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2021-11-10 11:04

褒め言葉が「期待に応えたい」呪いになる?【第82夜】

「最近のおすすめのイヤミスを教えて」というリクエストにお応えして、真下みことさんの『あさひは失敗しない』をご紹介します。後味が悪いとわかっていてイヤミスに惹かれてしまう理由とは……。失敗しないあさひちゃんの大失敗にみんなで驚愕しましょう。

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みもれ真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAウェブマガジンみもれ編集部のバタやんこと川端です。
おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになるをテーマに、皆様からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
さて第82夜を迎えました。今夜のお便りをご紹介します。
ペンネームロックマンさんからいただきました。
バタやんさん、はじめまして。こんにちは。
こんにちは。このポッドキャストを最近知りました。
さかのぼって全部聞きました。ありがとうございます。
私は、港カナエさんや沼玉ホカルさんなど、イヤミスと呼ばれるジャンルの小説が好きです。
でも最近はあまり読めてなくて、バタやんさんはイヤミスはお好きですか?
最近のおすすめがあれば教えてくださいといただきました。
ありがとうございます。イヤミスね、好きですよ。大好きです。
大好きっていうのも何かな?
イヤミスってなんだろう?と思って一応調べてみたら、特に後味の悪い、読み終わった後の読語感の悪いミステリーのことを言うって書いてあったんですけど、
私は後味だけじゃなくて、読んでいる途中もゾワゾワするようなものをイヤミスって言うのかなって思ってました。
でもなんで好きなんだろう?イヤミスがあって、ちょっとこのお便りをいただいて改めて考えてみたんですけど、
後味悪く終わるっていうことが現実の社会では難しいじゃないですか。
日々の生活は続いていくから、例えば職場とか学校関係だったり、ママともとかですごく嫌いな人がいたとしても、後味悪くばつっと終わるっていうことが難しいですよね。
大人だから折り合いをつけてうまくやっていくしかないというか、
殺すまでいかないにしてもそれはまずいけど、裏切ったりとか仕返しをしてやったりとかね、
二度と会えないような状態でばつって終わるっていうことが現実はできないから、イヤミスを読むと逆にスッキリするのかもしれないなぁって思ったりしました。
さて今夜の勝手に貸し出しカードは、真下美琴さんの朝日は失敗しないという小説にしました。
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どんな小説かご紹介していきたいとおもいます。
さてこの著者の真下美琴さんはですね、1997年生まれとあって、最近じゃないと思ったんですけど、
大学、在学中にメフィスト賞を受賞されたっていうことで、
いやー新しい才能きたーっていう感じの興奮とともに、この朝日は失敗しないを読みましたけれども、
この朝日は失敗しないの主人公はタイトルにあるように朝日ちゃんって大学2年生なんですね。
お母さんのことが大好きで、お母さんも朝日ちゃんに執着しているって言うんですかね。
帰りが遅くなるのが心配だからGPSをつけて場所を把握したりとか、異常なぐらい過保護なお母さんなんですよ。
まあちょっと独房屋というのか、過剰に保護する母親と娘の話はもちろん珍しくないというのがたくさんあると思うんですけど、
この小説の最初から引き込まれるところは、朝日ちゃんの側もちょっと変わってるなっていう、大学生にもなってねお母さんにGPSで監視されてて、
何とも思ってないっていうのもまたちょっと変わってるなっていう感じがするじゃないですか。
このタイトルにあるように朝日は失敗しないっていうのが、お母さんのおまじないのようになっていて、朝日ちゃんが不安に思うことだったりとか、
ピアノの発表会みたいに緊張を強いられる場面でも朝日は失敗しないからって言ってくれることでいろいろ乗り切ってきた。
先回り先回りして、お母さんがいろんな手を回してくれて乗り切ってきたっていうところがあるわけです。
そういう依存関係なんですね。
この朝日は失敗しないからって言ってもらって失敗しないっていうことを繰り返しているうちに、朝日ちゃんは小さな失敗をしたことがないまま大学2年生を迎えてしまったっていう感じなんですよ。
例えば飲み会でちょっとバカやっちゃうとか、みんなの前で恥ずかしい思いをするとか、男の子と遊んで売られたりとか、
そういう小さい失敗を経験することなく大学2年生を迎えてしまった朝日ちゃんは、なんとですね、友達の彼氏に必要以上に近づいてしまって、
ここで大きい失敗をするんですよ。それは言わないでおこうかな。
小さい失敗をしてないから、えーっていうことをやってしまうんですね。
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ここら辺から、お母さんもちょっと異常だったけど、朝日ちゃん自体が結構やばい子だねっていう感じが出てきて、
がぜん面白くなってくるって感じなんですけど、私の中では。
続いて第3ステージになると、りつこさんっていう友達が朝日ちゃんにいて、彼女は朝日のその失敗からの秘密を知ってしまうんですよね。
揺すりをかけるっていう感じかな。
すごい大きいお金を要求するわけじゃないけど、借りたくっていうか、ちょっと立て替えてもらってそのまま払わないみたいに、
こずるく朝日を利用し始めるんですよ。それがちょっとずつちょっとずつエスカレートしてきて、
りつこも結構やばい奴だなっていう。また怖い人3人目が出てきたぞってなってからが、
ホラーですかね。これはイヤミスというより、いや、ホラーな展開になっていきます。
この後、朝日ちゃんが何をしでかすのかは言わないでおきますけれども、
この朝日は失敗しないから、今日は紙フレーズをご紹介したいと思います。
お母さんの世界で私が失敗しないように。失敗した私を認められないのは私だけじゃなかった。
お母さんも私の失敗を認められない。いや違う。私の失敗はお母さんの失敗になる。
だからお母さんは私の失敗を認めない。私の育て方を間違えたと思わないために。
これはもうほぼほぼ終盤というところに出てくるんですけれども、
朝日ちゃんはこのお母さんの朝日は失敗しないっていう言葉がおまじないじゃなくて、
自分の呪いになっていたっていうことに気づくわけですね。
少し前に山内真理子さんにインタビューをさせていただいた時に、
山内さんが男の子が好きな理由を言ってくれるっていうのが、
それが好きな理由が逆に呪縛になっちゃう、呪いになっちゃうって話をされていて、
すごい面白いなって思ったんですけど、
嫌なところを言われるより、なんとかちゃんがこういうところが僕は好きだよっていう優しいところが好きだよとか、
いつも可愛い綺麗にしてるところが好きだよとか、怒らないイライラしないところが好きだよとか、
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言われれば言われるほどそれを裏切っちゃいけない、イライラしちゃいけない、怒っちゃいけない、優しくしてなくちゃ、
いつも可愛くいなくちゃ太っちゃいけないとかっていう風に呪いになっていっちゃうっていう話だったんですけど、
この話したかな?もしかしたらしたかもですけど、そういう風に褒められた経験がそれを裏切っちゃいけないっていう逆の呪縛になるっていうことってみんなあるなって思って、
この子の場合はお母さんを裏切っちゃいけない、失敗したらお母さんの失敗になっちゃうから絶対ダメだっていう風に思うことで、
隠して嘘をついたり、隠したり、隠したり、嘘をつくためにさらにまた悪いことをしてしまうっていうところが怖いお話だったんです。
ロックマンさんのお好みのイヤミスだといいなぁと思いながら、今日はこちらをご紹介しました。
ねえ、真下美琴さん、まだ大学生なのかな?次回作もすごく楽しみです。
今日は最後までお付き合いいただきありがとうございます。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室はこんな感じで、皆さんからのお便りをもとにしながら、いろいろなテーマでお話したり、本を紹介したりしています。
みもれのサイトからお便り募集しているので、ぜひご投稿ください。
また来週水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみ。
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