この番組は、あなたのクリエイティブの背中をちょっと押すをテーマに、デジタル活用のヒントをわかりやすくお届けすることを目指しています。
今回取り上げるテーマは、AppleのLiquid Glassデザインがクリエイターに与える影響は?です。
Liquid Glassとは、その名の通り液体っぽさがあるガラス風のデザインです。
まさにiPhoneとかMacとかの画面の上にガラス状の薄い板を置いているような見た目で、下にあるものが透けて見えるんですね。
光の屈折とか反射、影などがリアルに再現されていて、未来的で美しいと評価されています。
このLiquid Glassを最初に見たときに、私は時代がひと回りして、昔のように現実のものを画面上にリアルに再現する路線に戻っていくのかと思いました。
でもその後、Liquid Glassの説明をいろいろ見たり聞いたりして、そうじゃないんだなとある程度理解できたと思っています。
iPhoneの画面デザインは10年以上前に今のものになっているので、うちの娘とかは古いデザインを知らないと思うんですが、
もともとは現実のものを真似したリアルな感じのデザインだったんですね。
スキューモーフィズムとかスキュアモーフィズムと言うんですが、現実世界を模倣するデザインです。
なので初期のiPhoneの写真を見るとわかると思うんですが、アイコンは立体的で存在感のあるものばかりでした。
メモアプリのアイコンは現実のメモ帳、ノートパッド、アメリカ風のものを再現したようなデザインで、紙の質感もありますし、
上の方にはメモ帳を1枚破ったような破り跡みたいなのがリアルに表現されていました。
カメラアイコンもレンズがリアルに光っていて、カメラですと主張したものでした。
アップル以外のサードパーティーが作ったアイコンもそれに揃えていて、
YouTubeのアイコンはブラウン管テレビだったんですね。ちょっと立体感のある。
YouTubeのチューブというのはブラウン管のことで、あなたのブラウン管とYouTubeということなので、
昔のブラウン管テレビのアイコンの方がYouTubeをうまく表していると言えるかもしれません。
インスタグラムのアイコンがポラロイドカメラのアイコンだったことも覚えている人も多いと思います。
リアルでレトロな感じのポラロイドのアイコンがインスタグラムを象徴するものでした、当時は。
今は全然イメージが変わりましたよね。
もちろんアイコンだけではなく、ユーザーインターフェース全体が現実のものを模倣したものになっていました。
特にiPadが出たての頃は画面も大きいですし、気合が入っていたようで、
iBookという電子書籍の画面は木製のリアルな本棚の中に本が並んでいるみたいなイメージでした。
そして本を読むときには、ページをめくっているような効果が画面上で再現されていたんですね。
これは初めてデジタルでの読書をする人のためになるべく現実世界に近づけようというアプローチで、
最初の段階としてはある意味これが正解だったのかもしれません。
スティーブ・ジョブスもそういった現実のものを真似したインターフェースがお気に入りだったようです。
ちなみにその頃は私のお仕事のウェブデザインにおいてもアイコンを作るとかなったときに、
そういうリアルな感じの凝ったものを求められたので大変だった記憶があります。
やっぱりウェブデザインとかは特にOSのデザインの影響を受けがちなんですね。
その後iPhoneは今のデザイン、フラットデザインになります。
余計な装飾がないシンプルで平面的なデザインに大きく変わりました。
例えばデジタルのデバイス上で動画を再生するというときに、
操作するユーザーインターフェースとして現実のリモコンを真似して、
リモコンが画面にあるような感じでボタンが立体的になっていて、
みたいな方がわかりやすい、使いやすいという発想だったのが、
もうデジタルで動画を再生するのが当たり前になって、
デジタルネイティブな人にとっては動画を見るといったらスマホとかで見るのが当たり前みたいになってくると、
現実のリモコンを真似する必要はないと。
動画を邪魔しないようなシンプルなボタンでいいよと変わってきたわけですね。
このフラットデザインへの変化、進化というのも、
ウェブデザインなどに私の仕事にも大きな影響を与えました。
現実のものに似たリアルな細かいものが不要になったので楽になったんですが、
一方でシンプルでデジタル的なものだけだと、どうしてもデザイン的に物足りなくなってしまうんですね。
写真が入ってくるだけでもだいぶ違うんですが、
やっぱりなんかアナログ的な要素とかをちょっと入れるとか工夫が必要なので、
フラットデザインでどううまく見せるかみたいな変化を必要とされたというクリエイターの人も多いと思います。
そしてその次の段階としていよいよリキッドグラスが登場するわけです。
ファッションみたいに流行がひと回りしてフラットなシンプルなものにも飽きたので、
もう一回リアルな路線で現実のガラスを模倣したものというような発想ではないんですね、リキッドグラスは。
フラットデザインの延長線上にあるUIの未来を考えた上で進化していった中での
Appleの出した答えが液体状のガラスだったということでしょう。
ビジョンプロの影響が大きかったようです。
ビジョンプロはAppleのAR、VRグラスでヘッドセットをつけてコンピューターを使う
空間コンピューティングのためのデバイスです。
パソコンのディスプレイの代わりにゴーグルをつけて覗き込んだ中でコンピューターの作業をするというコンセプトですね。
現実世界の中にウィンドウが浮かんで操作したりするので、ガラス状になっていて向こうが透けて見えるというのは、いろいろと都合がいいはずです。
空間の中に配置されるので、いろんな角度から人間が動くと違う角度からそれを見ることになるわけですが、