デジタルアーキテクトで千葉高大の学長、伊藤穰一ことJoyさんが、今一番興味のある分野を深掘りしていくJoy Ito's Podcast。
先週に引き続き、気仙沼ニッティングの代表、三田雷珠子さんとのトークをお届けします。
僕もちょっとスタッフのアンチョコを読んでて、すっかり知ってるつもりなんだけども、
たぶん聞いてる人で知らない人もいると思うので、ちょっと今に至る自分の話を少ししてもらってもいいのか。
私、学生時代から国際協力のような分野に興味が非常にあったので、国際協力NGOなどでボランティアしたりとかそういうことをやってたんですけれども、
ボランティアなどしてみると、やっぱりある程度、営利と言いますか、ビジネスで駆動している活動じゃないと、なかなか持続していかないとか、広がりを持たないということがあるなということを感じて、
ビジネスの分野を一回しっかり勉強しようと思って、マッキンゼというKコンサルティング会社に入って、
マッキンゼで2年ぐらい仕事をしたところで、ブータンという国から首相フェロー、首相の補佐のような形で働かないかとお声掛けいただいて、
マッキンゼに入る時からもそういう事前事業をやりたいという、事前事業というのか、復興をもっともっと興味があった。
経済的に弱い立場の地域がいかに自立していくかというテーマに基本的にはずっと興味があって、2年ぐらい仕事をしたところで、ブータンでそういうポジションの人を探している。
もともとブータンつながりなんだよね。ブータンの話すると、みんな玉子さんが一番分かっているって言って紹介してもらったんだけど。
いや私いた期間は短くて1年ぐらいなので、もっと長く関わられていらっしゃる方々もたくさんいらっしゃると思うんですけど、ただその私がブータンにいた時期というのは民主化直後のブータンで、
初めて選挙で選ばれた総理大臣の近くで、国の産業戦略の根幹を作る仕事ではあったので、短い中で非常に濃い体験をさせていただいたというのは非常に恵まれていたところですね。
ブータンという国は、ただ経済発展を追い求めるのではなくて、GNHと呼ばれているんですけど、国民の総幸福をいかに上げていくかを中心とした国づくりをすると考えていて、そうは言っても経済的に自立していないと、
性格的にも危うい場所にある国なので、経済的に自立はしたい。ただ国民の幸福を一番に考えたいというポリシーを仙台国王が作っていて、その目的にかなった産業政策を作るということが仕事で、非常にやりがいがあるものではあったと。
そもそもそういう恵まれてない弱い国がどうやって元気になるかっていう、そこに興味持ったきっかけとか理由とかって何かあるの?
一つは子供の頃から親に国際キャンプみたいなところに参加させてもらう機会があって、小学生の時だったんですけど、世界中のいろんな国に友達ができるという現体験ができたというのが一つ大きくあって。
一方で中学生高校生ぐらいになって、自分の意思でそういういろんな国のユースが集まるような会議に参加するようになっていったんですけど、そうするとですね、例えばフィリピンなんかそうだったんですけど、すごい素敵な会議場でやってて、ホストしてくれるその国の人たちは非常にナイスな感じで接してくれるんですけど、その会議場のすぐ隣にスラムがあったりするんですよね。
そうすると、ある種そのカンファレンスのほうが茶番に見えてくるじゃないですけど、このホストしてくれてるフィリピンの人たちは私たちは優しいけど、何でこの同じ地域にこれだけ困ってる人がいるのに助けないのかなとか、いろいろ考えてしまったりとか。
あと、私の父親が中小企業を経営してたんですけど、バブル崩壊後非常に苦労している姿も見ていて、経済的な苦労っていうのが非常に人を追い詰めるなということも身近なところで見ていて、そういうものが合わさってのことだったかなと思いますね、振り返ると。
一つ今日の話聞いてても、近似役に立ってないかもしれないけど、世界観はたぶんすごく玉子さんのがあって、デザインはグローバルスタンダードだし、値段もしっかりとるっていうのって、結構地方に行くとそれできてない人が多いよね。
だから日本酒は安い。まず安く叩かれる。今までこんな値段で買ってたからこれでいいよねとか。あと、やっぱりちょっとデザインを変えると海外にも通用できるようなものにして、海外のマーケットに入っていけるのって、ちょっとしたことだけど、全然回る仕事と回らない仕事の差ぐらいあるよね。で、それちょっと自信がないとできないしね。
ブータンも、主要産業が当時は水力発電と観光にしてたんですけれど、やっぱり観光ってたくさんお客さんを呼んだらオーバーツーリズムになってしまいますし、ブータンの観光資源って基本的にはその手付かずの自然と昔ながらの人々の暮らしとかだったりするので、オーバーツーリズムになるとその観光資源そのものが失われてしまう。
そうすると観光客を増やすっていう戦略は基本的には、そこを無限に増やすっていう戦略はもう基本的には取れないので、単価を上げていく。で、その場面にサービスレベルを上げていくっていう道しか基本的にはないんですよね。
で、あり手にいってしまえば、後発途上国の小国でそれをやろうって非常に勇気がいることだと思うんですけれども、そのブータンの当時の首相も幹部も、そういうところのなんていうか肝が座ってる人たちで、ブータンの人たちって基本的にはなんか自信満々なのでやれるだろうと思ってるところがあって。
田中さんもそうなの?
いや、私はブータンがなかったら難しかったかもしれないですね。やっぱりブータンでの経験はけせんぬまにっていうのをものすごく生きていて、小さな地域であっても、ある種先進的なフィロソフィーを示すことはできるし、
本当にいいものを作って提供することで、ブランドになっていくこともできるしみたいな、それをそのなんていうか、成功体験というか、肌身を持ってやればできると思えたんですよね。
それは多分ブータンの経験のおかげで、お湯もまともに出ないブータンですけど、アマンリゾーツがあって、1泊15万円とかしてて、それでもずっと満室でみたいな感じだったので。
ブータンでの経験があったからこそ、けせんぬまニッティングを始めることができたと語る三田雷さん。マーケティングや製品を作る過程でも独自の路線を歩んでいます。
アトリエでアミテさんたちを交えた場所でのインタビューをお聞きください。
でも積極的にマーケティングしてないにしても、今どういうチャンネルでお客さんは出会うんですか?
うちがでも主に発信をしているのはSNSで、でもやっぱり実際に実物触りたい、試着していきたいという方が多いので、各地でポップアップをしていて、ハイシーズンに出るようにしていて。
昔、コロナ前うち直営店を持ってたんですけど、東京でやってたんですけど、やっぱり春夏のシーズンに少し無駄が出てしまうので、ポップアップでいいかなと。
それよりもポップアップを各地で秋冬に時期を集中させてやるという方がお客さんにとってもいいかなと思って、すごくスタイルを変えているところですね。
アンデルのも年中やってるわけだよね。
アンデルのは年中やってるんです。
発注が波が。
春に注文を受けて秋までにお届けするサイクルが1個あって、それは一番のんびり編めて楽なんですけど、
9月に注文を受けてどうにか年内にお届けしたいみたいな感じで。
寒いから欲しいっていう人と寒くなりそうだから欲しいっていうのがありときり。
そうなんですよ。それで少なくとも今シーズン1回は着れるように早く届けてあげたいねっていう。
このね、北斎が大変なんですよね。
一段間違えた。
もうそうですよね。
あれ?みたいな。
これは。
これするのまだよね。
一人でね、孤独にやらないと。
孤独、そう。
大変。
規則性のないものって大変なんですよね、やるのが。
そうだよね。そうか、1個ずつ見ながらやると。
編み物って一段一段進むので、横一列の中のパターンに規則性がないとすごく大変なんですよ、編むのが。
これね、やってみると、作ってみると分かるんですけど、
例えば、これは波で、波のところは白いふわふわにしてるんですけど、
北斎これわざとそうやったんだなと思ったんですけど、
波のこの角度と富士山の角度が一緒なんですよ。
こうやってるとここも波な気がしてホワホワさせそうになっちゃったりするから。
そういうのですよね。
そうか、こう入っていると全体が見えなくなっちゃう。
見えなくなっちゃう。
多分でもこれは、作ってみて、この富士山の角度と波の角度を揃えたいなんだとか。
じゃあ、ふわふわ富士山バージョン。
富士山のそそのだけ間違えて、ふわふわになっちゃったやつとかあるじゃないですか。
ぼっつるなってなったんですけど。
なるほど。
そうか、直せないので、戻るのは難しいの?
ほとんどのものは直せるんですけど、これややこしすぎて。
なるほどね。
ちょっと難しいんですよね。
解くのも大変なんです。
メジャーメント撮るのはリアルじゃない?
そうなんです、そうなんです。
なので完全にオンラインにはできなくて、各地でのポップアップとか取り扱い店さんとかもお願いしている感じですね。
結構わざわざ気仙沼の店舗にお越しくださる方も多くて、
昨日も再寸のためにわざわざ。
そういう人たちは、ポップアップじゃなかったっていうことを誰かから聞いて、いいなと思って行こうっていう人も多いの?
そうですね。気仙沼ニッティングで商品を買うときは気仙沼に行くって決めていたっていう人が多いんですよね。
あれもう何年やってるんでしたっけ?
もう12年。
でも毎年増えているお客さんの数?
そうですね。リピーターの方もいらっしゃいますけど、毎年リピーターの方3割、新規のお客さん7割という感じなので。
楽しい。
楽しいですよ。楽しく思えるペースでしかやってないっていうのもありますけどね。
ブランドとのコラボでも、これ受けちゃうともうみんなしんどくなっちゃうかなって思う。
と、アミテッドさん全体を統括している人がいるので、その人と相談して、これ受けたらみんなしんどくなっちゃうねって言ってやめよってやめちゃうので。
もうこの国際でもみんなこう大変っていうので、もうこれ1回限りにして増産をしませんって先方に伝えてます。
ブータンでやってたグローズナショナルハッピネスに近いよね。GDPよりもハッピネスの方が大事だと。
ブータンの方が理論的に整理されていて、ケセン沼に来てみんなとケセン沼の土地のペースに合わせてやっていたら、そんな無茶なことにはならなかったっていう感じですけど。
でも日本の伝統的なビジネスってどっちかっていうとそうだよね。
ハッピーに元気に長くやるみたいな感じだよね。
そうですね。
でも多分世の中的にこれからそっちだよね。
だと思いますね。持続可能じゃないですからね、あんまり無理した。
うちの会社は途中でちょっと考えるところがあって、資本的にも私がMBをして100%私が持ってるので。
キックスターターってあるじゃない。キックスターターも僕はエンジェル投資したんだけど、途中で彼ら上場しません宣言して、そしてうちはBコープになって。
買い取って欲しい人は言ってくれれば買い取りますって言って。
ベンチャーキャピタルもユニオンスクエアベンチャーっていうベンチャーキャピタルなんだけど、でも配当だけで上場しないっていう会社に切り替えたの。
コホンちゃんのベンチャーから。珍しいんだけど、でもできるんだなって。
それどうなったんですか。結局みんな株買い取って欲しいになったのか、そのままそれでもいいようになったのか。
僕なんかは個人投資家だったから、もう全然、配当多分もらったことないと思うけど、でも別にみんないいんじゃないのみたいな。
うちの妹もマインクラフトの中でサマーキャンプで子どもたちを教育するっていうスタートアップやって、これも僕投資したんだけど、途中から回るけど儲かんないっていうのでNPOに変えちゃったの。
みんなの株主を寄附に変換させて。
そんなことできるんですね。
アメリカはなかなか伸びないと、伸びてないものは死んでるっていうイメージがベンチャーキャプテルの世界ではあって、でも日本は伸びなくても元気なものがたくさんあるよね。
これただの勝手な仮説なんだけども、今ミシュレンスターって日本ってフランスの4倍あるんだよね。
そうなんですか。
東京200で京都が100で大阪100ぐらいの、パリって100しかなくて。
ミシュレンスターって拡大よりも質じゃない。
お店を拡大しなくても限りなくどんどんどんどん入っていくっていうのが日本のお店の美学だから、みんなそれなりに拡大じゃないところで競争してるんじゃない。
それが逆に今日本が海外、まあ安くなっちゃったのもあるんだけども、すごいインバウンドが多いのは質に関する。
しかもずっとできるっていうのがすごいなと思って。
ただ長くやるってよりも一生懸命やることが難しいよね。
ダラダラと伸びないでやってるのって意外に一生懸命やらない国って多いと思うんだよね。
僕はブータンでやってて、一番ここが今苦労してるのは、ハピネスはわかったけど、グリッドが一生懸命やらない。
本当にそうながらブータンそうなんですよね。ちょっとエグゼキューション全般弱いので。
一時期すごくベストセラーになって、グリッドっていうやり抜く力って日本では訳されてますけど、本が。
グリッドね。
年齢が上がるほど持久力が上がるみたいなデータがあって。
うちのおじさんたち見てても絶対そうだなって。
辞めたいとかって思わないの。何時間やったって構わないもんね。
年に合った仕事をやる。
家にいたらすぐだね。夕飯食べて寝るまではだいたい編んでる。
それだけやっぱり長くやれるから上達するんですよね。
若い人の方がすぐ飽きてもうやりたくなったみたいに。
65歳で引退するサラリーマンたちはそこからスタートでもう一個職業できるってことだよね。
そうですよね。うちでもそういう人は多い気がします。
定年までどこかに勤めてて、定年退職をきっかけに一から練習してた。
男性もいるの?やってる人たちって。
前にいたんですけど今はいなくて、女性でも多いんですかね。
それはなんで?
なんででしょうね。でもやっぱりうちがもともと仕事をしたいけど毎日出社するのは難しいっていう人たちのために仕事を作ったような背景があるので、
そうするとやっぱりこの地域でそういう事情がある人が女性が多いんじゃないですかね。
それはやっぱり私は東京出身なんですけど、東京から来ると毛線沼っていうのはやはり男女の役割意識みたいなのが非常に高く見えますし、
特に漁業が船って男の人しか乗っちゃいけないっていうのがあって、
しかもそれは宗教観と結びついてて、船の神様は女の神様で嫉妬して起こるからみたいなところがあって、
漁業周りの仕事を男性がしていたっていうようなところからなんだと思うんですけど、
男の人は外に出て女の人が家の周りのことをするみたいな感覚がやっぱり強いので、
おうちのことをしなきゃいけないんだけど仕事もしたいっていうような声を多く聞きました。