バーベキューにおける熱の伝導
どうも、かねまるです。 プラントライフは、化学プラントの技術者が、化学や工場に関するトピックをわかりやすく紹介する番組です。
今回は、熱を伝える伝熱の話です。 熱の伝わり方には、大きく分けて3種類あります。
これらの要素が関わるのは、工場だけではありません。 とても身近な、バーベキューを例に、伝熱について紹介します。
キーワードは、電動・帯流・放射の3要素です。 それでは、バーベキューを始めましょう。
まずは、熱伝導です。 バーベキューコンロの上に、鉄の網を置いて、炭を起こして準備が整いました。
そこに牛肉を1枚置くと、どうなるでしょうか。 まず一番最初に熱が伝わるのは、肉と網が触れているところです。
高温に寝せられた、鉄の網から肉の表面へ、直接熱が移動していきます。 これが熱伝導です。
鉄は、熱をよく伝える性質を持っています。 肉が接触した瞬間に、焼き目がついて香ばしい匂いが立ち上ります。
この網から肉へ熱がジュッと伝わる瞬間が、電動伝熱の典型的なイメージです。 肉を見ると網の形に焼けているのが特徴的ですね。
もし網ではなくて、鉄板の上で焼いたら、肉と鉄板が広く接触するので、さらに効率よく熱伝導が進みます。
次は大流です。 注目したいのが肉の周りを取り巻く空気の流れです。
炭火の上では炎がゆらゆらとなっていて、 熱せられた空気が上に向かって立ち上っています。
これが自然大流というものです。 空気を温まると軽くなって上に移動します。
そして周囲の冷たい空気が下から流れ込んで、また加熱されて上に上っていきます。 この空気の循環が炎を揺らしながら食材全体を包み込むように温めていきます。
特に効果を発揮するのがケトル型グリルと呼ばれるものです。 見た目が丸くて蓋を閉めるタイプのバーベキューセットですね。
片側に炭と反対側に食材があって、蓋を閉めると内部で自然大流の循環が起こって、 温風が食材の上下を包み込んでくれます。
直火よりも大流伝熱による比率が高くなっています。 空気の循環による伝熱なので、食材に均一に熱を通すことができます。
自然大流による伝熱の他に強制大流による伝熱というのもあります。 バーベキューをしている時に火力が弱まってきたなと感じて、
内輪で仰ぐことってありますよね。 これ自体は空気を強制的に流し込んで炭に酸素を送って燃焼を活発にしています。
この時、温められた空気が強制的に循環させられています。 この循環によって
空気の熱が周囲に伝わるようになります。 これが強制大流による伝熱です。
そして最後が放射です。 バーベキューの主役ともいえる現象ですね。
じっくり燃えた炭の表面を見ていると、真っ赤に光っているような部分があります。 ここから赤外線が放たれています。
この赤外線が肉の表面に直接届いて分子を振動します。 そうして表面を一気に焼き上げます。
放射伝熱の効果は香ばしさと表面のカリッと感として現れます。 円赤外線という言葉、よく聞きますよね。
この円赤外線の力で肉の外側をしっかり焼きながら内部の水分を閉じ込めます。 そして外は香ばしくて中はジューシーに仕上がってくれます。
さらにこの放射というのは食材だけではなくて人の体にももちろん作用します。 焚き火やバーベキューの前に立っていると
空気を通さずにじんわり暖かいなあって感じると思います。 赤外線によって放射熱が皮膚に直接届いているからです。
バーベキューという身近なシーンの中に実は伝熱の3要素がすべて含まれています。 一つ目が網を通じて肉に熱が伝わる熱電導。
2つ目が空気の流れで熱が伝わる大流。 3つ目が炭火の赤外線が表面を一気に焼き上げる放射です。
熱交換器の基本
こうして整理すると楽しい食事にも工学の教科書に出てくるような現象がすべて揃っていることに気がつきます。
バーベキューでは自然に3種類の伝熱が起きています。 では工場ではどうしているのか。
実は同じ原理を意図して設計して使うのが熱交換器というものです。 ここからプラントでよく使われる熱交換器の話に移ります。
熱交換器はその名の通り熱を交換する装置です。 ある流体から別の流体に熱を移すために使われます。
例えば化学反応で発生した熱を冷却水に逃してあげる。 原料を反応温度まで予熱してあげる。
蒸気で液体を加熱する。 そんな使い方があります。
化学プラントで放射を使うということは少し少ないんですけれども 熱交換器では基本的に熱電導と帯流の2種類の伝熱を組み合わせています。
中には仕切りがしてあって2種類の流体がそれぞれ別のルートで通せるようになっています。
仕切りを伝って熱い流体から冷たい流体に向かって熱が伝わります。 熱交換器の中は複雑に流れるように設計されていて
熱電導によって伝熱が起きたときに内部で帯流が起こって温度が均一になるように設計されています。
効率的に伝熱を行うために熱交換器は様々な形が考案されています。 代表的なのがシェル&チューブ型の熱交換器です。
シェルと呼ばれる太くて長い容器があります。 そこに低温の流体を通します。
シェルの中には大量のチューブ、管が通っていてそちらは高温側の流体が通ります。
シェル側の低温流体とチューブ側の高温流体が伝熱することで熱交換を起こします。
その他にはプレート式熱交換器というものもあります。 薄いプレートを重ね合わせてそのプレートの隙間に流体が通ります。
プレートの隙間を流れる流体の温度は各層で交互に乗っています。
例えば1層目が高温の流体。 2層目が低温の流体。
3層目が高温の流体といった形ですね。 プレートの表面で伝熱が行われています。
身近なものにも熱交換器が使われています。 皆さんの部屋にもあるエアコン。
あのエアコンの中に実は熱交換器が入っているんです。 普段はカバーで隠れているので見えないですけれども運転しているときの様子を想像してみてください。
室内のエアコンを開けてみると薄い金属のフィンが並んだパーツがあります。 これが熱交換器です。
そこに冷媒という液体が流れていて 部屋の空気と触れ合うような構造になっています。
部屋の暖かい空気はファンで吸い込まれて冷媒に熱を渡して冷やされます。 冷やされた空気はエアコンの吹き出し口から出てきて部屋を快適な温度にしてくれます。
部屋の暖かい空気と冷媒とで伝熱を行ってくれるのが熱交換器です。 では冷媒が奪ってくれた室内の熱はどこに行くのでしょうか。
実は室外機の方にも同じように熱交換器がついています。 こちらは逆に冷媒が持ってきた熱を外の空気に放出しています。
室外機の前に立つと暖かい風が出ているのはそのためです。 エアコンの仕組みを整理するとエアコンは冷媒という熱を運ぶ物質を使って室内の熱を冷媒に移して
冷媒が室外機に熱を運んで 室外機で外の空気に熱を渡すというような流れを繰り返しています。
この熱を渡す部分が熱交換器です。 普段何気なく使っているエアコンも実は伝熱を効率に行うための熱交換器が使われています。
日常生活での伝熱の探求
バーベキューの時のように皆さんも身の回りの伝熱をぜひ探してみてください。 今回はここまでです。
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