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#115 なんでスピリタスは100度じゃないの?越えられない96度の壁
2026-07-29 18:04

#115 なんでスピリタスは100度じゃないの?越えられない96度の壁

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強いお酒スピリタスでも96度、せっかくなら100度にしたらよかったのに!と思うけど上手くいかない事情があります。

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サマリー

このエピソードでは、ウォッカの一種であるスピリタスのアルコール度数がなぜ96%で100%ではないのか、その科学的な理由を解説します。アルコールを濃縮する蒸留のプロセスと、化学プラントで使われる蒸留塔の仕組みを紹介。しかし、エタノールと水は96%の濃度で「共沸」という現象を起こし、それ以上蒸留では濃度を上げられない壁があることを説明します。この壁を超えるためには、モレキュラーシーブを用いた吸着などの特殊な脱水処理が必要であり、無水エタノールの用途や、スピリタスが100%でない実用的な理由についても触れています。

スピリタスと96度の壁
こんにちは、かねまるです。
プラントライフは、化学プラントの技術者が、化学を軸に、皆さんの視野を広げていく番組です。
まず本編に入る前に、少し風邪気味っぽくて、鼻詰まりがあるので、お聞き苦しい点があるかもしれませんけど、ご了承ください。
深刻な感じではありません。
では本題に入りますと、皆さんスピリタスというお酒を知っていますか?
ウォッカの一つなんですけど、アルコール度数が96%っていう異常な高さのお酒です。
このお酒96%なんですけど、ものすごく高いアルコールで売り出すんだったら100%にした方がいいですよね?
とは言っても、お酒には96%を超えられない事情っていうのがあるんです。
それが恐怖症という現象です。
今回はこのアルコールを例に、恐怖症について話をします。
蒸留によるアルコール濃縮の基本
ビールとかワインに日本酒みたいな醸造酒っていうのは、だいたい度数が高くても十数パーセントですよね。
公母が糖を食べてアルコールを出すんですけど、自分の出したアルコールで公母自体が参ってしまうので、いけても15%とか20%くらいまでのものです。
だから単純に高い度数のアルコールが欲しいってなったら、公母の力だけではできません。
そういう時に上流を使います。
学生の時に学んだでしょうか。
沸点の違いを使って蒸発によって分離する。これが上流です。
ただ、勘違いされやすいのは、沸点の低い方だけ蒸発してきて、沸点の高い方は蒸発してこないと思いがちですが、そういうわけではありません。
イメージしやすいのは、水は100度で沸騰しますけど、常温でも水は飛んでいきますよね。
そういうことです。
お酒に戻りますと、エタノールというアルコールが入っています。
エタノールの沸点は78.4度、水の沸点は100度。
これだけ見ると、上流した時にエタノールだけが飛んできそうですけど、一緒に水も飛んできます。
ただし、割合としてエタノールの方が多いということです。
そして、水も一緒に飛んでくるっていうことは、一回上流しただけだったら、きれいなエタノール100%は手に入らないんです。
正確な数字は言えませんが、
例えば、15%のエタノールを最初に作って、これを上流すると50%くらいのエタノールが手に入って、
上流して濃くなった50%のエタノールをもう一回上流して60%を作って、
60%をもう一回上流して70%を作るとか、
そんな感じで濃くなったのを何回も何回も上流を繰り返して、さらに濃くしていきます。
化学プラントでは、こういう上流を何回も繰り返して、純度を上げていくという操作を行います。
化学プラントの蒸留塔
実験室で行うような、容器の中にお酒を入れて蒸発させて上の方で冷やして、
微々冷却器で回収する。
そういうのだと、さすがに化学プラントだとスペースを取りすぎるので、上の方にどんどん伸ばしていきます。
上流塔と言うんですけど、ものすごく長い塔を建てて、その中にたくさん仕切りを入れて、
仕切り一つが上流1階分になるような設計になっています。
高いものだと100メートル近い高さになるものもあるそうです。
20メートル、30メートルの塔っていうのはよく見かけます。
化学プラントの夜景を見ていただくと、煙突の他に非常に高い塔がいくつも建っています。
それが主に上流塔と呼ばれるものです。
これ上流塔かなって、もし興味があれば、お近くの工場まで見に行ってみてください。
遠くからでもなんとなくわかると思います。
上流を行って、濃度が高くなったものをまた上流する。
これを繰り返すと、どんどん純度が上がって、エタノール100%が手に入りそうなんですけど、
96度の壁「共沸」のメカニズム
そうもいかない現象がありまして、恐怖症と言います。
蒸発した時の蒸気の濃度と液体の濃度が同じになるっていう意味なんですけど、
お酒で言うと、液体側のアルコール度数と蒸気のアルコール度数が同じになるんです。
それがアルコール度数96度の時、つまりは何度もお酒を上流してどんどん度数を上げていくものの、
96度まで上がったら、これ以上アルコール度数って変わんなくなるんです。
ずっと蒸発したものも液体側も96度のままなので、濃度が変わんなくなってしまいます。
そうなると上流で濃度を上げることができませんね。だからスピリタスは96度なんです。
原理的に限界まで攻めたお酒だったんです。
とはいっても、96度を超えた時のアルコールっていうのも存在します。
例えば、化学実験でエタノールを直接合成した時とか、そうやって100%に近いものを作ることもできます。
お酒として販売するものなのかっていうのは別としてですね。
96度を超えたアルコールを蒸発するとどうなるんでしょうか。
例えば、98%の高いアルコールを蒸発させると、液体よりも気体の蒸気側の方が水の割合が多くなるんです。
どういうことかっていうと、今までだったらアルコール度数の低いお酒を上流して蒸気を回収するとアルコール度数が高くなっていました。
それに対して、強沸点を超えるような非常にアルコール度数の高いお酒を上流すると蒸気はどんどんアルコール度数が低くなっていくんです。
最終的に強沸点の96度までアルコール度数は下がっていきます。
ただし忘れてはいけないのは、上流っていうのは蒸気と液体に分けます。
強沸点を超える96度より高いアルコールっていうのは、上流すればするほど液体側のアルコール度数がどんどん高くなっていきます。
話をまとめますと、アルコール度数が低いうちは上流でどんどんアルコール度数を高めることができます。
ただし96度になると途端に濃度が変わらなくなります。
そこでなんとかして96度を超えるとアルコール度数100%に近いものが作れるようになります。
ただし原理的にどんどん度数を上げていって96度を超えるっていうのは難しいんです。
ただしそれは上流に限ってのことです。
強沸という現象が起きる以上は上流では度数をどんどん上げることはできません。
96度を超える無水エタノールの製造法
じゃあどうするかっていう話ですよね。
薬局とか実験室に無水エタノールというものがあります。
無水っていうのは水がないと書いて無水。
この無水エタノールっていうのは99.5%以上のものが多いですかね。
つまりは強沸の壁を超えたものが普通に売ってあります。
どうやって作っているのかっていうと、吸着という処理をしています。
吸着っていうのは個体に分子を捕捉させるような処理でして、身近なものだと活性炭がありますね。
消臭剤の炭のことです。
炭のものすごく細かい穴の中に嫌な臭いの成分を吸着させて取り除きます。
無水エタノールの場合も吸着を使って細かい水を取り除いていきます。
この時に使われるのが主にモレキュラーシーブという個体です。
ゼオライトの仲間でして細かい穴がたくさん空いています。
その穴の中に水を吸着させて取り除きます。
水よりもエタノールの方が分子サイズが大きいので、
エタノールが吸着されなくて水だけが吸着できるっていう絶妙なサイズになっています。
ただしこういう吸着の操作っていうのは最後の濃度を極限まで上げたい時に使うようなものでして、
例えば15%のアルコールができた。
だからモレキュラーシーブで吸着させてそのまま100%までいきましょうっていうのは難しいんです。
まずは蒸留で濃度を上げていって、
ダメ押しで吸着でさらに濃度を上げていくっていうような使い方になります。
無水エタノールの用途とスピリタスが100%でない理由
おそらくスピリタスが96℃なのはコストが見合わないんだと思います。
あともう一つ、無水エタノールっていうのも放っておくと空気中の水を吸って戻ったりしますので、
スピリタスを頑張って100%の濃度まで近づけたとしても、だんだんとアルコール度数が下がってきちゃうんです。
一般的な飲み物としてはあまり向いてないですよね。
では、極限まで脱水したエタノールを何に使うかっていうと、
科学の分野だと反応の溶媒、溶かす液体として使ったりします。
科学反応でよく水に反応するものがあります。
ただ反応するといっても、失活っていう能力が下がるような方向になることが多いです。
つまりは、科学反応しようって思っても水があったら全然進まないってことが往々にしてあります。
だからエタノール以外にもいろんな溶媒は水を吸い込みやすいので、
先に脱水溶媒っていうのを作った後に反応させることがあります。
その脱水溶媒を作ることはできるんですけど、
私薬メーカーから購入することもできます。
ドラッグストアなどでも無水エタノールが売ってあるのは、
掃除用としても使えるからみたいですね。
ちなみに消毒用は80%ぐらいのアルコール度数なので、また用途は異なります。
エピソードまとめと関連回紹介
今回はスピリタスを例に挙げて、アルコール度数が上げられない理由について話しました。
96度っていう強沸点があるせいで、上流では度数が上げられなかったんです。
そこからモレキュラーシェーブを使って残った水を吸着すると、
100%に近いアルコールが手に入るようになります。
スピリタスの豆知識、ぜひ使ってみてください。
そういえば最近、アルコールの話が多いんですよね。
たまたまなんですけど。
シャープ107の痴漢記の話では、科学構造式から見たアルコールの話でした。
続くシャープ108では、アルコールを油圧に使うっていう話をしました。
そしてシャープ112番では、お酒を飲んだ後体の中で分解して、
最終的にお酢の成分である酢酸に変わるっていう話をしました。
たまたまアルコールにまつわる話がいっぱいありましたので、
もし興味があればシリーズとして聞いてみてください。
エンディングと番組からのお知らせ
今回はここまでです。
プラントライフでは化学や工場に関するトピックを扱っています。
毎週水曜日と日曜日の朝6時の配信を予定しております。
もしこの番組がいいなって思っていただけたら、
ハッシュタグプラントライフをつけてXで発信していただいたり、
概要欄にあるお便りフォームから番組の感想をいただけると嬉しいです。
そして最近ですね、スポティファイの方の評価が5段階でできるんですけど、
その評価が増えてきてます。
この番組の評価一つつくだけで結構個人的に喜んでいますので、
もしつけてないなーって思った方いらっしゃれば、
お手数なんですけど評価つけてもらえると今後の励みになります。
ぜひともよろしくお願いします。
ちなみにアップルポッドキャストにも同じような評価がありますので、
こちらも評価いただけるとすごく励みになります。
合わせてよろしくお願いします。
今回は少しお聞き苦しい点があったと思いますけど、
最後までお聞きいただきありがとうございました。
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