僕はコウモリと呼ばれ、崖っぷちの家に一人で暮らしながら石炭を得り分ける仕事をしている。高級な石炭である岐阜人を見つけ出す天才だった。祖父が亡くなり、家と仕事を引き継いだのだ。
という感じなんですけど、崖っぷちの家に一人暮らしていると崖の下が墓地になっていて、その場所がもうなんかすでに死に向かっていっている感じがすごくある空気があって、
吉田敦彩さんってどの小説もそうなんですけど、最初の書き出しがめちゃくちゃいいんですよ。
で、ちょっとこのオルモストの最初を読ませてもらうと、めちゃくちゃ私この書き出しがオルモストはめっちゃ気に入ってるんですけど、ちょっと読ませてもらうと、
もうほとんど何もかも植えてしまったんじゃないかと僕は思う。間違っていたらごめんなさい。でもそんな気がする。どうしてかというと、筒木にすることを思いつかないからだ。
どこで買ったのか思い出せないすり切れた青い襟巻きを巻いて、ただなんとなく街を居るついて一日が終わる。
時々石炭を入り分ける仕事をしている。僕はそこでコウモリと呼ばれている。そんな悪い気分じゃない。むしろ自分にふさわしい気がする。
っていう書き出しから始まるんですけど、なんかすごくこの段階でもう終わりに向かっていってる感覚がすごくあって、
この小説、筋だけ言うと、墓地の上にある崖の古い家に主人公が一人で住んでて、ずっとこの話としては石炭を入り分ける仕事をたまにして、
たまに大きなパンを買って、このパンが結構面白いんですけど、パンを食べて生きてるだけっていう、この感覚がですね、空気感がすごく、
リチャード・ブロディガンのスイカとの日々と似てるなと思ったので、そんなにオルモスと長い話はないんで、
もしリチャード・ブロディガンのスイカとの日々を読んだ人は、スクッと読んでいただけたら非常に面白いんじゃないかなと思ってちょっとご紹介しました。
確かに終わりに向かっていく感覚の小説って、やっぱりいいですよね、何か。
決してね、何かそういう希望があるとか、そういうなんじゃないのかもしれないですけど。
そうですよね。で、何か希望とか絶望とかじゃなくて、何かそれを静かに受け入れてる感じがリチャード・ブロディガンのスイカとの日々にもあったし、
吉田敦彦さんのこのオルモスにもすごくあって、何かこう、もう望むことはそんなないけれど、みたいな。
あのスイカとの日々のアーティストの人たちもすごく無欲じゃないですか。
で、このオルモスの主人公も本当に欲がないっていうか、でもそれって生きていくに関して自分はどうなんだろうと思うところもあるんですけど、
でもそこがですね、何か上手く自分の中で読んだり落ちていく形で描かれてるので、そういうのがすごくいいなと思うんですよね。
なるほど、でも感覚が近い小説が日本と海外それぞれあるって面白い。
こういうのって何か読んだらその時に気づくもんなんですか?
なんかあれと今回企画で考えたら一致したっていう。
これ元々実はオルモスと読んだ時に、スイカとの日々の方が前読んでたんですけど、オルモスとが後だったんですけど、オルモスの時に感じたんですよ。
でもこれ両方とも読んでる読書友達に行ったら共感全く得られなかったですね。
だから非常にこれ私の感覚ではあるんですけど、いや全然違うよって思う人も絶対いると思うんですけど、
でも自分はなんか感じたんですよ、この感じ。
なんかすごく終わりに向かっていってる感じがして。
で、何かどっかで読んだことあんなと思って、あ、そうか。スイカとの日々かもと思って。
で、私吉田敦彦さんの作品めっちゃ好きで、結構たしかな方なんで全部読んだんですけど、
ちょっとこのオルモスとはその中でもちょっとやっぱり、なんか基本的に吉田敦彦さんって優しい、
それからはスープのことばかり考えて暮らしたっていう作品がめっちゃ好きなんですけど、
本当そういう温かいスープのような作品が多い人だなと思っています。
でもオルモスとはそういう温かみもあるんですけど、どちらかっていうとそのさっき言った何かを静かに受け入れていくみたいな部分がすごく強くて、
そういう小説が好きな人絶対会うと思うので、ぜひ読んでいただけたらなと思います。
ちなみに高段車から出てます。
いいですね。
じゃあちょっと次、みえさん。
僕が紹介するのは、虚しさを味わう小説として、
まずは、和尚石黒さんの私を離さないでと、今村夏子さんの星の子。
お、なるほど。いいね、いいっすね。
結構共通しているところもある2冊かなと思うんですけど、
主人公がそれぞれ結構純粋な女の子というところがあって、
2人とも2作の主人公の女の子が、どちらも現実ですよね。
自分が置かれた状況っていうのを知らないまま日々を過ごしていくんですけど、
結構読んでいる方は、女の子の言動とか出来事とかそういったのを読んで知っていくうちに、
痛みを結構感じながら読んでいってしまうなという、
そういう共通しているところがある2作かなと思っているんですけども、
先に私を離さないでを読んでいて、
本当にこのファイトデー企画やるってなってから星の子を読んだんですけども。
あ、そうなんだ。
買っていつか読みたいなと思って、読めていなかったんで。
で、改めて、星の子だと少女が大人になる手前までの話なんですね。
結構少女である時代っていうのが丁寧に描かれているというか、
結構女の子めさで描かれているというのがあって。
で、私を離さないといって、第1部は女の子の時代なんですけど、
第2部、第3部とあって、だんだん大人になっていって、
現実ですよね、自分の置かれた状況というのを知った上で、
いろんな行動を起こしていくという、そういうのが描かれているんですけども。
僕がまず思ったのが、星の子を読んだら結構虚しさというかですね、
それを感じてしまって、もしこれちょっと想像したんですけど、
その後に私を離さないでを読んだら、特に第2部、第3部って続く後半とかも、
これもし続きで読んでしまったら、結構果てしない虚しさを感じるんじゃないかって思ってですね、
それが読書体験として果たしていいものかどうかというと何とも言えないんですけども。
そういう想像効果みたいなのがあるんじゃないかなと思って、この2冊を選んでみました。
なるほど、面白いですね。
星の子か、私も両方とも読んでますけど、
数字仕様なんてしょうがなさないで。
今村夏子の星の子も。
今村夏子、星の子から私入りましたから、
確かに少女未戦って、自分の置かれた状況をわからない、知るようになるって言い方だけど、
そういう時の感情、感覚は描かれてますもんね。
確かに面白いかもしれない。
私を話さないでって結構後半になっていくとか、
シリアスな展開になっていったりとか、
いろんな大人ならではの話ってあったりするんですけど、
じゃあ今村夏子さんがね、でも星の子の続きを書いたとして、
何かその私を話さないでみたいな、同じ方向で書くかっていうと、
絶対想像できないもんですよね。
でも何か星の子に通じるものが私を話さないでにもあって、
あんまり個人的にはちょっと思っていて、
そういったところではね、星の子の次に読むには面白いんじゃないかなって。
これ完全に主観ですけどね。
いいと思います。
感覚として思います。
これはなかなか自分も、
そうか、その組み合わせちょっと面白いかなと思った角度から来た感じがするんで、
すごくいいと思います。
じゃあですね、ちょっともうひとつ目立て私の方からご紹介したいと思います。
次はですね、キャッチコピーこんな風に考えてみたんですけど、
逃亡の果てに見つける自分という競馬で、ちょっと2作選んでみました。
1作が、これ海外の方は、ビルビバリーの東の果て夜へという作品です。
もう1つが桜井すずもさんっていう小説家の方が書いてる、
どうしてこんなところにという小説です。
これ双葉文庫から出てますね。
もともと単行本だったのか、ちょっと詳しくないんですけど、
そもそも桜井すずもさんもこれしか読んでないので全然詳しくないんですけど、
この1作をちょっとご紹介したいと思います。
共通点としては、クライムノベルですね。犯罪小説、そちらも。
そして、移動をし続ける話になります。
そして結果、見知らぬ土地で落ち着いたりして、
そこでちょっと生活なんかしたりするところもちょっと似てますね。
今回、まず東の果て夜へもビビビバリーで早川文庫なんですけど、
これもラジオで紹介したことがないので、
たぶんそんな有名な作品でもないのかな。
皆さん知らないですよね。
知らなかった。
そうですよね。
ちょっとざっくりあらすじを話すと、
15歳の少年イーストは生まれて初めてロサンゼルスを出た。
これから人を殺しに行くのだ。
標的の裏切り者は遠く離れたウィスコンシーに旅行中で、
法廷に立つために来週戻ってくる。
法廷でイーストが所属する組織を不利になる証言をする予定なんで、
その前に始末しろというのがイーストが所属している組織の命令です。
イーストっていうのはギャングに所属しているイメージですかね。
本当は元々結構その中でも下の仕事をしてたんですけど、
イーストの不敵話で、
不敵話なのかなどうなのかな。
イーストのせいじゃないかもしれないですけど、
イーストの責任があるところでちょっと問題が起きてしまって、
その始末を取り戻せということで裏切り者を殺してこいという命令が下ります。
車で向かうんですけど、2000マイル移動しますね。
その時に、これ面白いのが殺し屋であるフナカの弟がいるんですよ。
仲が悪い殺し屋の弟がいるんですよ。
構成的に結構面白いんですけど。
あともう2人連れて4人でチームを組んで殺しに行くんですけど、
ざっくり話すと殺しに行って帰ってくるんですけど、
その時いろんな問題が起きちゃって、
イーストはちょっと逃げなきゃいけなくなる状況に陥ります。
しかも1人でね。
逃げ続けて、どこだったっけな。
ちょっと知らない町で暮らしたりとか生活をするようになったりとかしていく話なんですけど、
がまずビルビバリーの東の果て夜へという小説になってます。
これ結構ね、スリリングでめちゃくちゃ面白い小説ですね。
どうしてこんなところにっていう桜井静穂さんの作品なんですけど、
これですね、実はこれもう1個共通点があって、
東の果て夜へも桜井静穂さんのどうしてこんなところへにも両方ともジャケ買いしました。
もう何の情報もなくジャケットだけで買いました。
でどうしてこんなところにの文庫のカバーですね。
めっちゃ買いたくなると思います。
平積みされてて発売した当初だったかな。
もうこれ買おうと思ってすぐ買ったんですけど、両方とも当たりだったっていう小説で、
これどうしてこんなところに逃げ続ける話なんですね。
急に高速でヒッチハイクした車で、とにかく新潟だったっけな。
とにかく北に向かっているところからスタートする話なんですけど、
これなんで逃げて、なんでこういう行動をとっているのかはちょっとずつ語られていくんですけど、
どうやらこの主人公は妻を殺してしまったらしいと。
理由はよくわからないけれども、妻を殺してしまったらしいと。
殺した後、とにかく逃げ続けているという状況ですね。
これ警察よりも、ちょっとなんかこれ気なくさいんですけど、
なんかその奥さんが薬かなんかを、売人かなんかから大量に薬を預かってて、
それを探しているヤクザなのかわからないけど、
このあたりはちょっとヤクザとギャング似てるんですけど、
奥さんも行方不明扱いなんですけど、いないから連絡つかなくなったかどうなったかって、
旦那を探せとなって、旦那を追いかけられたりするんですけど、
でもこの主人公はそんな事実知らなくて、奥さんが大量の麻薬を持ったとか全然知らなくて、
ただひたすら逃げ続ける。自分が妻を殺してしまったので、
とにかく逃げなきゃいけないという思いで、
ずっと日本を新潟から北海道に行って、また南下して四国に行ってとかして、
日本中を回る話なんですけど、
このどうしてこんなところにいるの面白いところは、
私がすごく面白いと思ったところには、
そういう犯罪小説って犯罪を犯してしまった真理を描いたりするじゃないか、
なんで罪を犯してしまったのかとか、
どういう理由があって自分はこういう気持ちで殺してしまったんだみたいなのがあるんだけど、
ほとんどそういうところは描かれないんですよ。
ひたすら逃げてるという状況だけ描かれていて、
それもこの主人公の視点の時もあれば、
逃げてる先で出会って一緒に暮らすようになった女性とかの視点とか、
一緒に働くことになった人たちの視点とかが混ざっていくんですけど、
最終的に東の果て、夜へもどうしてこんなところへも、
逃げ続けた果てに自分たちが一つの答えじゃないんだけど、
在り方みたいなのを見つけて終わっていくってところがすごく似てて、
どっちも疾走感とか展開の良さとかがいいです。
エンタメですけどものすごく面白かったなと思う。
でも多分どっちもジャケ買いしてそこまで期待しないで読んだっていうのもでかかったと思うんですけど、
でもすごく面白い小説でした。結構おすすめですよ。
どっちも読んだことない人だったらどっちから読んだ方がいいとかっていう順番のおすすめとかってありますか?
海外文学好きでミステリー好き、ミステリーというかサスペンスもの好きなら東の果て、夜へですね。
ちょっと日本のエンタメ小説結構好きだなっていう人はどうしてこんなところへの方が多分全然入りやすいと思います。
どうしてこんなところに私今手元にないんですけど、これは誰かにあげちゃいました。
言い方あれですけど、1回読めばもう大丈夫だな、楽しめたなっていうタイプの。
東の果て、夜へもそうかな。1回読めば読み返してあれはないかなって感じですけど、でも面白かったですね。
面白そうだけど特にこの桜井雀さんがどうしてこんなところへって、これいいですよね。
これってちなみに印象としては日本でそういう近いものを書いてる作家さんって他にも。
どうなんだろう、私そう、日本の作家、こういうエンタメ系の作家詳しくないからあれなんですけど、
逃げ続けるって意味では伊坂幸太郎のゴールデンスランバーにちょっと近いっちゃ近いかな。
常にこう逃げ続け、転がっていくっていう感じでは、誰かに囲まれたりとかしながら。
本当に設定で見ると結構孤独な作品かなと思うんですけど、エンタメ性もかなりあるっていう。
そうですね。その孤独感みたいのも私好きでした、一人で。
基本的に移動する話が好きなんですよ。映画もそうなんですけど。
ロードムービーとか大好きなんですよね。なんか知らないけど移動ってすごく、移動の中で生まれる物語ってすごい好きで。
本来って起きなかったらドラマチケンが起きてしまわないな。
すごい好きですね。おすすめです。
ちょっと男臭い話かもしれないけどね。
ホワイトでらしいのかもしれない。
最後に紹介する本になるんですけども、交差する感覚というキャッチを考えていて、
一冊目がイサベル・アジェンテの日本人の恋人。これ以前にもラジオで紹介した本で。
日本人作家はアヤス・エン・マルさんの口なしという文庫で出てるんですけども、短編集になります。
この日本人の恋人と口なしはこちらも愛の話を描いていて、
それも普通ではない愛の話というのを描いているのかなと。
ちょっとだけそれぞれの説明をしまうと、口なしは日本の作家で、日本社会のリアリティなところとか描いているんですけど、
でも生物的には人間ではないような設定なんですよね。
どういうことかというと、例えば兄弟の口なしという短編だと、
人が簡単に自分の腕とかをもぎ取ることができるというか、
外すことができて、それを相手に渡すことができて、
そういうありえないことが可能になっているので、腕をもらった相手もその腕を愛するというのがあって、
相手の肉体の一部に執着するというと、
そこにも感情を持っているという、異常な愛というのが繰り広げられていくという話が多いです。
この口なしに関しては、本当に常識とは違った、異常と呼べるような愛の話が描かれている、ちょっとファンタスティック。
もう一つの日本人の恋人というのは、タイトルこそ日本人と作るんですけど、
作者がチッピリの作家の人で、アメリカ舞台の恋愛ショーというのを描いていて、
時代とか戦時地球という過去があったり、現代であったり引き継いでいて、
設定としてすごい多様性がある、そういう時代もそうですし、
時代じゃないですね、そういう社会ですね。
多様性のある社会の中で、いろんな人たちの恋愛というのを描いていて、
何がそれぞれ面白いかというと、これもここから完全に主観の話なんですけども、
口なしを読んだ時に、やっぱり日本社会がベースとしてあるので、結構最初は親近感があるふうに読めるんですね。
自分に読んでいて、ちょっとすんなり入っていける短さというか、
でも読んでいくとやっぱり人間離れしているようなことが起きたりとか、
愛の形が結構異常な愛が描かれていて、
これ人によってはちょっとそれって共感できないなとか、わからないなとかってあるかなと思っていて、
僕もこれ読んでいたので、最初は身近に思えたんですけど、だんだん遠くに離れていくような感覚を覚えていて、
この口なしという、話自体すごい面白いんですけど、
一方で日本人の恋人だと、最初はすごいアメリカの多様な社会というところを書いていて、
自分には遠い世界の話かなと思いきや、読んでいくと結構共感できるところがあって、
だんだん自分にとって、自分ごとのように読める小説というかね、
小説がだんだん読んでいくときに自分に近づいていくような感覚があって、
この2冊って全然似てるとかそんなわけではないんですけども、
一方はだんだん離れていって、一方はだんだん近づいてくるようなそんな感覚があったので、
この2冊は読んでいると、そういうこの2冊が交差するような、
そんな組み合わせとしては逆にいいんじゃないかなと思って選んでみました。
なるほど、面白いですね。その感じいいな、確かに。
確かに似てるだけじゃないですもんね、組み合わせて読むときに面白いのは。
同じテーマ、愛というのを取り扱っていても、ここまで違うんだっていう。
読んでいる側の捉える感覚ですね。一方では自分、評価できないとか、
一方では全然わかんないなと思ってるとか。
口なし、私読んでないんですけど、小説が好きの回でがっつり1回紹介されたことがあるんで、
かなり読んだ気が抜いてるんですね。やべえ話だなってのは、すごい認識があって。
結構ハマった人が本当に。
そうですね。でもこれハマる感覚は多分わかるな。話し切って思いました。
わかりますね。僕もこの口なし読んだ記憶は去年読書会でやっぱり紹介させてもらって、
これすごい面白そうと思って。
ですよね。
確かにね、わかりますね。
私も多分どっか詰んでるんだよな。
負に落ちるかって言うと全然分からなかったんですけど、面白いのは確かに。
完全に僕の場合もこれも主観というか、感覚の話なんでね。