映画では甲羅健吾さんが演じているんですけど、
花子のフィアンセーとなる一方で、実は水原紀子ちゃん演じる三木にも手を出していたって話なんですよ。
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こう聞くと、生まれながらのお嬢様と自力で這い上がってきた地方女子の対決の対立の話かと思うと、そうではなくて、
この先に読者の私たちの予想を裏切るいくつかの山内真里子さんらしい仕掛けがあるんですけれども、
そのお話は後半に続けたいと思います。そして今日は結構内容について踏み込んだお話をしたいと思っているので、
もしこれから映画を見ようと思っていてストーリーを楽しみたい方は、ここで止めて見てから聞いていただいてもいいと思います。
でもミステリーとかではないので、筋を知ってても別に良いよという方は、後半へ引き続きお付き合いいただけたらと思います。
私がこの作品で一番いいなと思ったポイントについてお話ししたいと思います。
あの子は貴族は、地方と東京出身あるいは外部生と内部生みたいなヒエラルキーがテーマにはなっているんですけど、
女の敵は女とかハウンティングみたいなことがテーマになっているわけじゃないんですね。
そこは山内真理子さんが描くという時点でちょっと想像はついていたんですが、
あらすじに境遇の全く違う2人がやがて同じ男をきっかけに巡り合い…ってあったので、
巡り合って2人が一気投合して仲良くなるという話なのかなって想像したんですよ。でもそうではないんです。
まあそういう部分もなきにしもあらずですが、2人のシーンは映画では2回だけだし、
原作の小説でも全体の分量からすると実はほんのちょっとしかないんですね。
これネットフリックスのアメドラとか韓国ドラマだったら、同じ男を取り合った2人がナックス男って言って一気投合して仲良くなって強盗するとか、
お金持ちの彼の実家からお金を巻き上げるとかして、2人で海外合流するとかね、
ボニーとクライド的な話に展開するか、今なら2人でフェムテック的なIT会社でも起業して大成功するとか、
そんな展開になるところかなと思うんですけど、そうじゃないんです。2人は対決もしないけれども、ものすごく仲良しになるわけでもないという、
それがすごくいいなって思ったんですけど、映画のパンフレットを買ったらこの映画の監督、袖幸子監督がポイントは親友にならないところにあるっていう解説をされていて、
親友になってしまうといかにもフィクションだっておっしゃっていて、本当そうだなって思ったわけです。
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モアイさんになぜこの小説を紹介したかったかというと、その同期の子とモアイさんは同期としてたまたま同じところに配属されるっていう境遇にはなったけれど、
同じではなくても違うステージにいて、違うところに立ってるのかもしれないですよ。
モアイさんは日々の仕事の中に楽しみややりがいを見つけているっていうステージにも入っていて、同期の子はもしかしたらまだ学生からの続きの台に乗っていて、まだ何者にもなれる自分でいたいって思っているのかもしれません。
同じ教育、同じ環境にいるようでいて、もう立ってる場所が違うんですよ。
だからあまり気にしなくていいのではっていうか、モアイさんが遅れてるんじゃなくて、モアイさんが先に進んでるんじゃないかと。
でもまた何年か経って結婚したり、また転勤したり、転職したり、いろいろ経てあったら同期入社の人として連帯できる日もきっと来るんじゃないかと思うんですよね。
学生の頃は、世界に存在する人は自分と仲が良いか良くないかの見たくって感じだったんですけど、私も。
大人になると、会社に入ると、仲良いわけじゃないし、好きでもないけど何かあれば助けるし、お茶でも出しますよっていう関係は増えてきて、
それではそれで、ベタベタするわけじゃないけど、お互いの大変さをお察ししますみたいなね。
同じ共通の嫌な取引先とかあったりすると、そういうこともありますよね。お互いのことは別に好きでも、仲良しかっていうと仲良くはないけれども、
助け合ったり、大変そうだったらお茶ぐらい入れたりするよっていう人と出会うこともまた良しだったりします。
もしかして仕事やプライベートですごい辛いことがあったときは、そのぐらいの距離感の人に話を聞いてもらって救われるっていうことがあるかもしれないなぁと、
あの子は貴族を読みながら思いました。今日はそんなあの子は貴族から紙フレーズをご紹介します。
花子が30代とかマジで想像つかないなと笑う。でも私、今の方が生きやすいかも。
花子は愉快そうに言いながら、今の自分の方が好きだし毎日が楽しいと心の中で付け足したのだった。
この小説は女性の人生の選択、友達、学校、結婚とかは比較的自分では実は選択できない。
家だったりとか生まれた場所、お家柄にかなり影響されるけれど、女性の仕事に関しては比較的選択の自由度が高い
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っていうお話でもあると読みました。 稼ぎや社会的地位とは別に何をしてるとキラキラしてやりがいを感じるか楽しいと思えるかっていうのを
大事にできるじゃないですか。男性より女性の方がどちらかというと、男性の場合ね稼ぎとか社会的地位とか
エリートか田舎みたいなのが割と大事かもしれないんですけど、何をしてるとキラキラして楽しいかやりがいを感じられるかっていう感はあってるんじゃないかなと
自分でやってて楽しいなって思うことは、人から見て向いてるか向いてないかとか報われてるか報われてないかとか
活躍してるかどうかっていうのとは別問題として、自分でやってて楽しいなって思うことを続けることはあってますよ、きっとということをお伝えしたかった。
もあいさん、今日はお便りありがとうございました。お仕事頑張ってください。応援しています。
さて、そろそろお時間になってしまいました。 真夜中の読書会おしゃべりなと出室はこんな感じで皆さんからのお便りをもとにしながら
いろいろなテーマでお話ししたり本を紹介したりしています。
みもれのサイトからお便り募集しているのでぜひご投稿ください。 また来週水曜日の夜にお会いしましょう。おやすみなさい。おやすみ。
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