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2021-03-24 10:28

本も旅もあなたがいちばん必要とするものを与えてくれる。今欲しいのは?【第51夜】

「1度目と2度目で味わいが変わる本」とのリクエストにお答えして、岸本佐知子さんのエッセイ集『死ぬまでに行きたい海』をご紹介します。みなさんにも、とある駅前の風景とその駅を使っていた頃の苦い思い出や、旅から帰ってきた後の忘れられないエピソードはありますか?



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みもれ真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAウェブマガジンみもれ編集部のバタやんこと河童です。
おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになる、をテーマに、
皆様からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
さて、第51夜となりました。今夜のお便りをご紹介します。
ゆうこさんからいただきました。
バタやんさんこんばんは。
こんばんは。
毎週水曜日の夜を待ち遠しく過ごしています。
バタやんさんのポッドキャストを聞いて、おすすめの本を読んでから、もう一度ポッドキャストを聞き返して、
そうそうと再び共感したりして楽しんでいます。
そこでリクエストです。バタやんさんが何度も読み返した本を教えてください。
私は一度目と二度目で味わいが変わる本が好きです。
といただきました。ありがとうございます。
聞いてから読んでもらうということを想像して喋ってたんですけど、
読んでから聞いてくださるっていうのを想像できてなかったですね。
そうですよね。読むと言ってたことがわかる。
あるいはバタやんそうかなってことがあるかもしれないですね。
そんなふうに聞いてくださってありがとうございます。
一度目と二度目で味わいが変わる本。
そうですね。いいテーマですね。
私が最近何度もパラパラと読み返して、
その度にほうほうとなる本をご紹介したいと思います。
今夜の勝手に貸し出しカードは、
岸本幸子さんの死ぬまでに行きたい海にしました。
岸本幸子さんは音訳家としても、
私にとっては岸本さんが訳してるなら読もうっていう、
岸本さんが訳すに値すると思ったならば、
オファーはいろんな形式があると思うんですけど、
きっと面白いに違いないという基準にするぐらい、
尊敬、尊敬かな、惚れ惚れしています。
そしてエッセイも素晴らしいんですよ。
微文、例文っていうのとはちょっと違うかもしれないんですけど、
少しとぼけてるというかね、
とぼけてるって今パソコンで打って初めてわかったんですけど、
とぼけるって惚れると同じ感じなんですね。
とぼけてるところに惚れ惚れしている、
そんな岸本さんのエッセイです。
死ぬまでに行きたい海をご紹介していきたいと思います。
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死ぬまでに行きたい海はエッセイ集になってまして、
赤坂三介、初代、富士山、カノッサなどなど、
地名ごとに1ペンずつになっている短いエッセイ集なんですね。
どれも書き出しが本当に引き込まれてすごくて、
書き出しだけで感激して前に進まないって感じです。
いやちょっと今大げさに言ったかな、そうです。
前に進んだから読み終えてはいるんですけど、
日によってパラパラと巡っては、
今日は書き出しだけ読もうとか、
締めの言葉だけ追ってみようとか、
そんな楽しみ方もできるくらいです。
ちょっと赤坂三介編の書き出しを読んでみようと思いますね。
大学を出てから勤めた会社は赤坂三介にあった。
6年半ほぼ毎日通ったその町に、
今もたまに行くことはあるが、
なるべく周りを見ないように下を向いて早足で歩く。
この町でやらかした自分の数々の失敗、失態、
かけた迷惑、書いた恥の記憶がわっとこみ上げて、
それが懐かしさとないまぜになって、
軽い目前を起こすからだ。
わかる、すごい。
町と記憶、特に苦い記憶ってありますよね。
皆さんにもこういう町、駅があるでしょうか。
学生のときちょっとだけ住んでた町とか、
自分の会社の所在地じゃなくて、
私の場合は営業のときに担当してたクライアントさんの会社がある町、駅とかありますね。
駅を降りた瞬間に、苦手だったこの通りって思ったり、
下を向いて歩きたくなるような通りがあったりしますよね。
文脈科の方って、これは深読みしすぎかもしれないんですが、
言葉のひとつひとつ、手におはのひとつひとつ、
選んだ意味があるような気がしてしまうんです。
この中で言うと、数々の失敗、失態、かけた迷惑、書いた恥ってすごくないですか。
数々の失敗、数々の失態じゃなくて、ここは数々を省略してて、
かけた迷惑と書いた恥は、書けたと書いた対応、こうしてるっていうところとかね、
軽い目眩を起こす、軽く目眩をじゃなくて、軽い目眩をっていうところがまたいいなと思ったり、
意味が通じればそれでいいっていうことではなくて、
字面とかテンポとか、あと英語だったりするとあるのかなと思うんですけど、
陰を踏んでるみたいなのが、一個一個の言葉に意味が、選んだ意味がありそうだなと想像させます。
それでなかなか前に進まないという。
好きなフレーズ、文章がたくさんあるこちらのエッセイなんですけど、
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私が一番好きな章はバリ島です。
バリ島へ行った理由を読むと、こんなふうに書いていらっしゃいます。
時代はバブルで、私は使い道のないOLで、誰からも必要とされず、社会のどこにも居場所がなくて、
なりふり構わぬ買い物だけが存在証明だった。
でもバリ島に行けば何とかなるらしかった。
私のようなものにすら、それは適応されるらしかった。
バブルを私自身は経験していないので、OLはみんなバリ島へ買い物をしに海外に行くみたいな雰囲気が、
ちょっとわからない部分もあるんですけど、
このなりふり構わぬ買い物だけが存在証明だったっていう文章を、すごいわかるなと思いました。
バリ島って、いちいち握ったりしないといけないとか、楽しんでいることを一緒に行っている人に証明するかのように、
銀細工とか、でかい家とか、木彫りのカエルとか、買ってしまうのがすごくわかりますね。
買い物だけが存在証明だったって、改めてすごい言葉ですよね。
さて、今日はこのバリ島の章から紙フレーズをご紹介したいと思います。
バリというところはね、その人に応じて一番必要とするものを与えてくれるところなの。
私も数年前に初めて、生まれて初めてバリ島に行ったんです。
ここに書いてあるように、開放的な南国の国っていうバカンスムードというよりは、
絵や神秘的なムードがあるのはなんとなくわかりました。
誰にとっても呼ばれてきた感がある島なのかもしれません。
何泊か泊まった、200名だったかなと思うんですけど、
一緒に行った人とディナーの後に少し飲みながら、
私が誰にも行ったことなかった、それまで誰にも話したことがなかった、
長年のわだかまりみたいな出来事を話したんですよね。
なんかすごくそれが印象に残っていて、今思えばそれもバリ島がなせる技だったのかもしれないと、
この本を読んでふと思い出しました。
バリ島に多分何人かで行っても、誰か恋人とかと行っても、
みんな違うものを持っていて帰ってくるのかもしれないという、このエッセイなんですけれども、
本ももしかするとそういうところがありますよね。
同じ本を読んでも、へーって思う箇所が多分人によって違うでしょうし、
私自身も同じものを何とか読んでも、読むタイミングによって、
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世界までは読み飛ばしてたようなところに目が止まったりとか、
パラパラと何度も見るのにとても良い本です。
この本は間にその土地とかエピソードにまつわる写真も挟まっていて、
それも見るたびに読むたびに印象が変わって面白いです。
ゆう子さん、今日は素敵なお便りとリクエストありがとうございました。
皆さんも最後までお付き合いいただきありがとうございます。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室はこんな感じで、
皆さんからのお便りをもとにしながら、
いろいろなテーマでお話ししたり、本を紹介したりしています。
みもれのサイトからお便り募集しているので、ぜひご投稿ください。
また来週水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみ。
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