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2024-06-12 15:27

「すごくいい人」だけど、ときどき「ズルさ」が見え隠れする

今夜の勝手に貸出カードは、岡部えつさんの『怖いトモダチ』。
多くの人に慕われているあの人と、彼女と怖い一面に気づいてしまって反撃を受けた人たちの証言と。真実はどこにある?

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真夜中の読書会〜おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAのバタやんこと川端です。
真夜中の読書会〜おしゃべりな図書室では、
水曜日の夜にホッとできて、明日が楽しみになる、
おテーマにおすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
第175夜を迎えました、今夜のお便りご紹介します。
ペンネームまゆげさんからいただきました。
はじめまして、まゆげです。
ポッドキャストとても面白くて大好きです。
ありがとうございます。
職場のベテランの先輩はとてもいい人で、
誰からも好かれていて、全く萎縮せずに働けるような人です。
私も働きやすく、働きやすく先輩が大好きなのですが、
心の奥で先輩をバカにしたり、
嫉妬したりしている自分の気持ちに気づき悩んでいます。
先輩は仕事をバリバリこなすタイプではなく、
話もなかなか言葉が出てこなかったりするタイプです。
私が考えていた意見を、自分の考えのように会議で発言してしまったりします。
それでも人柄の良さや、親戚のおばさんのような存在なのか、
みんなからの尋問は厚いです。
本当に無自覚に、私が誘われていないご飯の話を楽しそうに私に話してくれます。
その話、私は聞いても楽しくないのですが、
毎回何とも思わずに教えてくれます。
それは本当に人柄の良さで、決して意地悪な思いではない方なのです。
私が面倒を見ていた新卒の後輩が先輩と楽しそうにしていたり、
チームを引っ張っているのが先輩だと言われることに、もやもやしてしまいます。
先輩のことは好きで、本当に人柄の良い人だし、
この人のおかげで私も働きやすいのに、
ついあまり話を聞かなかったり、冷たい反応をしてしまう自分は優しくないと自分で気づいています。
こんな私におすすめの本がありましたら、紹介していただけたら嬉しいです。
お便りありがとうございます。
なるほど、なるほど、難しいですね。
自分の感情の持って行き場が難しいと言いますが、
みんなから慕われている、悪い人じゃないと眉毛さんもそう思っている、
だけどちょっともやっとさせる何かがあると、
そのことに気づいてしまった眉毛さん。
そんな眉毛さんへ、今夜の勝手に貸し出しカードは、
岡部えつさんの怖い友達にしました。
眉毛さんの置かれている状況と、怖い友達のシチュエーションは全然違うんですけれども、
共通する部分があって、この本にしました。
それは僕の人に慕われている、
あの人素敵な人だよねって言われている、
あるいは言わないといけないような雰囲気をまとっている人であるんだけれども、
でも実はちょっと違うんじゃないかと気づいてしまった。
そんなところがまさにこの小説の面白い部分だと思ったので、
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ご紹介したいと思います。
ではまず簡単にあらすじから解説していきます。
岡部えつさんの怖い友達で描かれるのは、
ブログ出身のカリスマエッセイスト、中井るみんさんという女性です。
彼女の書く文章は読む人に寄り添っていて、背中を押してくれるような、
そしてよくぞ言ってくれたと思わせるような前向きな文章で、
中高年女性を中心に圧倒的な支持を得て、
オンラインサロンをやったり、著者もすごく売れているんですね。
あれ、なんかちょっとあの人みたいかなとか、
もしかしたらあの人がモデルかなって思いつく人もいるかもしれません。
まあさてさて、そんなるみんさんに対してすごいファンです。
本当憧れですっていう心水している人もたくさんいるんですけれども、
実はあの人は悪魔だっていう人もいるというわけなんですよ。
この小説は中井るみんを取り巻く16人の証言で構成されています。
証言で構成されているので独白形式、
私はこう思ってました、あの時こうでこうでこうなって、
るみんさんはこう言った、私はこう思ったという風に、
話者がどんどん入れ替わっていくスタイルです。
面白いのはその証言の間に中井るみんが書いた文章が挟まるんですね。
証言で言われていたあるエピソードに対して、
るみんが書くとこうなる、こう描かれるっていうのが挟まれていきます。
誰かにとってはカリスマで、誰かにとっては魔外者っていう
人物像を多面的に見ていくっていう設定自体は、
それほど目新しいものではないのかなとはありえることかなとは思うんですけれども、
この小説のこの設定で期待される面白さを
ちゃんと超えてくるっていうポイントは、この本は2つあって、
まず1つ目は誰が16人にインタビューをしているのかっていうポイントなんですね。
誰が何のためにこんな労力をかけてたくさんの人に話を聞いているんでしょうか、
そこが1つミステリーが挟まってますね。
ここはちょっと読んだ方のお楽しみということで言わないでおきます。
2つ目は、これってストレートな読み方をすると、
みんなのカリスマ、素敵な女性と言われている人は、
実はあくまでサイコパスでしたっていうのが明らかになっていく話、
というふうに読めば単純なストーリーなんですよね。
私が思ったのは、これは読んだ方によって解釈は違うかもしれないので、
正解ではないと断っておきますが、
あくまで私の解釈としては、この証言をしている側の人たちだって、
本当のことを言っているかどうかわからないよねっていうところに
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面白さがあるのかなと思いました。
途中で自己愛性パーソナリティ障害の話が出てくるんですよ。
ルミンがそうだ、そういう人だっていう読み方もできるし、
証言している側の人が自己愛性パーソナリティ障害の可能性だってありますよね。
自分の都合のいいように解釈して記憶を上書きしちゃうとか、
歪めてしまうとか、
自己愛性パーソナリティ障害で賞賛されたい欲求が強いという一面があったりするんですが、
ルミンさんがそういう人だったという可能性もありますし、
ファンの側だった人たちがルミンさんから賞賛されたい、
承認されたいっていう欲求が強くなりすぎて、
ファンダムが愛情から憎悪に変わるみたいな可能性もあるわけですよね。
そんなお話の流れで、一つ私が印象的だったエピソードをご紹介します。
ルミンさんのサロンの会員さん、つまりそれは彼女のファンですよね、
に対してある時ルミンさんが、
私が書いたものを真似しないで欲しいっていうふうに苦言を呈す時があるんですよ。
怖いでしょ、ドキッとしますね。
そう言われた側はすごいびっくりするし、ショックを受けるんですけど、
でも実はルミンさんの方が彼女の書いたものをちょいちょい盗作、盗用してたんじゃないかっていう話が出てくるんですよ。
これはすごくありえそうで、ぞくぞくしましたね。
崇拝している側だからこそ、読むものが似てきたり、
あるいはもともと趣味思考が似ていて、より内面化されていくと、
あの言葉を私が先に使ったのにっていうのが出てくる可能性はあるし、
お互いに近しいというか、
サロンの会員さんが書いたものもルミンさんは読める立場にあるので、
どっちが先かっていうのはちょっと曖昧なのかもしれないですよね。
ルミンさんは本当に偽物で共感を呼びそうなキャッチーな言葉をあっちこっちから切り割りしてただけの人って可能性もあるなぁとは思うんですよ。
それもそれでマーケティングというかね、上手なやり方の一つかもしれないんですけれども、
そしてこのネットから出てきたカリスマというのもポイント、今時っぽいなぁと思いました。
芸能人とかミュージシャン、アーティストと呼ばれている人とファンという関係性なら、
圧倒的な上下関係というか境界線があるわけじゃないですか。
ブロガーとかユーチューバーとかインスタグラマー、ティックトッカーとか、
今こうしてお届けしているポッドキャストなんかもそうかもですけれども、
一般人だけどもある一定のジャンルにおいてファンを得た、フォロワーを得たみたいな関係性って、
はっきりした上下関係ではないので、ただ趣味趣向が同じ人が集まっただけみたいなところもあって、
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だから絶やすく享受する側、される側、受け取る側、発信する側、教える側、教えられる側みたいなのが入れ替わるんですよね。
ユーチューブのコメントとかでもすごく教えてあげているコメントがいっぱいあるじゃないですか。
何々が好きならこういうやり方がお勧めですよとか、この地域ならこのお店の方が安くて美味しいですよとかね、よくコメント欄に書いてありますけれども、
そうした近い関係性ゆえのファンダムが逆転して象に変わりやすい土壌なのかもしれないなと思ったりしました。
さて眉毛さんの話がちょっとずれてきてしまったんですけれども、この後は紙フレーズをご紹介したいと思います。
自分を過大評価も過小評価もせず、ただ見つめられないものだろうか。私たちは猿ではない。マウンティングなどしなくても互いを素人と務めることができ尊重し合える人間だ。
とあります。これは中井留民がマウントーテーマに書いた文章の締めくくりの部分なんですね。
いつもこの紙フレーズを読み上げる箇所はですね、私がこの本の中ですごく感動したり共感したりとか、ああこういう視点もあるのかと思ったり、
こんな表現の仕方あるってすごく心に響いたところをもちろん読み上げていたんですけど、
今日は真逆というか、うわーやだーこういうこと言う人やだーって思ったという意味で心に残ったので読み上げました。
この話を留民さんが書いた背景が面白くてですね、面白いという言い方したらなんですけども、
著者の宣伝のことをサロンの会員さんに聞くんですよ。
広告会社に勤めている人がサロンの会員にいて、留民さんの会員になっているんだからファンなわけですよね、彼女も。
だから直接声をかけられたり相談されたりしたこと自体はすごく嬉しかったと思うんですけど、
ただその詳しいことを聞いてみないと案件によって全く違うからもう少し具体的に言ってほしいみたいなことを返したら急に留民さんがプチ切れるんですね。
まあ留民さんの側からするとちょっと相談しただけなのに専門知識において急にマウントを取られたっていう風に受け取ったってことなんだと思うんですけど、
あんたは何も知らないでしょって感じで帰ってきたってことにちょっと腹を立てているんじゃないかと思うんですが、
これってなんかよくあることでもありますよね、どっちの立場になることもあり得るというか、
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例えばママ友とか久しぶりに会った同級生とかと集まった時に、ある専門性の高い職業に就いていた人がいたとして、
何だろう弁護士とか医療保険関係とか、今だとデジタル系もあり得るかもしれないですけど、
あ、何々さんでそんな仕事してるんだ、じゃあちょっと聞いてもいい?って気軽に相談する人いますけど、
それはちょっと違うよなと思うんですよね。
その相談に乗ること自体を生業にしているっていう職業だったりもするわけじゃないですか。
だからこんな場所でそんなざっくり気軽に聞いてくるなやってね、
案件によっていろいろあるからここでは一概に言えないんですよっていう答え方になるのはよくわかるんですけれども、
でもそれをマウントを取られた上、自分が上だっていう風に、
あんたにはどうせわかんないでしょうけどっていう風な言い方をされたという風に受け取るケースはあり得るなと思ったりして、
という引用した歌唱に戻るんですけれども、
なんで嫌だなって思ったかというと、
猿じゃないんだからみたいな言い方にも棘があるし、
全人類をフラットに愛せよみたいなことを急に言ってくる感じも、
丁寧な言葉なだけに嫌だなって思ったところなんですけど、
逆にね、やっぱり歌唱評価したり課題評価したりしちゃうと思うんですよ、自分のことも他人のことも、
勝手にすごく高く買って勝手にすごくがっかりしたり、
その繰り返しですよね、特に近しくやり取りが多い人ほどその繰り返しが小刻みに訪れるというか、
あれ、あの人私のことちょっとバカにしてんのかな、もしかしてって思う時もあるし、
逆もしっかり、私あの人のことどっかでちょっと下に見てるのかもしれないって気づくこともあるし、
気づかないふりをしたりと、
それを不意調しない眉毛さんは偉いと思いました、ということを締めくくりにお伝えしたいと思います。
ここで話すのはいいんじゃないでしょうか、
その先輩のことを誰も知らない親族のリスナーの方は、
分かる分かると聞いてくださったんじゃないかなと思っています。
スカッとするタイプの小説ではないんですけれども、
怖い友達を一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
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それではまた来週水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみ。
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