1. ものづくりnoラジオ-しぶちょー技術研究所
  2. #11 設計失敗学~フォード・ピ..
2023-01-19 16:55

#11 設計失敗学~フォード・ピントはなぜ燃えたのか?~

失敗から学べることは多くあります。
例えそれが自分の失敗でなくても、失敗を考察することで教訓を得ることができます。
そこで今回は有名な失敗事例を紹介し、その失敗を考察していきたいと思います。

今回紹介する失敗事例は
フォード・ピントの車体炎上事件です。

アメリカの車市場に満を持して登場した、フォード社のピント・・・
欠陥を知りながら回収を行わなかったフォード社

フォード・ピントはなぜ燃えたのか?

この事件の当事者だったら、あなたはいったいどういう行動をしていたのか・・
そういった視点でも聞いていただければ幸いです。

+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-information+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-

ブログ: しぶちょー技術研究所(https://sibucho-laboratory.com/)

Twitter: しぶちょー(@sibucho_labo)

元記事: 設計失敗学~フォード・ピントはなぜ燃えたのか?~

(https://sibucho-laboratory.com/ford-pinto/)

連絡先: sibucho.laboratory@gmail.com

00:00
どうも、しぶちょーです。 今回も、ものづくりのラジオをやっていきたいとおもいます。
このラジオは、産業機械の技術者である私が、ものづくりに関するトピックを主観を交えながら、
ザックバランに紹介するというラジオです。
小難しい技術の話はしないんで、何か作業をしながら、聞き流す感じで聞いていただければ幸いです。
さて、皆さんにここで質問なんですけど、皆さんって何か失敗ってしたことありますか?
私はですね、生まれてこの方は一度も失敗したことないんですけど、
っていう人はいないですよね。必ず皆さん、失敗するわけです。
失敗は成功の母なんて言葉もあるようにですね、失敗から学ぶことって非常に多いです。
しかもですね、
たとえその失敗が自分の失敗でなくても、
失敗事例を考察することで、実は教訓って得ることができるわけです。
当然、ものづくりの分野においてもですね、多くの失敗があります。
有名な歴史的失敗事例というものがですね、山ほどあるわけです。
ドイツの政治家のですね、オッド・ヴィスマルク氏はこういう言葉を残しています。
愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ、と。
つまりですね、過去の歴史上の失敗というのは財産なんで、
あなたが賢者であるならば賢くそれを学びましょうね、ということです。
そして今回はですね、その歴史上の失敗事例の中から、
教訓を学んでいきましょうね、という回です。
私は、支部長技術研究所というブログをやってますけど、
この失敗事例シリーズというのを書いてるんですけど、
これがやっぱり僕のブログの中でもですね、人気ナンバーワンのシリーズです。
今回はそのシリーズの音声化第一弾という感じで、今ラジオで喋ってます。
じゃあ早速行きたいと思うんですけど、今回紹介する事例はですね、
フォード・ピントの車体炎上事件というものです。
これはね、具体的なその設計の失敗事例というよりは、
技術者倫理の問題として考えさせられることが多い問題です。
技術者である限り、あらゆる方面からの板挟みというのは絶対避けられません。
それでもなお、正しい判断を下す義務が技術者にはあるんですね。
この事件の当事者だったら、あなたは一体どういう行動をしていたのか、
そういう視点で考えていただけるといいかなと思います。
では紹介していきましょう。
まずですね、このフォード・ピント事件って何なの?というところから、ざっくり説明していきますと、
まずですね、
一言で言うと、アメリカの自動車メーカーであるフォード社のピントという車がですね、
めちゃくちゃたくさん炎上したという事件です。
ピントはですね、
1960年代の後半にフォード社が販売したサブコンパクトカーですね。
当時のアメリカの国内というのはですね、のコンパクトカー市場というのは、
ドイツ税とか日本税、そういった輸入車にかなり押され気味でした。
フォード社は、自国の市場をほぼ奪われてしまっていると言っても過言じゃない状態で、
それを何とか防ごうとしてですね、急ピッチでコンパクトカーの開発に乗り出したわけです。
03:05
これですね、通常ですね、新しい車開発するのが3年半ぐらいかかるであろう開発期間を
2年弱まで短縮して、超劇的なスピードで開発、生産が行われました。
そして満を持して導入されたのがピントという車ですね。
このピントはですね、重量900キロ以下、価格2000ドル以下というですね、非常に競争力のある仕様で登場しました。
正直なんかね、2000ドル以下って言われてもピンとこないですよね。
ピンとこないですよね。
ピントだけに。
ということですね、あの
あの、簡単に例えると、現在の
貨幣価値で例えてちょっと説明しますけど、ピンとくるようにですね。
当時の
アメリカで猛威を振るってた国産車で言うと、日産のダットさんとか
ホンダのN600とか、トヨタのカローラとか、そういう車ですね。
例えばカローラで言ったらですね、1960年代のカローラって販売価格で言うと新車で43万円ぐらいです。
43万円安いじゃんって思うんですけど、まあ
現在の貨幣価値に換算するとですね、だいたい5、6倍なんで、だいたい300万円弱
の車ですね。
で、今の感覚で言うと、ちょうどプリウスの
標準グレードの新車が320万ぐらいなんで、まあそのぐらいの車だよって思ってもらえると
感覚として一致するかなと思います。
さらにですね、状況で例えるとですね
あの、今ちょうどあれですよね、テスラが結構日本車、日本の市場に入ってきてるじゃないですか。
で、まあかなりこう、EVの市場を
食われつつあるというか、かなり押されつつあるよっていう状態です。
まあそれとだいたい一緒かなと思いますね。
例えばこの状態で、テスラ新車500万ですよーってなっている時に
同じ車格の国産EV車が、じゃあ300万ですよって言われたら、それ売れますよね。
ピントってのはちょうどそういう立ち位置の車で、
アメリカ国内市場の旧青春みたいな立ち位置だったわけです。
そしてこのピントはですね、この2000ドル以下という
覇格ともいえる価格を武器にして、順調に人気を博していくわけです。
しかし皮肉にもですね、これがフォード社の信頼を地に落とすことになります。
実はですね、このピントの設計には重大な欠陥があったんですね。
ピントはですね、8バックの車なんですけど、設計上ガソリンタンクの位置が非常に悪くて、
このなんか8バックで荷物の入れるところの下のかなり後ろの方に
ガソリンタンクが位置していて、
背後から追突されると、ガソリンが漏れ出して、
高確率で車体が炎上すると、
とんでもない欠陥を抱えたまま市場に投入された車だったんですね。
その結果ですね、当然追突事故によって約500人が消失するという惨事を招いてしまいます。
これがフォードピントの車体炎上事件というやつですね。
で、この事件の大問題な部分はここからなんですけど、
06:03
これかなり本質的な問題の部分で、実はですね、フォード社は
このピントのガソリンタンクの欠陥を事前に知っていたんです。
車内で行った衝突実験では、
12回のうち11回が不合格で、ガソリンが漏れ出して
車体が炎上したと。
後ろから突っ込まれたらほぼほぼ燃えるよみたいなのを知ってたんですよ、ピント、
ピントというかフォードは。
で、この運転者が危険にさらされる可能性が高いと知りながら、
その欠陥というのは、
製品になってもですね、修正されることはなかったんです。
しかも、その修正されなかった理由は非常に単純で、コストが高くなるから、ただそれだけでした。
この事件によりですね、フォード社は世間から強い非難を浴びて、
企業としての信頼が失墜してしまったというわけです。
で、この点末をですね、詳しく説明すると、
フォード社が強い非難を浴びた最大の理由っていうのが、
フォード社内で行われた非倫理的なコスト計算というのにありました。
通称ピントメモと呼ばれる書類ですね。
このピントのガソリンタンクの欠陥というのは、
1台あたりだいたい11ドルのコストアップを許容できれば、
改善できるということは分かってたんですよ。
フォード社はですね、とんでもないことですね。
じゃあこのコストアップ、11ドルのコストアップ許容できるのかっていうのを判断する指標として、
人の命を天秤にかけたというわけです。
ざっくり言うとですね、
設計回収してコストアップするより、
欠陥で消費費とか怪我した人に医者料を払った方が、
会社としての損が少なくて済むよね、と判断したわけですね。
実際にですね、ガソリンタンクの回収をするか否かを判断するために出回った報告書、
これがピントメモと呼ばれるものなんですけども、それではこのような数字が記載されています。
まずですね、設計回収を行った場合ですね、1台あたり11ドルのコストを払ってガソリンタンクを直した場合は、
全体で1億3753万ドルのお金がかかりますよ、と計算しています。
一方で直さなくて、人が怪我とか死んじゃったりして、
その人たちに医者料を全部払った場合、どのぐらいのお金がかかりますかって計算したら、
4553万ドルだったわけですね。
じゃあ直すより、医者料を払った方がお金少なくて済むよね、としてしまったわけです。
とんでもない判断なんですけど、
保護者は仮に損害賠償を支払ったとしても、このままピンと織り続けた方が利益になると判断して回収を見送ったと。
社内で行われた非倫理的なコスト計算の事実が、後に報道者を退社した元社員からの告発によって明らかになるわけです。
その結果、皮肉にも報道者は計算の何十倍もの損害賠償を支払うことになった、と。
そういう話ですね。
これがフォードピン等の車体炎上事件の全容なんですけど、
じゃあこの問題の本質ってどこにあったんだろうなって話ですよね。
09:00
当然さっき説明した通りですね、人の命と利益を天秤にかけた非倫理的なコスト計算、これが全てです。
ただ、考えてほしいのはですね、
なんでフォードのエンジニアはこのコスト計算を許容してしまったのかなっていうところです。
このテーマに関しては様々な見方あるんですけど、これはもう本当に私の
考え、単なる私の考えですけども、本質的な問題は2つあるかなと思っています。
1つ目の問題はですね、具体的で高すぎる目標設定です。
やっぱりね、ピントの開発目標っていうのが
あまりにも明確かつ困難だったということが言えるかなと思います。
フォードピントの開発ではですね、
重量900キロ以下、価格2000ドル以下という明確かつ困難な目標が大々的に掲げられていたと。
こういうね、高い目標っていうのは、うまくいけば社員の意識を高めたり、
イノベーションを生み出す要因になります。
結果、このピントっていうのはですね、開発目標は達成されたし、
今までになく低価格かつコンパクトの車を超短期間で市場導入することに
実際成功してるんですね。
ただ問題っていうのは、この明確かつ困難な目標が
明記されなかった別の重要な特性を犠牲にして達成された、こういうことですね。
つまり、簡単に言うと、安全は目標に掲げてないから無視しましたということです。
ここが、高い目標を設定するときの問題でですね、
明確な数値で示された目標があると、
数字で表せないことは無視されやすくなります。
掲げた目標が困難であればあるほど、なおさらその傾向が強いです。
フォードピントの開発というのはですね、コストと重量が明確なファクターでした。
そして安全というのはですね、この11度の設計回収っていうのは
単純に安全の問題じゃなくて、コストと重量という2つの
数字に変換されて評価されてしまったと。
その結果、目標と相反するという理由で無視されてしまったわけですね。
これが明確かつ困難な目標が与える弊害だと言えるでしょう。
2つ目の問題はですね、目標に対する強いプレッシャーだと言えると思います。
すでにですね、アメリカ市場を輸入者に接見されつつあったフォードっていうのは、完全に高発なんですね。
高発である限り、スペックで劣ってたら絶対に勝ち目がない。
これは自明の理です。
ピントが掲げた開発目標っていうのは
困難でありながらも、マストだったんですよね。
で、この社長であったリー・アイヤ国家氏っていう人もですね、進捗をかなり厳しく管理して
目標を厳密に守らせたと。
それはですね、スペックが劣ってたら、そもそもこのピントを開発する意味そのものがなくなってしまうんですね。
だから掲げられた数字目標っていうのは絶対条件だったんです。
加えて、上記を意識した短期開発が並行で行われてたので、
数字目標以外のファクターが無視されやすい環境とか、雰囲気っていうのが
12:00
フォード社内に出来上がっていたんじゃないかなと思います。
今回考えて欲しいのはここですね。
この状況で、あなたならどうしますか?っていうことです。
もしもこの同じような、このフォードの開発環境にいたとして、
あなたはどういう行動をとりましたか?っていうのを、答えはないんですけどね。
自分ごととして考えるっていうのが、すごい重要かなと思います。
技術者ってのは、やっぱ様々な方面からプレッシャーや問題が降りかかってくるんですね。
本当にフォードの技術者だった場合、どういう判断をしたのかな?
っていうのを、やっぱ考える必要があるのかなと思います。
例えば、この自分の今やってる仕事に置き換えて考えてもらうと、そういうのが一番いいのかなと思います。
例えば、今あなたが取り組んでいるプロジェクトの目標は何ですか?
あとは、そのプロジェクトの社会的な役割って何ですか?何に役に立つんですか? そのスペックが。っていうのを深掘りして考えたりとか、
安全を評価する明確な指標はありますか?とかね。
安全とコストを天秤にかけた場合、どのような指標で判断しますか?
とか、
そして一番重要なですね、あなたが判断に使った指標や論理は、
技術者としての倫理と照らし合わせて、
問題のないものと言えるでしょうか?と。
これを今一度自分に問いかけてみましょう、ということです。
当然ね、人の命をコストとして見積もるなんて言語道だ
ですけど、結局高すぎる目標設定とか、
職場の雰囲気や空気っていうのは、そういう当たり前ですらね、簡単に曇らしてしまうんですよ。
これは私の想像なんですけど、
フォードの技術者って多分悪いことしてるよっていう自覚って全くなかったと思うんですよね。
掲げられた目標のために、できる限りのことを
技術者として愚直に突き詰めた結果が、この事件になってしまっているんだと、私は考えています。
やっぱり多忙でさ、視野ががっつり狭まってて、
もう本当に、何だろう、やることがいっぱいでとか、そういうことってやっぱり視野をかなり狭くして、
判断を鈍らせるというか、
とにかくこなすこと、与えられたことをこなすことが、
自分の役割だという考えになっちゃうんですよね。
おそらくそういう状況が、かなり強く引き起こってたんじゃないかなと、
考えています。
どんな仕事をしても、必ずついてまわるのは、このコストですよね。
コストっていうのは、会社の利益に直結しますんで、
必然的に要求やプレッシャーというのは、必ず強くなります。
その中でも、会社が掲げる目標だけにとらわれず、
技術者ならば、倫理的な判断を行う義務があります。
倫理の問題というのは、正解はないです。
ただ、明確な間違いというのはあります。
で、そういう明確な間違い、何なの?って言ったら、これは過去の技術者が犯した過ちです。
私が紹介しているような、こういう技術者倫理とか失敗事例の歴史、これが明確な間違いです。
こういうものをたくさん勉強してですね、
自分の技術者としての倫理観を育てる、この努力も技術者としての責務だと、僕は言えると思います。
15:06
なんで、こういう話を聞いてもらってですね、
ああ、そんな事件があったのか、
自分ならどうするんだろうな、っていうのを考える機会、こういうのをちょっとでも増やしていけたらなと思いますし、
自分も発信の中でですね、いろんな事件を学んで、
ああ、これは自分の開発とか技術の仕事でも活かさなきゃいけないな、
っていうのを勉強していきたいなと思っています。
やっぱりね、こんな失敗あったんだ、あははーとか、あははーはないけど、わーすごいなー、
怖いなー、だけじゃなくて、やっぱりそこに入り込む、気持ちとして入り込むっていうのはやっぱり重要だと思うんで、
ぜひともですね、今回の話を聞いて、
自分がフォード社員になった気持ちでですね、
シミュレーションしてみてください。もう夢に見てください。もうちょっと本屋は、
そういう夢を見てほしいと、思います。ということですね、はい。
最後ちょっとだけ補足させてもらうと、
実はこのフォードピント事件には様々な説があります。
今回の話はですね、この初めての工学倫理っていう本にある事例をもとに紹介しています。
実際のところですね、このフォードが行った非倫理的なコスト計算、ピントメモっていうのは、
フィクションなんじゃないかって言われてる、
言われてます。実はそっちの方が有力なんですね。
この真実は紙の水を知るっていう感じなんですけど、
それでもまあ、もしかしたらフィクションじゃん、
フィクションって説もあるよっていうのも、やっぱり理解してもらえればなと思います。
というわけで、今回のラジオはここまでとさせていただきます。
私は、支部長技術研究所という技術ブログやってます。
週一目標で更新してますので、そちらもぜひ見てください。
また今回の話の内容ですね、ブログ記事もなってますので、文字で読みたいという方は、
ぜひ説明欄のリンクから飛んでみてください。
またですね、ツイッターでも技術情報の発信やってます。朝と夕方ですね、1日2回、
約束技術情報を発信してますので、そちらもぜひチェックしてみてください。
では、支部長でした。
16:55

コメント

スクロール