再生可能エネルギーと転職
真夜中の読書会おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは。第224夜を迎えました。今夜のお便りをご紹介します。
ペンネームハッピーフロスさんからいただきました。
バタやんさん、こんにちは。
こんにちは。私はバタやんさんの前のお仕事に近いファッションのPRの仕事を長くしておりました。
会社経営をいくつか移った後PR会社に転職。しかしコロナをきっかけにリストラに近いような形で退職。
今は友人の紹介で地元に戻って再生可能エネルギーの会社で働いています。
ああ、なるほど。もしかしたらお仕事でご一緒したことがあるかもしれないですね。
ちょっとそこは深掘りしないでおきましょう。
これまでの外資系ファッション業界の熾烈な競争やインフルエンサーとの調整の日々などに疲れていたこともあって、
今は地球環境の未来に向けて新しい会社の志にとても惹かれていますし、成長産業でやりがいも感じています。
ただ、ふとあの忙しかった頃を思い出してぽっかりと心に穴が空いたような空虚な気持ちになってしまう時があります。
今の会社の若手の後輩などを見ていると、今まで自分は何にしゃかり気に働いてやってきてたんだろうと落ち込むこともあります。
そんな気持ちで小説やドラマにも熱中できず、都心で働いていた頃のように映画館にふらっと寄ることもできません。
そんな私に何かおすすめの本はないでしょうかといただきました。
ポーリー・ブラウンの授業
ありがとうございます。
そうですか、すごい天気を迎えられたわけですね。
コロナという理由があったにせよ、ご自身で転換を決断されたわけですよね。
すごいですね、いいですよ、素敵ですよ。
再生可能エネルギーは私すごい興味があるんですよね。
ミモレの時にも取材させてもらったことがあって、
日本は国土は狭いし細長いですけれども、水も森も海も豊かじゃないですか。
でもなぜかなかなか進まない、難しいのは何でなんだろうという素人的な疑問で、
でもやっぱり調べれば調べるほど、発電コストの高さとか、
台風や地震がしょっちゅうある国であるということとか、
安定供給、エネルギーの安定供給ってすごい難しいんだなという、
自然由来のもので安定的に供給するというのがなかなか大変なことなんだなとか、
政治的な問題とかね、いろいろ制約があるんですよね。
今日はその話を深掘りするつもりじゃなかったんですけれども、
何でいろんな難しいことはあるけれども、乗り越えなきゃいけないことはたくさんあるけど、
必要な開発、開拓、普及であり、いろんな業界の方が今転職されて活躍されてますよね。
ありがたいことだなと思います。
さて、今日の貸し出しカードは小説にするかエッセイにするか、
いろいろ迷ったんですけれども、ストレートなタイトルをあえて一つ選んでみました。
今夜の勝手に貸し出しカードは、ポーリー・ブラウンさん著、
山口周さん監修、翻訳の、ハーバードの美意識を磨く授業という本にしました。
この本の著者、ポーリー・ブラウンさんは、メイン&カンパニーで戦略コンサルタントとして働いた後に、
エスティローダーとかエイボンの幹部を務められて、
LVMHモエヘネシール・イビトングループの北米部門の社長を務めた方なんですね。
その彼女が、ハーバードビジネススクールで、ビジネスと美意識について、
ビジネスにおける美意識の大切さについて講義をした、その授業をまとめた本になっています。
お便りをくださったハッピー・グロスさんにとっては、前の世界に戻るようなお話かもしれないんですけれども、
ファッション業界で培われてきたこと、PRの仕事を通じて多分自然と身についていることって、
これからの社会にとても役に立つ、ファッション以外の製品にもすごく役に立つんだよっていうことが書かれている本なんじゃないかなと思ったので、
この本を選びました。中身をご紹介する前に、
ただですね、ポーリー・ムラウンさんっていう方がこの本を読む限り、すごく面白い授業だったんだろうなって感じがするんですけど、
すごい切れ物で、本質をつかむことに長けていると思うんですよ。
いろんなブランドのエピソードを織り混ぜたお話も上手で、授業を受けてみたいなと思わせる本なんですけど、
ちょいちょい辛辣だったりするところも面白くて、特に美意識を感じない企業とか製品にめっちゃ厳しい、
価値のシフト
志がない製品とか企業にすごい冷たくて面白いんですけど、
ただもうもし自分の直属の上司とか自分の会社の役員とかだったりしたら、すごい辛いだろうなと想像しちゃいました。
もしかしたらハッピーヒローさんはこういう人いたとかいるよねって辛くなっちゃう、近すぎて、
記憶とつながって辛くなっちゃったら、読むのをやめてください。
私も胃がキューってなるところが何箇所かありましたね。
ブラダを着た悪魔的な世界観ですね。
ブラダを着た悪魔2をやるみたいですね。すごい楽しみ。
メリー・ストリープとアン・ハサウェイの撮影の新しいビジュアルがインスタで流れてきてすごい素敵だったので、
お二人とも年をあの当時から重ねてさらに素敵になって楽しみです。
話が逸れましたけど、そういうブラダを着た悪魔2みたいな完全にフィクションだと純粋に楽しめるんですけど、
大学の授業はノンフィクションだから、これを却下されたってことはやり直した人がいるんだろうなとか、
売れなかったってもう肝が冷えただろうなとか、いろいろ現場の人たちの苦労を想像して胃がキューってなっちゃいました。
そうしたトップファッション業界の舞台裏、エスティローダーグループのブランドを買収したりする話も出てくるから、
美容コスメ業界の変遷の話だったり、そういった華やかな世界の弱肉強食のビジネス面の面白さとは別に、
もちろんビジネス書としての魅力もあって、そこも解説しておきたいと思います。
この本は、世界のエリートはなぜ美意識を整えるのかという新書が大ヒットした山口周さんが監修されてまして、
冒頭に山口さんがなぜこれからのビジネスで美意識が大事なのかというのを簡単に解説されているんですね。
このプロローグ、冒頭部分を読むだけでも、結構この本を買った価値があったなって私は思いました。
ざっくりした私の解釈はですね、不便を埋めるっていう利便性を売りにする製品とかサービスはインフレで飽和状態で、
これからは機能的な価値、役に立つから、冗長的な価値、意味があるっていうのに価値をシフトしていく必要があるよっていう話なんだと理解しました。
さらに言うと、ブランド品を持つ、ブランドバッグを持つとかっていうのは承認欲求的な意味合いで高いお金を払うってよく言われていましたけれども、
今はこれからは承認欲求のさらにその次、自己実現的な商品になっていくよと解説されていて面白いなと思いました。
自分らしいを実現したいってことですね。こういうものを持っている私、こういうものを積極的に使っている私っていう部分に満たされる感じがあるっていうイメージでしょうか。
この2つの論点は、役に立つから意味があるにいくよっていうのと、こういうものを積極的に使っている私っていうところに価値を感じるよっていう話は
再生エネルギーにもつながるんじゃないかなと思ったんですよ。
機能的な価値、電気が使えるっていうことのその先に意味があるっていう選択があって、それを選んでいる私という充足感が、もしかしたらある価値としてあるのかなと思ったりして。
それ以外の産業、もちろん再生可能エネルギーとか以外の産業とかサービスとかブランドにも通じるものがありそうな本になっているので、もちろん違う業界の皆さんもぜひ読んでみてください。
美意識と実用性の両立
例えばですね、人が高いお金を払ってもいいと心よく思う時っていうのはどういう風に演出されているのか、それにはどう美意識が働いているのかっていう話だったり、実用性と美意識っていうのはどう両立させるのか。
アップルの新しい製品が話題になっていますけど、実用性を上げるってことと美意識的に許せる許せないみたいなのをどう両立させるのかとか、ブランドコードっていうのはどのように確立されていくのかなどが解説されています。
ちょっとそろそろ紙フレーズをご紹介したいと思います。
例えば、良い、美味しい、柔らかいといった形容詞は一般的だが、快活な、しょっぱい、ゼリー状のといった言葉はより具体的に情報を伝える。
あなたが選ぶ言葉はあなたの製品あるいはサービスを使う時の光景を彷彿とさせるものでなくてはならないとあります。
これはですね、言葉にできるというと法もない価値っていう章に書いてあります。
美意識っていうのは持っている、あるっていうだけではダメで、言葉にして表現して伝えないと意味がないわけですね、ビジネス的にはね。
具体性を持って伝えるっていうことがとても大事ですよと、曖昧さは許されないってあります。
こういうちょっと、とてつもなく重要な曖昧さは許されないっていう一言根押しする感じがちょいちょい怖いんですけども、
この言葉をハッピーフロッサンに送りたいなと思ったこと、言葉にできるっていうと法もない価値についてです。
美意識は多分、培ってこられたと思うんです、その前の業界で。
さらにそれを言葉にするっていう訓練も多分相当積んでこられたと思います。
美意識の影響
だからハッピーフロッサンのような方がこういう業界に来られたことは本当に意味があると思いますね。
ということで、よかったらぜひ読んでみてください。
ハーバードの美意識を磨く授業でした。
最後にもう一つ、これはちょっと自分自身への私の反省、自戒も込めてなんですけれども、
美意識っていうのはいろんなものの価値を上げてくれるけれども、高すぎる美意識は自分も周りも苦しめることがあると思っているんですね。
ポーリー・ブラウンさんの厳しさと一緒で許せないものがあるってことで、
それってすごい大事なことだし、ビジネス上の価値でもあると思うんですけれども、
許せないものがあるっていうのは自分も周りも苦しめることもあるっていうのをやっぱりちょっと考えなきゃいけないなと思っていて、
私も例えばなんかパーポの資料の文字の揃え方に規則性がないとか、変な色合わせだなとか、
この言い回しはどうなのかなとか、気になったらすごい気になっちゃうしイライラしちゃうタイプなんですけど、
でもそこを何度もやり直させたりするのはあまり意味がないというか、
例えば部員の人だったりとか、他の部署の人の資料に、
そういうことでイライラするのはあまり意味がないなと思ったりしていて、
無駄に嫌な思いをさせるだけかもしれないですね、やり直させたりすると。
伝えたいことは何か、この会議で通したいことは何かっていうのが、
全くできていればいいかと思うようになりました。
とはいえ気になっちゃう自分も大事にしておこう、否定もしないでおこうとは思っているんですけれども、
あんまりそこに自分の情緒的な労力を使わないでおこうかなと思っています。
すごい美意識、自分の美意識に守られた心地よい環境っていうのは、
私的なスペースで叶えればそれでいいと思うかなとか、
環境が変わられるとね、美意識の違いみたいなことも多分イライラしたり、
えーって思ったりすることもたくさんあるんだと思うんですけど、
きっとハッピーフロスさんも地元に帰られて、
えーって思うこともいろいろあるかもしれないですけど、
ぜひご自身の美意識を大事にしつつ、
それに自分も周りの人も苦しめられるほど気にせず過ごしていただけたらと思って最後にお伝えしました。
今日も素敵なリクエストありがとうございました。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
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お届けしたのは講談社のバタヤンこと川端理恵でした。
また水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。
おやすみー。