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真夜中の読書会おしゃべりな図書室へようこそ。こんばんは、KODANSHAのバタやんこと河童です。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになるをテーマに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
第133夜をお届けします。今夜のお便りをご紹介します。ペンネームアッシュさんから頂きました。
わたしは、今月から海外の大学に正規学生として通うことになりました。私は、紙の本派なので、持っていく本を厳選しないといけないのですが、なかなか決められず悩んでいます。
でもそれも楽しいです。バタやんさんなら自分を支えてくれる存在としてどの本を持っていきますか教えてください。向こうでも配信楽しみにしています。
いますといただきましたありがとうございます こちらですねお便りをいただいたのが1月のことなのでもう行っちゃってますね
行っちゃっているでしょうか取り上げるのが遅くなってしまって申し訳ないですね すごい悩んじゃいました
もし自分が海外に長期間行くことになって一冊だけ持っていくとしたら何にするか すごい悩みますね
皆さんはこれを聞いてくださっている方は今思いつくことがあるでしょうか そもそも何度も読み返すような自分を支えてくれるようなお守りっぽい本ってあるもの
ですかねどうでしょうか 海外に限らず新天地というか期待もあるけれど未知の世界へ不安な気持ちのまま
新しい環境へ行くとして私がたった一冊持っていくなら何からあってすごい悩んで 考えてこれかなっていうのを決めました
そんな今夜の勝手に貸し出しカードは二階堂奥羽さんの八本足の蝶にしました 二階堂奥羽さんというのはですね25歳の若さで亡くなった
自殺をされてしまったんですけれども女性の編集者さんなんですね 彼女が生前残していた日記ブログが八本足の蝶という名前でその時のペンネームが
奥羽さんなんですね この日記と生前親しかった人仕事関係の人の文章を一冊の方にまとめたのがこの八本足の蝶
という本なんです この本は本好きの間で熱狂的な人気があったというふうに聞いてますが伝説の本といった感じで
ポップラ社から2006年に初版が出ていて私が持っているのはその初版版なんですけれども 入手困難になっていました
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私もフル本で探して結構高額でこの初版版を買ったのを覚えてます それが実は2020年に川出書房さんから文庫で復刊したんですよ
この本が本屋さん書店員さんの間でもおそらくかなり人気があったんじゃないかなと 想像するんですけれども
復刊した当初は割と本屋さんで大きく扱われてたりしたのを私も結構見かけましたねというわけで 絶版に近い形だったのが復刊したので今もまだ
比較的手に入るんじゃないかなと思って今日ご紹介します 奥歯さんという人はですね大変な読書家でものすごい数の本を読んでいて
その書評も人気があったわけなんですけど 日記ブログの方は読んだ本の引用とか日常のこととクロスされた本の紹介
もしその当時にインスタグラムがあったとしたらインスタに載せる程度のなんというか パーソナルな日常の話と
書評がミックスになったようなブログですね これが本好きの間で人気があった特に書店員さんとか出版関係の人が彼女の感性に
惹かれるのはよくわかるといった感じで読めば読むほど 溢れるような感性と人間としての彼女の魅力に嫉妬さえ覚えるようなそんな本です
さて私がなぜこの本を知ったのかという経緯と そしてたった一冊持っていく本にどうして選んだのかという話をこの後していきたいと思います
この八本足の蝶という本を知ったのは先輩 編集者の先輩から八本足の蝶みたいだねって言われたんですよ
私がね 私自身が大学生の頃から書評ブログというほどではなかったですけど
読んだ本をおすすめの本を紹介するブログ ホームページみたいなのを作っていて書いていたんですね
出版社に入社して営業に配属になってからも続けていて 編集部はいくつか移動になったんですけど本名とは違うペンネームで
ひっそりと続けてまして ブログのプラットフォームはね最初はビッグローブかなんかだったんですけど
途中でエキサイトブログに引っ越したりとか まだアメブロがなかった時代なのでかなり html も自分で書いてカスタマイズしたりしながら
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アップしてましたね 霧版ゲットってわかりますか?アクセスカウンターをつけて霧版をゲットすると
ちょうどいい線とか pv がちょうどいい霧の良いところに止まると キラキラキラって画面がきらめくみたいな
仕組みをつけたりとかそういうカスタマイズをした サイトを作ったりしてましたね
でまぁ何度かそういうブログのプラットフォームを引っ越したりしながら ブログを続けてたんですけどね
まあそうやって密かに更新している書評ブログみたいなものがまあまあ人気があって 会社の人の中で私が書いていることを知っている人はごくわずかだったんですけど
その数少ないブログ読者の先輩が 川端ちゃんは八本足の蝶みたいだねって言ったんですよ
八本足の蝶って何ですかって聞いて 知らないの読んだ方がいいよって本になってるんだよ伝説の本だよって確か教えて
くれたんですよ あの
古本で探して結構な値段するなぁって思いながら買った記憶があります この二階堂奥歯さんという人は1977年生まれで私は79年生まれなのでまぁほぼ同世代
なんですよね 奥歯さんは25歳で亡くなっているっていうことに
読んですごくショックを受けましたし こんな風に本を愛して出版社に入って中野みどりさんとか小村広さんとか
お仕事をして認められていて仕事も恋人もいてすごく話の合うソウルメイトのような 書店員さんとの出会いもあったりなんかして
それでも死を選ぶっていう自らの死を選ぶという結末になってしまったっていうことに まあすごくショックを受けましたね
初めて読んだ時この人はこの後自殺してしまうんだっていうことがわかっていて まあ帯にも書いてあるしそれを先輩にも聞いてたんで
結末がわかっていながらその人の日記を読むっていうのはなんかすごくいけないことを しているような背徳感というか
見てはいけないものを見ているような気持ちになりましたけれども それから何年かして何回か折りに触れてパラパラと読んだり
読み替えしたりするたびにこの人はこのように文章を残すことができてそしてそれを たくさんの人に本好きの人に読んでもらえて良かったんじゃないかなと思えるようになり
この25歳の豊かな歓声のままコンプリートされたんだなっていう風に解釈をしましたね 私がこの本をたった一冊連れて行く本に選んだ理由は2つあるんです
一つはこの奥羽さんはとても柔らかい 豊かな感受性と人とか言葉への感性の鋭さを保ったまま
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25歳で止まっている この本の中で時が止まっているわけですよね
でも私は25歳のままでは止まっていなくて 年を重ねてどんどん鈍感になっている気がするというか
仕事をうまく回していくにはあと自分の心を壊さないようにするためには どんどん鈍感にならざるを得ないところがあるのかなと思うところがあって
いちいちどっぷり落ち込んだり熱を出したりしていられないというか 奥羽さんという人は気持ちのアップダウンを読む限りちょっと激しそうではありますし
割としょっちゅう熱を出したり転んで怪我をしたりしているイメージで あとお洋服とメイクも好きみたいなんですよね
多分すごくおしゃれな方だったみたいで デパートでお洋服を買ったり
化粧品売り場で新しいファンデーションを買ったり 少し吹き出物ができていることに悩んで違うブランドで化粧品を買ったりすることに
ワクワクしたりしている高揚感みたいなのを 日記に書いていらっしゃるところもあって
そういう感覚も含めてなんというか私はすっかり 摩耗しちゃったなぁって思うところがあるんですよね
最近はお洋服も化粧品もネットでポチって買うことが多くて デパートで買って丁寧に包んでもらって すっごいワクワク持って帰るみたいなのを
ちょっと薄れちゃってるとこがあって ファンデーションが切れそうだとか化粧水が切れそうだとかも
結構値段のするワンピースとかも 着丈何センチなら行けるだろうってネットでポチっと買って そしたらもう翌々日には届くみたいなことにすっかり慣れてしまって
そんな風にこなれてしまった自分の感性を この本読むと取り戻すみたいなところがありますね
この24,5歳の奥歯さんの日記を読むと 私にもこういう感じがあったのになぁと思ったりとか
するという意味で選びました そしてもう一つの理由は全く逆なんですけど
私この本を読んでも奥歯さんに似てるなって思うところはすごく少ないんですよ あと共感するところははっきり言って全くないって言うと言い過ぎだけど
ほとんどないんですね この奥歯さんに共感もしないし共鳴もしないっていうところを確認するために読んでるところもあって
ちょっと今までの話と矛盾するようなんですけど 例えばこの八本足の帳の中にはざっと買っといて300ぐらいの本が紹介されているんですけど
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ほとんど読んだことがない本ばかりで あとこの本何回も読んでいるのにこれを読んでから
この本買って読んでみようって思った本は一冊もなくてそのくらい趣味が合わないっていう すごくないですか
同じぐらいの世代で本好きでもこんなに趣味が合わないってことあるんだなっていうことにもびっくりしたりしますけれども
例えばですねこの日記の中に好きな本を3冊選べと言われたら私は次の本を選ぶ っていうふうに奥歯さんは書いていてどんな3冊かというと
ビトゲッシュタインの論理哲学論考と ホルヘルイスボルヘスの電気衆
ポーリーヌレアージュの王女の物語という 翻訳ものですね3冊をあげています
一個も読んだことないしあのどんな本なんだろうすごい読んでみたいとも思ってない っていう
まあそこもちょっと 面白いところなんですけどねこの日記の中で前半はさっき言ったような
少し買い物に行ったワクワク感とか
仕事の合間に神保町の古本屋さんに寄り道して サボってるっていうか会社に電話してあの
本屋を巡って戻ってこないみたいなまぁちょっと微笑ましいシーンもあったりして楽し そうに働いているんですけどだんだんまぁちょっと彼女
メンタル的にシンドそうになっていって熱を出したり体調が悪そうな 描写も続いていって後半の方はですねもうかなりの部分が本の中の引用だけになっていくん
ですね 奥歯さんの字の文がほとんどなくて何かの本から引用されてるんだけどそのどうして
この部分を引用してどういう気持ちでどういうことを伝えたくてここを引用しているのか とかはあまり書かれていないので
と想像するだけなんですけどその引用されている箇所を読んでも私も なるほどとか確かにとか思うところがほとんどなくて
なんでここを引っ張ったのかなぁとか どういう意味でこれをいいなぁって思ったのかなぁって思うだけっていう感じなんですよ
まあそれをもってして 私はやっぱりこの奥歯さんという人はすごいタレンティッドな人だったんだなぁって読めば読む
ほど思う ギフテッドな感性と言いますかちょっと超越したところがある人でその奥歯さんと
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自分は似てないっていうことを確認することでなんというか こんな言い方をしてはなんですけどホッとするところがあるという意味で
折に触れて読み返す本だという 2つ目の理由でした
今日は八本足の腸から紙フレーズをご紹介したいと思います 二階堂さんだったらこんな時なんて言うだろうとよく思う
彼女がいたら面白かったのになと思う 30代40代になった彼女と話がしたかったどんなに面白い魅力的なすごい人になったんだろう
今はまだ誰にも見えていない大切な価値観を彼女はきっとつかんだと思う 残念だ
こちらはですね本村博さんが2階堂奥歯さんに寄せて寄稿されている文章です 何人かの方がこの本の最後に寄稿文を載せられているんですけれども
私はこの本村博さんの文章が大好きで何回も読み返しています こんな風にこの人だったらなんて言ったかなって後になって亡くなった後で思い起こされる人っていうのは誰にとっても
一人二人はいらっしゃるかもしれないんですけど なかなかいないですよねそういう人に
なれたってことにすごくいいなぁとも思うし まあ私は本村さんのすごいファンなので軽く嫉妬を覚えるというか
感性の塊のような本村さんが二階堂さんだったらなんて言うだろうって 思い起こす人だったんだなということに
ジーンとくるものがあります ただこの前の下りが少しあって二階堂さんが
編集者としてね本村さんと仕事の打ち合わせに来た時に終わりがけに突然テーブルの上に水着を ポンと置いてこれから泳ぎに行きませんかって言ったっていう下りがあるんですよ
結構すごいすごいびっくりしますよね 水着をね出してきてこれから泳ぎに行きませんかっていう
やっぱり変わった人だったんだなって思うところもあるし そのエキセントリシティ全てにおいて本物だったっていう風に
本村さんは書いていらしてシンパシー以上にすごいソースに出会ってしまったという興奮も 大きかったっていう表現をされていて
すごいなぁと思ってそうかシンパシー以上にすごい人に出会った時の興奮っていう 褒め言葉があったかと思いました
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まあもし今この人が自分の後輩として編集者の後輩として部署に入ってきたり 新入社員として入ってきたりしたらちょっと扱い切れなかっただろうなって思うとともに
なんというか この素敵な本をたくさん作ったであろうにもったいないなという気持ちもしたりします
リクエストをいただいたところから随分と 話がそれてしまいましたけれどもペンネームアッシュさん海外で今は頑張っていらっしゃるでしょうか
一冊持っていくのにすごく共感する自分の気持ちに寄り添ってくれるような本を持っていく という手もあるし
逆になんというか自分とは共感しない本を持っていくことで 自分が変わってないこととか自分らしさが失われてないことを確認するっていう手もあるんじゃないかなと思ってご紹介しました
最後までお付き合いいただきありがとうございます 海外留学頑張ってください
さて今夜もお時間になってしまいました 真夜中の読書会おしゃべりな図書室はリスナーの方からのお便りをもとにおすすめの本や漫画をご紹介しています
インスタグラムバタヨムからメッセージをお寄せください それではまた来週水曜日の夜にお会いしましょう
おやすみなさいおやすみ