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2020-03-30 11:35

【第2夜】現実がシビアすぎて物語が頭に入ってこないときに読みたい本

現実は小説よりもシビアで……長引く不安定な状況の中、心が疲れたときに読みたい本をご紹介します。今回取り上げるのは、社会学者・岸 政彦さんの『断片的なもの社会学』です。  

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みもれ真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、ナビゲーターの高段者ウェブマガジン、みもれ編集部のバタやんこと河童です。
おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホットで来て明日が楽しみになるをテーマに、皆様からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
さて、最初のコーナーに参ります。
おしゃべりな図書室、勝手に貸し出しカード〜。
こちらのコーナーでは、皆さんからいただいたお便りをもとに、みもれ図書委員のバタやんが勝手におすすめの本を選んで貸し付ける、というコーナーです。
さて、今夜のお便りをご紹介します。
千葉県にお住まいの赤月さん。
私はバタやんさんよりかなり年上ですが、バタやんさんの文章にかなり励まされています。
わー嬉しいなー。ありがとうございます。もっとたくさん書いてください。
はい、おしゃべりに逃げてすいません。ブログも書きます。
さて、赤月さんのご相談を読ませていただきますね。
私は就労支援の仕事をしています。主に就職活動をしている人の相談に乗ることが仕事です。
時に相談者さんからこちらが想像もしていないような衝撃的なことを打ち明けられることもあるのですが、私としては真摯に寄り添って話を聞いています。
正直、仕事が終わって重い気持ちになることも時々あり、そんな時は読書をして自分の気持ちをリセットしているのですが、相談者さんの現実があまりにもリアルで、どんな本を読んでもこれは物語だからと思ってしまうのです。
最近も本屋さんへ行き、いろんな本を手にしたのですが、どの本も今の気持ちにマッチする本がありませんでした。
この仕事を始めてからは、読書といえば仕事に関するものが多くなり、たくさんある小説でも何を読んだらいいのか、バタヤンさんにご相談したいですという頼りをいただきました。ありがとうございます。
大変なお仕事ですね。岡月さんのお仕事の大変さとは比べ物にもならないのですが、
私はこの数年、うちの会社の採用面接の面接官をやっていまして、今年初めてオンライン面接というのだったんですよ。このご時世で。
オンライン会議をされている方もいらっしゃると思うのですが、ちゃんと聞こえているかが不安になるじゃないですか。
だからうちの人事部から普段よりもオーバーリアクションで、もがらかにお願いしますと言われていたのです。
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それで学生さんたちも不安かなと思って、それはすごいですねとか、今のはいいアイディアですとか、笑うときもクラップハンズというんですか、
外国人みたいに手を叩いて笑ったりとかしてたら、なんかちょっと自分のキャラがよくわからなくなってきちゃって、
私普段はすごくリアクションが薄い方なんですよ、多分。編集部の人とか知っている人が聞いたら笑っていると思うんですけど、
だからそのリアクションを聞くとって言ったら、オンライン会議、ゲスタルト崩壊みたいなことが起こっちゃって、自分の輪郭を見失うみたいな感覚ですよね。
1日が終わったらもうぐったり疲れて、それこそ赤月さんがおっしゃる通りで、小説を読む気にもならず、
ネットフリックスも、今二永美香さんのやつを見てるんですけどね、全然頭に入ってこなくて、
ゲームもすぐゲームオーバーしちゃって、でも頭が覚醒しちゃってるからちょっと寝れないんですよね。
そんな時に読んだ本をご紹介したいと思います。
岸政彦さんの断片的なものの社会学という本です。
これは社会学者の岸政彦さんが実際に出会った解釈できない出来事をめぐるエッセイなんですね。
様々な出来事やエピソードがそれこそ断片的に描かれていて、
それが称号とに串刺し団子みたいな、一つのテーマで串刺されるような、そんなカタロシスがある本です。
これは私はパッて開いたところのエピソードをランダムに読み始めるっていう感じで何度も読んでいます。
どこから読んでもいいし、どこでやめてもいいっていうところが気に入ってるんですけど、
何回読んでも、あれこのエピソード私読んだかなって思うのと、
読む時によってそのエピソードの印象が違うところが面白いなと思っています。
具体的にちょっと一つご紹介しますね。
大学生が主催する戦争体験を語り継ぐ会に、著者の岸先生は司会で呼ばれた時の話なんですけど、
戦争を体験したご年配の方が語り目となって、悲惨な戦争体験を語るんですよ。
友人が目の前で死んでいったっていうようなくだりで、涙ながらに語っている時に、
運営側の学生さんが、あと20分ですっていうカンペを出しちゃうんですよ。
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それでおじいさんの話がピタッと止まっちゃって静寂が訪れると。
後で岸先生が、あそこでカンペ出したらあかんよって学生に言ったっていう話が載ってるんですね。
最初読んだ時は、学生さんに読まえって思ったんですけど、
別な時に読むと、このご老人の人はきっと何十回も何十回も、
もしかしたら100回くらい同じ話をいろんなとこで喋ってて、
このシーンで泣くっていうくだりも込みで、体に染み込んだダンスみたいになっていて、
リズムが狂ったから止まっちゃっただけで、
すごい腹を立ててるとか、そういうことでもないのかもしれないなと思ったりして。
あとは本当はあと20分どころか、もっとオーバーしてて、
学生さんも真面目だから、もう言わなきゃってずっとテンパってたのかもしれないなとか、
先生にたしなめられちゃって傷ついたかなとか、その学生さんに対して思ったり、
なんかその読むタイミングによって誰への立場に思いを寄せるかみたいなのが変わる本なんですよ。
私も昼間の会議で例えば、それ今言わなくてもいいのにって思ってイラッとしたこととか思い出したりして、
でもその人ももしかしたらずっと我慢しててやっと言ったのかもしれないとか、
昼間あったそういう現実のことと、読んで出てきたエピソードを行ったり来たりしながら、
眠くなったらパタンと閉じて寝るっていう、そんな本です。
この本の中から一つ紙フレーズをご紹介したいと思います。
ある種の笑いというものは、心の一番奥にある暗い穴のようなもので、
何かあると私たちはそこに逃げ込んで、外の世界の嵐をやり過ごす。
そうやって私たちはバランスを取って過労死で生きている。
これはこの本の中の笑いと自由っていう章に書かれている文章なんですけど、
女性の議員がひどいセクハラやじを受けた時とか、
理不尽な状況にある時とか、また私たちはひどい話を聞いた時なんかに、
みやと思わず笑っちゃうと聞いてありますよね。
不謹慎、じゃあ不謹慎なんですけど、
そういう笑いは心の一番奥にある暗い穴っていう表現が絶妙だなと思っていて、
そこへ逃げることは悪いことじゃないし、
防御本能なんじゃないかっていう話なんですけど、
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今日の自分の格好悪かった何かとか、
今日の辛い聞いた話とかをちょっとにやっと笑っちゃうっていう、
それもまた自由だよっていう話でした。
もともと赤月さんのリクエストは小説っていうことだったんですけど、
騎士さんは小説の書かれていて、最新作はまさに図書室っていうタイトルの、
図書室で出会った少女と少年の話って、
その前に出された本はビニール傘っていう小説なんですけど、
それもすごくいいです。
小説ってストーリーを追わなくちゃいけないとか、
登場人物の名前と人間関係を覚えなきゃいけないとか、
そういうことが時にプレッシャーになったりすると思うんですけど、
キッサンの小説はエピソードが断片的で、
回想シーンと今の描写がシームレスにつながってたりして、
普通そういうのって行間が空いてたり、章が分かれてたりすると思うんですけど、
それがないんですね。
だからちょっと今誰の話、いつの話ってなったりするんですけど、
そこもまた疲れた頭にはちょうどいいなと思っています。
そんなふうに知らない人のエッセイを先に読んで、
気に入ったら小説を買うみたいな買い方をして、
新しい作家さんを見つけることもあります。
今回お便りをくださった赤月さんには、
断片的なものの社会学をプレゼントさせていただきます。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会、おしゃべりな図書室はこんな感じで、
赤月さんからのお便りをもとにしながら、
いろんなテーマでお話ししたり、本をご紹介したり、
緩やかにやっていきたいと思います。
また来週水曜日の夜にお会いしましょう。
今日は最後までお付き合いいただきありがとうございました。
おやすみなさい。おやすみー。
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