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2021-01-27 14:00

【第43夜】『仕事の喜びと哀しみ』働く前に知っておけばよかったこととは?

この春から新社会人になるというリスナーさんのリクエストにお応えして、チャン・リュジンさんの『仕事の喜びと哀しみ』という短編集をご紹介します。アプリを作るスタートアップ企業に勤める主人公のアンリ、ちょっと怪しげなアプリのヘビーユーザーに会うことになって……というお話です。みなさんの「仕事の喜びと哀しみ」はなんでしょう?

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みもれ真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAウェブマガジンみもれ編集部のバタやんこと河童です。
おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになるおテーマに、
皆様からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
さて、第43夜をお届けします。本屋のお便りをご紹介します。
岡山県にお住まいのよくばりアールグレイさんよりいただきました。
バタやんさん、こんばんは。最近このラジオを知り、お世話になっている大学生です。
ありがとうございます。嬉しいです。
バタやんさんの声と紹介される本がとても素敵で癒されています。
私は卒業論文も提出し、やっと心に余裕ができたと落ち着いたのもつかの間、
春から新社会人になることを思うと、会社でうまくやっていけるだろうか、何か今できることはないだろうかと、
そわそわして不安がつきません。
そこで、バタやんさんがこれから新社会人になる人たちにお勧めの本や、
バタやんさんが自分が新社会人になるときに知っていればよかったなどの本がありましたら、
ぜひお聞きしたいです。よろしくお願いします。といただきました。
ありがとうございます。まもなくお卒業、そして新社会人おめでとうございます。
おめでたいけど、でもわかりますね。内定してから新入社員で初出社まで結構長くて、ひたすらそわそわしますよね。
今年は特に会社の人とか学校の人と会ったり眠いたりも少なかったでしょうし、
何か今できることはないかって焦りますよね。
そんな欲張りアールグレイさんに今日の勝手に貸し出しカードは、
チャン・リュージンさんの「仕事の喜びと悲しみ」という本にしました。
こちらは韓国の小説家による短編小説集なんですね。
もしかしたらご質問の内容からもっと仕事の心構え的なハウツーっぽい本を期待されてたんじゃないかなと思いつつ、
何か役に立つとかメソッド集とかそういう本じゃ全然ないんですよ。
でもあえてこれを紹介したいと思った意図と、どんな小説かこれからお話ししていきますね。
作者のチャン・リュージンさんは、1986年生まれ若い女性作家さんですね。
写真も載ってるんですけど素敵な女性です。
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2020年に韓国の若い作家賞というその名もズバリな賞を受賞されてまして、
「仕事の喜びと悲しみ」は8つの短編が収録されてるんですが、
2020年には書店員が選ぶ今年の小説部門というのにも選ばれているそうです。
韓国にも本屋大賞みたいなものがあるんですね。
表題作の「仕事の喜びと悲しみ」はどんなお話かというと、
キム・アンナさんという若手の社員の女性が主人公で、
彼女はITのスタートアップ企業に勤めてまして、
うどんマーケットというアプリを作っているチームに所属してるんです。
うどんマーケットって面白いですよね。
でも食べ物とはあまり関係なくて、
中古売買と市情報がセットになったようなアプリなのかな。
日本でいうとメルカリみたいなものですかね。
いらなくなった家具とか子供服とかを出品して、
欲しい人とマッチングするアプリのようです。
そのアプリのユーザーにカメの卵さんという方がいて、
その人がめちゃめちゃヘビーユーザーなんですよ。
キムアンナさんの会社からしたらとてもありがたいユーザーさんなんだけども、
あまりに次から次へと出品するから、
ランキングや新着のタイムラインがこのカメの卵さんが独占しちゃうし、
新品の家電とか人気のアイテムとかレアものをどんどん出品してるから、
この人どうしてこんなに出品できるんだろうっていう、
どうやって仕入れてるのかなっていう会社としては疑問が湧いてくるわけですね。
当品とかバッタモンの横流しとかだったら、
アプリ会社の理念としてはまずいわけじゃないですか。
だからアンナさんは会社の人に命令されて、
このカメの卵さんが出品したものを落札してあってみろって言われるんですよ。
このアプリ、送るんじゃなくてあって受け渡しができる仕組みみたいで、
それもちょっと独特で面白いなと思ったんですけど、
自分が命令されたらドキドキしますよね。
このカメの卵さんがヤバい人だったらどうしようって。
なんか殺されたりしたら怖いよね。
どうしてこの人こんなにたくさんの家電を出品できるのか。
カメの卵さん、会ってみたら女の人だったんですよ。
ちゃんとした感じの、その会ったシーンをちょっと読んでみましょうか。
ああいうのって全部どこで手に入れてるんですか。
カメの卵は黙って私を見つめた。
二人の間にしばしの沈黙が流れた。
彼女が先に口を開いた。
お腹空いてません?
えっ?昼ご飯まだでしょ?
私もサンドイッチ食べに行くところだったんだけど。
って言って、このカメの卵さんに
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何か食べながら話しましょう。
おごりますからと言われて誘われちゃうんですよ、ご飯に。
また結構ドキドキする展開でしょ。
このカメの卵さんが一体どうしてこんなに
出品をしているのかっていう真実が
ここのご飯で明らかになるんですけど
この後は結構意外な話で
予想と違う方向に進んでいくので
それは言わないでおきますね。
ぜひ読んでください。
この小説で何が言いたかったかというか
私が何を思ったかというと
会社に入るといろんな人がいるし
お客さんもいろんな人がいるよねっていうことなんですよ。
学校ってやっぱりある程度
その学校に入るってことは
住んでる地域だったりとか
育った環境とか親御さんの学歴とか価値観とか
もちろん本人の頭の良さ
美術が得意とかスポーツが得意とか
何かしら他の生徒さんとも
共通点があることが多いじゃないですか。
会社って同じ会社に入ったからといって
共通点がないことも多くて
ないことの方が多いかな。
会社に入ったことによって出会う取引先の人とか
お客さんもまた本当にいろんな人がいて
想像の範疇を超えてくるんですね。
アンナさんが想像していたカメの卵さんの
事情は想像を超える事情だったんですけど
そういうふうにお客さんにも
それぞれいろんな生活と育ってきた環境と事情があって
それって今まで自分が育ったものとは
想像つかないような世界が広がってきます。
それを楽しめるといいんですけど
大抵はえーって思ったりとか
なんでとか
なんでこの人こうしてくれないんだろうとか
理不尽に感じたり
そういう人と席を並べて仕事をしなきゃいけないとか
すごく常連のお客さんだから大事にしなきゃいけない
っていうことがいっぱいあるわけですよね。
私もなんか若い時から
いろんな人がいるんだなって
もうちょっと思えたらよかったなって思った次第です。
この本を読んで
自分の価値観とか今まで
親から習ってきたことだったり
考え方だったりがあっていて
その人の方が間違ってるって思ったりもしますけど
あるいはその人に理不尽にブチ切れられたりした時に
私のこれまでの全人生を否定されたとか
思わずにいろんな人がいるんだなって
思えたらよかったなっていうふうに思いますね。
この短編集は8つ入ってるって言いましたが
もう一つ好きな小説があるので
そちらを後半でご紹介したいと思います。
この8つの短編集のうちの
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最初に収録されている
幸せになりますというタイトルの小説がすごく好きなんですけど
タイトルから推測されるように
主人公の女性は間もなく結婚式が控えていて
会社の同僚たちをどこまで結婚式に招待するかっていう問題がありますよね。
同期の女の人が
韓国語で言うとオンニとかね
なんで私は招待してくれないのかとか言ってくるんだけど
その人とのメールを見返すと
3年前にやり取りしたくらいで
そんな仲良くないわけですよ。
なんかすごい距離詰めてくるなとか思ったら
どうやらそのオンニも結婚するらしい
結婚考えてるらしいっていうね。
そこからそのオンニの自己中な振る舞いというか
絶対仲良くなりたくないタイプだわって思うんですけど
結婚式のことで相談したいっていうオンニが言うから
主人公の女の子も時間作ってご飯食べたりお茶してあげたのに
おごってくれないのね。
そこはコーヒーをおごるとこでしょうみたいな。
わかりますよね。
ちょっとしたイラットが続くんです。
でも会社にもこういう人いるなと思ったり
同期にもきっといますよ。
その欲張り、アールグレイさんの同期とか
もしかしたら少し年上の先輩とか
特に結婚するっていう時が
その人とその人の価値観とか
人となりが出るというか
違いが出ますよね。
自分の親の価値観との違いとか
えーって思うことはいっぱいあると思うんですけど
いろんな人がいるんだなって思ってくださいと思いました。
さて今日はこの氷大作の
仕事の喜びと悲しみから紙フレーズを
ご紹介して終わりたいと思います。
余白には癖のある字でこう書いてあった
ありがとうございます。少なく働いて
多く稼いでくださいね。
これはこの中のセリフで出てくるんですけど
注釈があってそこには
韓国のミレニアム世代に流行っている表現
ライフワークバランスを重視する世代に
使われている言い回しらしいんですよ。
これから働こうという人に
そういうことを言うのも何なんですけど
もし仕事でいっぱいいっぱいになりそうな時があったら
少なく働いて多く稼いでくださいねって
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いい言葉だなと思って思い出してくれたらいいなって思いました。
あとこの本を書いたチャン・リュジュンさん
ご自身が大学を卒業してITベンチャーに就職して
仕事をしながらこの小説、短編小説たちを書いてたらしいんですね。
だからとっても中身もリアルな感じもするし
そうやって仕事しながら小説を書いて
本屋大賞とか新人賞を取るっていうこともあるんだなって
面白いなと思いましたし
会社とは別の顔というか
別の時間を持つっていうのもすごく大事だと思います。
星がいるとかね、そういうのでもいいと思いますし
こういう会社の人が絶対誰も聞いてなさそうなポッドキャストを
自分だけが帰り道に聞いてるとかもすごくいいと思います。
会社の人には言わない秘密の時間をどうぞ持って
健やかに働いてください。応援しています。
さて、今日はそんなところで
ライブまでお付き合いいただきありがとうございます。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな途中室はこんな感じで
皆さんからのお便りをもとにしながら
いろいろなテーマでお話ししたり、本を紹介したりしています。
ミモレのサイトからお便り募集しているので
ぜひご投稿ください。
また来週水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみ。
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