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2022-03-02 17:19

失礼な検温器。疎外感を与える「悲劇的なデザイン」とは【第98夜】

今日の勝手に貸出カードは『悲劇的なデザイン ―あなたのデザインが誰かを傷つけたかもしれないと考えたことはありますか?』です。怒りを煽る失礼なテクノロジーや、思いがけず悲しみを呼んでしまうSNSの仕様など、ユーザー側として嫌な体験したことがあるものもあれば、提供者として配慮が欠けていたかもとハッとさせられるものもありました。最近体験した自動検温器で凹んだことをちらっとお話しします。

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みもれ真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAウェブマガジンみもれ編集部のバタやんこと川端です。
おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになるをテーマに、
皆様からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、神グレーズをご紹介します。
さて、第98夜をお届けします。
今夜のお便りをご紹介します。ペンネーム、マサベアーさんからいただきました。
はじめまして。
僕はウェブのデザイン系の仕事をしています。
仕事中いつもスポティファイをかけっぱなしにしていて、
偶然このポッドキャストにたどり着きました。
女性向けのメディアなのかなと思いましたが、
思い切ってリクエストをお送りしてみますといただきました。
ありがとうございます。
バタやんさんはデザインやアート系の本は読みますか?
お気に入りの本や参考になった本などがあれば教えてください。
とのリクエストありがとうございます。
そうですね。
ミモレでこのポッドキャストをスタートしたよっていうアナウンスをしたので、
最初はほとんど女性の方が多かったんですけど、
同世代の女性の方が多かったんですけど、
最近は男性のリスナーの方も増えてきてまして、
あと大学生とか高校生とかすごい若い方だったりとか、
海外から聞いてくださっている方も増えてきています。
ありがとうございます。
ポッドキャストの配信プラットフォームによるのかもしれないんですけど、
いろんなプラットフォームがあるので、
性別として、
not specifiedっていうんですかね、
特定しないよっていう選択肢とか、
non-binaryっていう選択肢もあるようで、
読書会を聞いてくださっている方にはそういう方も多いです。
性別の選択肢という話に少し関連するんですが、
今日ご紹介する勝手に貸し出しカードは、
悲劇的なデザインという本にしました。
こちらの本、副タイトルは、
あなたのデザインが誰かを傷つけたかもしれないと考えたことはありますか?とついています。
そうなんですよ。
デザイン系の本は私もすごく好きで、
いろいろ読んだり、参考にしたり、
写真の本とかも好きなんですけど、
こういうふうにするとかっこよく、
おしゃれに見えますよっていうのを教えてくれる本はたくさんありますが、
デザインによって誰かを傷つけることがあるっていうことについて書いている本は珍しいなと思ったので、
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そしてすごく勉強になる、傷かされることの多い本でした。
どんな本か早速ご紹介していきたいと思います。
この本にどんなケースが紹介されているかをお話しする前に、
ちょっとひとつ私の話を聞いてもらってもいいですか?
でも聞いてるよってね、聞いてと言わなくても聞いてくださっていますが、
少し前にあるモデルさんか何かがインスタグラムで紹介していた、
ライフスタイルショップ、セレクトショップっていうんですかね、
オーガニックの食材とかヨガウェアとか、
食器とかそういうものが置いてあるようなショップを見かけて行ってみたいなと思って行ったんですよ。
それでちょっと結構遠かったんですけど、電車を乗り継いで住宅地の方まで行って、
そしたら入り口に最近よくあると思うんですけど、体温を測るサーモグラフィーの体温を計測する機械が置いてあって、
人型に自分の顔を合わせると、ピッて36度2分ですみたいな緑色が出たら、
手を消毒して中に入ってよしみたいなやつあるじゃないですか。
私すごく背が小さいんですけど、その人型の画角に自分が背が届かなくて、
下がったり近づいたり背伸びしたり色々したんですけど反応してくれなくて、
そうこうしているうちに店員さんが気づいてくれて、ちょっとその高さを下げてくれたんですけど、
その時になんかちょっと笑われたって思って、あの接客スマイルという意味で今思えば笑顔になっただけだと思うんですが、
なんかちょっと恥ずかしかったのもあって、笑われた、バカにされたみたいに思っちゃったんですよ。
なんとかお店に入れたし、素敵なものをたくさんあって欲しいなって思うものもいっぱいあったんですけど、
ちょっと気持ちがへこんでしまって、結局何も買えず買わずにトボトボと帰ってきたんですけど、
その時はちょっと忘れていましたが、後からこの悲劇的なデザインっていう本を読んだことを思い出して、
あれは悲劇的なデザインだったなって思ったんですよね。
そのお店のことを責めたいとか店員さんが悪いとかいうふうには全然思ってなくて、
人の形に合わせなきゃいけない高さが固定された計測の機械、
検音機のデザイン、インターフェースが悪かったなって思って、
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もっと離れた距離で測れる機械もあるし、最近は手を入れると手首で測ってくれるようなものもあるし、
ぴったり人形に合わせないと、おでこ合わせないと検音できないっていうこと自体がやや排他的ですよね。
私は一人で行ったんですけど、カップルでいらっしゃる人とか夫婦とかね、
あとお子さんと来てるとか身長が違う人と一緒に来る人の方が多いんじゃないかと思って、
どっちかが入れてもあれちょっと俺も高さが合わないみたいな、なりそうじゃないですか。
そうやってお店の人もお店側も全く意図しないところで誰かを排除されたって勝手に思ったんですけど、
モデルのような人じゃないとやっぱり入っちゃいけないお店だったのかとか、
ちょっとこう悪く悪く考えちゃう人もいるかもしれないしとか思って、
怒りっていうよりちょっとショックを受けたって感じなんですけど、
そういうことって結構あるんじゃないかなと思いました。
余談が長くなっちゃいましたが、この悲劇的なデザインという本に紹介されているのは、
怒りを煽るような失礼なテクノロジー、
ブブーってあなたが間違ってるとエラーがやたら出てくるとか、
すごい赤い字で書いてあって驚々しいとかもあるし、
あとは思いがけず悲しみを読んでしまうSNSの仕様の話があって、
それは確かに思い当たるところがあったんですけど、
Facebookとかで何年の思い出みたいにして、写真を勝手にまとめて出てくるやつがあるじゃないですか、
何年の思い出をシェアしようみたいな、
その時にこの本に出てたのは、お子さんが亡くなってらっしゃる方にもバーンってその子の顔が出てきて、
何年お祝いしようみたいなのが出てきて、すごい悲しい思いをしたっていう、
SNSとしては良かれと思って付けた自動的な機能が悲しい思いをさせちゃうって話が出てきて、
確かにね、お子さんが亡くなったとか言うだけではなくて、恋人と別れた、
その年はめちゃくちゃたくさん一緒に写真を撮ってた人とお別れしちゃったり疎遠になったりするケースも結構あるでしょうし、
それが自動的に何年の思い出とか言ってみんなにシェアしようぜっていう、
勝手に動画みたいなのにされて出てくると嫌な気持ちになるとかはありそうですよね。
あとはですね、この本で、そっかと思ったのは、結構な割合で色の判別が難しい方も世界的にいらっしゃるので、
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色が違うっていうだけで区別をしているつもりだとデザインとしては不適切で、
色も違うし点線と直線になっているとか、形も違うとか、色だけが区別の基準じゃなくて、
デザイン形も違う、書いてある文字も違うとかっていう風になっていると、色の判別が難しい人にも分かりやすいデザインになっているよ、みたいなことも書いてありました。
それからですね、パソコンを持っている、スマホを持っているっていう人が世界の何%か、国によっても本当に全然違うんだなっていうのもこの本で分かりましたが、
生活保護を受けたりとか、刑務所に入っている方と面接を申し込みたいみたいなサイトも、
例えばパソコンを持っていない人がウェブで申し込まないといけないとしたら、公共の図書館とか公共の場にあるパソコンを使わなくちゃいけなくて、
それだとダウンロードしたり、いろいろ個人情報を長々と入れなきゃいけなかったりとかっていうのはすごい不便だっていう。
そこがね、いろんな排除とか嫌な思いを生んでしまうっていうことは書いてあって、すごくなるほどなって思いました。
どういう人が使う人として多いのかっていうのはもちろんですけど、多くないけどこういう人もいるかもしれないっていうのは想像力だけではなかなか防ぎきれないかもしれないので、
これはやっぱりデザイナーさんだけじゃなくて、社会として学ぶ必要があることだなというふうに思いました。
さて、この本から今日は紙フレーズをご紹介したいと思います。
優れたデザインはユーザーの声に耳を傾け、ひどいデザインはユーザーを無視する。
優れたデザインは遠回りしてでも全員を幸せにし、ひどいデザインはビジネス目標を達成するために近道をする。
優れたデザインはデザイナーの視点にはバイアスがかかっているという想定のもとに作られ、ひどいデザインは全てのユーザーを代理しているという勘違いのもとになり立つというふうにあります。
結構厳しい言葉だなって思いましたけど、その通りだなって思いました。
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やっぱりみんなが使いやすいを目指すと、ビジネス的には遠回りになったりとかコストがかかったりすることが多いですよね。
こういう人にもこういう人にも使いやすいデザインにするって、デジタル的なインターフェイスだけじゃなくて、建築物とかそういうものもそうだと思うんですけど、
そしてきっと作った側も誰かを排除しようとか傷つけようという気は全然なくって、ユーザーを代理しているという勘違いっていうふうに書かれているんですけど、
私はこうの方が使いやすいからこうの方がいいだろうとか、小さい方が洒落て見えるからこうの方がいいだろうとか、黒よりグレーの方がお洒落に見えるからグレーの方がいいんじゃないか、
女性向けがこういう方がいいからこうがいいんじゃないかとかっていうふうに、ユーザーの人を自分の感覚、自分の使いやすいと思う感覚がきっと代弁してるって思ってしまうから、
そういうことが起きるっていう話が繰り返し書かれていて、それを避けるためには自分は全てのユーザーを代理していないから、ユーザーの話を聞いたりユーザーのテストをしたりとか、
いろんな人に意見を聞いたり使ってもらったりするのがいいよっていうことが書いてありました。
先ほどの検音の機械も多分高さを調整うまいことしたりとか、センサーがついてたりとか遠く少し離れてもちゃんと機能するって、
多分ちょっと開発費がかかるっていうか、物としても高くなっちゃうんだと思うんですけど、
遠回りしたり少しコストをかける必要があるところもあるんだなって思いましたし、私自身も勝手に排除されたとか言ってへこむんじゃなくて、
これじゃ高さが届かないって言ってあげればよかったかなってこの本を読みながら思ったりしました。
それは自分じゃなくて自分以外の人が使いやすい社会にしていくために、
これじゃ使えない、使いにくいですよって指摘することも、指摘し合うことも大事なのかなというふうに思いました。
もう一箇所だけご紹介します。
私にとってアクセシビリティとは単に障害のある人が使いやすいサイトを作ることではなく、誰にでも使いやすいものを作ることだというふうにありまして、
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障害のある人に合わせなきゃいけないとか、合わせていろいろ工夫しようってことじゃなくて、
誰にでも使いやすいものを作るってことがアクセシビリティが高いデザインだっていう考え方はすごい大事だなって思いましたし、
誰にだって障害ができることがあるじゃないですか。
ちょっと足を痛めてるとか、老眼的なことで言えば少し前までは小さい文字の方がかっこいいし、薄めの文字の方がかっこいいと思ってたけど、
今それがちょっと見えにくくなってるとかっていうのは誰にでも起こり得ることなので、
誰にとっても使いやすくて心地いいデザインを目指していくっていうことがこれからますます注目を集めるかなと思いました。
この本が出たのは2017年のことで、本国ではもうちょっと前に出たのかもしれないですが、早かった本だなと思いましたし、
2022年になってこの2017年の頃よりもっともっとインクルージョンが、意識が変わってきてるなというふうに思いました。
今日はこんな本をご紹介させていただきました。最後までお付き合いいただきありがとうございます。
リクエストありがとうございました。これからもぜひ聞いてください。よろしくお願いします。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室は皆様からのお便りをもとに、いろいろなテーマでお話したり、本を紹介したりしております。
ミモレのサイトからお便り募集していますので、ぜひご投稿ください。
また水曜日の夜にお会いしましょう。おやすみなさい。おやすみ。
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