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2024-09-09 09:41

heldio #51. 「対面授業」はレトロニムでした

#英語史 #英語学習 #英語教育 #英語史をお茶の間に #英語に関する素朴な疑問 #レトロニム
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おはようございます。英語の歴史を研究しています、慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも、辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
さて、今回の話題は、対面授業はレトロニムでした、という話題ですね。
これは何のことかと言いますと、このレトロニムというのが今日のキーワードなんですが、これはレトロっていうのは古いですね。
開古趣味のということですね。ニムっていうのは、例えば同義語のことをシノニムって言いますね。
同義語、類義語ですね。それから反対語のことをアントニムって言います。このように何々な言葉、何々な語というのにニムっていうのは、これギリシャ語なんですが
ニムっていうのを使うんですね。ということはレトロニムっていうことは、古い言葉、開古趣味の言葉ということなんですが、私これ結構好きなんですね。
何のことかというと、これはですね、古いことを指している。その物事は古いんだけれども、新しい名前が与えられるというような現象ですね。
普通ですね、新しい物事とか現象に新しい名前がつくっていうのは、これ当然のことです。非常に自然なんですが、昔からある古いものに新しい名前が与えられるという一風変わった造語と言いますね。
これがいわゆるレトロニムっていうことなんです。これ実例を見ればすぐに何のことかわかります。
この表題の対面授業ってありますよね。この昨年、そして今年はですね、残念ながら私の大学でもですね、多かたオンライン授業が行われてたんですね。
それに対して対面授業っていうわけですが、もちろんこれ2年前まではですね、オンライン授業なんてことは考えもしなかったということですね。
授業は対面が当たり前ということで、あえて対面という表現を使わずに単に授業といえば対面だったわけです。
ところが突如としてですね、オンライン授業をなるものが現れたと。そうするとですね、オンライン授業はオンライン授業っていうふうに呼ぶわけなんですが、今まで単に授業と呼んできたものもですね、バランスが悪くなって、つまりオンライン授業、オンライン授業と言ってるのでバランスが悪くなるんで、
こちらもですね、ちゃんと形容詞に相当するものをつけて対面授業というようになったっていうことです。
つまり授業の在り方が変わったことによって、今まで普通に授業と指していたものも、なんとなくですね、形容詞をつけないとはっきりしない感じになってきた。
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オンライン授業が出てきたので。そしてあえて対面という言葉を補ってですね、対面授業と。
今、両者が並存しているような時代になってきまして、そうするとですね、どっちの授業のことかわからないので、ちゃんとオンライン授業とか対面授業とはっきり言わなければいけなくなった。
単に授業というと曖昧になってきたということで、現象としては古い、むしろ伝統的な授業なんだけれども、これのことを対面授業というようになった。
いわゆるこういう現象です。レトロニムっていうことですね。日本からの例をもっと挙げますと、例えば服というとですね、伝統的にはと言いますかね、日本の伝統文化では当然和服のことを指したんですが、明治以降にですね、いわゆる洋服が入って洋服なんて言うようになったんで、今までの服は和服と言い換えなければいけなくなった。
それから電話なんていうのが新しいですね。電話なんていうのが、私の世代では固定電話が当たり前と。なので固定なんて言い方はあえてしないわけです。電話が固定していないわけがないという発想ですね。ところが携帯電話ができてしまって、こちらのほうがメジャーになったので、携帯電話に対して固定電話ということですね。
カメラなんかもそうですね。フィルムカメラが当たり前だったんですが、今ではデジタルカメラなので、古いあのカメラを呼ぶときにはフィルムカメラと言わなければいけない。時計もそうですね。アナログが当たり前だった時代に、新しくデジタル時計が普及してきた。とすると、もともとのあの時計には名前を付けなきゃいけないということで、アナログと付けるわけですね。
このように時代の変化であるとか、新しい商品、製品が出てくることによってですね、古いものが新たな形容詞を伴わなければいけないというようなことがあって、だいたいこのレトロニムっていうのがどんどんできてくることになるんですね。英語の世界でも一緒です。
例えば英語でメールといえば、普通これ郵便なわけです。紙の。ところが今ではエレクトリックメール、いわゆるeメールの方がむしろ普通になってしまったわけで、もともとの郵便ですね、紙によるメールはスネイルメール、ゆっくりとしたという意味で、スネイル、かたつむりの意味をもって呼ばれることになったりしたわけですね。
それからギターといえばアクスティックギターしかなかったのに、エレクトリックギターが来たので、あえてですね、改めて昔のやつはアクスティックという形容詞を帯びるようになったというようなことですね。
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で、ムービーというのも初期はサイレントムービーしかなかったので、当然サイレントなんてつけないで、ムービーといえばサイレントムービーに決まっている。ですが、そうでないものも現れてきたので、もともとのやつはサイレントムービーというようになったというような形でですね。この手のものはどの言語にでもですね、非常に多くあるということです。
そのある意味、最新版が先に述べたですね、対面授業みたいな。対面以外に何があるのと思っていて、授業といえば対面を持っていたものがオンラインというのができてきたために、あえて対面というような形容詞ですね、を補ったという次第ですね。
で、このレトロニム、英語にも無数にあるわけなんですけれども、1つ面白い例をですね、挙げておきたいと思いますね。これは実は日本語にも反映されていますが、これパンダに関するレトロニムなんですね。
これどういうことかというと、皆さんもご存知の通り、パンダといえば普通ですね、いわゆる上野動物園にいるあのパンダというふうに思い浮かべますが、もちろんもう1つですね、非常に人気のあるレッサーパンダというのがありますよね。
通常パンダというと、上野にいるあのパンダ、いわゆるジャイアントパンダですが、当然姿があまり似ていませんが、同じくらい人気がある動物としてレッサーパンダというのがいるというのは知っていると思うんですね。
これどういう経緯でこういう言葉遣いになっているかというとですね、この日本語パンダあるいは英語のパンダですが、この語源はネパール語の動物名ということなんですね。これがフランス語を経由して、どうも英語にはですね、19世紀前半に入ってきたんです。
当初このパンダの意味はですね、実はレッサーパンダのことを指していたんです。
これパンダと呼んでたんですね。
で、後に20世紀に入ってからですね、いわゆる上野のパンダのジャイアントパンダの意味でパンダというものが入ってきたと。
そうするとね、だいぶ違うものなので、だけど同じ名前がついているということで、ややこしくなるので、じゃあちっちゃい方のパンダはレッサーパンダと呼ぼうと。
で、大きい方のパンダはジャイアントパンダと呼ぼうと。
ただ、まあ大きい方の方がですね、まあ人気が出たんでしょうかね。
それで、ただパンダといえばこっちの方を指すようになったということなわけですね。
なので、もともとパンダといえば、あのレッサーパンダを指していたものが後にジャイアントパンダが入ってきたことによって、このパンダが指すものが曖昧になったので、それをはっきりさせるためにレッサーパンダ、ジャイアントパンダというふうに言うようになったということなんですね。
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これもまあレトロニムの一種だと思いますね。このレッサーパンダとかジャイアントパンダという言い方。
これは古いものなのに新しい名前がつくという非常に面白い現象。
ただ、文化、社会が変化、進化していくたびに必ずできるタイプの単語なんだろうなと思って、非常に私は面白い古い新語というふうに見ています。
それではまた。
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