生きた化石の存在
あの、生きた化石と呼ばれる生き物がいますよね。 有名なのはシーラカンスなんですけど、もともとシーラカンスの化石っていうのが見つかっていて、
約4億年前から6500万年前までの地層から見つかっていたんです。 この6500万年前っていうのが恐竜が絶滅したタイミングで、
これ以降の地層からはシーラカンスは見つからないので、シーラカンスもここで絶滅したんだろうって考えられていたんです。
でも1938年に南アフリカ沖で生きて泳いでいるのが発見されて、世界中に衝撃を与えたんです。
現在は絶滅危惧種の指定を受けているんですけれども、それでも何億年も前に生まれた生物がその形を変えずに存在し続けているわけなんです。
他にもカブトガニとかチョウザメのように形をほとんど変えずに存在している生き物がいて、生きた化石と呼ばれます。
その何億年という時間を形を変えていないっていうのは不思議なことなんですね。
例えば我々人、ホモサピエンスの歴史は30万年程度と言われていて、それですらすごく長い時間なわけなんですけれども、何億年っていうのはそれとは桁の違う果てしない時間なわけです。
で、哺乳類自体数億年前にはいなかったんですね。
恐竜を含めてその時代に生きていた生物っていうのはいなくなって、そこから進化した別の生き物が今は生きているわけです。
で、そのごく稀な例外である生きた化石っていうのは、そういう永遠とも思えるような長い時間をそのままで存在し続けていて、まるで時間を止めて進化を止めているように見えるわけです。
でも、単にずっと昔の祖先と形、形態が似ているだけで、体の中はちゃんと変化している可能性もあるわけです。
だから、進化が遅くなっているかどうかはわからないんですね。
今日はこの点を検証した研究を紹介します。
ホットサイエンティストへようこそ、佐藤です。
今日紹介するのはイエール大学のチェース・ブラウンステインラニオル研究で、2024年3月にエボリューションに掲載されたものです。
今回の論文の主役になるのが、ガーと呼ばれる北アメリカに生息する淡水魚です。
見た目としてはワニを想像してもらって、その手足がヒレになっているという感じで、大きいものだと体長3メートルにもなります。
このガーも生きた化石で、古いのは1億年くらい前から化石が見つかっています。
原生の種、現在も生きている種が7種あるとされています。
この7種は大きく分けると2つに分類されて、アトラクトステウス族とレピソステウス族です。
恐竜の時代、その白亜紀とかその後の時代に生きた種っていうのがいるわけなんですけれども、そういう古い種でもこれら2つの族に分類されるものがいるんですね。
だから恐竜の時代からほとんど形を変えずにガーという生き物が存在し続けているということになります。
生物のDNAの変異率
この論文では進化の速度を調べていくわけなんですけれども、具体的にはDNAの変化していく速度を調べているので、少しDNAと進化について話していきます。
その生き物の遺伝情報、ゲノムっていうのは非常に長いDNAなわけです。
4種類の単位となるような小さなDNA分子があって、それがたくさんつながって長い文字列となって情報を持った大きなDNA分子ができるんです。
でもDNAそのものが生命機能に働いているわけではなくて、DNAの情報を元に様々なタンパク質が作られて、タンパク質が生き物の体を働かせているんです。
だから生命の機能そのものであるタンパク質の情報がDNAに書き込まれているというわけなんです。
DNAというのは親から声が伝わるわけなんですけれども、DNAは完全に安定というわけではないんですね。
時々変異といってDNAの配列が変わるんです。
DNAはタンパク質の情報を持っているわけですから、DNAが変わるとタンパク質が変わることがあって、その結果生き物の性質が変わる。それが進化なんです。
進化というと性質が良くなっているというイメージがあると思うんですけれども、DNAの変異はランダムに起きるので、良いこともあれば悪いこともあるんですね。
でも生きるのにとって都合の良い性質っていうのは残っていくっていうのが進化論の考え方です。
さっき様々なタンパク質って言ったんですけれども、ものすごく長いDNAの中にタンパク質の情報を持っている部分がバラバラに何万個もあって、それぞれからいろんなタンパク質ができてくるんですね。
そういうふうに一つのタンパク質の情報をコードしている部分のことを一つの遺伝子と呼びます。
動物のゲノム、DNAにはかなり無駄が多くて、遺伝子と遺伝子の間の部分とか、タンパク質の情報を持っていないDNAの領域っていうのがかなり多いんです。
人だとDNAのうちタンパク質をコードしているのは数%程度で、残りのかなりの部分っていうのは無駄なものだと考えられているんです。
そういった無駄な部分は変異が入っても生存にほとんど影響がないので、世代とともにどんどんDNAが変化していきます。
でもタンパク質をコードしている部分に変な変異が入ると、生きていけなくなってしまうこともあるんで、制約があってタンパク質をコードしている部分はゆっくりと変化していくし、
生き物の性質を変えるっていう点でも進化上意味のある変異であるということになります。
で、こういうふうにタンパク質の情報をコードする部分をエクソンと言うんですけれども、この論文ではエクソンの部分の配列が時間とともにどう変化していったかを
ガーなど生きた化石と通常の生物について調べていってます。
で、進化しにくくなっているかどうかっていうのを調べようと思っているわけですから、生きた化石とそうでない生物について
時間あたりにどれだけDNAの変化が起きるかを調べればいいわけです。 もし進化が遅いのであれば変異がゆっくりと蓄積しているはずです。
ちょっと専門ではないので大雑把な説明なんですけれども、それをどういうふうにしていったかっていうのをちょっと説明していきます。
ゲノム計画なのでDNA情報っていうのはすでにかなり明らかになっているんですね。 禁煙の種についてDNA情報を比較していきます。
例えばガーであれば原子の7種のエクソンのDNAを並べておくわけですね。 そうするとそれなりに似ているんで、比較することによって共通祖先がどのような配列を持っていて、そこからどれだけDNAの変異が起きたか計算できるんだそうです。
でもこの段階では時間の情報がないんですね。 これらの種が共通祖先からいつ分かれて、今の例えば7種類に分かれていったかっていう枝分かれを化石などの形態の情報から解析した研究が過去にいろいろな生物について行われていて、この情報を使っていきます。
だからこの系統関係の枝分かれのタイミングの情報とDNAの変異の情報を合わせることによって、時間あたりにどれだけDNAの変異が起きたかを計算できるということなんです。
これをいろいろな動物のグループについてやって、動物ごとにDNAの変化の速度っていうのを求めていきました。
これで求められる数字の単位ですけれども、DNA1カ所について100万年で何回変異を起こすかというものです。
結果なんですけれども、哺乳類の平均が0.02回ということでした。 だから5000万年すれば全ての場所が平均1回変わるっていうことで、
もう跡形もなくDNAが変わってしまうということだと思います。
両生類の場合は変化がもう少しゆっくりで0.007だったということです。 だから哺乳類の3分の1ですね。
じゃあ生きた化石がどうだったかというとシーラカンスが0.0005で、他の多くの生きた化石もそれぐらいだったということです。
これが哺乳類の40分の1なんです。 だからやっぱり普通の生物よりもDNAの変化が遅いっていう結果でした。
でもガーだけはさらに特別で0.00009、哺乳類の200分の1以下っていう、最もDNAの変化が遅いっていうことが分かりました。
ガーの俗の違う雑種
さらにガーについては面白いことが分かりました。 ガーには7個の種がいて、大きく2種類の俗に分類されると言ったんですけれども、
この生息地が少し重なっていて、そういった地域では俗の違う2種類のガーの雑種が生まれているっていうことが今回の研究で詳しく調べてみて分かったんです。
この2つの俗っていうのは約1億年前に分かれたと言われているんですね。
そんなずっと前に祖先から別れた別の生き物が交配して、しかもその雑種の個体に生殖能力があるっていうことだったんです。
これは驚くべきことで、哺乳類に置き換えるとすべての哺乳類同士で交配できるっていうようなことなんです。
だから人と象から子供が生まれるっていうぐらいのタイムスケールのことなんです。 だからこのガーの交配っていうのは、これまで報告されている中で最も時間的に離れた種の間で生殖能力の子が生まれた例だということです。
ただ種の定義っていうのは基本的には交配できるかどうかなので、こうやって生殖できる子供が生まれているっていうことは本当に別の種なんだろうかと個人的には思ってしまいます。
でも1億年前に別れたということであれば、それがまだ交配可能っていうことは、やっぱり遺伝的な変化がゆっくりだということを表していると言えると思います。
というわけで、今回の研究では生きた化石と言われる生物、中でもガーはDNAの変化がゆっくりで、進化自体が遅いということが明らかになりました。
だからこういった生物ではその形態が何か特別、例えば生存に特に有利な完璧な形でもうそこから変わらないというわけではなくて、そもそも変化がゆっくりだということが示唆されたわけです。
なぜガーでは変異が少ないのかについては、この研究では調べてないのでわからないんですけれども、可能性として述べられていたのは変異が入った時に修復する能力が高いのではないかということでした。
それからもう一つ付け加えたいことがあります。
あのガーみたいな生きる化石っていうのは同じ系統に種が少ないんですね。
そのガーの仲間っていうのは1億年くらい前の時点の共通祖先から生まれた種が今は7種しかいないわけです。
でも他の、例えば哺乳類ではそこからたくさんの種が生まれて絶滅したものもたくさんいるし、生き残っているものもたくさんいるんです。
さっき話したようにガーではずっと前に分かれた種がまだ交配可能であるように、種っていうのが分かれるのがすごくゆっくりなわけで、その系統の中の種が少ないっていうのは当然なわけです。
これに対してDNAがある程度変異しやすければどんどん新しい種が生まれて多様性が生まれるっていうことです。
DNAの変異は生きている時に体の中で起きれば癌の原因になることがありますし、子供に伝われば遺伝的な病気の原因になることもあるわけです。
だから遺伝子変異はあんまり多くない方がいいんですね。でも全く起きなければ進化自体が止まるわけです。
進化の基本的な考えでは適応っていう意味では新しいものが生まれて多様性があった方がそのうちのどれかが生き残るためには有利だとされます。
なのである程度の変異があった方がいいということだと理解できると思うんですけど、現実には癌も生き残っているわけで、進化についてはまだわからないことがたくさんあるのかもしれません。
こんにちは、あおいさん。
こんにちは、さとしさん。
今日はシーズン2ではあおいさん初登場なので改めて自己紹介をお願いします。
はい、みなさんこんにちは。あおいと申します。
私はオーストラリアの大学で神経科学を専攻しています。
みなさんと科学の楽しさを共有できるよう頑張りたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
ありがとうございます。
あおいさんとは番組の最後に会話形式で面白い研究を紹介するっていうのを時々やっています。
じゃあ今日は何の話ですか、あおいさん。
人間と猿の遺伝子解析
今日はしっぽの話です。
ほう、しっぽですか。
はい。なんで人間にはしっぽがないんだろうって思ったことありませんか?
ああ、まあ確かにほとんどの哺乳類にはしっぽがありますもんね。
そうなんです。しっぽがないのは結構珍しいんです。
霊長類でもほとんどがしっぽがあって、しっぽがないのは人頭、ゴリラやチンパンジーといった類人猿くらいなんです。
ああ確かに確かに。ニホンザルにもしっぽありますもんね。
っていうことはしっぽがなくなったのは割と最近で類人猿が生まれた頃っていうことですね。
そうなんです。私たち人も胎児期にはしっぽが存在しますが、約8週で消失します。
しっぽの喪失は人類や類人猿の進化の過程で最も注目すべき解剖学的変化の一つであり、人類の二足歩行に寄与したと考えられているんです。
ただその遺伝的メカニズムは解明されていませんでした。
しかし最近の論文で、しっぽの喪失には動く遺伝子配列の挿入が関与している可能性があると発表されたんです。
あの動く遺伝子ってトランスポゾンとかですか?
そうです。
ああそうなってくると、一応セントラルドグマのことを一通り説明しといた方がいいですよね。僕がしましょうか。
そうですね。お願いします。
はい。生き物の遺伝情報、ゲノムっていうのは非常に長いDNAなわけです。
そのDNAの情報を元にタンパク質が作られる時には、まずDNAによく似たRNAっていう分子がDNAの情報を元に作られます。
その後にRNAの情報を元にタンパク質が作られるっていうことが細胞の中では起きていて、これをセントラルドグマって言うんです。
エクソンとイントロンの話もお願いしていいですか?
はい。バクテリアなんかは違うんですけど、動物ではRNAが作られてもタンパク質の情報を持っているのはその一部なんです。
その情報がある部分がエクソンでない部分がイントロンって言って、エクソンとイントロンが交互に現れるんですね。
だから言ってみればRNA、そしてその元になっているDNAに無駄な部分があるんです。
それでRNAがプロセッシングって言って切断されて、イントロンの部分が切り出されてエクソン同士が繋がるんです。
こういうふうにしてできたメッセンジャーRNAがタンパク質の合成に使われます。
こんなふうに動物みたいな進化生物のDNAにはかなり無駄な部分が多いんですね。
そういった無駄な配列の中で一番多いのがトランスポゾンなんです。
なんていうか、ゲノムに寄生するDNAって考えることもできると思うんですけど、
割と短いDNA配列がゲノムDNAに入っていて、それがゲノム上の別の場所にコピーを作って増えていくことができるんです。
そんなふうにしてどんどん増えていって、ゲノムの数十パーセントがトランスポゾンになってしまったんです。
説明ありがとうございます。
その論文の中身ですが、ニューヨーク大学のシアラは類人猿で尻尾がなくなる原因となった遺伝子というのが何なのかを突き止めようと研究していて、
その候補になりそうな遺伝子としてTBXTという遺伝子を解析しました。
100年近く前にこの遺伝子に変異があるマウスでは尻尾が短くなると報告されていたんです。
それでまず多くの霊長類のTBXT遺伝子の配列を比較しました。
その結果、ヒトや類人猿ではTBXT遺伝子の中にトランスポゾンの一種、アルインシが複数挿入されていることを発見したんです。
でも他の猿ではアルインシは一つだけだったんです。
TBXT遺伝子はタンパク質を高度する遺伝子ですから、TBXT遺伝子のDNAからメッセンジャーRNAができて、このRNAの情報からタンパク質が作られます。
このようにアルインシがDNA上にあれば、アルインシの配列もRNAに転写されるわけですが、
RNA上に2つのアルインシがあると、その間に挟まれた配列がRNAから切り出されることがわかっています。
だからヒトや類人猿の場合はTBXT遺伝子のアルインシに挟まれた部分が切り出されるのかもしれないんです。
ここで切り出されるのがエクソン6という部分なのですが、切り出された分だけ短いRNAができて、その結果必要な部分の足りない、機能が異常なタンパク質ができてしまいます。
でも他の猿の場合はアルインシが一つだけですから、正常なタンパク質ができるわけです。
このようにして猿では作られるタンパク質が、ヒトや類人猿では正常に作られなくなって、その結果尻尾ができなくなるというのがこの論文の考えです。
なるほど。類人猿が生まれた頃にアルインシがこの遺伝子にもう1個挿入されて、それで尻尾がなくなったというわけですね。
でももう100年も前にすでに尻尾と関係がありそうな遺伝子が見つかっていて、その遺伝子に類人猿では異常があったということなんですけど、
その類人猿のゲノム解析というのは結構前に行われているので、データベースを見ればすぐわかりますよね。
なんか今まで調べられてなかったのが意外な感じがしますね。
そうですね。このTBXT遺伝子には他にも尻尾のないアルジリアネズミとかマンクスという猫でも変異があるということが知られていて、真っ先に調べられそうな遺伝子ですね。
でもアルインシの挿入があっても何も問題ないこともあるので、本当にこのアルインシによってRNAが異常になるのかを示す実験をする必要があります。
TBXT遺伝子とアルインシの関係
さらにはこのアルインシによって実際に尻尾がなくなることも示さないといけないのですが、この論文ではそこにかなり苦労したみたいです。
で、RNAを調べる実験ですが、人とマウスの肺性幹細胞を用いました。
その結果、類人猿に特異的なアルインシを持たないマウスの細胞ではTBXT遺伝子の転写産物、
つまりRNAは完全な状態でしたが、アルインシを持つ人の細胞では、完全なRNAとエクソン6を含まない短いRNAの両方が発現しました。
遺伝子編集ツールグリスパーキャス9を用いて、サンドイッチに必要な2つのアルインシのうち、いずれかを除去するとエクソン6を含まないRNAはほぼ完全に消失し、
アルインシがこの遺伝子の働きに異常をもたらすことが確認されました。
さらに、マウスのTBXT遺伝子を改変したときに、尻尾に異常が見られるのか、尻尾がなくなるのかを調べる実験も行われました。
まず、人ではアルインシのせいで切り出されるエクソン6の部分がないマウスを作成しています。
哺乳類は同じ遺伝子を父親と母親から1個ずつ、合計2コピー持っているわけですが、
片方を正常なTBXT遺伝子、もう片方をエクソン6のないTBXT遺伝子を持つマウスでは、尻尾がないものから完全な長さの尻尾を持つものまで、様々な表現型が生じることを発見しました。
これでまず、TBXT遺伝子のエクソン6が尻尾の形成に関わることが確認されました。
次に、アルインシによって尻尾の喪失が起きるのかを調べるために、マウスのTBXT遺伝子にアルインシを2つ挿入して、人と同じような遺伝子に改変したマウスを作成しました。
しかし、このヒトカマウスモデルでは、尻尾がないものや尻尾が短いものは見られなかったんです。
ああ、そうですか。ということは、TBXT遺伝子と尻尾が関係あるというのはわかったけど、人みたいにアルインシがあっても尻尾に異常は見られないということですよね。
それじゃあ、ヒトや類人猿での尻尾の喪失がアルインシ挿入によって起きたのか、それとも他の要因が必要なのかわからないですよね。
そう思いますよね。しかし、興味深いことに、片方がエクソン6が欠損したTBXT遺伝子、もう片方がアルインシが挿入された遺伝子を持つマウスでは、全ての個体で尻尾が欠損していたんです。
おそらくマウスでは、アルインシが挿入されているときにエクソン6が切り出される割合が小さく、このような形にしないとはっきりした結果が出ないようで、さらにこれをサポートする結果を他にも示しています。
これらのデータを総合すると、アルインシの挿入により尻尾の喪失が起きる。ということで、類人猿における尻尾の喪失には、類人猿特有のアルインシの挿入が関与している可能性が示されました。
尻尾の喪失と進化の過程
どうもこの辺りの実験に相当苦労したようで、この論文が審査のためにネイチャーに投稿されてから、論文掲載が受理されるまでに2年以上かかっています。
うわ、それは大変ですね。ネイチャーって一流誌だから、なんというか、終年で掲載に漕ぎつけたって感じですね。
そうなんです。さらに、研究チームはエクソン6がない配列から生じるRNAが高いレベルで発現するマウスでは、脳と脊髄の形成に血管が生じるリスクが高いことを観察しました。
つまり、尻尾を失うことは、脳や脊髄の形成へのリスクという対象を伴うものであった可能性があるんです。
そんな大きなリスクがあって、でもそれでも尻尾がなくなってるっていうことは、類人猿にとってそれだけのメリットがあったっていうことですかね。
基本的には、そのような尻尾がない方が進化の過程で有利だったから、という見方がされています。
この研究チームもその考えに同意していて、尻尾の喪失は二足歩行での運動能力の向上に貢献したのだろう、という旨を記しています。
ただ、尻尾はむしろ二足歩行をサポートする可能性があることを示す証拠もいくつかあります。
一方で、初期の類人猿の祖先は、気候の激変によって孤立した可能性があって、その集団の規模が小さければ、今回の研究で見つかったある因子の挿入のようなランダムな遺伝的な変化が固定化する可能性が高くなります。
だから、たまたま尻尾がなくなったという可能性もあるわけです。
確かに、どのような遺伝子変異で起きたかというような因果的な理由は調べることができても、どんな意味があるのかとか、そもそも意味はあるのかという目的みたいなものは調べようがなかったりしますからね。
じゃあ今日はこれで終わりにしましょうか。
はい。
では、皆さん最後までお聞きいただきありがとうございました。
ありがとうございました。