1. 真夜中の読書会〜おしゃべりな図書室〜
  2. この小説がすごかった!2022年..
2022-12-28 23:31

この小説がすごかった!2022年ベストブック5選【第117夜】

2022年も残すところあとわずか。毎年恒例となりましたバタやんの「ベストブック2022」トップ5を発表します! 2022年1月1日〜12月28日までに刊行された新刊小説の中から、これはすごいと唸らされた作品をランキング形式で一挙ご紹介します。

5位 『光のとこにいてね』一穂ミチ 

4位 『おいしいごはんが食べられますように』高瀬隼子 

3位 『春のこわいもの』川上未映子 

2位 『生皮 あるセクシャルハラスメントの光景』井上荒野 

1位 『八月の母』早見和真


番組へのメッセージ、ご感想、本のリクエストは、インスタグラムのアカウント@batayomu のDMよりお送りください。お待ちしております!

00:03
真夜中の読書会おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAのバタやんこと河童です。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室では、
水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになる、をテーマに
おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
こんばんは、2022年も残すところあとわずかとなりました。
毎年恒例となりましたベストブックを今日は発表したいと思います。
バタやんのベスト5を発表したいと思います。
こちらはですね、2022年の1月1日から12月28日まで
今年中に刊行された新刊小説の中から
ベスト5を選出して勝手に発表するものとなっております。
さて早速ですが第5位から発表したいと思います。
第5位は市穂道さんの光の床にいてねです。
これはですね、光の床にいてねっていうタイトルがもう
タイトルベストオブザイヤーですね。
タイトルだけで優勝してると思ってます。
誰かと待ち合わせをした時に相手が遅れそうで
どっか高いとこにいてねって言われたことがあって
着いたら電話するからどっか中に入っててっていう意味で
あったかいとこにいてねっていう言い方があってすごくいいなと思って
それと光のとこにいてねっていうのはちょっと似てるなって思ったのは
なんかその人のそばにいるわけじゃない感じがしますよね。
ちょっともしかしたら見えてない場所からその人に対して
光のとこにいてねっていうのは文字通り光が当たってるところにいて
っていう意味もあるし、さっき言ったようなあったかいとこにいてね
あるいはダークサイドじゃないところにいてほしいっていう意味とも捉えられて
そういう意味で光のとこにいてねっていうのは
自分がその人のそばに寄り添っているわけじゃないけど
その人が嫌な思いをしていたり
暗いところにいないでほしいなっていう意味で
何というか絶妙な立ち位置の深い愛情みたいなのを感じられる言葉だなと思いました。
この光のところにいてねという小説がどういう小説か簡単にご紹介すると
ある2人の女性、ゆずちゃんとカノンちゃんっていう2人の女の子なんですけど
最初は7歳、15歳、29歳と3つのフェーズにこの小説は分かれているんですが
03:00
その2人の女性がお互いに惹かれ合いながらもすれ違っていく
友情とも恋愛ともカテゴライズしがたい言葉にしがたい感情だったり関係性を描いた物語なんですね。
団地で出会う子供の頃とその後高校生になってから再会して
そしてまた大人になってから再会するっていう話なんですけどね。
いちほみちさんといえばボーイズラブの小説で
一大人気を築いている方が一般文芸でもスモールワールスで一躍有名人となり
またさらにガールズラブと言ってしまうとちょっと言い過ぎな気もしますけど
女性同士を描くとこういうことになるんだなというふうに思いました。
つい最近までサイレントっていうドラマを私もすごい楽しみに見てたんですけど
2人ともソウもツムギもお互いの言葉好きだって言葉を最初から分かっているのに
ずっとくっつきそうでくっつかないみたいな話じゃないですか。
そういうお互いの気持ちはもう明らかで分かっているのに
くっつきそうでくっつかないみたいなのを楽しむという意味で似てるなと思ったのと
結局付き合うか付き合わないかとか結婚するかしないかっていうことは
そんなに別に大事なわけじゃないんじゃないかっていうね
2人とそれを取り巻く人たちの会話を楽しむ小説でした。
そうサイレントがお好きなサイレントにはまった方はぜひ楽しんでいただけたらと思います。
じゃあ続いては2冊目に参ります。
2022年ベストブック第4位は高瀬潤子さんのおいしいご飯が食べられますようににしました。
こちら読んだ方はほとんどの人がこのタイトルとギャップとタイトルと想定がほっこりしているのに対して
中身がわりとシュールな感じなんで
そのギャップがすごいとかたまらないっていうようなことを感想としてお持ちになるんじゃないかと思います。
このおいしいご飯が食べられますようにはお仕事小説でもあり恋愛小説でもあるんですけれども
出てくるのは同じ会社に勤める女性2人と男性1人なんですよね。
どういうジャンルの小説かっていうのはちょっと一言では言い表しづらい小説なんですけれども
06:04
これは何というか純文学の新しいジャンルっていうかこういう新潮流みたいなものを感じましたね。
例えば音楽とかファッションとかってある一定のジャンルの人気が確定されると
似た系統のねが受け入れられることによって名前がついて
それが一つの一ジャンルとして確立されるっていうことあるじゃないですか。
うらはら系ファッションとか赤文字系ファッションとかシティポップとか渋谷系とか
わかんないですけど音楽的なところは詳しくないけど
その1曲が出た時はこれが何のジャンルっていうのは決められないけど
何曲かそういう同じ系統が集まってくるとある一定のジャンルとして新しく確立されるっていうのがあると思うんですけど
美味しいご飯が食べられますようには純文学におけるそういう存在になりそうな可能性を感じたといいますか。
何系って言うといいかな。なんかそのムカつくみたいな気持ちって小4ぐらいから
あの女の子ムカつくんだよなって思う子ってクラスにいて
そういう感情って多分大人になってもあんまり変わらなくって
このように知的でポップな感じに消化させて 文芸作品になると
こういう感じになるんだって思わされたという意味では
ムカつきポップみたいなジャンルだと思うんですけど
わかんないかな
なんか他にも出てきそうだなって思ったんですよね
特にこういうコロナ禍とかで
まあちょっと自分の中で
自分の中で自分の中で
人間関係とか交流がやや限定されて
少しこう
世の中に閉塞感があるときに
生まれてきた作品として
またこのちょっとこう
裏切りのある表紙
ほっこりした感じの表紙っていうのも
また一つの一ジャンルとして
確立するんじゃないかなと思って
真似する人にとっては
もちろん
もちろん
なかなか真似できる芸風じゃない気もしますけれども
そういう可能性を感じた一冊でした
芥川賞受賞作品で
今18万部から売れてるんですよね
すごいもう少しで20万部突破してしまいそうな
それもまたすごいことです
この先の作品も楽しみな
高瀬淳子さんの作品も
楽しみな
高瀬淳子さんの作品も
この先の作品も楽しみな高瀬淳子さんでした
ではでは続いて
第3位を発表したいと思います
第3位は川上美恵子さんの
09:11
春の怖いものです
こちらは心がざわつく
6つの短編が収められている
短編集になっております
表紙もすごく素敵な表紙なんです
枕が縦になってるのかな
意味わかんなさも含めて
気持ちがざわざわしますけれども
最初にご紹介した
市穂道さんの
光のとこにいてねは
タイトルも素晴らしいですが
表紙もまたとても綺麗な
人形に光が当たっていて
木漏れ日みたいなところに
立っている人形の表紙で
光のとこにいてねっていうタイトルの文字が
金箔の金の白押しになってるんですよね
白押しって結構印刷技術的には
高くつくと言われていて
白押しのタイトルにするってことは
すごく売れる自信がある本なんだなって
思うんですけど
私は勝手に
春の怖いものはですね
銀の白押しのタイトルになっていて
これも表紙がすごく完成されたデザインで
素敵な表紙ですね
この佇まいだけで
買う価値があるなぁと思わされるものでした
さてさて6編収められている中で
私が一番怖いなって思ったのは
娘についてという1編です
これはですね
かつて親密な関係だった
昔の友達への後ろめたい思いっていうかね
裏切ってたことがあったっていう
経験がある方は結構多いんじゃないかなと思うんですけど
急に昔の友達から電話がかかってくるっていうのが
嬉しいって思うタイプの人と
何?って思うタイプの人といるし
相手にもよると思うんですけど
過去自分がやってしまったことに
リベンジされるっていうお話なんですよ
怖いでしょ
自分がねやられてしまった
嫌な思いっていうのの
嫌さもあるけど
やられてしまったより
自分がやってしまった方の方が
なんかこう消化するきっかけがないという意味では
結構一番怖いんじゃないかなって思った本でした
さてそのまま続けていきます
第2位を発表します
第2位は井上アレノさんの新しい代表作とも呼べる作品
生川あるセクシャルハラスメントの後継にしました
これはですね小説の講座
セミナーを開いている人気講師が
12:02
セクハラで告発されるというお話です
被害者そして加害者であるその講師の側
それからその彼の家族
そして小説講座のその他の中高生たちの声なんかを
多面的に重層的に描く小説フィクションになっています
去年から今年にかけて
芸能関係とか映画演劇会で
ハラスメントの告発っていうのが
何個かニュースになったりしましたよね
こういう業界
芸能の業界が
そういうことが起こりやすい背景がもしあるとしたら
それは何だと思いますかっていうふうに
井上アレノさんにインタビューを見漏れでさせていただいたので
その時に井上先生に聞いてみたところ
その芸術的な作品っていうのは
割とこう人から向けるみたいな
なんかいろんな思いをして
ご自身の恋愛とかそういうことも含めて
いろんな思いをしたり
例えば脱いだりとか
そういうことで人から向けるっていう言い方をするじゃないですか
そういったことが若干この評価とイコールになりやすいがために
起こりやすいんじゃないかっていう話と
その場が作る空気感が
そういうのを起こりやすくしているんじゃないか
っていうお話をされてたんですね
だからそのやってしまった人
男性主に男性ですけど
側だけが悪いわけじゃなくて
そういうことを許しやすい
あるいは調子に乗らせやすい
勘違いさせやすい
空気ムードっていうのがあるんじゃないかっていう
お話だったと思うんですけど
確かにこの生川という小説の
とにかく気持ちが悪いんですが
気持ち悪いけど読むのをやめられない感じになる
一つの要因としては
加害者である月島光一っていう
小説を教えている先生側なんですけど
月島が本当にゲスなスケベ野郎ではないところなんですよ
ちょっと知的な素敵なところもあるし
ある面ではまともだったり
真っ当だったりするところもあって
そういうところもあるからこそ
気持ちが悪いっていうんですかね
この本がドキュメンタリーじゃなくって
フィクションである優れている点としては
その月島側の感情というか
月島側の理論も語られるところだなと思ったんですよ
被害者側のコメントだけを集めて
作られたドキュメンタリーとは違って
反対側の思考も
それから傍観者の人たちだった人たちの思考も
描けるっていうことで言うと
15:02
ノンフィクションとは違う意味で
フィクションはフィクションで
描けることは多面的だなって思いました
その時その時で
加害者側にも被害者側にも
それなりに正当な論理性というか
あったりとか後付けで正当性を
つけたりする場合もあるかもしれないですけど
それはイーブンってものがあるんですよね
そこも含めて
確かに周りの空気なんかが
そうさせている部分もあるのかなって
思ったりしました
私たちもつい女性だから
そんなことしないというふうには言い切れず
そして加害者を何というか
助長させてしまう危険性もあるじゃないですか
ミモレの記事にはちょっと書いたんですけど
懇親会とかで
社長の隣は女性でとか
女の子がそっち側に座ってみたいなことを
言っちゃうことってあるじゃないですか
役員の隣は
新入社員の女の子がいいかとか
言ったりして
それってやっぱり女の子が華やかだ
隣だと華やかだとか
おじさんの隣はおじさんよりも
若い女の子が良かろうっていうふうに
自分の中で思っちゃってる
すり込みがあるってことで
それが怖いことですよね
そういうふうにするのがいい
若い女の子というのは
華やぎとしてその場にいるべきだっていうふうに
思ってるわけじゃないけど
思ってるみたいなもんで
そういうことを
強要しちゃう可能性があるじゃないですか
そんなようなことをね
いちいちこの
生顔を思い出して
ピリッと反省したりなんか
させられる本でしたね
すごく印象に残る一冊でした
さて最後は
第1位の発表をしたいと思います
さて2022年ベストブック第1位は
早見一真さんの
8月の母にしました
こちらはですね
あまりに苦しく
嫌な話なんで
結構引きずるんですよ
読み終わった後に
だから読み始める日には
十分にご注意くださいと
お伝えしておきます
物語はですね
愛媛県の伊予市の支援団地で起きた
実際の事件
少女暴行殺人事件を
ベースに
それにインスパイアされて
早見さんが
長編の小説として
フィクションとして
描いたものなんですね
ある比較的裕福な家で
18:01
生まれた一人の少女が
支援団地の一室で
その部屋に暮らす
母親を含む少年少女に
集団で長時間にわたって
暴行を受けて亡くなるっていう
非常に悲惨な
痛ましい事件なんですけれども
この小説で中心に描かれるのは
暴行を加える側になった
母と娘の物語なんですね
こちらの小説については
108夜の方で
108夜
母娘の受爆物に隠れた
圧倒的な父親の不在感
っていう回で
ポッドキャストでご紹介しているので
詳しくはぜひ
その回も聞いていただけたらと思うんですが
なんというか
地方都市の閉塞感
それからシングルマザーの貧困
這い上がろうと
この町から出ようとか
勉強してもうちょっと
違う仕事を見つけようとか
何度も這い上がろうとするんだけども
なかなかそこから
抜け出すっていうことが
できないっていう
あり地獄っていう表現の仕方を
されていますが
あり地獄の話なんですよ
すごくつらい小説では
ありますけれども
なんとか最後まで読み切ってほしい
っていう感じですかね
この本を読み切ると
なんか自分を
よく頑張ったなっていうか
よく読み切ったなと
褒めてあげたくなるような
作品です
さて以上が
2022年を
代表するご作品として
ご紹介しました
実はですね
5つともちょっとした共通点があって
それはある事件とか
ある出来事
関係性なんかを
あっち側とこっち側から描いた
小説ばかりなんですね
どっちにもどっちの
言い分がある
っていうこともあるでしょうし
あるいは
あっちの見え方とこっちの見え方が
違うみたいなことが
わかる小説
ばかりになっています
結果的には同じ
結末かもしれないけれども
あっちにはあっちの文脈があって
こっちにはこっちの文脈があって
みたいな感じなんですが
両方見えているのは
読んでいる私だけ
っていう感覚が
持てる小説ですね
なんかこう
人が人を評価する時に
特にうちの会社なんかは
あいつはちょっと想像力が
足りてないなとか
あいつは
やり手なんだけど
仕事はできるんだけど
想像力に欠けるとこがあるんだよね
っていう
人の気持ちをちょっと
想像する力が欠けている
みたいなことを
結構評価として口に
する人が多いんですよ
わかるんですけど私も
想像力があるって
21:01
じゃあ逆にどういう人のことを
想像力があるって言うんだろうとか
どういう言動を取ったら
あの人は想像力がある人だね
って言われるんだろうかって
思うと結構難しいですよね
なんか本とか読むと
想像力がつくってね
子どもの読書教育
朝読書とかで
言ったりしますけど
本当にそうかなって言うと
ちょっと私もわからないなって
そんなことでつくものだろうか
と思ったりはしますが
これらの
ご作品なんかを読むと
やっぱり
想像って無理なんじゃないかな
っていうか
相手の思う気持ちは
こちらの想像をはるかに
超えてくるっていうかですね
あちらの気持ちは想像しても
想像しきれないっていうことを
すごく思ったり
しましたね
だから想像力っていうのは
相手の気持ちを
想像できる力じゃなくて
相手の思うことは
想像しきれないって
自信を持たないっていうことが
想像力なんじゃないかなと
逆説的ですけれども
思ったり
しました
想像力とは自分の想像は
きっとあってないって
思える力なんじゃないかな
と思ったりしました
さてさて2022年の
皆さんのベストブックは
なんでしょうか
インスタ等々
寄せていただけたら嬉しいです
いやー今年も1年
頑張りましたね
ちょっと途中
お休みなんかもさせてもらっちゃいましたが
皆さんも
気に入った本がありましたでしょうか
心から
お疲れ様をお伝えしつつ
そしてまた
来年もお会いできたら
嬉しいです
さて今夜もお時間になってしまいました
真夜中の読書会
おしゃべりな図書室は
リスナーの方からのお便りをもとに
おすすめの本や漫画をご紹介しています
インスタグラム
バタヨムからメッセージを
お寄せください
それではまた来週水曜日の夜に
お会いしましょう
おやすみなさい
23:31

コメント

スクロール