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2025-10-18 10:30

#176 人間関係をリセットしたい欲求と人生の幸福感

ある男/平野啓一郎
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サマリー

このエピソードでは、平野圭一郎の小説「ある男」を通じて、人間関係の重要性とアイデンティティのリセットについて考察しています。登場人物の夫が本物ではないことから、人間関係の形成と幸福感がどのように関連しているかについて議論しています。

小説「ある男」の紹介
絶望カフカの何者かになりたいラジオ、この番組はモータースリーとのカフカが日々の絶望と些細なヒントをお送りするラジオです。
さて今回はですね、久しぶりに小説のお話をしていきたいと思います。
その小説のタイトルは、ある男という本です。 著者は平野圭一郎さん。
以前このスタイルでも何回かお話をしている、文人主義で有名な平野さんですね。
で、ちょっとネタバレを含まないのがなかなか難しい本なので、何も聞きたくないよっていう方は今回の回はスルーしてください。
では、ある男。ようやくを簡単に説明するとですね、
主人公は弁護士の木戸という男になります。 で、彼はとある相談者から相談を受けるんですよね。
で、それが夫事故で亡くしたんだけれども、その夫死後に判明したっていうのは
夫という人物が本当の本物のその人ではなかったっていうことなんですよね。
つまり戸籍上は谷口大輔という男、まあその彼をずっと愛して結婚をしていたんだけれども、
よくよく遡ってみると谷口大輔ではなかった。
では本物の谷口大輔って誰なんだ?っていうところで物語が始まっていきます。
そこから本当の谷口大輔とは誰なのか、そして谷口大輔を名乗っていたある男、相談者さんの夫は一体誰なのかということでその弁護士が
いろいろ聞き取り調査をしたり、まあその彼の由来の場所に行ったりして、
まあその友人に話を聞いたりして、その人物像が浮かび上がってくる、まあその内容になっています。
まあ本文の要約はここまでにして、僕はこのあの小説を読んでめちゃくちゃ面白かったんですけど、
テーマとして言っているのはアイデンティティだなって思いました。
つまり、その谷口大輔を名乗っていたある男、
彼は一旦自分の名前とか人間関係を捨てて、リセットして谷口大輔を名乗っていたわけですよね。
だから本名イコール自分のアイデンティティではないということなんだなというふうに思いました。
人間関係と幸福感
かつ平野圭一郎さんといえば、まあ冒頭にも言った通り文人主義なので、
それで言うと、その自分のアイデンティティを確立するのはやはり自分と自分の周りにいる人との人間関係。
これが自分たらしめているんだろうなというのは、この小説を読んでも、まあ想像したなというふうに思ってます。
つまりどういうことかっていうと、
その自分のルーツとか出身とか、もちろんその学歴とかも含めてですかね。
まああとは名前とかも、まあそういうのは一旦置いておいて、
それではなくて、今自分が接している人たち、家族、友達、職場の人、その他の人間関係がその自分自身を形作っている。
今の人間関係があなた自身を作っているっていうふうに言えるのではないかと僕は思ったんですよね。
まあそうしていくと、まあ僕自身は今カフカという、まあよくわからない名前を名乗っていますが、
本名ではないこのカフカ生を名乗ることで、まあカフカとして友達としてつながってくださる人たちとか、
まあ知ってくださっている人たちとの関係、これが僕の中ではある種アイデンティティにはなっているんだろうなーっていうのを改めて思いましたね。
みなさんはSNS上で、本名で活躍されている人ももちろんいると思うんですけど、
まあなんていうかな、そのニックネームというか、もう一つの名前を名乗っていく中で、
そのもう一つの名前の人間関係の中に自分のアイデンティティを見出すみたいなことってあったりするんですかね。
それで僕は着想的に思ったのが、ここから話がややひやくしますが、
グッドライフ幸せになるのに遅すぎることはないという本を着想的に思いました。
この本は、成人発達研究という長期の追跡調査を行ったっていうことをまとめた本なんですね。
つまり、研究の対象者に対して、同じ人に何十年にもわたって聞き取り調査、アンケート調査を行って、その人の変化っていうのを調べていったんですよね。
そうした時に浮かび上がってきたのが、結局人っていうのは長い年月をかけて何に幸せを感じるのかっていうことを考えた時に、
それは人間関係だというふうにおっしゃっているんですよね。
本書は、強い人間関係っていうのがあれば、私たちはより幸福で健康で充実した人生を送る可能性が高くなる、
そういう研究結果、そういう因果関係が見出されたというふうに主張しています。
だからこそ、人は孤立になるのではなく、人との繋がりを大事にした方が良いと。
さっきの、ある男の話で言えば、ある男っていうのは、ここちょっと若干ネタバレになるんですけど、
谷口大輔を名乗る前というのは、人間関係というのが非常に良くなかった、
かつ劣悪な環境にいたということなんですよね。誰にも理解されないし、
その中で、表舞台に立ちそうな時、信頼してくれる人が出てきた時に、
やっぱり何かトラブルがあって、そこが良いものではなくなってしまう。
だから彼はずっとリセットした欲求に駆られていたと思うんですよね。
そこであるチャンスが巡ってきて、谷口大輔を名乗っていく。
そして幸せな家庭を築いていく。
ただ不幸があって、その彼の人生はそこで途絶えてしまう、っていう物語になっているんですよね。
彼自身はずっとリセットした欲求を持っていて、でも最終的にたどり着いたのは、
家族との人間関係みたいなところだったっていうのが非常に興味深いなぁと思ったりしました。
それと、これもまたやや飛躍するんですが、
ここ10年くらいって日本のアニメ漫画を中心として転生物が流行ってるじゃないですか。
で、この転生するっていうのは、今ある人間関係をリセットして、新しい人間関係を築いていくみたいな
欲求を表しているんだろうなっていうふうにも思ったりするんですよね。
まあつまり、結局のところ人は孤立、一人だけで幸福を感じることっていうのはなかなか難しいのかもしれない。
人は繋がりの中に幸福を見出したくなるのかもしれない。
そんなふうに思ったりしましたね。
そういうふうに考えると、孤独であるためのレッスンという本を以前このスタイルでも紹介しましたが、
孤独であるための条件、それは本当に信頼できる人と繋がっていることなんですよね。
つまり良好な人間関係がある中でようやく人は孤独になれるのだと、その本の中では書かれていて、
そういうことなのかもしれないなぁなんて思ったりしました。
まあ話が本の内容とはずれていってしまいましたが、
このある男、物語として最終的にどういう結末を迎えたのかというのも非常に面白かったりするので、
もしよかったら読んでみてください。
というわけで今回は以上になります。最後までお聞きくださりありがとうございました。ではまた。
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