1. 技術者かねまるの「プラントライフ」
  2. #70 硬くする?軟らかくする?..
2026-02-11 16:00

#70 硬くする?軟らかくする?鉄の運命を決める「熱処理」の話

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材料の状態を変化させる熱処理「焼入れ」「焼もどし」「焼なまし」「焼ならし」に関して話しました。身近な事例として日本刀を取り上げています!

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サマリー

このエピソードでは、熱処理の基本的な概念や金属、特に鉄の熱処理法について詳しく解説しています。具体的には、焼き入れ、焼き戻し、焼きなまし、焼きならしの4種類の熱処理について、それぞれの特徴と役割が紹介されています。

熱処理の基本概念
こんにちは、かねまるです。 プラントライフは、化学プラントの技術者が、化学を軸に、皆さんの視野を広げていく番組です。
今回は、熱処理の話をします。 熱をかけて、材料の性質を変える、という内容です。
以前、温度の単位、硬さと粗さの表現ということで、第56回でお話をしました。 そこに関連して、ひろひろしさんから、焼き入れの話も聞きたい、とコメントいただきましたので、今回はもうちょっと範囲を広げて、熱処理とまとめてお話をしたいと思います。
熱をかけて、性質を変える。 皆さんは、どんなものが思いつくでしょうか。
それでは、言ってみましょう。 熱処理と言いますと、一般的には、金属の熱処理を指します。
特に、鉄ですね。 大きく4種類に分かれています。
焼き入れ、焼き戻し、焼きなまし、焼きならし。
似たような言葉ですけど、4種類あります。 この話をする前に、まずは鉄の理解を進めておかないといけません。
私たちが普段使っている鉄っていうのは、鉄元素100%ではありません。 鉄の中に0.02%から2.1%炭素が入っているものを、鋼と言います。
この鋼がよく使われるんです。 炭素が入っていると、鉄は強くなります。
反対に、炭素が入っていない鉄っていうのは、弱くて柔らかい材料なので、用途が限られてきます。
多くの場合、金属、鉄を使うときって、強度を求める場合が多いんじゃないでしょうか。
そうじゃなかったら、プラスチックでいいですもんね。 一般に材料っていうのは、硬くなると脆くなります。
折れたり割れたりしやすくなるっていうことです。 反対に、柔らかいと粘り強くなります。
人性があるっていう言い方をします。 鉄に炭素を入れることで硬くするんですけど、
割れやすく脆くならないように絶妙な配合、数パーセントで収めるっていうことです。 こうした原子の素性で作られた鋼を使っていろんなものが作られます。
鋼はだいたい700度ぐらいまで加熱すると素材が赤くなっていきます。 この赤くなった状態になると、結晶の構造とか性質が変わるようになっていきます。
金属って中が結晶になってるんですよね。 鉄原子が綺麗に配列して結晶という形になっています。
その配列が変わっていくんです。 こういった性質の変化っていうのは変態って言ったりします。
だいたい700度ぐらいの温度を変態温度と呼びます。 つまりこの変態温度まで上げるかどうかっていうのが熱処理の重要なポイントになります。
焼き入れと焼き戻し
先に言っておくと、この加熱した後の冷やし方っていうので種類が変わってきます。 まずはお便りでいただいた焼き入れについて
鋼を変態点まで加熱して、その後水とか油で急冷します。 一気に冷やすんです。
赤くなった鉄を水に入れてジュワーッと水蒸気が出るような状態に冷やしていくんです。 なんかこれ見たことないでしょうか。
日本刀です。 焼き入れをすることで鋼を硬くします。
ただこうして焼き入れだけを行った場合っていうのは、 ちょっとそのままでは脆くて割れやすい状態なんです。
ですのでだいたい焼き入れとセットで行われるのが焼き戻しです。 焼き戻しの場合は200度くらい、もしくは600度くらい
どちらにしても変態点より温度が低い状態まで加熱します。 その後、空冷します。
水とか油に入れずに空気で冷やすということです。 水とか油を使って急冷した状態の鋼っていうのは
内部の組織がまだ整っていなくて変な方向に力がかかっています。 残留応力って言ったりするんですけど、その組織の中に残った応力を取り除くために
焼き戻しという操作が行われています。 焼き戻しで変態点以下のある程度の温度まで上げて
じわじわと組織を整えながら冷やしていきます。 そうするときれいな組織になって残留応力もなくなって
強い鋼となります。 ちなみに日本刀は焼き入れの前に焼き刃土と呼ばれる泥のようなものを刀に塗っています。
この焼き刃土自体は断熱剤としての役割もありまして、 刀の刃の部分には薄く塗って、その他胴体に当たる部分っていうのは厚めに塗っています。
こうすることで刀の刃の部分のとこだけ熱の上下が激しくなります。 急に加熱して急に冷える。
反対に胴の部分というのはゆっくり加熱されてゆっくり冷えていくことになります。 やっぱり刃の部分というのはよく切れる方がいいので硬さが求められます。
かといって反対に胴の部分が硬くても脆かったらポキッと折れてしまいますよね。 だから日本刀っていうのは全体的に強靭で折れにくい
ボディを持っていながら刃の部分っていうのはよく切れる硬さも兼ね備えているっていう状態なんです。
1本の刀の中に2種類の結晶の状態があるっていうことなんですけど、 そうなると結晶の密度が変わります。
つまり体積が変わるんです。 その結果刀に生じる現象っていうのは反りです。
日本刀はまっすぐした形じゃなくて若干反ったような形をしています。 いつか機会があったら見てみてください。
焼きなましと焼きならし
焼き入れ、焼き戻しの他にあと2種類の熱処理があります。 まずは鋼を柔らかくする焼きなましという操作です。
金属を削って加工するとき、もちろん鋼は柔らかい方がいいですよね。 削りやすいですから。
そのために焼きなましという熱処理を加えることで、 金属を加工しやすい素性に変えていきます。
実際にどんな操作をするかというと、 変態点以上、つまり700度以上まで温度を上げて、
その後にゆっくりゆっくり冷やしていきます。
この冷やす操作を水とか油を使って急に冷やしたら、 焼き入れという操作でしたね。
焼きなましは冷やし方が違います。 ゆっくり冷やす方法がちょっと特殊でして、
炉冷という言い方をします。 加熱する炉の中に入れて、ゆっくり冷やしていきます。
水とか風に触れさせると急に冷えてしまいますので、 加熱した鋼を熱い部屋の中に入れて徐々に冷やしていくんです。
これだけゆっくり冷やすことで、金属の組織というのはものすごく綺麗に整っていきます。
組織が整って均一性があると、加工のムラがなくなって綺麗に削ることができます。
このゆっくり冷やして組織を整える操作っていうのは、 プラスチックとかセラミックスとかガラスとか
様々な材料で行われています。 最後に紹介するのが焼きならしです。
金属を加工するときは、削る以外にも型に流し込んで形を作ったり、叩いて形を作ったり、
圧力をかけて押し出したり、いろんな方法があります。 どの加工を行っても、作ってすぐっていうのは加工に伴う力が残っていて、
若干歪みが発生しています。 その鋼の組織を均一にしてあげるのが焼きならしです。
なんか似たような操作、すでに説明しましたね。 焼き戻しという操作に役割が似てるんですけど、
温度が違います。 加熱して、休冷して残った残留応力を取り除くために、
変態点以下の温度にして空冷する。それが焼き戻しでした。 それに対して今回お話しする焼きならしは、変態点以上の温度に上げます。
空冷するのは同じです。 変態点以上の温度まで上げるので、結晶の状態の根本的な部分をまず1回変えます。
その後にある程度ゆっくり冷やすことで、組織をかなり均一化してくれます。 英語ではノーマライジングというらしくて、
一旦リセットする感じがありますね。 焼き入れ、焼き戻し、焼きなまし、焼きならし、4種類の熱処理を紹介してきました。
もう1回おさらいをします。 基準は変態点以上に温度を上げるか、
冷やす速さがどうなのか、という2種類の見分け方です。 変態点以上まで温度を上げて、一気に冷やすのが最初に話した焼き入れ。
その焼き入れの後に行うのが焼き戻しです。 変態点より下の温度まで加熱して、空冷します。
ある程度ゆっくり冷やすというイメージです。 今回説明した操作の中で、変態点以下の温度にするのは焼き戻しだけです。
3つ目に紹介したのが焼きなまし。 変態点以上まで温度を上げて、炉の中でゆっくり冷やします。
金属加工がしやすくなります。 そして最後に紹介したのが焼きならし。
変態点以上まで温度を上げて、空冷させます。 胃がたに入れたり叩いて加工した金属を最後整えるような操作です。
こうしてみると、熱のかけ方でいろんな状態に変わるんですね。 この熱のかけ方っていうのは熱履歴と言ったりします。
高い温度なのか、低い温度なのか、 時間をかけてなのか、ゆっくりなのか。
熱履歴によって材料の挙動が変わるっていうのは覚えておくといいと思います。 ちなみに金属と同様に特に熱履歴の影響が大きいのがプラスチックです。
プラスチックも内部が結晶性を持つ部分もありますので、 熱履歴によって機械的物性や熱的物性が変わります。
プラスチックを目的の形に加工する、 つまり成形するときは温度や冷却の速さっていうのがかなり影響します。
プラスチックの再利用するときもそうです。 過去に与えられた熱とか再利用するときにかけられた熱っていうのが影響を及ぼします。
熱履歴によって変わる材料物性、ぜひ覚えておいてください。 今回はここまでです。
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