シンポジウムの記録「失敗と試行錯誤をさせれば、センスがなくても全員成功する AI時代に創発を起こす方法」
書誌情報メモ。
「失敗と試行錯誤をさせれば、センスがなくても全員成功する AI時代に創発を起こす方法」
ログミーBiz,
2020年1月22日公開。
これは、ログミーBizというウェブサイトに掲載されているシンポジウムの記録です。
そのシンポジウムというのは、2019年10月29日に開催された京都リサーチパーク地区開設30年記念シンポジウムというものでして、
そこでは、5名のパネリストがディスカッションしているというシンポジウムになっています。
これはウェブページで言いますと、3ページにわたって記録が掲載されていますが、その3ページ目、最後のものですね、そこのページのタイトルが最初に言いましたものになっているわけです。
このパネリストの発言の中で、特に松山大耕さんという京都のお寺、妙心寺退蔵院というところの副住職をされている方ですが、この方の最後の方に出てくる発言が非常に興味深いものでして、
これが孫泰蔵さんの『冒険の書』でも紹介されていました。
その内容というのは、禅の修行というものを紹介してですね、禅の修行では全員失敗させる仕組みがあるという話なんです。
これは松山さんのご自身の経験でおっしゃっているということなんですが、例えばご飯を炊く係というものが急に命令られてですね、それでその修行している人たちの大量のご飯を炊くことが求められます。
もちろんそんな大量のご飯を、これは薪で炊くそうなんですが、薪で炊くなんていうことをやったことはない人がほとんどというか多分全員だと思いますけれども、ですので失敗するわけです。
失敗しないように懇切丁寧に説明などは行わないというんですね。
ですので失敗するんです。
ですが試行錯誤をしているうちにちゃんと炊けるようになるということなんですね。
しかもこれは修行の一環でこれ全員やるそうなんです。
ということはみんな失敗の経験がある、そういうものなんですね。
けれどもそれが試行錯誤のうちに全員成功するということもわかっている。
だからこそ安心して失敗させるというところもあるんでしょうけれども。
こうやって失敗から学ぶということをですね、おそらく他の様々な場面でも行うということなんだろうと思うんですね。
これが禅の修行では非常に効果的に機能しているので、ずっと千年と書いてありますけど、千年も続いているんだということなんですね。
現代の教育と失敗から学ぶ機会の奪われ方
これを今の教育と対比させてみますと、今の教育はますます懇切丁寧になってきています。
つまり失敗しないようにあらかじめあれこれと注意をするようになってきているということですね。
これは大学生に対しても行われているわけで、
今日では初年次教育というものが大学一年生に行われています。
高校までの勉強と大学の勉強は違うので、何もないとですね、戸惑う学生が多いだろうと。
だからうまく大学の勉強に慣れさせるために、結構な時間を使って授業を行うわけですね。
私が大学生だった頃、40年以上前ですけれども、もちろんそんなものは何もなくて、高校から大学に入学しますと、ほったらかし状態ですよね。
ですので、もちろん戸惑うわけですが。
ですが、何か違うなと、どう振る舞ったらいいんだろうかというふうにあれこれ考えて、だんだんと大学に慣れていくということなんですね。
もちろんそこには様々な失敗もあっただろうと思いますけれども、
でもそこから学んで、大学というのはこういうところなんだと、こういうふうに学ばないといけないんだということがわかってくるわけですけれども、
そういう機会を今の大学は奪っているわけですよね。
つまり失敗から学ぶ機会を奪っているのが今の教育ということになる。
これは別に大学だけではなくても、全ての段階の教育において言えるのではないでしょうか。
子供たちが失敗しないようにという大人の配慮というんでしょうか。
ある種の親心と言ってもいいかもしれませんが、それによって子供に失敗させないようにさせていく。
そのために子供は失敗することを非常に恐れるようになるわけですね。
失敗しない一番いい方法というのは何もしないことです。
挑戦しないということが成功もしない代わりに失敗もしないということで、
自分から何かをやるということがだんだんなくなっていく。
今の大学生なんていうのはまさにそういう感じなんですね。
その感じは年々強まっているような気がします。
これはもちろんいいことではない。
良かれと思ってやっている教育がどんどんダメにしていくという逆説がある。
そのことを孫泰蔵さんはこの禅の修行を聞いてですね、
やっぱり失敗をする、安心して失敗ができるというですね、
そういう環境が大事なんだなというふうに思って、
この『冒険の書』に紹介しているんだと思うんですけど、
その点私も100%同感という感じです。
以上です。