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2023-09-06 13:33

上野樹里主演で映画化!『隣人X』に見る「排除されたくない不安と差別の本質」

今夜の勝手に貸出カードは、パリュスあや子さんの小説『隣人X』です。
上野樹里さんと林遣都さんの共演で映画『隣人X -疑惑の彼女』として2023年12月1日に公開予定!
宝くじ売り場とコンビニ店員のバイトを掛け持ちする柏木良子役を上野樹里さんが演じると聞いて、今からとても楽しみです。

ミモレの記事はこちら→理解できないものを排除したい本音。小説現代長編新人賞『隣人X』が描く現代のモヤモヤ
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真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAのバタやんこと川端です。
真夜中の読書会、おしゃべりな図書室では、
水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになる、をテーマに
おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
第147夜を迎えました、今夜のお便りご紹介します。
ペンネームあやこさんからいただきました。
こんにちは、毎週楽しく聞いています。
もともと本を読むのが好きで、新しい本を知るきっかけとして聞き始めました。
ありがとうございます。
私は今海外で生活していて、こちらでの生活も10年経ちました。
今30代半ばに突入しましたが、ここに来て急に今後の見通しが聞かなくなったような、
今後どう生きていこうか悩むことが増えました。
ミドルエイジクライシスもあるのかもしれません。
仕事の内容は好きなのに、お給料が低いことや、
プライベートもうまくいっておらず、生活を大きく変えたいと思いつつも、なかなか踏み出せずにいます。
引っ越しや転職を考えてみても、リスクの方が目に行ってしまって、
思いきれずずっと生活が停滞しているような感じがします。
とても抽象的かと思いますが、このような状況によんだら納得できたり、
すっきりできたりするような本を知りたいです。よろしくお願いします。
といただきました。
海外から聞いてくださってありがとうございます。
そんな綾子さんへ、今夜の勝手に貸し出しカードは、
パリウス綾子さんの隣人Xという小説にしました。
パリウス綾子さんという方はですね、横浜市生まれの日本人なんですが、
フランスに留学後、フランス人の方と結婚して、
パリに移民として定住するようになったという方で、
綾子さんと、どっちも綾子さんでややこしいですが、
お便りをくださった方の綾子さんと、もしかしたら境遇が似ていらっしゃるかもしれないなと思って、
今日ご紹介する隣人Xという作品で、
パリウス綾子さんはですね、講談社の小説現代長編新人賞を取られているんですね。
それでそのこの本が単行本になったタイミングで、
私は見漏れでパリウスさんにインタビューをさせていただいたことがあります。
その時の話がとっても印象に残っていて、
綾子さんのお悩みというか、もやもやに通ずるところがあるんじゃないかなと思って、
今日はこの本にしました。
どんな小説かご紹介していきたいと思います。
まずはその見漏れでの2020年9月のインタビューで、
概要欄にリンクを貼っておくので、よかったら記事も見てみてください。
03:05
パリウスさんはその小説を書く賞を受賞する前にですね、
大学を出て一度会社員になっているんですが、大学院にもう一回行って、
そして今度は派遣社員として働きながら脚本を書いていたという経歴がありまして、
フランス人の方と結婚して、
フランスに移住した時の当初の苦労をそのインタビューでこんな風に語ってらしたんです。
海外に移住して言葉がうまく話せないと、結局は日本食レストランの休事といった仕事しかできません。
私自身も何でもいいから働かなきゃと焦ってサービス業に就いたことがあるんですが、
雇用主にあいつは何言ってもわからないみたいな扱いを受けて、
それくらいの言葉は私でもわかるしってことを目の前で言われたりするんですよ。
日本にいたらもっと良い条件の仕事も見つかるのに、ここでは最低賃金すら得ることが難しいというようなお話をされてまして、
こういう自分が移民側を経験したパリスさんの実体験と、
なんとなくバカにされたような下に見られているような悔しさだとかを乗り込みながら、
3人の女性の生き方を描くサスペンス近未来SF小説とでも言いましょうか、
に昇華させたのが隣人Xなんですね。
SFって思われるかもしれないんですけど、どんな話か簡単に説明しますと、
3人の女性が主人公なんですね。
1人は大企業で派遣社員として働く土止め沙穂さん、
2人目は宝くじ売り場とコンビニのアルバイトを掛け持ちしている柏木涼子さん、
そしてベトナムからの留学生のグエンチリエンさんというこの3人が暮らす日本では、
ちょうどですね、宇宙からの難民受け入れ問題というのが世界的な問題になってまして、
宇宙で大きな抗争戦争があって、そこから避難してきた宇宙生命体のことを惑星難民Xと名付けているんですが、
その生命体はある生命の平均値をコピーできるスキャンできるという力があって、
スキャンすると日本人なら日本人と全く見かけ上区別がつけられないような人間になれちゃうんですね。
その難民Xたちをアメリカは受け入れますといち早く宣言したもんだから、
日本も受け入れますっていう法案が通っちゃって、
マイナンバーも与えて日本人国籍で日本人と同じように暮らせるようにしますってなるんですけどね、
当然のように国民から反発があって、口では隣人を愛せ的なことで平等に暮らせる社会にといっても、
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内心はXに対するちょっとした気持ち悪さはあるわけですよね。
隣人難民Xの特徴とはとか、うさんくさい記事も含めて、
惑星難民探しの報道とかSNSとかが加熱して盛り上がっているわけなんですよ。
またその反動で、私はXですというカミングアウト、X to me toならぬX to運動が流行ったりとかして、
このあたり小説の設定としてはかなりとっぷりな宇宙人が人間のようにの姿をして暮らしているという設定なんですけど、
すごくリアルですよね。ありそう、そうなりそうじゃないですか。
日本とかアメリカが受け入れますって宣言したら、受け入れます、マイナンバーも与えますって言うんだけど、
とはいえみたいな気持ちがあって、皆さんの差別というか本音のところの気持ちでザワザワするわけですよ。
そんな中で就活がうまくいかなくて、派遣社員となって働いている佐藤さんも、バイトを掛け持ちしている涼子さんも、
言葉の壁で不遇な扱いを受けるベトナム人のリエンさんも、メインストリームと言いますか主軸からは少し外れたところで生きているような感じをそれぞれに思っていて、
だけどじゃあ平均値をスキャンした難民Xと自分とどっちがメインストリームなのっていうね、
どっちが中の人でどっちが外の人なのかっていう話ですよ。架空の設定のSFで包んで、
少しフェミニズム的な要素がある話でもあるし、差別とか国際問題、政治の話でもあるし、それぞれの生きづらさの話でもあったりするっていうね。
よくできた小説なんですよね。今回2020年のインタビューをした以来、久しぶりに読み返して、コロナとかいろんな中で誰か疑いの目で見たりとか、
外の人を排除したい、コロナの疑いがある人を排除したい、みたいな気持ちを普通の人に対しても思ったりした経験がみんなあるから、あり得る話だなって思ったりはしましたね。
今日はそんな隣人Xから神フレーズをご紹介して終わりたいと思います。
意見を主張できる女性は偉い、強い、しかしリョーコは自分がくだらない弱い人間であると諦めていた。
09:03
同じ女性というカテゴリーにも様々な人間がいるのだと言いたい。
自分のような人間がささやかに、ひっそりと、物言わず生きることを許してほしい。
というのがリョーコの箇所なんですけれども、少し先にサオさんの箇所もあるので合わせて読みたいと思います。
サオは、惑星難民Xに関するあらゆる情報に触手気味であった。
だが、あえて考えることを避けてきたこの問題にも向き合うべき時なのかもしれない。
まっすぐ家へと帰りながら、20代の日本人平均情報をスキャンさせられた惑星難民Xの仕事について考えた。
彼らもまた派遣社員になったりするのだろうか。そう思うとおかしくて不憫だった。
不憫。その言葉がサオ自らを傷つける。惑星難民Xは26歳の平凡な自分と何が違うというのだろう。
サオは自問する。自分はかわいそうで不憫なのだろうか。そんなことは断じてなかった。
強くて主張する。カミングアウトしたり自分の意見を主張するのがいいというふうには一概には言い切れないし、別に言わなくても許されたいなという気持ちはよくわかりますよね。
そしてその難民Xの話に触手を気味でありながらも、じゃあ彼らが不憫なのか、そうするとその人より下かもしれない自分はもっと不憫なのかとか考えたりするわけで、とはいえそんなことは断じてなかったっていうところがいいなと思って。
この女性3人の少しシスターフット的なところもあるので後半はちょっと明るいところが出てくるんでそこまでぜひ楽しみに読んでいただければと思います。
この小説すごいねサクサク読めるんですよね。SFか宇宙人の話か無理かもって思わずにぜひ手に取って読んでみてほしいなと思いました。
そしてこの隣人Xはなんとなんと映画になってこの12月に公開予定なんですよ。主演は上野樹里さん、そして林健人さんが共演なんですけども、3人の女性のうちの柏木良子さんを上野樹里さんが演じるんですって。
惑星難民Xの記事を書こうとしてスクープを狙う記者の役を林健人さんがやられるということなので、良子さんの話に多分フォーカスしていくんでしょうね。きっとこの2人の関係性に割と絞って描かれるのかなと想像しますが、
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これ講談社の作品なんで今日はちょっとかなり宣伝っぽくなっちゃいましたが、私もまだ試写とか見たわけじゃないので予想で喋ってますけど、少し設定を変えたり小説とは違う登場人物があったりするんじゃないでしょうか。すごく楽しみにしています。
ぜひ小説読んでから映画を見てほしいなと思いますが、綾子さんのお悩み、もやもやがスパッと解決するかというと、そういう話ではないかもしれないんですけれども、共感するところがあるかもしれないなと思って選びました。
そしてこう喋っている私も、もしかしたら自分が自覚してないだけで、惑星難民Xかもしれないじゃないですかっていうカミングアウトをしたところで、今日は終わりたいと思います。
さて、今夜もお時間になってしまいました。
次回の読書会おしゃべりな図書室は、リスナーの方からのお便りをもとにおすすめの本や漫画をご紹介しています。
インスタグラムバタヨムからメッセージをお寄せください。
それではまた来週水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみ。
13:33

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