SaaSとERPの関係
はい、こんにちは、ゼロトピックです。 今回は、すべてのSaaSはERPを目指す
というタイトルで、少し考えたことを 収録してみたいと思います。
今回の背景になったニュースがありまして、 それはスマートHRさんが出されていた
事業戦略、プレスリリースを見て、 改めて自分が思ったことを話そうかな
と思っています。このプレスリリースを見て、 彼らも明言しているんですが、
ローム、人事ロームの領域の機関システム あるいはERPという、そういったものになろう
としているんだなというふうに思いました。 ERPは何かに触れる前に、自分が
理解しているスマートHRさんが根を張られている 人事とかロームの領域って、特にローム中心に
具体的にどういうものがあるかというと、 例えば、入退者の管理とか勤務時間の管理とか
勤退管理ですね。給与の計算とか、また 社会保険の関連する業務とか、福利構成の
関連する業務とか、また就業規則に関連する 業務とか、また、労使、スタートアップだと
あんまないかもしれないですけど、労使 関連の業務とか、この辺りがいわゆるローム
っていう領域で大きくくくられていて、 もともとスマートHRっていう会社の製品は、
この入退者の管理を簡単にするための ポイントソリューションとして始まった
というふうに思っています。僕らも創業が2017年で、 創業の時点からスマートHRを使っていたんですが、
その使っていた理由っていうのは、 基本的にこの入退者管理をやっていく。
そこから付随して、例えば社会保険の管理とか、 マイナンバーの管理とか、そういった
特にロームを中心に強みがあるプロダクトとして 使ってきたので、自分たちが使った意見としては、
そんなにズレがないんじゃないかなと思っています。 今の話の中にも出てきたんですが、
いわゆるSaaSと呼ばれる製品は、基本的に ポイントソリューションとして始まると思っているんですね。
特定の課題を決められたスコープの中で、 うまく解決するってことにスコープが当てられた製品です。
今のスマートHR以外の例でいうと、 例えばオンライン会議をうまくやるためのツールとか、
管理会計をうまくやるためのツールとか、 財務会計をうまくやるためのツールとか、
入体者管理とか、あるいは最近などSaaSを管理するためのSaaSとか、
そういった形で何らかの企業活動の特定の課題をうまく解決できる。
その特定の課題をNの企業に広げて、 狭い課題を広く解決する。
それがポイントソリューションとしてのSaaSだったのかなと思っています。
ポイントソリューションなので、導入がスムーズだとか早いとか、
あるいはその特定の問題に対しては何よりもうまく解決できるとか、
すごくポジティブな面がある一方で、 当然ですけどネガティブな面もあって、
一番事業的にネガティブな面って何かというと、
タムの上限、これが相対的に低いってことだと思っています。
この相対的にっていうのは何と比べてかっていう話だと思っていて、
それはちょっと後から説明したいなと思っています。
多くの場合、ポイントソリューションとしてのSaaSっていうのは、
Excelとか既存の手動でやってるオペレーションとか、
ポイントソリューションの課題
あるいは既存のシステムの一部の使いにくさとか、
そういうものを代替するソリューションとして、 導入がされることが多いのかなと思っています。
なので、一つ事業的に見ると、 単価が小さい、低いってことがきますし、
あとは導入企業、導入してくれる企業っていうものにも、
やっぱりあるスナップショットを見ると上限が必ずあって、
上限まで足していく、あるいは近づいていくと、 その後っていうのは無消費層、
今はその問題に困っていないし、
そのツールを入れてまで解決したいと思っていないような人たちを、
どうやってひっくり返していくかっていう戦いになるので、
この戦いに入るとすごく時間がかかるようになる。
これがSaaSのネガティブな面、 あるいはB2B向けのソフトウェアの、
特にポイントソリューションの ネガティブな面だと思っています。
我々の話をすると、僕らはStaylerっていうネットスーパー向けのアプリ、
モバイルアプリを作れるっていうプラットフォームとして、 市場に参入してるんですよね。
なので、すごく狭い。
ネットスーパーを小売企業、スーパーマーケットの中で、 ネットスーパーをすでにやられていて、
モバイル化ができていない。 ほとんどの企業はモバイル化できていなかったので、
モバイル化できていない企業っていうのが対象になるんですが、
全体から見ると1%とか2%とかの話なので、
非常に狭い顧客の、 狭い問題を対象にしたサービスだった。
なので、同じようなポイントソリューションとしての 問題があったっていうのがあります。
こういった形で、ポイントソリューションのタムが低いっていう問題を解決する、
その手段、解決方法として、いわゆるマルチプロダクト化っていうものが 取られてきたっていうふうに考えてます。
ポイントソリューションAから、ポイントソリューションAとBって形で2つ増やすと、
その分だけアクセスできる市場、タムが増える。
これはシンプルに分かりやすいと思ってます。
あともう一つあって、AとBという、 この製品がつながることで生まれる価値、
Cみたいなものがさらに生み出せると、タムはもう少し増える。
こういった構造になっているので、我々も含む多くの B2B向けのソフトウェアを中心とした企業っていうのは、
こういった形でAとB、あるいはAとBの間に生まれるC、 これをどんどん増やしたいっていう意図。
その意図の背景にはタムをもっと拡大したい。
自分たちがアプローチできる市場を、 もっともっと上限を上げていきたいんだと。
そういう思考があるがゆえに、このマルチプロダクト化っていうのが どんどん進んでいくのかなと思ってます。
で、巷で流行りの、例えばLLMの活用とか、 AIなんちゃらみたいなソリューションっていうのは、
基本的には何か破壊的なイノベーションではなくて、 この事業っていう文脈を見ると、
ポイントソリューションを一つ増やすっていう、 なんかそういう位置づけになることが多いのかなっていうふうには思っています。
我々も5月にですね、 AIなんたらっていうプロダクトをいくつか発表させてもらったんですけど、
我々の中の位置づけっていう意味で言うと、 基本的にはそのポイントソリューションの一つ。
あるいはポイントソリューションAとBが繋がって、 価値を生み出すその装置としての一つのプロットみたいな。
なんかそういう位置づけとして、 製品戦略を考えているというところでした。
ERPの特性と導入の難しさ
それでB2Bのソフトウェアで、 じゃあもっとタム広げたいよと。
どうやったらタム広がるんだい。
むしろ一番でかいタムを持っているのは、 何なんだいってことを問うていくと、
どの産業とか、あるいはどの業界、 あるいはどの業務であっても、
ERPっていうこのシステムになる場合っていうのが、 多いというか、ほぼ100%そうなんじゃないかなと思っています。
ERPって何かっていうと、 Enterprise Resource Planningっていう、
このEとRP、頭文字を取ったもので、
よくされる説明としては、 企業の資源配分、これを最適化するためのシステムだ。
人、物、金、情報、これらの計画と実績を 管理していくためのシステムだっていう風に言われていますと。
何が何だか分かりませんと、 いうことが多いと思うんですけど。
この計画と実行、これを管理していくっていうことは、 要は記録が大事なんですよね。
なので人であれば、さっきのまさに スマートHRさんの例みたいな、
誰がいてとか、いくらのお金を払っててとか、 どのぐらい働いててとか、これ人の情報じゃないですか。
これ以外に、例えば小売業だったら、 何を何個いくらで仕入れてとか、
何を何個いくらで売ってっていう、 物の動きの情報、在庫の管理の情報、
販売管理の情報、こういったものが入ってくる。
それによって生まれた、いつ何円企業に入ってきて、 いつ何円企業から出ていく、みたいなキャッシュフローの情報だったり、
あるいはそれを会計上の、財務会計上の PLとかBSに落とし込んだり、
これ財務会計だけではなくて、 企業の経営管理をするための管理会計上の、
その企業、あるいはその業界独自の 管理会計PLに落とし込んだり、
みたいな形で、お金の情報を計画と実行で管理していくとか、
あるいはデータですね。
いろんな、こういったデータを、 どのシステムでどう扱って、
どこに流していくのかみたいな情報の管理、 こういったものを統合的に行う。
そのレコードを最も大きく扱うシステム、 システムオブレコードと呼ばれる、
SORと呼ばれるような領域。
これがERPだというふうに言えるかなと思っています。
多くの場合、ある企業にとっての、 最も大きいSORがERPだし、
最も企業が一番早く導入して、 歴史を持っているレガシーが
ERPであるケースが多いです。
さらにERPって、さっき少しお話ししたみたいに、
小売業ならこうとか、あるいは製造業ならこうとか、 病院経営ならこうみたいな形で、
基本的にはビジネスオペレーションが どうなっているのかによって、
管理しなきゃいけない情報だったり、 物、人、金の流れが全然変わってくるので、
基本、ERPってどんどんバーティカルに なってくるんですよね。
店舗小売向けのERPとか、ロームのERPとか、 製造業向けのERPとか。
巨大なERPベンダー、世界ですと2社、 トップシェアを持っている企業があって、
オラクルとサップみたいな会社は、 基本的にどの産業向けのERPでも、
うちの製品使ってくれれば作れますよっていう、 そういうポジション取りをしていて、
故にすごく巨大で、すごくシェアも大きく、 すごく評判も悪いと、
そういうことになっているのかなと思っています。
余談なんですけど、ショピファイっていう、 いわゆるEコマースのカートシステムとして
始まったサービスが、世界で最もシェアがある カートシステムがあるんですけど、
ショピファイは今や、ECを主体とする産業を やられている業界の人向けのERPみたいな、
そういう位置づけになっていて、 今話した人、物、金、情報、全てのデータを、
ショピファイがあれば、うまく管理できたり、 業務ができるという状況ができていて、
もう世界で最もうまくいっている、 バーティカルERPの一つとも言えるんじゃないかなと、
個人的には思っています。
このERPとポイントソリューションみたいな、 例えば会計ソフトとか在庫ソフトとかとの違いは何かというと、
統合性だと思っています。
ERPはさっき話したみたいに、
いろんな流れのデータみたいなものをちゃんと保存して、
それらを連動して使えるということが、 一応強みとされています。
それができるようなGUAがセットでくっついているんですが、
一番はやっぱりERPのコア、バリューのコアというのは、
データテーブルの設計とか、そこのデータの可用性みたいな、 ここがコアになっているという形になっています。
いろんなERPベンダー、ERPプラットフォームの評判を調べてもらうと分かるんですけど、
UIみたいなものに対する評価というのはとにかく低いんですよね。
あるいはパフォーマンスというか、 待ち時間長いというか、そういう評価はすごく低い。
でもそれでもなぜ人々はSAPとかERPを使い続けるのかというと、
やっぱりコアはデータであり、そのデータの連動であり、
あるいはERPを使う最大のユーザーというのは経営者なので、
経営者にとって欲しいデータの分析みたいなものが該注できる唯一の先。
それがERPというデータベースになっている。
そういったところなのかなと思っています。
なんでERPって導入とか切り替えには時間とかお金とかストレスとか、
そういうものがめっちゃかかるというふうに僕自身は捉えていて、
失敗事例もめっちゃあるなと。
世の中的なSIベンダーにとっては鬼門になっている。
それがERPの切り替えプロジェクトだと思っています。
ERPの切り替えの失敗
具体例だと去年のちょうど今頃ぐらいかな、
グリコさんのERPの切り替えが失敗して、
スーパーの棚からプッチンプリンとか消えてしまったという問題があったと思っているんですけど、
まさに世の中の誰でも知っている大きい企業の根下になっているもののデータを扱っているが故に、
ERPの切り替えがうまくいかなかったり止まったりすると、
実業の物流が止まったり、商品の製造が止まったりする。
こういうことになっているというふうに言えます。
このERPの性質の真逆がまさにSaaSとかが持っているポイントソリューションだったと言えて、
手軽さが売りなんですよね。
狭い業務をよりうまく解決するにはSaaSのほうが圧倒的に優れていたりとか、
導入までの期間もお金も短かったりという。
なのでさっきのタムが小さいみたいな話とのトレードオフになっているというのが、
このERPとSaaSの関係になっていて、
接続点は何かというと、
多くのSaaSはやっぱりERPとデータを連携しないとうまく機能しないとか、
あるいは提供できる価値が限定的になってしまうという性質があると思っています。
例えばERP側にしか何らかの正しい在庫データがないのに、
こちらで人が在庫をめちゃめちゃ簡単に管理できる素晴らしいSaaSがあったとて、
データが2つ別の場所で作られ、運用され、
なかなかこの連携がされていないとなると、
どっちが正しいのか分からなくなったり、
それによるコストが発生しちゃうので、
やっぱり連携しなきゃいけないということが起きる。
なのでERPとSaaSというのはこういうメリットとデメリット、
光と影みたいなのがちょうど逆転しているような関係にあって、
ただ一方で手を結ぶ部分もデータ連携の部分でいうと特に多いと、
そういうふうに見ています。
SaaSとERPの違い
このポイントソリューションを提供しているSaaSの側からERPの側に行こうと思ったときに、
どれだけ大変かというと、正直めちゃくちゃ大変というか、
巨大な断絶があるなというふうに思っています。
それはさっきの説明したソフトウェアの性質の断絶。
例えばSaaSというのは言ったら本当にちっちゃいERPの一部、
あるいはERPが担うことを放棄している業務みたいなものを切り出してきて、
小さなDBと小さなアプリケーションで高度なUX、
これを低い価格で提供し、
汎用的に多くの会社に提供する。
そういう性質で、
逆にERPは巨大なデータベースの構造がまずあって、
巨大建築ですと。
巨大なSORなので、
このレコードをミスると企業の生命線というか、
視覚問題に関わるので、
ものすごく重厚なテストを強いる必要がある。
このSORの部分に価値が偏在しているので、
いわゆるこれを使うエンゲージメントというか、
ユーザーインターフェースだったりの部分だったりというのは、
結構犠牲になることが多いと。
こういう性質の断絶があるので、
SaaSを作ってきたノリではERPは作れないし、
逆にERPを作ったノリでSaaSを作ると失敗するだろうと思っているので、
この性質の断絶というのは、実は大きいと思っています。
その証拠に、ものすごい歴史がある。
OracleとかSAPPみたいな巨大なERPベンダーを超える企業というのは、
やっぱりまだ全然出てきていなくて、
これだけスタートアップがいても。
なので、なかなか良い悪いというよりは、
性質の壁みたいなのを超えられないというところが、
まずはソフトの性質の面であります。
もう一つは、高通マーケットの面でも結構断絶がでかいと思っていて、
SaaSはやっぱり売り方としては、
どっちかというとコンシューマーソフトウェアみたいなものに近いと思うんですよね。
認知を取ってみたいな、パネルを丁寧に管理していく。
でも、ERPみたいなものって巨大なもので価格も高いし、
企業からしても自分たちの生命線を握ってもらう必要があるので、
やっぱりそういう認知を取ってみたいなところというよりは、
結構アカウントベースで一つ一つ信頼関係で、
何か問題があった時にも一緒に戦いますよねっていう、
強固な関係を一緒に築いていきながら、
何か作っていくようなものになっていると思うので、
そこがやっぱり大きい違いかなと思っています。
世の中のERP切り替え失敗案件はほとんど訴訟になっていて、
それは強固な信頼関係なんですけど、最後契約書に落ちてきて、
契約書に落ちてくると制約説で握るんですよね。
制約説で握った時に、この言ってた内容と違うんじゃないかみたいな形で、
どうしてもお互いの期待値がずれみたいなものを、
最後は訴訟で吸収しに行くっていうことが多いように、
自分の目には見えていますが、
その手前の取引がどう始まるかっていうところは、
やっぱりものすごい強い信頼関係が基礎として必要だというふうには思います。
当然、SaaSからERPに行くだけじゃなくて、
ERPベンダーもSaaSをどうブロックするかっていうのを考えるわけなので、
ポイントソリューションを構築したりはするんですけど、
これは同じように逆向きの難しさがあって、
SaaSってユーザーエンゲージメントを第一に作るじゃないですか。
なので、システムオブエンゲージメントの性質が割合がすごく多いと思っています。
なので、必要な開発性質は全然違って、緊張さよりは大胆さがあって、
テスト駆動よりはユーザビティテスト駆動みたいな、
これ今雑な例ですけど、僕の空想の例ですけど、
開発を実際に行う時の特性みたいなものも、
やっぱり違うものが求められるんじゃないかなと思っています。
今、ほとんどのスタートアップっていうのは、
ERP側にいるんじゃなくてSaaS側にいる。
B2Bソフトウェアをやっている会社はSaaS側にいると思っているんですが、
大きくなる企業っていうのは基本的にこの断絶を超えていく覚悟っていうか、
業界の未来と展望
ジレンマとか辛さみたいなのを引き受ける企業だと思っていて、
やっぱりERPにどう入るかっていうのが、
今後のSaaSにとっての大きな問いなんだと思ってですね。
これ実は今のB2Bソフトウェア業界、あるいはソフトウェア業界全体って、
みんなどうAIを使うかみたいな、
こちらが大きな論点だと議論されているように思うんですが、
僕自身はやっぱりこれ違うと思っていて、
どうやってERPに入るのかっていうのが、
このB2Bソフトウェアにおける最大の、
最もフォーカスすべき議論だと思っていて、
自分たちもそういうところに集中をしてきているみたいなところがあります。
特に我々はネットスーパー向けの超ポイントソリューションから、
ネットスーパー向けのERPに今なってるんですよね。
これをどうやってもう少しエリアを拡大していくかみたいなことを考えているので、
そういう面でいうと、一度自分たちもこの流れをたどる中で、
結構大変だったことがあったりしました。
この断絶をどう越えていくかっていうのが、
やっぱり自分たちのアクセスできるタイムを広げる上では、
最も大きな論点にこれからなるべきだし、なるだろうと思っています。
という観点から、さっきのSmart HRさんのプレスリリースを見ると、
すごく納得感というか腹落ち感があるんですよね。
特にロームの業界の中で何が一番難しくて大変で個別性が多いかというと、
給与計算なんですよ。
給与計算って、例えば時給の人もいれば裁量労働の人もいて、
月収で決まっている人もいれば年収で決まっている人、
あるいは変動給がある人、いろんな計算の方式があって、
しかも絶対にミスっちゃいけない。
これがすごくローム業界における業務の負担を上げていると思っているので、
しっかりソフトウェアとして提供するものを出してきたというのは、
明確にまずはロームエリアでのERPとしての立ち位置を作り込みに
いこうとしているだろうし、めちゃくちゃまっとうだなというふうに
自分には見えたので、ちょっと触れてみました。
ということで、ちょっと思ったことを話してみました。
もし感想などあればお問い合わせからお願いできればと思っています。
それでは今回もお聞きいただきありがとうございました。