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2025-11-12 14:55

#46 凄いぞ切削油!化学の視点で見てみよう!

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今回は切削油の話です。材料を加工するときに使用する切削油、ただの油じゃありません!様々な添加剤が入っていて、ものづくりの現場を支えています。

(2025/11/14 追記)酸化防止剤の役割を、金属の錆止めのように言ってしまっています。正確には切削油の酸化劣化防止の役割です。こちらで訂正いたします。

 

切削油の回を取り上げていただきました!実際に使用されている切削油の写真まで!

【参考資料】

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プラントライフは、化学プラントの技術者である私かねまるが、化学と工場に関するトピックを、分かりやすく紹介する番組です。 毎週水曜日の朝に定期配信! LISTENで公開後、各種Podcastアプリにも配信されます。

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サマリー

このエピソードでは、切削油の重要性とその科学的な背景について詳しく説明されています。切削油は加工中の潤滑、冷却、防静、および洗浄の役割を果たし、油性と水溶性の2種類があることが解説されています。

切削油の基礎知識
どうも、かねまるです。 プラントライフは、化学プラントの技術者が、化学や工場に関するトピックを分かりやすく紹介する番組です。
今回のテーマは、切削油です。 切削油って知っていますか?
以前、ものづくり系ポッドキャストの日inMECTというイベントで、取り上げてくださいと言われましたので、話してみようと思います。
MECTは、メカトロテックジャパン、工作機械、金属や樹脂など、ものを削る、加工する機械を扱う展示会です。
ここで使われています。
切削油というのは、名前の通り、切削加工するための油です。
つまりは、材料を削るときに使う液体です。
金属やステンレス、アルミニウム、もしくはプラスチック。
いろんな材料を削るための油、世の中の部品、例えばスマートフォンや車の部品、
そういうものは精密な加工が必要です。
そんなときに切削加工が使われて、切削油が役に立ちます。
ちょっと時間はかかりますけど、精密な部品が作れるということです。
もしくは型に流し込んでできた部品とか、叩いて変形させた部品を最後に切削加工、削り取ってきれいにするというような使い方もあります。
材料の中でも金属を削るっていうのは特に大変そうですよね。
調べてみると、刃先、工具と金属が接触するところは800度以上になるそうです。
切削油はその過酷な環境を科学の力で制御する高機能な液体です。
切削油は大きく分けて2つのタイプがあります。
1つ目が油性の切削油。
もう1つが水溶性の切削油。
油系と水系ぐらいの感じで覚えてみてください。
切削油の種類と特性
切削油は加工に伴う摩擦と熱という2つの問題を解決するために、大きく2種類に分けられています。
油性の切削油は文字通り水に混ざらない油です。
油なので潤滑性が良くなります。滑りが良いということですね。
もう1つは錆を防ぐ防成という役割もあります。
ゆっくり精密にきれいに加工するときに使われます。
もう1つが水溶性切削油。
もともとは油っぽいんですけど、水で薄めて使います。
原液を水に入れると牛乳みたいに白濁します。
これを乳化と言ったりします。
場合によっては半透明とか透明なものもあります。
水が入っていますので、とにかく冷却能力が高いです。
熱がたくさん発生するような場合、例えば高速に大量に作るようなとき、
連続的にどんどん加工するとき、そんな時に役に立ちます。
そして何より、油性の切削油と水溶性の切削油との大きな違いは、燃えにくさ。
もちろん油性切削油の油というのは燃えてしまいます。
一方で水が入っている水溶性切削油というのは燃えにくい、
もしくは非危険物という形で消防法的にも全く問題ない扱いになっている場合があります。
ちなみに水が入っていると冷却能力が高いというのは、2種類の特性が関係しています。
一つが非熱ですね。油よりも水の方が温度が上がりにくいんです。
ですので、同じ量の水と油を使ったら水の方がたくさん冷却してくれます。
そしてもう一つが気化熱です。水が加熱されて蒸発するときに大量の熱を奪ってくれます。
内水と同じ効果ですね。こうした特徴によって水というのはとても冷却能力が高いんです。
ここからは切削油の役割を見てみましょう。
大きく4つの役割を果たします。すでにいくつか紹介しました。
一つ目が潤滑です。工具と材料の摩擦を減らしてくれます。
二つ目が冷却です。加工に伴う熱を冷やしてくれます。
三つ目が防静です。削った直後のデリケートな表面を錆から守ってくれます。
四つ目が洗浄です。削りかす、切りくずというのを洗い流してくれます。
いろんな役割がある切削油。中に入っている成分を紹介します。
油性切削油と水溶性切削油で種類が異なります。
まずは油性から。中にはまず油性剤というものが入っています。
油脂とかエステル類というものが入っておりまして、
分子の構造の中には長い鎖と材料表面にくっつく部位があります。
材料の表面に吸着して膜を形成する役割があります。
表面を保護して潤滑性を上げています。もう一つ入っているのが極圧材というものです。
極める圧力と書いて極圧です。
切削加工中は高温高圧がかかります。
油がなくなって金属同士がくっつく焼きつきが起きてしまいます。
こうした厳しい環境下に晒されると、自ら分解して金属表面と化学反応を起こす役割があります。
金属自体が傷つく前に、あえて犠牲皮膜というものを作って、工具との摩擦を自分が引き受けてくれます。
硫黄系の成分が入って金属と反応しています。
油性切削油最後の大事な成分、酸化防止剤です。
その名前の通りで酸化反応の連鎖を止めたり、原因となる物質を分解したりしてくれます。
錆に強くなるというような意味合いですね。
切削油の役割と成分
今度は水溶性切削油を見てみましょう。
油と水が入っているので、海面活性剤が使われます。
混ざらない水と油を混ぜて乳化させる役割があります。
身近な例だとマヨネーズですね。
これもお酢と油の中に含まれる卵黄のレシチンという物質が海面活性剤として仲介人になっています。
水溶性切削油では、水の中に油が分散している形で存在しています。
もう一つ入っているのが消耗剤です。
泡を消すと書いて消耗です。
切削加工中に泡が発生してしまうと、そこは空気の場所になっちゃいますので、
削るための切削油が存在しないということになります。
加工中に泡が発生してしまうと、熱が取り除けなかったり、潤滑性が悪くなったり、悪いことばかりです。
消耗剤の成分が泡に入り込んで、表面張力を下げて泡を消してくれます。
そして最後、水溶性切削に入っているのは防腐剤です。
腐るのを防いでくれます。
工業用品が腐るっていうイメージあんまりないかもしれないんですけど、腐るんです。
油の中に水が入っていて、なおかついろんな添加剤として有機物が入っていますので、
バクテリアにとっては栄養になります。
とても最高の環境になっちゃってるんですよね。
菌が繁殖すると腐肺が起こって独特の匂いが発生してしまいます。
最初はスライムができたりして、だんだんと硫化水素、
温泉の香りの元になるような成分が出始めたりします。
それもあって、あらかじめ防腐剤を入れて菌の繁殖を防いでいます。
pH級以上のアルカリ性になると菌の繁殖が遅くなりますので、
pHの調整も行われます。
入っているものはアルカリ性にするといっても水酸化ナトリウムのようなものが入っているわけではなくて、
アミン系の成分というものが入っています。
大学の頃に私もアミン系の成分というものは使ってたんですけど、
アミンはアミンで嫌な匂いがするんですよね。
加工の現場では匂いが広がらないように対策はされているみたいなんですけど、
やはり作業環境として匂いというのは問題になっているみたいです。
今面白い匂い対策として切削油に柑橘類の香りを混ぜたようなものもあるみたいです。
切削油には単純な油だけじゃなくて極厚剤とか油性剤とか防腐剤とかいろんな成分が入っています。
これを使うことはあんまりないと思いますけど、覚えているといいことがあるかも。
もしくは金属を加工してますという知り合いがいらっしゃれば紹介してください。
いつもプラントライフをお聞きいただき本当にありがとうございます。
おかげさまでこの番組は間もなく配信1周年を迎えます。
1周年に向けてリスナーさんからのお便りを募集しています。
いつも聞いていますといった応援メッセージだけでも大変励みになります。
ちょっとだけ贅沢を言うと、この解説が分かりやすかったとか、このトピックが印象に残っているとか、好きだった回を教えてくれると嬉しいです。
この機会だったら回答してもらえるかなという質問でも大丈夫です。
お便りがないと寂しいんですよね。せっかくの1周年なんで。
ぜひとも皆さんの声とともに記念を迎えたいです。
この機会にぜひよろしくお願いします。
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今回はここまでです。
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それではお聞きいただきありがとうございました。
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