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2022-02-23 13:27

「誰がなんと言おうとも」なんて確信は持てなくて。評価と安心のお話【第97夜】

今夜は私が最近読んだ本の中からおすすめの文庫本を2冊ご紹介します。一つ目は奥田亜希子さんの『五つ星をつけてよ』。もう一冊は、山本文緒さんの『パイナップルの彼方』です。この二つの本にはある共通点があるのですが……。

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みもれ 真夜中の読書会 おしゃべりな図書室へようこそ
こんばんは、KODANSHAウェブマガジンみもれ編集部のバタやんこと川端です。
おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになる
をテーマに皆様からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
さて、第97夜をお届けします。
今夜は、私が最近読んだ本の中からすごくおすすめしたい文庫を2冊ご紹介したいと思います。
気軽に読めて、あんまり分厚くなくって、でも読むとじわじわといろいろ考えさせられるような2冊をセレクトしてみました。
1冊目は、奥田明子さんの五つ星をつけてよという短編集です。
もう1冊は山本文夫さんのパイナップルの彼方という長編小説ですね。
最近、文庫が新しくなったんですけど、その2冊をご紹介します。
この2冊の文庫にはですね、実はある共通点があるんですけど、その話はちょっと後半でお話ししたいと思います。
まずは、奥田明子さんの五つ星をつけてよという方の本を紹介します。
この表題作、五つ星をつけてよという作品がどんな作品かというと、主人公のえみさんは離婚して実家に帰っていて、母親の介護をしながら働いているんですね。
ネットのレビューとかをつぶさに見ながらネットショッピングするのを楽しみにしていて、家の貸し付きとか、ちょっと家の細々としたものだったりお洋服だったりを
レビューを参考にしながら、音がうるさくないかなとか、値段に見合っているのかなとか、チェックして買うっていうのが楽しみなんですよ。わかりますよね。
そのお母さんの介護を頼んでいるホームヘルパーさんがいるんですけど、その人すごく気立ても良くて明るくて、本人も気に入っているし、
えみさんも気に入っているし、お母さんもすごく信頼してて気に入っていて、うまくいってるんですけど、ある日、そのヘルパーさんを派遣している会社だったり、そのヘルパーさんについての悪い噂を耳にするんですね。
悪い噂を耳にしたところから、ちょっと気持ちが揺らいできて、気に入ってたからいいじゃんって思うんですけど、そんなちょっと疑惑というか、あれって思うことがあったところに、お母さんがちょっと転んでしまって怪我をされてしまったというふうにヘルパーさんから連絡が来るんですよ。
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あ、え?ってなって、さてどうかっていうお話です。どの先を言うとネタバレになっちゃうから、この辺で止めておきますけれども、この話の魅力は、みんな思い当たることがありそうじゃないですか、ヘルパーさんがいらっしゃらなかったとしても、何かね、ホームクリーニングのサービス頼んだりとか、
ベビーシッターさん頼んだりとかしたら、もちろんその人の評価が気になるでしょうし、この氷台5つ星をつけてよっていうのは、主人公のエミさんがいい評価を探し出したいっていう気持ちが現れた言葉なんですね。
ヘルパーさんに紙を留める紙ゴムシュシュみたいな飾りがついたやつを最初に褒められるシーンがあって、すごいおしゃれですもんねとか言って、いつも可愛いものを選んでらっしゃるみたいなことを言われるんですけど、それが最後効いてくるっていう感じで、
そんな伏線の回収も見事な、短いながらも鮮やかな短編になっています。
この氷台作の5つ星をつけてよ以外にも、ジャムの果てっていうね、ジャムを作っている子供たちに、離れて暮らす子供たちに送ったりして、そんな大量にジャムを送られても困るよとか言われるお母さんの話なんですけど、
これもなかなかグッとくる、ちょっと怖い作品になっています。ぜひ読んでみてください。
さて後半はもう一冊、山本文夫さんのパイナップルの彼方をご紹介します。
続いては山本文夫さんのパイナップルの彼方です。
この作品はですね、文庫の新しいバージョンが今年1月25日に出たばっかりなんですけども、もともと初出は1992年なんですね。
山本先生ってもともとはジュニア文学の出身で、聞いてくださっている方の中にも山本文夫さんといえばコバルト文庫で大好きだったっていう方もね、もしかしたらいらっしゃると思うんですけど、そのジュニア文学から一般文学っていうんですかね、大人向けの文学に転身された一作目がこのパイナップルの彼方なんですよね。
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この本、この小説、ドラマ化もされていて富田康子さんが主演をやってらしたという、1992年ってこんな感じだったのかと思ったのは、主人公が彼に電話かけたら、彼は寮に住んでるんですけど、寮に1台しか電話がなくて、
みんなで共同で使っている電話にかけて呼び出して出てもらうっていうシーンがあるんですけど、そうか、携帯がないって大変だなって、なんか改めて思ったりしましたけど、
主人公の女性はOLで、お父さんの子姉で信用金庫に入っていて、そつなく仕事もちゃんとやっていて、彼氏もさっき言ったようにいるし、上司のちょっと怖そうな女の先輩がいるんですけど、その人ともうまくやっているし、
友達もいて、友達はちょっと結婚し始めたりなんかしてるっていう、割と旬風満帆な感じなんですけど、ある日、三文っていう主人公の女性の部署に新入社員として同世代の女の子が入ってくるんですよ。
桃子ちゃんっていう彼女がちょっと結構自由な感じの人で、その子に振り回されたり、なんかその子と怖い女の先輩、あまり反りが合わなくてうまくいってなくて、
その子の尻拭いっていうか、先輩とその子の板挟みになったりしているうちに、ちょっと気持ち的にもしんどくなっちゃって遠景脱毛症になったり、彼とのことも結婚するのかしないのか、彼についていって一緒に住むのか住まないのかみたいな、いろんなことが起こってくるという話なんですよ。
時代がね、1992年と今だから、ちょっとその結婚を仕掛け終える的な感覚とかが今と少し違うなと思う部分はあれど、こういう子が部署に入ってきてなんかかき乱されたり、今までいい別に先輩も怖いけど、ちゃんとした仕事をしてくれる先輩だし、うまくいってたのに、
誰か違う人が入ってくることでかき乱されたり、この女の先輩もね、ちょっと隠していることがあって、自分が思ってた評価と違ったりするんですけど、そういうことってあるよなーって思って、本当に一気に読んでしまいましたね。
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これがそのジュニア文学から一般文学の一作目だったんだっていうことも感慨深く、素晴らしい才能で一般文芸に転身してくださってありがとうっていう感じで読みました。
今日はですね、「五つ星をつけてよ」の方の後書きから紙フレーズをご紹介したいと思います。
多くの作家はその人が書きやすい、好きなフィルターを通した世界を描いているのだ。もちろん私もそうだし、そうであることに善悪や優劣はない。しかし奥田さんはそのフィルター自体を取り除こう。
作家が一人の人間である限り生じざるを得ない視点の偏りさえも、なるべくなるべく整えようと心を配っているように感じる。
とあります。この解説はですね、作家の綾瀬丸さんが書いてらっしゃるんですね。最初にこの2冊の文庫には共通点があるんですってお伝えしたのは、どちらも解説を綾瀬丸さんが書いてらっしゃるという共通点でした。
本を読んだ後とか映画見た後とかにすごい面白かったなと思うと、他の人はどんなことを書いてるのかなって思ってレビューとか見るんですけど、2.8とか結構低い評価だとショック受けますよね。すごい凹んだりして、ああそうなんだと思って。
自分がいいと思ったからそれでいいじゃんって思うんですけど、やっぱり見る目がなかったのかなとちょっと凹んだりして、それはこの五つ星をつけてよの主人公の人とまさしく同じなんですけど。
でも小説読んだ後に面白かったなと思って後書きを読んで、後書きの絶賛の言葉に勇気づけられるっていうか、自分がいいと思ったのが合ってるよって言ってもらうような気がして、これもまた文庫で買う醍醐味だなって思いますね。
この綾瀬さんが奥田さんと山本さんをすごく素敵な言葉で褒めてらっしゃるんですけど、これを読めただけでも山本さんも買い直した甲斐があったなって思った文庫でした。
なかなか自分で確信を持って評価をしたりとかできないもんだなって思いますし、確信を持ってたとしても人の評価によって結構揺らいだりするよねっていう見察でした。
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このポッドキャストもね、スポッティファイとかアップルで聞いてくださっている方は評価ボタンがあったりするので、良かったら良い星をつけてもらえたら嬉しいです。
YouTubeとかだと、タレントさんだって芸能人の人だってグッドボタンとチャンネル登録よろしくお願いしますって最後に言ってるから、ポッドキャストも5つ星とチャンネル登録よろしくお願いしますって言わなきゃダメだなって思ったりしました。
そんな余談でしたが、今日も最後までお付き合いいただきありがとうございます。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室は皆様からのお便りをもとに色々なテーマでお話したり本を紹介したりしております。
みもれのサイトからお便り募集していますので、ぜひご投稿ください。
また水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。
おやすみ。
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