村上春樹の解説と課題図書
コーノ
若い読者のための短編小説案内、村上春樹のそういう本があって、村上春樹がウィンストン大学の講義で小説の解説をするというか、
生徒と一緒に話し合うみたいな講義があって、それの疑似体験をしようということで、そこで上がっている本を順番に読んで、その後でこの短編小説案内を読む、解説を読むっていう試みを今やっているところですね。
今回、課題図書というか、上がってたのが、安岡章太郎のガラスの靴。これも、一応本編を読んで、自分の感想みたいなのをちょっとまとめた後に、
この村上春樹の解説を読んで、その感想を合わせて話し合うみたいな、そういう回です。
ガラスの靴っていう短編は、僕はこの新潮文庫の七夜の女房っていう文庫の中に入ったんで、それで読みました。
ポーさん
私も同じです。
コーノ
これ、なんかデビュー作が何か。
そうですね。書いてましたね。
安岡章太郎の最初の小説っていうことで。
ポーさん
他の作品読みました?
コーノ
他の読んでないですね。読みました。
違う本を読んでしまって、他の読まなかったんですけど。
この本の中だったら、悪い仲間とか出てきましたね。ちょっと解説の方で。
ポーさん
悪い仲間と陰気な。
コーノ
太った女とか出てきたか。
ポーさん
そうですね。七夜の女房も出てきてたんです。
コーノ
合わせて読んだ方が、多分解説とかは分かりやすくなるっていう感じでしょうね。
ポーさん
私も今回ガラスの靴しか読んでないです。
コーノ
ガラスの靴は若い人の恋愛みたいな、分かりやすい恋愛物語みたいな。
そういう感じの印象だったんで。
あんまりあらすじみたいなのが短編なんじゃないんですけど。
ポーさん
短編ね。今回この村上春樹の短編小説案内の話2回目ですけど、
前回2つ短編読んで、短編ってちょっと話すの難しいなと思ってたんですよね。
やってみて。今回もやっぱりちょっと難しいなというか、やっぱり話が短いんで、
なんかこういろいろ考える間もなくあっという間に終わっちゃったりというか。
コーノ
そうですね。
ポーさん
やっぱりあの登場人物も少ないしセリフも少ないなみたいな、
短編らしい要因が残って、面白いことは面白いけど、
いろいろ考える間もなく終わっちゃったみたいな、そんな感じもありましたね。
コーノ
そうですね。まあそういう特徴でしょうね、短編小説自体が。
えつこのキャラクターと恋愛観
ポーさん
なんかあります?まず今回の話。
一応ちょっとあらすじというかどういう話かっていうのをざっくりすると、
登場人物は基本的に2人ですね。
コーノ
そうですね。
ポーさん
僕っていうのと、
えつこ。
えつこ。えつこが20歳くらいでしたっけ。
コーノ
なんかまあ2人ともすごい若い。
ポーさん
大学生ぐらいの雰囲気ですよね。
コーノ
そうそう。主人公は大学生。
ポーさん
夏休みが終わるみたいに書いてましたね。
たまたま知り合って、ちょっと恋愛関係に入るか入らないかみたいな。
コーノ
主人公は漁獣かなんかのバイトをしてるんですかね、お店で。
ポーさん
夜の店番。
コーノ
店番か。
なんかその火薬が何とかしないために温度管理をするための。
ポーさん
そうそう。室温計と寒暖計と書いてますね。
コーノ
なんか1回その注文先に追って行った時に、えつこと知り合ったっていう。
ポーさん
そうですね。
コーノ
グレイゴー中佐っていう。
外国人、アメリカのその中途。
ポーさん
これ戦後の話なんで、たぶんその中途兵でしょうね。
そこで家の手伝いというか。
メイドですね。
メイドさんか。そういう仕事をしてて出会った感じですね。
コーノ
それはまあえつこでしょう。
ポーさん
でそのグレイゴー中佐が長期休暇に出てくる間になんか。
その家で割と自由に2人で。
コーノ
遊びに行くって感じですね。
ポーさん
場面もそこがほとんどかな。
コーノ
家がほとんどですね、その屋敷みたいなとこが。
ポーさん
えつこがね、誘うんですよね最初。
コーノ
そうですね。電話とかもかかってるんですよね、お店に。
ポーさん
そうですね。なんか積極的なところもあって。
コーノ
で電話もあってるみたいな。
でその仕事終わりに遊びに行くっていう感じですね確か。
ポーさん
でまあそのえつこはちょっと変わった子なんですよね。
変わった感じがなあ。どう思いました?
コーノ
なんて言うんですかね。
主人公はそのえつこがすごい大人びた感じだと思って。
でなんか大胆に距離を詰めてくるというか。
あとなんか自分はちょっと誘われてんのかなみたいな。
そういうふうに思ってドギマリするみたいな。
そういう話じゃないですか。
で相手がどう思ってるのかわからないとかって、
なんて言うんですかね。不安ではないけど、
相手のことがわからないから相手のことを考えてちょっともやもやするみたいなのが、
恋愛感情につながってみたいな。そういう話。
で結末的に言うと全然思ってた人と違ったみたいな。
そういう感じじゃったんかなと。
ポーさん
そうですね。結局恋愛関係に発展せずに、自分だけ、僕だけが勘違いしてたというか。
コーノ
思わせぶりだと思ったけどただほんまに子供だっただけだったってやつですよね。
ポーさん
そうですね。そうでしたね。
コーノ
でなんかこう自分が思ってた感じの人と違って冷めたっていう。
ポーさん
冷めたっていうのもあるし、なんかちょっと怒るというかびっくりしたというか、
なんだったんだみたいな感じで、まだ私はその冷めるまでの段階かなと思ってたんですけどね。
なんだったんだろうあの子はというか忘れられない、ちょっとまだ未練を感じたんですけど。
コーノ
でもなんか僕はほんまにこういうのは10代とかの恋愛にはすごいありがちやなっていうのは思いましたけどね。
なんか若い頃の恋愛で特に。
ポーさん
まあ自分のイメージというか勝手に相手に理想というか思いを反映させるけど実際実物とは違ったっていう。
コーノ
そうですね。で仲良くなってこう、よく知ればどんどん冷めていくみたいなのもあるじゃないですか。
ポーさん
はい。
コーノ
だからそれのもっと極端なやつかなと思って。
ポーさん
結構極端ですよね、このエツコの。
なんかね、私エツコがあまりにもちょっと変わりものすぎて、僕がだんだんエツコにのめり込んでいくのが理解できなかったんですよ。
あーそうですか。
具体的に言うと、日暮らしってセミの日暮らしを鳥だと思い込んだとか、
なんかね、あとずっと同じことして遊ぶとか、くるみ割りをやり続けるとか。
なんかね。
童謡に挟んで。
童謡に挟んで割るっていうのがすごい面白がって、子供みたいなところがあるんですけど、
それをこう自分がもしされたと思うと、全然その僕のように、主人公の僕のようにエツコに夢中にはならないから、
なんか割と私は感情移入ができなかったんですよ。
コーノ
あーそうですか。
ポーさん
さっきコーンさんが言ったみたいに、10代の子の恋愛でよくある話って話なんですけど、
かなりそのエツコの性格が特殊すぎて、ちょっとそれが引っかかり続けました。
コーノ
そこは好みでしょうね。女性の好みだと思うんですよ、単純に。
ポーさん
これ、じゃあやっぱり結構こういうタイプの子が好きな人っていうのは一定数じゃあいるっていうことですかね。
コーノ
僕が思うには、若い時にちょっと変わってる人を特別やと思うとか、そういう感情に近いかなと思いますね。
なんかその人と違うこの人はちょっと特別なんじゃないかとか。
ポーさん
それは分かるけど、なんかその度合いが結構大きいかなみたいな。
コーノ
僕はむしろそこまで思わなかったです。
ポーさん
あれ、そうですか。
コーノ
あんまり魅力的に感じなかったっていう点では一緒なんですけど、
何言ってんのぐらいにしか思わなかったですね。
だから、それはなんかすごい変わってるとまでも思わなかった。
世間知らず的な意味で。
ポーさん
なんか本当にただ変わった子なのか、ちょっと何て言うでしょう、本当になんか問題抱えてる子なのか掴みかねましたね。
なんか深夜の2時に電話してきて、カエルがいっぱい飛んできて眠れないのみたいなことも言うんですよね。
これちょっと自分がされたらちょっと怖いかなと思って。
コーノ
いや、それはそうだと思います。だから多分それは何でしょうね、相手を選んでると思いますよ。
そういうなんか、だからそういうのを主人公もそういうのをやられて試されてるっていう、
ちょっと思ってるところもあったんやろうなと思って。
こいつに釣り合う自分にならな、みたいな。
でも、ほんまにそういうやつやったみたいな。
ポーさん
世界に入り込んじゃってるんですかね。
コーノ
いや、と思いますよ。なんかアーティスティックな人にちょっと憧れるみたいな。
ポーさん
まあ、よくある話なのか。
コーノ
うん、なんかこういるじゃないですか、そういう。
ポーさん
まあ、なんとなくわかりますよ。
コーノ
歌手とかなんか芸術家とかファッションの人とか、奇抜な人がやっぱり目立つし。
それがかっこいいと思ったりとか。
ポーさん
なるほど。
コーノ
そういう感じかなと僕は思いましたね。
ただ、なんか僕は別に魅力には感じなかったです。
ポーさん
えつこちょっと。えつこちょっとと思いましたけど。
コーノ
でも、ほんまに10代やったら回るかなと。
10代、20代はちょっとわかんないですけど、それぐらいの遊びの恋愛みたいな。
なんかやってることもやっぱ遊びみたいなことが多いんで。
ポーさん
そうですね。なんか電車ごっこみたいなのしますよね。
あんまりよくわかんないですけど。
買い合わせのソファに座ってやったかな。
うん。
汽車に乗るとか言って、お弁当持っていかなきゃとか言って、ごっこ遊びみたいな。
コーノ
この花山っていうのが出てくるじゃないですか。
ポーさん
はいはい。
コーノ
アドバイスをしたのが裏面出たっていう感じやった。
ポーさん
そう。恋愛に結構、恋愛自信があるみたいなやつですよね。
コーノ
アドバイス、アドバイスか。
ポーさん
生きるぞみたいなことですよね。
コーノ
えつこ、そんな人やと思ってなかったんでしょうけど。
ポーさん
えつこは本当に何も思ってなかったのかな。
コーノ
えつこはでも、こういう人なんやなと思いましたね。
匂わせとか思わせぶりとかフリではなかったんやなっていうのはわかるし、
芸術家っぽい人がそういう態度をとるのって、ちょっとやってるとこもあるじゃないですか。
パフォーマンスで奇抜な自分を演出してるというか。
はい。
そんなんでもなかったんやなっていうのはわかるし、
うん。
マジでこういう人なんやなって。
ポーさん
本当に変わった人だった。
コーノ
まあ、ていうか、僕は子供っぽい人なんかなと思いました。
ポーさん
クレイゴー中佐の家にメイドさんとして雇われてるし、
はい。
なんか雇われるにはそれなりのプロセスもあっただろうから、
子供っぽさだけじゃこの立場にはいないよなみたいなのも思ったりしましたね。
コーノ
そうですね。
だから最初の方に何人なんかなって思ったんですけど、
ポーさん
クレイゴー中、あ、えつこですか。
コーノ
えつこ。
えつこがなんかその、ハークとかそういうやつなのかなって思ったんですけど、
ポーさん
そういうわけじゃないんですかね。
どうなんだろう。
コーノ
僕は読み違えてて、目が青いと思ったらそうじゃなかった。
色が、色の青白いとか。
ポーさん
そうですよね。目ではないと思うんですよ。
でもまあ知人とか何かしらつてがあって、メイドさんやってるのかな。
この子だけでずっと一人で留守番ですよね。
追いつきばかりって書いてて。
コーノ
そうでしょうね。他の人いたら成り立たないですね。
ポーさん
そうそう。成り立たないし、この子一人だけじゃより成り立たないし。
どういう経緯でここにいるんだろうなーみたいなのも思いましたね。
謎の子ですよね。
コーノ
そうですね。それぐらいかなと僕は思いますけどね。
魔性の女ではなかった、無垢の少女だったって僕は書いてますね。
ポーさん
そうですね。で、まあそのえつこと、結局それでね、恋愛の気持ちが高ぶりすぎて、
僕が最終的にはちょっとこう、えつこにアプローチかけるけど違ったっていう話ですもんね。
コーノ
そうですね。で、なんか僕はこれあんまりわからなかったんですけど、
結局なんかその拒絶されて終わりやったんか、それともこのいたした後にちょっと違ったなってなったんか。
ポーさん
いや、もう鼻からダメだったんじゃないですか。
なんかそのね、髪の毛を直したりとかしてる動作があって、
これがだから、
コーノ
これはだからもうことが起こったけど結局違うってなったんかみたいな。
そこはちょっと僕はどっちかわからなかったんですけど。
ポーさん
でもどうかな。
コーノ
なんかどっちにも読めるなと思って。
作品の心理描写
ポーさん
31ページのちょっと最初の方で、
僕はポテッタ顔を柔らかなえつこの髪の中にうずめながら、そう信じ込んだっていうくだりがあるんで、
髪の中にこうガーって顔をうずめたことによって髪が乱れて、それ直してるだけかもしれない。
コーノ
どっちにしてもよくあるだろうなと。
ポーさん
よくある話なのか。
コーノ
よくあるかなと思いましたよ。
ポーさん
いや、割とこういう人周りにいたんですか。
コーノ
えーどうなんですかね。周りに。
周りにいたのかなあ。
あんまりわからないですけどその辺は。
覚えてないんで。
自分でも全然ありますね。
思ってた人と違ったみたいなのは。
ポーさん
それはね。
コーノ
そういうのもあるし。
別れた人とかの話きっとだいたいそういうのとか。
ポーさん
まあね、それはやっぱり関係が深くなれば、本性というか別の顔も見えるし。
コーノ
そうですね。割となんか早い段階で別れる人。
ポーさん
それこそ10代とか20代前半でほんま1ヶ月とか何ヶ月とかで別れる人とかいっぱいいるじゃないですか。
コーノ
そういう話を聞いてると全然思った人違ったみたいな。
ポーさん
構造としてはよくある。
コーノ
そういう感じかなと思う。それぐらいの印象しかなかったですね。
ポーさん
まあ本当にそれで終わっちゃいますからね、話としても。
コーノ
話としては面白かったですけど、僕は。
なんか読みやすいし、こんなことあるなって思える感じやったんで。
で、そのあるなにしてはちょっとえつこがやっぱりちょっと飛び抜けてたんで、そういう意味で言うと。
あんまないから、キャラとして。
その話ぐらいでしか聞かない。
だから村上春樹の解説に入って全然いいと思います。
小説の感想の部分は、たぶん毎回そんなしゃべることないんだけど。
ポーさん
そうですね、これを受けて村上春樹がどういうふうに読んだかっていうのが。
コーノ
そうですね、講義でどういうふうに話しされてたかっていうのはメインになるかなって。
ここでそのデビュー作っていうのも知ったんですね。村上春樹の解説で。
30歳の時に書いたっていう感じですね。
ポーさん
村上春樹も30歳でデビューしたっていうので、わりとその辺の思い入れというか親近感があるっていう書き方をしてますね。
なんかこのガラスの靴に入る前に結構そういう自分と結構重なるところがあるとか、
なんかその著作っていうのはこういうものでみたいな、その話が結構面白かったですね。
コーノ
そうですね、時間が多いって自分の中である程度形になってやっと20代の頃のことを書けるようになったのが30歳ぐらいって言ってて。
だから若い時の話を、それより歳いってしまうと書けないって言ってますもんね、村上春樹は。
40歳とは言ってないけど。
やっぱり離れすぎる前に何かしらちょっと振り返っておきたいっていう。
新鮮な気持ちのままでいられるのが多分30歳ぐらい。
これも多分人によって全然違うとは思いますけど、直後に書いた方が得るっていう作家とかもいるだろうし、
ポーさん
若い時でも新鮮作品出してる人いっぱいいるんでね。
コーノ
村上春樹はね、もっとこう、デビューしてずっと先でも少年の話とか書いてますしね。
あれは自分事として書いてんのかな。
ポーさん
あ、そっか。もっと物語性が強い。
コーノ
ウミエノカフカですよね。
そうですね。
あれは結構なんか挑戦やったみたいな感じでしたもんね。
そうですね。
この短編に挑戦案内だいぶ先になって、ウミエノカフカ書いたの。
これダザイヨさんの話をちょっと思い出して、
ダザイヨさんが結構後になってからというか、大人になったりとか、
あの人47歳で死んでるけど、20代30代ぐらいの時に書いた本はなんか、子供の時の話。
人間資格とかも結構出てくるんですけど、子供が、子供の時にどういう心情やったかみたいな本を書いてるんですよ。
で、読者か出版社の人か誰かに聞かれて、子供の時のままの気持ちがなんで今でも書けるんですかみたいなことを聞かれた時に、
いや、自分はまだ子供だからって答えたっていうなんかエピソードがあって。
だから、歳いってからでもその時の気持ちのまんまで書ける人は、言うっちゃいるんやなみたいな。
なるほどな。
そうか、まあ印象が強く残ってたからとかもあると思いますけど。
ポーさん
まあ、それぞれですね、それは。
コーノ
それぞれやなと思いましたね。
20代の頃の話をまだ新鮮な気持ちで、しかもまとまった文章で書けるのが30歳ぐらいって言われたら、
ポーさん
それはそういうものかもしれないなっていうふうに納得もするし、その人らは。
まあでもなんか、20代の頃の話を書くのと、小学生とか中学生ぐらいの話を書くっていうのはまた何と言うか違うんじゃないですか。
そうですね、まあ子供の時の方が記憶に残りやすいし。
そうなっても、ちっちゃい子供の頃の話はずっと残ってるけど、20歳の頃とかの子供ではなくなって大人ではないみたいな、
そういう曖昧な時期っていうのは大人になったら忘れてしまうのかもしれない。
コーノ
そんな気はしますけどね、小説として書くとかそういうのは別として。
安岡章太郎の解釈
ポーさん
私もなんか自分の感覚でそんな気がします。
やる気の小説の主人公もどんどん歳いってますからね、とっていって。
コーノ
この辺はまず印象的、なんかその安岡翔太郎の特徴みたいなのを言ってて、
102ページの安岡翔太郎の小説の見事さをその双くの巧妙さ、芸術性にあるっていうのはあんまりよくわからない。
私もね、この辺ちょっとね、わからなかったんですよ。
ポーさん
詩小説との関係性も結構書いてるじゃないですか、その102ページの今言った続きからずっと。
事故の無作為性とか、その辺もちょっとわかりづらくて、
村上春樹の言う安岡翔太郎の良さっていうのがちょっとわかりづらいかな。
コーノ
ちょっと難しいですよね、この辺。
ポーさん
難しいです。
コーノ
言葉が難しいし、やっぱり作家的な話になってるんで。
ポーさん
事故の無作為性って何なんですかね。
これはあれですか、無作為ってのはランダム抽出みたいなことですよね。
コーノ
そうですね。
ポーさん
そもそも詩小説って、自分の身に起こったことを割とそのままストレートに書いたり、
主人公が割と作者と同一な小説のことですよね。
コーノ
そうですね。自分の身の回りのこととかを書いて。
ポーさん
自分の身の回りに起こったことっていうのは、その詩小説以外の小説のように構築した作為ですよね。
作ったような作者が自分で積み上げて書いたってものじゃなくて、
割と偶然的に自分が体験したことを無作為性って呼んでるのかなと思ったんですけど。
コーノ
難しいですね。
そうですね。
ポーさん
それを目指してない。
コーノ
そのまま書いてないこと。
ポーさん
そうなんですよね、多分。
自分にたまたま起こった、それが自分の人生として人生を描いたような詩小説ではないでしょうね。
コーノ
そうですね。計算して作品として作り上げてるっていうところなんでしょうね。
ポーさん
生徒Aの人が2行目で、103ページですけど、安彦翔太郎はその図式、そのっていうのは詩小説のことだと思うんですけど、
構造だけを取り出すって言ってて、その詩小説の構造っていうのはどういうことなんだろうと思って、
文学のそういう勉強を私はしてないから、ちょっとその辺が難しいなと思いました。
コーノ
生徒の質問が出てくるパターンはここで初めてやったじゃないですか。
今まで2作品読んで、3作品見て初めて生徒の質問というか意見が引用されてて、
生徒の意見強すぎだろうと思って、こんなコメント言ってくるやつ。
ポーさん
いや、プリンソン大学の文学の勉強してる学生だから。
コーノ
しかも専門でやってる人だから。
ポーさん
それはやっぱり。
コーノ
これだって、これちょっと短いんで全部読みますけど、
詩小説作家を社会の逃亡奴隷だと定義していたと思うのですが、初期の作品読みでいうと、
安岡翔太郎はその図式の構造だけを取り出して上手く利用しているようにさえ見えますね。
外見的にそのような伝統的立場にとりあえず自分の身を置くというか。
このコメント出えへんな。
これ読んで。
安岡翔太郎、さっきの小説読んで。
ポーさん
そうですね。
コーノ
ガラスの靴。
ポーさん
弱者の立場で書くのが詩小説ではよくあったんですかね。
でも自分の身に起こったことが小説として成立するとすれば、やっぱりある程度自分が苦難を知られたような立場だと書きやすいじゃないですか。
そうですね。
誰かの和解とかいう小説で、父と喧嘩して和解するって話したんですけど、
主人公は息子なんですよ。
どっちかというと父親からガーって抑えつけられている弱者的な立場と言えるんで、
その図式構造っていうのは弱者を主人公に据えるっていうことなのかな。
コーノ
辛いことがあったみたいな。小説って毎回そうみたいな。
ポーさん
でもだとしても今回の主人公って別にそんなに弱者ではない。
まあ、分別がそんなにつかないとか、そういう意味合いぐらいじゃないですかね。
若者で就職もしなくて、中ぶらりんっていう意味では弱者だけど、
結構よく小説にそういう10代の主人公出てくるから、ちょっとその辺がどういうことなのかなと思いながら読んでました。
コーノ
この辺はなあ、パッと読んでもあんまりわからないところですね。
ポーさん
そうですね。ここは結構大学の抗議感があるというか、
もうちょっと素養がないと理解しづらかったなと思って。
コーノ
社会の中の文学とか文学の構造とかの話をしてるんでね、その小説。
ポーさん
社会の逃亡奴隷っていうか。
コーノ
なんなんやろうって。
ポーさん
なんなんやろうって感じですよね。
コーノ
これ読んでないんだですけど、踏み辺の光景っていうのが最高点として、
靖岡翔太郎の最高点として出てきましたね。
ポーさん
この時点で靖岡翔太郎はもはや弱者でなくなっている。
そんな話をして、それではという感じでガラスの靴に入っていくんですよね。
コーノ
この作品に出てくる越子という人は現実の世界から意識が離れてしまっているようです。
ポーさん
頭がおかしいとまでは言わないけど、ひたすら崩れていますね。
村上春樹が思う以上に私はずれてるように感じちゃったんで、
その辺がわりと、河野さんもずれてるけど、私よりかは許容できてたし、
村上春樹もいささかぐらいの書き方だから、結構そこの意識のずれはあるなって私は思いましたね、自分の感想と。
コーノ
いるかなと思ったんですよ。
ポーさん
そうなのかもしれない。私があまりそういう人に会わなすぎてるのかも。
コーノ
このティガニーで朝食後のホリー・グライドリーを彷彿とさせるとか書いてあるじゃないですか。
ティガニーで朝食を読んだことあります?
ポーさん
ありますよ。でも全然ホリーの方が普通というか。
コーノ
そうですね。なんかその自由奔放っていうだけの感じだったんで、ホリー・グライドリーは。
もうちょっとなんかはっきりしてるんで、やってることとか言ってる音が。
ポーさん
なんかやっぱり主人公の僕と遊んでる様子しか描かれてないから。
コーノ
そうですね、情報はすごい少ないですよね。
現実と物語の交錯
ポーさん
情報少ないですよね。
コーノ
でもなんかそういうところに主人公が憧れてみたいな。
ポーさん
そうですね、なんかその憧れと、とはいえエツコみたいにはなりたくないっていう意識があってっていうのが108ページに、
1・2・3っていう風に段階分けで書かれてますけど、1が僕っていうのが現実を離れたエツコに惹かれて追いかけてると。
で、2はとはいえ僕がエツコに追いついてしまうと、僕は彼女を現実化してしまうと。
で、現実化されたエツコは僕の求めるエツコではない。
3、しかし僕がひとたびエツコを追いかけるのをやめたら、今度は現実が僕に追いついてしまうっていうのを書いてて、
私この2がね、よく分からなかったんですよね。
僕がエツコに追いついてしまうっていうのは、僕がエツコみたいな感じになるってことですよね。
コーノ
でも、なんやろ、僕は単純にこの結果として現実化してしまうっていうところから、
しかも現実化されたエツコは僕の求めるエツコではないっていうところから、
エツコがどういう人か分かってしまうっていうことかなと思ったんですけど。
分からんままやったから、なんとなく憧れていられたけど、
本当の顔というか、実際どうなのかみたいなのを知ってしまうと、求めるものじゃなかったって思ってしまうっていうことなのかなと思ったんですけど。
キャラクターの対比
コーノ
現実化したっていうのはそういうことかな。
ポーさん
なんかこのエツコを僕側に引き寄せると、今河野さんが言ったような感じになるかなと思ったんですけど、
自分がエツコの方に追いつくっていうのは、私はエツコみたいになるっていう風に読めたんで、
そうなると僕もエツコみたいにちょっと変わったずれた人間になっちゃって、
そうなるとお互いずれた者同士で、その現実化っていうのはにはならないのかなって思って、
よく理解できなかったんですけど、
コーノ
分かんないですけどね。僕はなんか追いつくっていうのは理解が追いつくってことかなと思ったんで。
あとは僕は、このコメントでめっちゃヌルヌルって言うなと思って、ヌルヌルが不足して。
ポーさん
現実とか肉体的なものを指してましたよね。
コーノ
なんか多分日本文学のこの締めっぽいところかなと思ったんですけど。
ヌルヌルって言うんやと思って。
ポーさん
肉身が出てこないあたりですよね。
村上はるきはヌルヌル排除方向に結構自分に近いものがあるって言ってましたね。
コーノ
そうですね。不足してるところに惹かれるって言ってるんで。
で、太った女がヌルヌルしたキャラって言って。
ポーさん
他のには出てくるって書いてますもんね。
でもやっぱりそうなると村上はるきがこのガラスの靴好きなのは分かりますね。
コーノ
割と象徴的やなって思うキャラクターというか。
僕はいつも村上はるきのことを話すときに、いつもそこに帰結してしまうんですけど。
ナオコとミドリで考えるとすごい分かりやすいって思う。
ポーさん
ノルウェーの森の。
コーノ
このエツコはナオコ的なキャラクターじゃないですか。
突拍子もないというか。
で、太った女、現実的な女っていうのがミドリ的な女性ってなって。
それをどう描くかみたいな、そういう見方をしてそれが面白いって思ったのかなと思って。
大体村上はるきに限らずかもしれないですけど、
描かれる女性のイメージっていうのは大体その辺でよくあるんで。
現実的な女性と幻想的な女性みたいな。
ポーさん
理想と現実みたいな体系ですかね。
恋愛の心理
ポーさん
非現実の象徴が痩せた。
コーノ
で、そのなんか非現実な人に追いつくとちょっと壊れてしまうとか。
そういう結末とかもよくある。
だから村上はるきがそういうのが好きっていうのはよくわかるなっていう。
ポーさん
110ページの5行目で、僕がエツコとのファンタジーを失いたくないと同時に、
失う火の到来を心待ちにもしているっていうふうに書いていて、
その辺の意識の引っ張り合いがとても見事ですって書いてたんですけど、
私これガラスの靴を読んでいるときに、
僕がエツコとの火が失われることを内心こう待っていたっていうように読み取れなかったんですよ。
結構私はずっと僕っていうのがエツコに夢中になってて、
クレイごちゅうさんも帰ってきたし、
自分からエツコにアプローチかけたけど断られちゃったっていうので、
結構僕としてはずっと突進してたかなと思ったんですけど、
内心そういう失うことも心待ちにしてたっていう。
コーノ
これ失うっていうのは意味合いが違うと思う。
その火の到来っていうのは結ばれることですね。
失うことじゃなくて。
ポーさん
なるほど。
コーノ
でも結ばれてしまうと今までの関係がなくなってしまうし、
お互いの意識どういうふうに相手を思ってたかとか、
相手がどういう人か分からないか分からないっていう期待とかも全部なくなってしまうから。
ポーさん
そういうことか。
コーノ
そういうことだと思います。結局結ばれなかったんですけど、
その火が到来したことでお互いの思ってたのと違ったっていうのも分かったっていうのが結果だったんですけど、
単純に告白じゃないけど、そういうお互いの意志をぶつけ合うみたいな、
そういう火を待ってるっていうことだと思います。
その火の到来を内心心待ちにしているっていう。
ポーさん
今手にしているそのファンタジーっていうのは、
エツコとの楽しい日々のことですよね。
そうですね。どっちつかずの状態。
同時にその火っていうのが、そのファンタジーが成就することです。
私はファンタジーが失われてしまう日って思ってたけど、
ポノさんは言ってたのは。
コーノ
グレイゴーっていうのが帰ってきたら、この関係っていうのが終わるっていうのは決まってるじゃないですか。
でもそこで告白とかして付き合えたら、その続きがあるかもしれないじゃないですか。
だからその火まで今お互いにいい関係で生きてるけど、
その火が来てしまうと終わるか分からない、もしかしたら付き合えるかもしれないみたいなその火。
ポーさん
待ってる。だからその先にも行けるかもしれないし、終わるかもしれない。
どっちになるか分からないけど、何かしらそういう別れ道が来る日を心待ちにしている。
コーノ
今より良くなるかもしれないと僕は思ってますし、
あとはそれこそそこで肉体関係持ってるかもしれないとかっていうのもあるじゃないですか。
それも待ってると思うし。
ただ今のこの関係も心地いいっていうことですね。
ポーさん
なるほどなるほど。
コーノ
付き合ってしまってそれこそ今日試して別れるとかっていうのもあるじゃないですか。
だからそれまでの方が楽しかったとかっていうこともあるやろうし。
ポーさん
ありがとうございます。分かりました。
コーノ
結構だから僕は何か分かりやすいと思ったんで、この辺は。
たぶんね、ポーさんの恋愛の仕方が全然違いすぎて、
あんまり入ってこなかったかなと思いますけどね。
タイプが。
ポーさん
確かにちょっとね。
タイプが違う。
そうかな、そうかもしれないな。
コーノ
エツコがちょっとみたいなのもたぶんあるし。
ポーさん
なるほどな。
コーノ
なんかそういう感じかなと思いましたね。