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2024-06-04 20:02

Extra1 種を守る

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科学系ポッドキャストの日、共通テーマ「種」の配信です。


穀物に大きな被害をもたらすネズミから種を守ろうという研究についてで、予想外の結果も大切だという一例の再録音版です。

さらに、茶の品質を改善する微生物の話をアーカイブからお届けします。


https://www.nature.com/articles/s41893-023-01127-3

https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(24)00079-4 

参考

https://www.science.org/content/article/scent-camouflage-keeps-mice-destroying-crops

https://www.sciencenews.org/article/mixing-root-microbes-boost-tea-flavor 


科学系ポッドキャストの日 Spotifyプレイリスト

https://open.spotify.com/playlist/2l0AZuUba4Gi6L048qxlJl?si=1fcfe3cc0c3e4c39 

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あの、ネズミ、マウスっていうのは、ミッキーマウスに代表されるように、楽しいキャラクターとして扱われたりしますし、
動物園のふれあいコーナーなんかで見ると、とても可愛らしいわけなんです。でも、やっぱり害をもたらす害獣なんですよね。
最近は家の中でネズミを見かけるなんていうのは、ほとんどないと思うんですけど、
それでも繁華街なんかに行くと、ゴミを漁ったりしていて、そういうのを見ると汚いと感じるわけです。
で、それは病気を媒介する感染源であるからっていうのもあるわけです。
それに加えて、ネズミは農作物にとって大きな害をもたらすっていう点でも害獣なんです。
保存された穀物、米とか小麦とかを食べるので、人間はもう何千年も前からネズミと戦ってきたわけです。
小学校の時に習う高床式倉庫っていうのは、まさに米を守るためにあったわけです。
で、この被害っていうのは今でも甚大で、穀物の種類や地域によって違うんですけど、収穫された穀類の10%以上がネズミのような
下種類によって失われているということです。
で、まあそういう保存された穀物の問題もあるんですけど、実際に作物を作るときに農場に撒いた種を撒いた蕎麦から掘り起こしてネズミが食べるっていうのもあって、
これも農作物の生産に大きな打撃を与えているんです。
今日はオーストラリアの話をしていくんですけど、オーストラリア大陸にはもともとマウスはいなかったんです。
でも今は大繁殖していて毎年大きな被害をもたらしています。
ネズミの個体数っていうのが年によって増減するんですけど、特に増えたような年では年間100億ドル以上、
つまり1兆円を超える損害が出るというふうに言われています。
当然その対策が取られているわけですが、主要な方策としてはネズミを殺す農薬を使って個体数を制御しようとしています。
一定の効果はあるんですが、それでも被害が出ているし、毎年やる必要があるので費用がかさむわけです。
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さらにこういう薬は人間にも有害ですし、他にも野生の哺乳類とか鳥も殺すので生態系に悪影響があるんです。
最近の研究でちょっと面白い方法でネズミからその種を守るっていうことが試みられました。
今日はこの話をしていきたいと思います。
ポッドサイエンディストへようこそ、サトシです。
今日紹介するのはシドニー大学のフィン・パーカーらによって行われた研究で、2023年5月にネイチャーサステナビリティに掲載されたものです。
ネズミなんですけど、主に食べ物を臭いで見つけているんです。
小麦に関して言えば、種の内部で発達する肺の部分があって、小麦肺がって呼ばれるんですけれども、この部分の臭いを感知してネズミは小麦を見つけているんです。
だから種として小麦を農場にまいておくと、ネズミは農場にやってきて掘り起こして食べてしまうというわけです。
この研究では臭いを使ってネズミが種を見つけられなくするっていうアイデアで研究を進めていっているんですが、この研究者たちがヒントにした別の研究っていうのがあるんです。
これはニュージーランドで行われたもので、ある絶滅危惧種の鳥を守ろうっていうものなんです。
ニュージーランドに一種の鳥がいるんですけれども、それを食べる動物、捕食者がいて絶滅に瀕しているんですね。
そういう捕食者もこの鳥の臭いを検出しているんです。
それでこのニュージーランドの研究では、この臭いで混乱させようっていうアイデアだったんです。
実際やったことっていうのは、この研究者たちがこの鳥の臭いを鳥がいない場所につけて回ったんです。
例えば岩山なんかにそういう臭いをつけていたんですね。
そうするとこの捕食者の動物っていうのは臭いにつられてその場所に行くわけなんですが、行ってみてもそこに食べ物になる鳥がいないんです。
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そうするとこの臭いを探しても意味がないっていうことを学習していったわけなんです。
その結果何が起こったかというと、実際にその鳥がやってきた時にその鳥の臭いがするわけなんですが、
捕食者の方はもうその臭いを頼りに鳥を追いかけても意味がないって思っているので、
実際に鳥がいてもその鳥の臭いを追いかけるっていうことをしなくなって、その鳥は食べられなかったっていう、そういう研究だったんです。
じゃあネズミにも全く同じことができるんじゃないかっていうのが今回の論文のグループの考えなんです。
つまり農場に小麦の匂いを撒いて、でも種として撒かれた小麦はないっていう状態を作れば、
ネズミはもう匂いを追いかけても意味はないって学習して、農場に来なくなるんじゃないかって考えたんです。
具体的な実験の条件ですが、種はまだ撒いてないんだけど、匂いだけ撒いておくっていうことをしたんです。
その小麦肺から油が取れるみたいで、その油を撒いておけばその匂いがするっていう形です。
それでその状態で置いておいて、ネズミがここには食べ物はないんだっていうことを学習したら、その後に種として小麦を実際に撒いてどうなるかっていうのを調べたんです。
その結果なんですけど、何もしてない場合と比べて74%被害が減ったということです。
だからこの方法で種が掘り起こされるっていう被害を大幅に減らせるっていうことがわかったんです。
でも予想外のことがわかります。 実はこれは狙ったのとは全く違う理由からだったんです。
この研究では別の条件でも実験をしていました。 このグループはカモフラージュ条件と呼んでいたんですが、
種として小麦を撒いてさらに匂いも撒く。 この時に小麦がどれぐらい被害に遭うかっていうのを調べています。
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この条件であれば匂いも小麦もあるんだから、ネズミは農場にやってきて小麦を食べそうなんですが、
この条件でも小麦が食べられてしまうっていう被害が大幅に減っていたという結果でした。
つまり先ほどの匂いを撒いてでも種はないっていうのを経験させてから、そこに種を撒くっていうのと同じような効果があったということなんです。
一般的に実験を行うときには比較のための条件、コントロールの条件での実験をして、いくつかの条件での結果の間を比較して、
興味のあるものの効果を測っていくんです。 その最初の実験では小麦の匂いはあるんだけど種としての小麦はないっていうのを経験させて、
その時の被害を測って被害が減っているという結果だったわけです。
最初小麦がないっていうことの効果を調べるためには、比較の対象としてその時小麦があるっていう条件でも実験をするわけです。
つまり、匂いを撒いてそこに小麦もあるっていう条件になるわけですが、 この条件でも実験をしていてその結果はこの条件でも被害が減るっていうことだったわけです。
ということは、あらかじめ小麦の匂いを撒いておけば、その時に種があってもなくても、ネズミが掘り起こすのが減っていたっていうことです。
だから最初に種があるかないかっていうのは結果に影響がないっていうことになります。 そうであれば、匂いはあるのに種はないっていうのを
学習しても探さなくなるっていう最初の話では説明ができなくなります。 というわけで、この研究がアイデアを得た、鳥を守る研究みたいな、当初考えていたようなことは起きていないということになるわけです。
匂いを撒けば種が掘り起こされないっていうことなんですが、おそらくこれはその匂いがそこら中にあるので、種からしている匂いがわからなくなって、だからどこに種があるのかわからなくなってネズミは探せなくなった。
カモフラージュであるとヒッシャラは説明しています。 でも、これってより好都合なんですよね。
12:05
最初のアイデアの通りであれば、まず学習させるっていうことが必要になるわけですが、カモフラージュであれば、種として小麦を撒いて、さらにそこに小麦の匂いを撒いておけば、ネズミの被害が大幅に減らせるっていうことになるわけです。
さらにこの論文のヒッシャラは、実際の農場でもこのやり方は応用できるだろうと言っています。 まずコストの問題なんですけど、小麦肺がの匂いを散布しないといけなくなるわけです。
でも農業ではいろんなものを散布しますから、機材はすでに多くの農家が持っているんで、そこはコストがかからないということです。 また小麦肺がの油っていうのは小麦を成分してくるときに取れてくる副産物の一つなので、非常に安価で入手することができるということです。
現実的には実際の応用にはいろいろ障壁があると思うし、実現するとしても時間がかかると思うんですが、比較的導入しやすそうで、しかもマウスを毒物で駆除するのとは違って、人間とか他の動物への影響がかなり小さいと考えられる有望な手法ではないかということでした。
今日は科学系ポッドキャストの日の企画で、共通テーマ種にちなんだ話でした。他にもたくさんの番組がこのテーマで配信していて、それがまとめられたスポティファイのプレイリストがあります。
ショーノートにリンクを載せておくので、ぜひチェックしてください。
今日のこのエピソードは、以前エピソード36として公開したものと同じ論文を扱ったものです。
結論は変わらないんですが、話の内容に不備があったので、再録音してお届けしました。
ではこの後は、葵さんと会話形式でちょっと面白い研究を紹介するパートです。
こちらは同じく農産物に関わるものを本番組のアーカイブからお届けします。
15:04
コーヒー派ですね、僕は。
なるほど、私は最近コーヒーのおいしさがわかってきたのですが、それでもやっぱりお茶が好きです。
ところで、お茶の品質に微生物が影響しているって知っていましたか?
微生物ですか。お茶を発酵させるって言いますよね。だから製造過程で微生物を働かせてるってことですか?
そうではなくて、お茶の発酵というのは、一般的に使われる微生物による代謝という意味の発酵ではなくて、自然に起きる酸化反応のことで微生物は関わっていないんです。
あ、そうなんですね。じゃあ微生物が関わっているっていうのはどういうことなんですか?
最近の研究で、お茶の根っこに住む微生物がお茶の品質に与える影響というのが明らかになってきています。
ジェン・ビャオ・ヤンとの研究チームが、お茶の葉の根っこにある微生物コミュニティを改善することで、お茶の品質を向上させる方法を発見したんです。
あ、そういうことですか。お茶の木が生きている間に微生物が作用して、それがお茶の味に影響があるっていう話なんですね。
その通りです。お茶にはリラックス効果があるわけですが、それはテアニンというアミノ酸によるものだと考えられています。
さらにテアニンはお茶に豊かな味を与える要因の一つなんです。
うん、はいはい。
で、そのテアニンの量とかお茶の味の特性っていうのは、お茶の品種だけではなく、周囲の土壌環境にも影響されるそうです。
そして、お茶の根っこに住む微生物が栄養の吸収と代謝に影響を与えることが分かってきています。
今回の研究では、テアニン含有量の違う2つの品種について、根っこに住んでいる微生物を調べたんです。
その結果ですが、テアニンが多い品種の根っこには、テアニン合成に必要な窒素の代謝を行う菌が多く存在することが分かりました。
逆にテアニンの含有量が低いお茶の根っこには、そのような微生物が少ないということも明らかになったんです。
うんうん。ということは、テアニン量の違いは、根にいる菌の組成によるかもしれないということですね。
はい。でも菌が住んでいても、それだけではそれがテアニン量を変える原因かは分からないので、さらに実験をしています。
彼らはテアニンが多いお茶の根っこにいた21種類の菌を混ぜ合わせた菌のミックスを作成しました。
彼らはこれを人工的細菌コミュニティという意味で、シンコムと呼んでいます。
18:00
このシンコムをいろいろなお茶の木にまいてみたんです。
そうしたら、シンコムを与えたお茶ではテアニン含有量が増加していたんですね。
特に窒素が少ない条件で、この効果が大きかったそうですよ。
はいはい。ここまでの実験をやって、それで初めて根に住む菌の構成を変えることで、お茶の品質が変わるということが確認されたわけですね。
そうです。さらに重要な点としては、一つのお茶の木から別のお茶の木に菌を移すみたいなことをしなくても、
シンコムという人工的に構成された菌の集団でも、それが改善できるということが示されたんです。
それで彼らは現在、シンコムを改良して製造と流通を容易にする作業に取り組んでいます。
今後もお茶の品質向上に向けて、さらなる革新が期待されています。
ああ、なるほど。農薬みたいに使えるかもしれないっていうことですか。
その通りです。しかもシンコムでお茶ではない別の植物でも、窒素が欠乏しているものへの効果があるようで、
微生物が養分の固定を助ける。なので通常の農薬の使用量が減らせるかもしれません。
じゃあもうお茶に限らないっていう、そういう実用性のある研究だったわけですね。
今日も面白い研究の話どうもありがとうございます。
それでは今回のエピソードはここまでです。最後までお聞きいただきありがとうございました。
ありがとうございました。
20:02

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