藤田美術館にもお茶碗や茶釈、なつめなどたくさんのお茶道具が収蔵されています。
また、展示の方法も道具としての側面を意識した作りになっているようなんです。
展示室もそうですよね。見る角度も上から置いてあるように見える。
茶室でだいたい正座をして膝の前にお茶を出されて、それを取り上げて飲んだ後に、
ちょうど太ももの上ですよね。おへその前ぐらいでお茶碗を見る時の角度で見えるように展示の台を設定しよう。
実は他の美術館に行くと分かるんですけど、もっと高いんですよね。胸の前ぐらいにあるんですけど、
そうするとすごくいい作品だなって思うんですけど、親近感はないんです。
なんかもうガラスの向こうのすごくいいもので触れることもできなくって、
誰か有名な人が持ってたやつですよねってなっちゃうんですけども、
それがずっとちょっと高さが下がっておへその前っていう、いわゆる茶室で見る角度だと、
もちろんいいものなんだって思ってもらえるんだと思うんですけども、
それよりもそこにお茶が入ったらこういうふうに見えるんじゃないかなとか、
そこに自分の手が入ったら、これぐらいの大きさで手だとこう持てるかなって想像が働く。
美術館って美術院を見るときってそっちの方がすごく大事じゃないかなって思っていて、
なので普段使うときの角度で見えるように。
国立美術館っていうのはもう基本的にガラスの向こうにしかもうお茶会で使わないけれども、
富士谷美術館では全部お茶会にも出ていくんですか?
それと絶対お茶会には出さないお道具ってあるんですか?
例えば天目茶碗とかは、天目茶碗で飲んだことあります?
いやないですないです。
あれすごいね、お茶を飲みたくなる器っていう感じじゃないのかなと思ったり、
洋変天目茶碗っていうね、今から800年近く前に作られたお茶碗で、
未だに作り方が完全には解明されてないし、
最近になってやっとわかってきたのが、
青い模様が出るメカニズムはちょっとわかってきたかなっていうぐらいのお茶碗なんですよね。
世界に3個しかなくて、3つとも日本にあります。
そのうちの1つが富士谷美術館にあって、3つとも国宝に指定されてるんですけども、
800年前に作って、未だ作り方わからないじゃないですか。
それでお茶飲んだら、なんかなるんじゃないかな。
何がなる?
なんか物理の法則とか超越した何かが起こるんじゃないかな。
なんか急にどっか晴れたりとか。
そういう意味ね。
なんかあるんじゃないかと思うんですよ。
それをすごく思ったのが、NHKさんの番組の中でもやっていただいて、
蛍光X線で分析調査をしたんですよね。
黒い色と青い色の場所を両方測ったんですけど、成分が全く一緒なんです。
っていうことは、青いものは入れてない。
で、これは光学、光の反射で青く出てるんだっていうのがわかったっていう番組だったんですけども、
それをやるときに、黒いところも青いところも素材が一緒で、
で、うちの両辺天目って口のところに銀色の金属がはまってるんですね。
フクリンって言うんですけども。
この金属が、僕たちはずっと鈴鹿鉛って言ってたんです。
で、なぜかって言うと、数百年経ってるのに銀色のままだんです。
で、シルバーだと酸化して黒くなってくるので、
あ、じゃあ鈴鹿鉛が入ってますよねっていう話をしてたんです。
測ったら銀だったんですよ。
で、酸化しないんですよね。
で、その理由はわからないんです。
そのときに来た化学の専門の先生も、
からない、呪いとかって言うぐらいだったので、
余計飲めないなっていう気がしますよ。
おそらくは銅が入ったりとかしてる、今よりも純度が低い銀なので、
それで酸化しにくいのかなみたいな話にはなったんですけど、
なんかそういう謎が多すぎると、
飲みたいっていうよりは、ちょっと遠くで見ときたいっていうんですね。
でも結構古いお茶碗はお茶会で飲んだりはしてる?
えっと、ほぼ飲まないです。
ほぼ飲まない?
はい。ただ、お湯を通したりはもちろんします。
そうしないと表面が化せていったりだとかっていうのがあるので、
ただ、これは飲んでも大丈夫だなっていうのは、
たまに手入れの一環として。
理事会ではそういうことにしてるんですね。
そんなことはないです。
ちょっとちょっとジョイさん、
いくら道具として使うものだからといって、
美術館に収蔵されているお茶道具でお茶を立てたいなんて思っていませんか?
純粋経験が大切というのは日頃話しているとは思うんですが、
重要文化財に指定されているお茶もたくさんあるんですから、
発言には気をつけて。
でも、そうですね。
番組でちょっと飲まなきゃいけないとかそういうときはあるんですけど、
基本的には飲むことはほとんどないですね。
でも、お茶会では出すんですよね?
出すんですけど、使わないです。
あ、そうなんだ。使わないでただ飾ってある。
そうです。水差しなんかはお水を入れて、
花入れも花をいけるんですけども、
それも花入れは中に落としを入れて、
作品と水とか花が直接当たらないようにするようにしてます。
これはすごく難しいんですけども、
お茶道具って使ってると育つんですよね。
僕たちは育つっていう言い方をするんですけど、
だんだんシミが出たりだとか色が変わって景色が変化してって、
僕たちはそれすごい好きなんですけど、
古い美術品がこれ以上育つと、どんどん景色変わっていっちゃうんですよね。
長い目で見ると。
私たち生きてる間にはそんなに変わんないと思いますけど、
そうなっていったら評価が変わってきちゃう場合があるんですよね。
なので、なるべくはそんなに使わない。
景色が変わってしまいそうなものに関しては、
あまり触らないように。
なるほどね。
色がつかない水とかお湯でちょっとくぐらせるっていうぐらいです。
でも難しいよね。シミとかみんな美しいって言いながら、
自分が起こすと怒られるみたいな。
そうなんですよね。シミつけたら怒られますからね。
なんですけどシミが綺麗なんですよ。
シミが綺麗っていうのも多分なんか日本とか独特ですよね。
あまり普段シミが綺麗って思わないんですけど、
ああいう茶碗とか手機だとかそういうのだけですね、思うのが。
でも現代でも今またお茶ってなんかちょっと盛り上がってるような雰囲気があるんですけども、
今の茶人たちって、
藤田伝三郎みたいなスキシャっぽい切り口でお茶会とかやったりはしてますよね。
そのコミュニティと藤田さんとかとどういう関係になるんですか。
いろんな方がお茶会開いて、
それこそ昔の本当にスキシャさんのお茶ですよね。
流派にとらわれない、このお道具がこうでっていうのはされてる方本当にたくさんいらっしゃって。
なんですけども、じゃあ美術館とその方たちで何かするかっていうと、
すごく接点が逆に難しいんですよね。
むしろ美術館よりも見えるじゃないですか。
間近で。
本人たちがね、持ってるから。
で、お茶会で彼らは使えるので。
そっかそっか、じゃあ美術館で使えないようなものは彼らは使うので。
使ってるので。
じゃあ国立美術館は全く使えない、藤田はもうちょっと身近に触れる。
で、彼らはもう実際にバンバン使っちゃう。
スキシャさんはもう本当に使えるので。
なるほど。
いいなぁとは思いますけど、羨ましいなっていうのもありますし。