第百三十四話『哀しみの目線を失わない』-【漫画家篇④東京都世田谷区桜新町】 長谷川町子-
2018-03-24 14:53

第百三十四話『哀しみの目線を失わない』-【漫画家篇④東京都世田谷区桜新町】 長谷川町子-

東急田園都市線の桜新町の南口に、サザエさん通りがあります。
そこをさらに行けば、長谷川町子美術館。
国民栄誉賞を受けた漫画家・長谷川町子が生涯を通して集めたコレクションの数々が展示されています。
彼女がかつて暮らしていた当時の桜新町は、畑が拡がるのどかな街でした。
砂利道に、木の電信柱。木造平屋の家からは隣の家族の笑い声が聴こえてきます。
1952年、昭和27年4月11日の朝日新聞に、印象的な4コマ漫画が掲載されました。
ムシロを背負い、ヤカンをぶらさげたみすぼらしい髭面の男が、磯野家の前にやってきます。
幼いワカメが門の影からその様子をじっと見ています。
男は、塀の上からこぼれるように咲き誇る桜を見つけ、地べたにムシロを敷き始めます。
どっかりと座った彼は粗末な日の丸弁当を拡げ、散りゆく桜を眺めながら満面の笑みを浮かべるのです。
その様子をじっと見ていたワカメも、笑顔になります。
セリフはありません。1コマ目と4コマ目のワカメの表情の違いに、長谷川の優しい心が見えてきます。
漫画家・長谷川町子は、弱い者を好んで描きました。
戦争で傷ついたひと、いじめられる動物、貧しい家族。
決して声高なヒューマニズムを歌うことはしませんでした。
あの4コマ漫画のワカメのように、ただ、静かに見守る。
何も言いません。何もしません。
でも、その目線の低さ、あったかさは『サザエさん』の根幹にありました。
ひとは、強く生きなくていい。ひとは、全部持っていなくていい。
弱いから、足りないから、ささやかに助け合い、強調しあい、共に生きていく。
そんなメッセージは、今も私たちの心をつかんで放さないのです。
70年以上もの間、愛され続けている国民的漫画『サザエさん』を世に送り出した、漫画家・長谷川町子がつかんだ明日へのyes!とは?

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