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  2. #31 「脱炭素」はちょっと違う..
2025-08-20 11:17

#31 「脱炭素」はちょっと違う――“無くす”より“回す”という発想

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持続可能な社会を実現するために「脱炭素」社会を目指しましょうという話が進められていますよね。この脱炭素という言い方って正しいのでしょうか?実は、日本化学会から警鐘を鳴らす発信がなされています。

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【参考資料】
・科学(化学)的に正しい「炭素循環」を 我が国が目指す社会の用語として使おう! 
https://www.chemistry.or.jp/news/information/post-443.html

・CO2排出量の比率 https://www.iea.org/reports/achieving-net-zero-heavy-industry-sectors-in-g7-members/executive-summary

・ 「製造分野における熱プロセスの脱炭素化」プロジェクトの研究開発・社会実装の方向性 https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/green_innovation/industrial_restructuring/pdf/011_03_00.pdf

・プラスチックリサイクルの基礎知識2025 https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf1.pdf?_klpuid=GwKq2LGpnkQhX6L36mXkc%2Fwwf%2Fkumagai%2Fbusiness%2Fkumagai%2Fdata%2Fdir%2Fkanie%2Ftdlc%2Fkondo%2Ffuruichi%2Fmri%2Fpwc%2Fcon%2F%2Fdata%2Fdata%2F%2Fdata%2Fkumagai%2Fbusiness%2F

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プラントライフは、化学プラントの技術者である私かねまるが、化学と工場に関するトピックを、分かりやすく紹介する番組です。 毎週水曜日の朝に定期配信! LISTENで公開後、各種Podcastアプリにも配信されます。

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サマリー

今回のエピソードでは、脱炭素という言葉に対する誤解と、炭素循環の重要性について探求しています。日本の科学界は脱炭素の概念を疑問視し、持続可能な社会のためには炭素を無くすのではなく、循環させるべきだと提言しています。

脱炭素の正体
今話題の脱炭素という言葉、本当に正しい言葉でしょうか? 一緒に考えてみましょう。
プラントライフは、化学プラントの技術者であるかねまるが、 化学や工場に関するトピックを分かりやすく紹介する番組です。
持続可能な社会を実現するために、脱炭素社会を目指しましょう、 という話が進められていますよね。
この脱炭素という言い方って正しいのでしょうか? 実は、日本科学界から警鐘を鳴らすような発信がなされています。
今回は、そんな脱炭素に関する話をしてみます。 日本科学界では、科学的に正しい炭素循環を我が国が目指す社会の用語として使おう、
という発信をされています。 概要欄に全体の資料をURLを載せていますので、見てみてください。
今、普及が進んでいる脱炭素という言葉の意味を考えたことがあるでしょうか? 脱とついていますので、炭素がない、もしくは炭素がなくなった、
そんな状態を指します。 つまり、脱炭素というと炭素のない社会を目指すようなイメージですね。
こういった炭素のない社会を目指すように誤認させてしまうことを日本科学界は懸念しています。 なぜ懸念しているかというと、炭素自体は欠かせない元素だからです。
何に欠かせないのかを少し考えてみましょう。 大事なのは炭素イコール炭というわけではないことです。
世の中のあらゆる物質は炭素原子が多く含まれています。 脱炭素と言ってしまうと、あらゆる物質に含まれる炭素原子を使わないようにしよう、
そんなイメージにとれてしまいます。 いくつか炭素原子が主役になっている物質を見てみましょう。
まずは有機化合物です。 プラスチックや医薬品、半導体、電池材料など炭素骨格が基本となっています。
そもそも有機化学というのは炭素原子を基本骨格として、 窒素や酸素などの原子も組み合わせて様々な機能を発現させる学問です。
炭素を使わないというのはほとんど考えられません。 そして関連するのが人体の物質ですね。
タンパク質や脂質、DNAの脂成分に炭素原子が含まれています。 私たち自身が炭素でできた存在ということです。
そして産業にも炭素がたくさん使われています。 一番は鉄ですね。
単純に鉄原子だけを固めて作った物質というのは脆くなってしまいます。 鉄に若干の炭素を含めることで強度を上げられます。
これを鋼鉄と言います。 そして今話題の電池に目を向けますとザ炭素とも言える黒塩は電極として使われています。
ここまで話したように素材や人体や産業、様々なところで炭素というものが使われています。 だからこそ炭素ゼロ、つまり脱炭素は現実的ではありません。
ハードトゥアベイト産業の課題
そのため日本科学界では炭素循環という言葉を使ってほしいと発信されています。 今社会で本当に達成したいのは二酸化炭素をはじめとする
温室効果ガスを大気に放出させないことです。 この二酸化炭素の放出と植物による吸収のバランスが取れた状態を目指したいということです。
炭素を含むものを作って、使って、それを回収して再資源化する、そんな循環が重要になってきます。
炭素循環社会ですとか炭素循環経済という言い方が正しくなってきます。 ですけれどもこの循環が難しいんです。
今回ハードトゥアベイトという言葉をぜひ覚えて帰ってください。
炉の中には炭素が欠かせません。 ということは燃やすとCO2を出すということです。
世界のCO2排出量を見ますと、鉄鋼、セメント、化学で産業の約7割のCO2排出を占めています。
この辺りの業界は炭素循環が難しい特徴があります。 大きく3つの理由です。
1つ目が反応そのものがCO2を出してしまうということ。 2つ目が製造時に高い温度が求められること。
3つ目がそもそも炭素成分が原料であること。 一つずつ解説していきます。
1つ目の反応そのものがCO2を出すこと。 セメントを例に話をします。
セメントの原料は石灰石というものです。 化合物の名前で言うと炭酸カルシウムです。
炭酸カルシウムを1300度以上の高温で焼いて、 セメントの主成分である酸化カルシウムを得ます。
その時同時に二酸化炭素も発生します。 これは燃焼というよりも原料の分解反応で生成するCO2です。
製造工程の燃料を全部再生可能エネルギーに変えても、 このCO2というのは残ってしまいます。
2つ目が製造時に高い温度が求められることです。 鉄を製造したりガラスを溶かしたり、
1000度以上の高温が必要になります。 この高温を作るために燃料を燃やしているんですけれども、
これを電気に変えると運転コストが2倍以上になると言われています。 そして炎を使うことで自然に熱帯流が発生します。
中の温度が均一になるというメリットもありました。 電気に変えてCO2排出量を削減しようと思うと、
熱の均一性や効率、コストの面でかなり不利になります。 3つ目がそもそも炭素成分が原料であるということです。
科学ではエネルギーとして燃やす炭素だけではなくて、分子の基本骨格、原料として炭素原子を含むものを大量に扱います。
そもそも減らすというのは製品自体をやめないといけなくなってしまいます。 結局産業の主役が炭素成分を含むものですので、最終的には焼却してCO2が発生してしまうということになります。
ここまで挙げたようなCO2の排出削減が困難な産業はハードトゥアベイト産業と言います。 もちろん科学もハードトゥアベイト産業です。
原料が炭素原を持ったり、高温のプロセスがあります。 科学以外に言われるのは鉄鋼やセメント、紙パルプ、
水素とリサイクルの未来
長距離輸送の航空や海運などです。 そんな産業はどのように対策をしていくか、最後に紹介します。
一番はやっぱり水素ですね。 再生可能エネルギーで作った電気で水を電気分解して水素を得ます。
高温が必要なプロセスでは燃料として燃やして使われます。 同様の燃料として使うものとして水素以外にアンモニアもあります。
鉄鋼の業界では水素を還元剤として使用します。 鉄の原料である鉄鉱石の還元に、今は主成分が炭素であるコークスを用いています。
このコークスを使って鉄鉱石の主成分である酸化鉄を還元して鉄にします。 この還元作業にコークスではなくて水素を用いる、そんな取り組みがなされています。
そしてもう一つの対策がリサイクルです。 反応そのものがCO2を出す場合だと長く使うことが重要です。
例えばセメントだと原料の石灰石で1から製造しないということです。 化学の業界も同じですね。
現在ハイプラスチックがリサイクルされているとはいえ、約7割が燃焼によって熱として再利用しています。
ほとんど燃やしています。 これから再度プラスチックとして再利用する割合を増やしていかないといけません。
今回は脱炭素という言葉の意味について考えて、炭素循環をどのように達成していくかについて話してきました。
まずは脱炭素という言葉を安易に使わないところから始めてみてください。 今回はここまでです。
プラントライフでは化学や工場に関するトピックを扱っています。 毎週水曜日の朝6時に定期配信していますので、通勤時間や朝の準備などにお聞きください。
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