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2024-11-27 10:00

heldio #130. state「国家」と statistics「統計学」

#英語史 #英語学習 #英語教育 #ラテン語
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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしてきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題は、state「国家」と statistics「統計学」という話題です。
この最初に挙げたstate「国家」というふうに言いましたが、実は多義語で非常に多くの意味を持っていますよね。
普通には状態、精神的状態であるとか肉体的状態ということで、例えばconfused state of mindみたいな言い方でですね、状態というのが普通の意味だと思うんですね。
それから国家というのが出てきますね。
European Union Member Statesであるとか、the Baltic Statesのように国家ですね、の意味で使われるということもあります。
そこから関連してですね、もちろんthe United States of Americaということで、単にthe statesといえばアメリカ合衆国のことを指すようになっていますよね。
さらに国家ということからその国家を取り仕切る政府そのものですね、を指すということもあります。
これを用いたフレーズといいますか、イディオムも多いですね。
例えばa state of affairsというと、状況のことを指したりしますし、さらにget into a stateという取り乱してとか、そわそわしてなんていうのがありますね。
例えば、he made a mistake and got into a terrible state about itのような例文ですね。
stateには非常に幅広い意味があるということなんですけれども、それもそのはずでですね、語源がラテン語なんですけれども、ラテン語のstare、これstandに相当する、つまり立つ、立っているという意味の動詞に由来するんですね。
この動詞のラテン語での名詞形というのがstatus、つまりステイタスですね。
これが直接英語にも入ってきて、今ステイタスということになっていますが、結局立っている位置、立場、姿勢ですね、ポジションぐらいの意味になるわけですよ。
そこでチーという意味も出てきますね、立場ですから。
これがステイタスということなんですが、一方ですね、このスタートゥスが、ラテン語のスタートゥスがフランス語を経由して少し違った形で入っていたのがステイトだということです。
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ですから直接ラテン語から入ってきたステイタスとフランス語を経由して入ってきたステイトが並び立っているということですね。
こういうのを二重語、ダブレットと言いますが、その典型例となります。
意味の変遷を見てみますと、もともとは立っている立場、姿勢ということになりますね。
そこから状態、形成というような意味になって、それから立っている位置から地位、身分というような意味に発展しますね。
さらには、地位身分の中でも、とりわけ高い身分に特化された言い方で、そこと関連づけて、威厳とか階級ですね、という意味にもなっていきました。
そして支配階級という上の方の階級ですね、を特別に指す言葉に変化していきますね。
結果、異性者集団ですね、つまり政治家たちですね。
そして集合的にそれが国家にたどり着いたということで、単なる立ち位置立っているということからですね、
しまいには国家というところまでたどり着いてしまったということなんですね。
この最後のステイト、国家の意味ですね。
これはまさに近代国家の現れる16世紀前半に初めて英語で、この国家の意味で用いられるということになるんですね。
時代と連動しています。
さて、このステイト、国家というところまでいきましたが、これに関する学問というぐらいの意味を持っていそうなですね、スタティスティックスです。
これステイトに今学問名を表すような語尾がついて、スタティスティックスというわけですが、そのまま考えれば国家学、国家の学問、国家の政治についての学問ぐらいの意味になりそうなんですが、
そういうわけではなくて、英語で言うところのスタティスティックスっていうのは統計学ですよね。
国家と統計学、これどう結びつくのかということなんですね。
実はこのスタティスティックスという単語が英語で表れるのは、案外と遅くてですね、1787年のことです。
18世紀も終わりということで、せいぜい200数十年の歴史しかないんですけれども、これはそもそも英語で作られたわけではなくて、実はドイツ語で造語されたものです。
ドイツ語でのスタティスティックっていうのを借りてそのまま使っているっていうことなんですね。
当時の意味はですね、やはり国家の学問、国家の政治的事実の研究というほどのことだったんですね。
つまり政治学の一分野ということで、ステイトの学、だからスタティスティックスと言ってきたわけですね。
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ところがこれがですね、国家の政治的事実の中でも取り分け重要視されたのが人口統計なわけで、ここから人口とか統計という現代に連なる意味が現れてくるんですね。
つまり国家とか政治とか人口とか統計、これは互いに切り離すことができないくらい密接な関係のキーワードだったということになりますね、当時。
いわば国家とは人口である、国家とは人口の統計に依存しているという関係からですね、スタティスティックスが国家の学から統計の学というふうに意味を変化させてきたということなんですね。
確かに現在日本では少子化が著しく進行してきてですね、今後日本という国がどうなるのかということで、非常に大きな社会問題、政治的な問題としてこの人口問題ですね、がある。
そうすると確かにですね、当時ならずとも、むしろ今の方がもっとですね、国家とは人口であるというような発想は我々よくわかるんじゃないかと思うんですね。
この観点から言いますと、日本語の話になりますがちょっと面白いのはですね、英語で人口を調査することをですね、population censusと言いますね、単にセンサスと言ったりもしますが、
これは直訳すれば本当に人口調査ぐらいの何物でもないんですが、これをですね、日本語に訳すときに国勢調査というふうに訳すんですね。
これはかなり意味合いのこもったと言いますか、異役以上のものがありますね。幕末から明治にかけて日本人が西洋の思想と学問に触れたわけですね。
そしてこのstatisticsの訳語を検討した際に、現在は結局ですね、統計学というふうになって安定していますけれども、当時はいろいろ案が出たと。
もともとはstate、国家の学ということですから、国政学がいいんではないかとか、形成学というのがいいんではないかとかですね、いろいろあったんですが、
やがては西洋の考え方と一緒です。国、国家というのはまずもって人口が重要である、人口の統計であるというような、似たような考え方でですね、
現在はこれは統計学という訳語が定着して、stateとは直接一見すると関係ないような訳語となっているということですが、もともとは統計というのは人口統計のことであり、
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そして人口統計というのはまさに政治、国家政治の根幹であるというふうに考えられていた、そして今もある意味そのように考えられているということを反映しているということですね。
昨今はですね、政治に関わらず、とにかく統計、数字というものが非常に重視されますね。
言語学なんかでもコーパスを用いた、統計的手法を用いた議論というのが一般的になってきました。
そうしますとですね、statistics、これ長いんですね。下が見そうなくらい長いので、短くしてですね、statsなんていうこともあります。
かなり軽い省略語になっているような気がするんですけれども、もともとは国家という抜き差しならないものがバックにあるんですね。
それではまた。
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