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どうも、しぶちょーです。今回も、ものづくりのラジオをやっていきたいと思います。
このラジオは、産業機械の技術者である私が、ものづくりに関するトピックを主観を交えながら、ざっくばらんに紹介するというラジオです。
難しい技術の話はしないので、何か作業しながら聞いていただければ幸いです。
早速ですが、今回のテーマはですね、設計失敗学、火星探査機の消失事故、です。
前回のラジオでも、設計失敗学の話を取り上げたんですよね。
フィードピントの炎上事故っていうのを、ちょうど一個前にやったんですけど、これが意外と好評だったんで、今回早速、失敗学の第2弾をやりたいと思います。
失敗から学べることは多くあるんですね。失敗は成功の母なんて言いますけど、例えばそれが自分の失敗じゃなくても、他人の失敗を考察することで教訓を得ることができるわけです。
ドイツの政治家のですね、オッド・ビスマルク氏はこんな言葉を残しています。
愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶと。あなたが自分のことを賢者と思うのであれば、歴史から学びましょうね、ということですね。
それほど過去の失敗っていうのは財産なんですよ。なのでこのラジオで、過去の歴史的な失敗事例からですね、教訓を学んで、それをあなたの設計ノウハウとかね、
仕事に生かしてもらえればなと思います。 今回紹介する失敗事例っていうのが、火星探査機マーズ・クライメート・オービターという、
大層の名前の火星探査機があるんですけど、こいつの消失事故です。 これは設計の失敗事例というよりはヒューマンエラー的な話なんです。
ただ面白いと言ったらあれなんですけど、結構ドジな話なんですよね。 ただかなりあるあるの話だと思うんで、これぜひ自分語として聞いておくと非常に
いいと思います。 じゃあこれがね、どういう事故だったかっていうのを説明していきます。
まずですね、この火星探査機のマーズ・クライメート・オービター、 こいつはどんな探査機だったかっていうと、こいつはですね、火星の気象や気候、あと待機中の酸素とか水素ですね、
量を観測するために作られた火星探査機です。 今から20年以上前ですね、1999年にアメリカのロッキード社、
これ結構有名な会社ですね、今も。 ロッキードって言ったら、まあ多分ピンとくる人も結構多いんじゃないかなと思うんですけど、
ここによって製作された探査機です。 ロッキードが作って、NASAによって火星に打ち上げられたと。そういう探査機ですね。
この頃はですね、NASAが火星探査に非常に力を入れていて、 Mars Surveyor Program っていうミッションを掲げてですね、
すでにもう数十台の探査機を火星に送り込んでいた時代です。 こういう幾多の成功で勢いを尽いていたNASAはですね、
さらに火星の深い探査を目指して、1998年から1999年にかけて新しいミッションをスタートします。
そこではね、火星の気候とか、待機の状態とか、あと水があるのないのとか、かなり踏み込んだ調査を行うことを前提としていました。
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すごい機体を集めてて、その機体に応えるべく開発されたのが、2台開発された火星探査機があるんですけど、
そのうちの1台が今回の事故で消失してしまう Mars Climate Orbiter というやつですね。
ちょっと話しとれるんですけど、この宇宙の話をするたびに毎回思うんですけど、本当にすごいよね、この、なんて言うんだろう、
1998年って言ったら、まだパソコンもね、まあまともに普及しているような時代ではないし、
電子機器だってそんなに性能が良いとはお世辞には言えないですよね、この時代は。
なのに火星まで探査機を飛ばせちゃうんですもんね。 これすごいですよね。もっと言ったら、
アポロ11号、だから月面着陸なんて1969年ですよ。 これ凄まじいよね、本当にもうなんかファミコンみたいなスペックの
電子機器とかPCしかないのに月に行くっていうのはなんか、すげーなーって毎回こういう宇宙の話をしていると思うわけですね。
なんでこの非常にですね、スペックの高いPCに恵まれた、この環境だったらもっとすごいことやらないとなって、
今の時代の技術者は非常に思いますよね、この時の話を聞くと。 っていうのはちょっと去っておいてですね、話を戻しますけども、
Mars Climate Orbiterは打ち上げ自体を無事に成功して火星に到着はしたんですね。 ただ、ただですね、ここからがミソですね。
火星の上空の140キロから150キロの軌道に入る予定だったんですけど、 なぜかその想定よりもかなり低いですね。
高度57キロという軌道に乗ってしまいます。 でですね、このまあ結局目標としてた高度と100キロぐらい狂いがあるわけですね。
なんでこの100キロの高度をですね、下がってしまう時に大気との摩擦を受けて発熱して、 搭載していた機器に深刻なダメージを受けてしまうと。
その結果完全に通信が不能になって、コントロール不能に陥って、 その後、結局復旧を期待するも虚しくですね、
Mars Climate Orbiterが再び姿を現すことはなかったわけです。 なんでこの広大なこの宇宙で迷子となってしまってですね、
今この瞬間もこの火星探査機というのは宇宙のどこかに彷徨っているんですね。
ジョジョの奇妙な冒険のカーズ様と同じですね、考えるのをやめて戦ってるわけです。 ちょっとジョジョのネタわかんない人はね、すみません。
ポイントはですね、なんで想定よりも100キロも低い軌道に乗ってしまったのかということですよね。
この原因を調査したところですね、驚愕の事実が判明するわけですね。 なんでこんなずれたのか、この原因はですね、単位の取り間違いにあったんですね。
結構あるあるでしょ、単位を間違えちゃいました。 これで探査機を消失したというわけです。
誰が間違えたのかって言ったら、探査機をコントロールする人たちです。 火星探査機のコントロールというのはですね、
火星探査機からの位置情報をもとに位置を特定する追跡班という班と、 あとその追跡班からもらった位置情報を受けて、
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エンジンどういうふうにコントロールすればいいよねっていう出力を計算する計算班に分かれてたわけです。
これが計算班は出力結果をヤードポンド法で行ってて、 数値を報告していたんですね。
受け取る側はですね、それをメートル法の値だと勘違いして受け取っていったと。 このポカミスですね、単位の取り間違い、取り違いから生じた誤差によって、
結果としてMars Climate Orbiterは消失してしまったと。 しかもですね、周回軌道を突入時に、探査機からですね、軌道が低すぎますよという危険信号が上がっていたにも関わらず、
追跡班はまあまあ大丈夫でしょうと判断して、自分たちの過ちに気がつくことがなく、そのままスルーしてしまったんですね。
その結果数十億の被害をこぶったわけです。 こんなね、宇宙とか航空業界のものづくりの産業っていうのはハイテク中のハイテクですよ。
そんなエリート技術者たちがこんな単純なヤードポンド法とメートル法をね、間違えると、
取り間違えるというこういうミスで大きな事故を起こしてしまうわけですね。 あはは、サルも木から落ちるんだねーという話ではなくて、これはね、明日は我が身ですよと思ってほしいと思います。
単純なミスっていうのはですね、言い換えればどの分野でも起こりうるミスです。 このMars Climate Orbiterの失敗から教訓を習いましょう。
じゃあ何が教訓かって言ったら、たった一つですよね。 単位には注意しますよねということです。
非常にシンプルなミスだからこそですね、対策も難しいんですね。 人が起こすミスなんでダブルチェックとかクロスチェックとかね、確認方法を工夫することでミスの発見を
ミスが発見する確率をですね、上げることはまあ可能だと思います。 ただまあ今回はですね具体的な対策じゃなくて
単位を間違えないために設計者としては何を意識すればいいのかということをちょっと 考えていきたいなと思います。
私の個人的な意見としてはですね、 設計者が単位を間違えないために必要だと思うのは
計算の肌感覚を身につけるということですね。 なんか5・7・5でいい感じですね。計算の肌感覚を身につける
ごめんなさい、全然意識しなかったけど、なんか語呂がいい感じですね。 というのをやってほしいということです。ここで肌感覚っていうのは計算を行う前にですね
だいたいこのぐらいの数字になるだろうなと予想できる力のことです。 これでねベテラン技術者とかベテラン設計者になればなるほど
計算する前に計算を終わっているんですね。 その計算する前の段階でもうだいたいこのぐらいの値が出るだろうなっていうのは
もうだいたい予想ついているんです。 あとはその予想が本当に正しいのかどうかを計算で確認するっていう
そういう感じで仕事を進めているんですね。 なんでベテラン技術者ともなれば計算途中で単位を間違えたら
桁が違うんで、この計算結果おかしいなっていうのを持ち前の肌感覚ですね。 気づくことができます。計算結果に対して疑問を持つことができるわけですね。
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この肌感覚っていうのが設計力の一つだと思っています。 でねこのじゃあ肌感覚どうやってつかめばいいのかっていう話なんですけど
まあこれはまあ 式と向き合うことだと思いますね。計算で使う設計計算で使う式を
式として利用するんじゃなくて意味として理解するこれが大事です。 公式を公式のまま利用するっていうのはですね
誰にもできることですね。この公式の持つ物理的な意味合いを正しく理解した上で 設計計算を行うということが大事です。
本当それこそね公式に値を代入して計算するだけだったら小学生でも多分できると思います。 これは技術者の仕事ではないですね。
設計計算というのは当然算数の問題を解くのとはわけが違うわけですから ちゃんと意味を理解して計算しないといけないと。
ただこれができてない技術者っていうのが多いっていうのは事実なんですね そこのあなたこれを聞いてのあなたちょっとイメージしてみてくださいね
今イメージとか自分の業務をちょっと振り返ってみて 例えばですよ
誰が作ったかもわからない 秘伝の計算エクセルみたいなの社内にあるでしょ
あるじゃないですか。そこに数字をぶち込むことが設計計算だと思ってませんかと
この中でですねどんな計算が行われるかわからずに出てきた数字を鵜呑みにしてませんか したことはありませんかというのをちょっと胸に手を当ててですねもう1回
振り返ってみてほしいです それは
設計計算ではありませんよ ただただ思考を停止ですね数字を入力するという業務を行っただけです
結局ですねそんなことを繰り返していると設計計算の肌感覚が身につかずですね 数字を数字数字としてでしか
捉えることができないということになります 実際のねojtの現場だとやっぱ多いんですよこの
この計算はこのエクセルに数字を打てばできますよ と先輩から教えられてなるほどじゃあこの数字エクセルを使えばいいんだっていう
技術者がやっぱちょっと多いというかそういう技術者もいるです多いっていうのは ちょっとわかんないですけどそういう技術者もいるんですよやっぱね
このマーズクライメントオービターの消失事故も本質的な問題はそこにあると思います 僕も詳しくはわかんないですよこの現場にどういうやり取りが行われてはわかんない
ですけど 追跡犯がですねエンジン出力に対する肌感覚を持っていれば
あれなんかこの値ちっちゃいけど単に取り間違えているのかな という疑問を持ってたはずなんですね
計算派にですね情報を提供して出てきた数字 これを数字として単純に取り受け取ってしまったというのが今回の本質的な失敗だと
思います 計算派が行っている計算内容ですね
理解せずにブラックボックスとして使用したと これがこの事故の本質的な原因だと思います
これはですね設計者が秘伝の計算エクセルで設計計算を行うと構造的には同じですね 肌感覚とか
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資金をね意味として理解するとか じゃあ具体的に何をすればいいんですかっていうことですけど
僕がお勧めしているのは 手計算です
というのもですねこれまあ僕は新人の頃ですね散々やらされたことなんですけど まずは紙を使って手計算してみましょうねと
紙を使って計算して設計してみませんかということです あのねまあ本当に入社して1ヶ月ぐらいですね
エクセル禁止ネット禁止 カタログと教科書と紙ですねペンはいはいどーん
これでちょっと不動形の設計をやってくださいというアナログなトレーニング これを上司から命じられました
配属されて1ヶ月ぐらいやることほとんどないんでひたすら紙に計算を書くというのを やってたんですけど
上司曰くですね設計最近はやっぱ計算ができる 設計者が少ないとそれだけツールが便利じゃんってことなんですけど
この設計者のね計算ができないっていうのはちょっとまずいとまずは手計算で肌感覚 数値に対する肌感覚を身につけてくれということでこのトレーニングをやってました
まるまる1機種分のですねまあ駆動計算やったんですけど 結局計算書は手書きで何十枚にもなりますよね
時間にかなり余裕があったんですよ新人の時に だからまあこの式の出どころはどうなんだろうとか
どういう流れに導かれてどういう流れに導かれた公式なんだろうとかね 結構深くまで突っ込んでこうゆっくり見ていくことができたんですよ
で結局この最初の経験がめちゃくちゃ良くてこれでかなり 肌感覚っていうのをつかむことができたと個人的には思っています
これ以降ですねまあ新しい分野の設計計算を行うときは必ず最初はですね 紙で計算するようにしています
毎回同じ計算を繰り返すとかこれはもう汎用的に使えるなっていうものは自分でエクセルを 作って自動化してますけど
基本的に人が作った計算エクセルをそのまま信用して使うってことはありません 極端なんですけどネット上にもいろんな計算ツール落ちてるんですけど僕それは全部それも
全部信用してないです 自分でしっかり中身を理解して使った使った作ったツールしか基本的には使わないっていう
スタンスでずっと設計やってました こうやってね手動手計算で式の意味と向き合いましょうねとアナログな方法なんですけど
これがやっぱ計算の肌感覚見つけるために一番いいのかなと思ってます なかなかね忙しい業務の中でさ
毎回手計算なんてやってられないんですよ ただやったことない計算であれば1回はね式のでどころとか意味を追うべきだと思います
それをやってるかどうかでやっぱ将来大きな差になると思うんで これから新人の方とか接近者を目指す方っていうのは結構ね
式ボンって持ってきてここに代入すりゃなんか計算できるじゃんってあるんですけど まず意味を追うっていうのをしっかり意識してほしいなと思います
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単位の取り違いっていうのは典型的なヒューマンエラーですね まあ人は必ずミスをする生き物なんで
単位のミスっていうのはと絶対起きます そして単位を間違えるっていうのは基本的に桁レベルで一桁二桁とかね
平気で数字が変わっちゃうわけですね それ上にですねミスが流出した場合っていうの被害はめちゃくちゃ甚大です
それはねこの今回紹介した Mars Climate Orbiter この消失事故からも痛いほどわかりますよね
もちろんですねミスを起こさない仕組み作りも重要なんですけど ただ何度も言うんですけどこれはミスですので絶対に起こると
絶対に起こるんだったらミスったことに気がつく設計の肌感覚こそ重要だと思いますよね
俺は何度も確認してるからもうトリプルチェックしてるから単位のミスは絶対ないんだって 思ってる人がいればそれが一番やばいですね
はっきり言っておきますよあなたは単位を間違えます あなたは単位を間違えますあなたは単位を間違えます
大事なんで3回言いました あなたはね単位を間違えるために生まれてきた
まあそう言っても過言ではないぐらい間違いなんですよ 僕も結構間違いなんで
そうやってね自覚を持っていた方がいいですねそれぐらい誰もが間違いもらうと疑って まずかかると
だから絶対間違えるんだから間違えない対策よりも間違いに気づく方を磨いの力を磨いた方が 合理的ですよねという話です
それがまあ設計の肌感覚だという話ですね ちょっとふわっとした表現で曖昧な能力であるんですけど
この能力ってのは確かに存在してて 結構ベテランの人がですねこのこれ一桁違うな
絶対間違ってるなみたいな感じでミスを気づいているっていうシーンですね これ何度も僕は10年以上設計をやってきて見かけています
なんでこれ間違いなく存在する力なんで まあやっぱ式と向き合うその便利なツールに数字だけ突っ込んで計算した気になっては
いけないということを今回のラジオで僕は言いたい それだけ伝わればいいかなと思っています
だからあなたの会社にあるですね 秘伝のタレみたいな継ぎ足しエクセルあるでしょ
あれを一回捨ててあなたの手で計算して作り直してみてください 中身を見てください
それできっと見えてくるものがあるはずですよ ということで今回のラジオを締めとさせていただきたいと思います
私はですね渋谷町技術研究所という技術ブログを運営しています 週1目標で更新してますのでぜひそちらも見てください
今回紹介した内容ですねこれブログ記事になっています 文字で読みたいよって人はですね説明欄のリンクから飛びますのでそちらも見てみて
ください またツイッターでも毎日役立つ技術情報の発信を行っています
朝7時20分夕方18時20分ですねもう時間を固定して毎日投稿してますのでそちらも チェックが良かったらフォローしていただけると嬉しいです
あとものあのついたようにですねものづくりのラジオ用のハッシュタグありますので このラジオの意見とかね感想もシャープものづくりのラジオ
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ノーはですね no ですねこぼしれんの のラジオでタグつけてつぶやいていただけるとめちゃくちゃもね
飛び回るぐらいにより組みますのでお願いしますでは今回のラジオはここまでとさせていただきます 以上渋谷町でしたではでは