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みもれ真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAウェブマガジンみもれ編集部のバタやんこと川端です。
おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになる、をテーマに、皆様からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
さて、第70夜を迎えました。
今夜はお便りのご紹介はちょっとお休みをして、明日8月12日で日航機墜落事故から36年目を迎えるということで、こちらの大きな事故をテーマにした本についてお話ししたいと思います。
日本航空123便の墜落事故は、1985年、昭和60年の8月12日の午後6時から7時くらいに起こった出来事でした。
日航機墜落事故に関しては、事故の大きさと、それからはっきりした原因がなかなか発表されなかったということなどから、たくさんの原因追及本が出ているんですね。
UFOがぶつかったんじゃないかとか、アメリカ軍と自衛隊が何か隠してるんじゃないかという陰謀説だったり、とんでも本みたいなものもあれば、元客室乗務員や関係者による分析の本などもたくさん出ていて、かなりいろんな本を私も読んだんですよ。
なぜかというと、当時私の父親が大阪に単身赴任をしていまして、その日はちょうど東京から大阪に帰る日だったんですよね。
新幹線で帰ったのか飛行機で帰ったのかがわからなくて、もしかしたらその123便に乗ってるんじゃないかとドキドキしたという思い出がありまして、
今では考えられないことですけど、当時は事故があるとテレビのニュースで名前がずらずらと暴動されたんですよね。
他人事ではなかった、人事ではなかったこの事故に関して、あるいはこれ以外の飛行機事故に関しての本が出ていると、つい読まなきゃという気になるんですよね。
今日は亡くなられた犠牲者の方に追悼の意を込めながら、日光機墜落事故に関するフィクションをテーマにお話ししていきたいと思います。
どうしても今日テーマについて話したかったのは、実はきっかけがありまして、今夜は貸出カードの紹介の前にまずその話からしたいなと思っています。
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先月、野田秀樹さんの舞台、野田マップのフェイクスピアを見てきたんですよ。
ネタバレになってしまうので聞きたくないよという方はここでそっと閉じていただきたいのですが、先日大阪も無事に先週落雨を迎えられたということで、今回のこの講演自体は終わってしまったので、今日やっとお話ししようかなと思いました。
主演は高橋一生さんで、大ベテランの白石香代子さんと橋爪勲さんですね、あと注目の前田敦子さんの意外な俳訳と軽妙な掛け合いで、野田さんらしい言葉遊びの応酬でケラケラ笑って見てたんですよ。
そしたらドーンと行こうやというセリフとかダメかもしれんねっていうセリフが出てきて、あれどこかで聞いたことあるって思ったんだけどなんだっけって、主演の高橋一生さんがずっと小さい箱みたいなのを大事そうに持っているんですけど、それがつまりフライトレコーダーを意味していて、
ドーンと行こうやとか頭を上げろっていうのは日光機のフライトレコーダーに残されていた貴重な言葉だったって気づくまで、私は結構かかったんですけど、これはあの事故をテーマにしているのかって気づいてしまってからは、それまで笑ってた分余計に胃がキュッとなるというか、胸が締め付けられるようないたたまれなさみたいなのがありました。
舞台には飛行機は出てこなくて、ただのパイプ椅子と棒一本で、墜落前の機内の様子を再現するシーンなんかもあって、これはもう役者さんたちの身体能力と表現力ってすごいなって楽観だったんですよね。
でもね、帰って帰り道にレビューとかツイッターのコメントとかを検索してみたんですよ。見る前はネタバレしたくなかったから見ないようにしてたんですけど、終わって感想とかコメントを検索してみたら、このテーマに扱ったことについて結構否定的な意見があって、
絶賛してるコメントももちろんたくさんあったんですが、不謹慎だとご遺族の方がまだご存命なのにフィクションのエンタメの題材に扱うっていうことが早すぎるとか望ましいなんていうコメントもありました。
そのこと自体に、そういう批判的なコメントを読んでしまったことに関してもちょっと私も重複を受けてしまったんですが、かなり舞台自体はショッキングではありましたし、
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もし実際に自分の父親がその事故で亡くなっていたとしたら、たぶん最後まで見れなかった、途中で席を立ってしまったかもしれないとは思いましたけれども、野田さんがバカにして面白おかしく扱ったとは思えなかったし、
ただキャッチーだからその事故を入れると、そしてそのキャッチーなセリフを入れたいって思ったみたいなことではないと私は思いましたけれどね。そのぐらいものすごく緻密に再現されていましたし、これに関する資料や本をおそらくかなりたくさん調べて、その上でどこから何を抽出するか決めたんだろうなというふうに私は感じました。
この舞台はワウワウで放映が決まったみたいなので、もし機会があればぜひ見てみていただけたらと思うんですが、実際にあった事故や事件、それから大きな災害ですね、フィクションの題材、エンタメの題材として扱うことの難しさをこの一見で感じました。
日光ジャンボの件で言えば、既に山崎豊子さんの静まの太陽とか、横山秀夫さんのクライマーズ灰とか、作品の題材には既にいくつもなってますよね。
9.11や3.11、そしてもはやコロナパニックも様々なフィクションの題材になっているんじゃないでしょうか。
今日の勝手に貸し出しカードの紹介がすごく遅くなっちゃったんですけれども、今日は清水康俊さんの「気長の決断・日光期墜落の真実」という本をメインでご紹介したいと思っています。
どんな本か、なんでこれにしたのか、後半にお話ししていきます。
この気長の決断・日光期墜落の真実という本は、著者の清水康俊さんがJALの元フライトエンジニアでいらっしゃって、その経験と知識をもとにフライトレコーダーをはじめとする様々な資料から事故当日のコックピットの様子を徹底的に検証するというドキュメントノベルなんです。
ドキュメントノベルなんですって言いましたけど、ドキュメントノベルという言葉を私はこれで初めて知りました。
ドキュメンタリーだけど一部小説の題材をとっているんですね、この本は。
そういったドキュメンタリーだけどフィクション、ノベルの題材をとっている作品というのは、もしかしたら確かに他にもあるかもしれないし、読んだこともあったかもしれないなと思いましたが、
非常に専門用語が機内の細かい話だったりとかが多くて、またレコーダーに記録されているセリフ回しも独特なので、その辺りがなかなか読みづらい部分もあるんですけれども、
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あと物理学の数式みたいなのがたくさん出てくるんですが、小説調になっているのでシーンの展開も早くてですね、比較的この事故に関する本の中では、私の中では読みやすくグイグイと読めてしまいました。
少しこの事故に関してご関心のある方は、急減圧というのがあったのかなかったのか、意見が分かれているということをご存知かもしれないのですが、
急減圧があったとしたら、もっと機内がパニック状態というか、物が飛び散ったり、温度が下がって骨幹になっていたはずだというね、
その辺り、この本でコックピットのレコーダーに残された言葉などからどう分析されているのかなどは、ぜひ読んでいただきたいんですけれども、
記憶に新しい魂事件事項をフィクションにするのは不謹慎か、ノンフィクションならば不謹慎じゃないのかという先ほどの問いに対しては、この本ではフィクション、一部フィクションにすることで、
ものすごく関心がある人じゃなくても触れやすいという意義はすごくあるなと思いました。
事件を風化させないというのはありきたりな言い方ですけれども、たくさんの人に思い起こしてもらったり思い出してもらったり、この後の教訓にするとか、
というためにはフィクションの題材、助けを取るということもあり得るなと思ったのでした。
今日はこの本から紙フレーズをご紹介したいと思います。
鎌倉のある名札で社教をする機会があった。
住職が始める前に説教をし、おとけさまの言葉こそ真実で、人の言葉は必ずしも真実ではない。
仏教の神言集の神言とはそういう意味だと解説された。
これはですね、著者の後描きの冒頭の部分なんですけれども、
つまりフライトレコーダーに残されていた言葉は記録としては事実だけど、真実かどうかわからないということを言っているのかなというふうに思いました。
先ほど取り上げたドーンと行こうやって勤めて前向きな言葉を悲観的にならずに言っている感じだけれども、
それが嘘というかそう振る舞ったというところはあるかもしれないですよね。
大丈夫って言っているからといって本当に大丈夫かどうかわからないというか、
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フェイクスピアという先ほどご紹介した野田英樹さんの舞台もフェイク、言葉とフェイクが主題になっているんですが、
もしかしたら野田さんはこの本を読みになったんじゃないかなと思ったのでした。
最後に一つこの本で知ることができた良いお話で締めたいと思います。
事故の後、同じようにアンコントロールの機体の状態をシミュレーターで作って、
山に撃突というか墜落しないで海に回り込んで海に着水できるかという実験をやってみているんですね。
事故調査委員会の方で、海にうまく逃げられたとしても、
ビン和のパイロットであっても水面に結局直撃しちゃって大破してしまうという実験結果になるんですが、
かなり学習を積んで訓練をして同じ条件を試すと何割かの確率で海にソフトランディングできなくないというところまで持っていくんですよ。
この辺はすごいことだなと思ったんですけど、
後にユナイテッド航空が同じように機体がアンコントロールになった時に、
一番近い空港にうまく緊急着陸できたという奇跡があって、
それを操縦した人は日光機のこの事故を徹底的に相当研究したおかげだったという話が出てきます。
こういう事故があった後の原因の追求だったり、その当時の中の様子の再現ということが、
次の事故を防ぐのに非常に役に立つというのがあるんだなということを知れたのと、
この事故以来520人を超える大きな旅客機の事故は起こってないということにも希望を見出したのでした。
今日はそんな本のご紹介でした。最後までお付き合いいただきありがとうございます。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室は皆様からのお便りをもとに色々なテーマでお話したり、本を紹介したりしております。
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また水曜日の夜にお会いしましょう。おやすみなさい。おやすみー。