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2025-04-14 10:02

量子化学2(第1回; 2020年版)変分原理とは?

量子化学2(第1回; 2020年版)の「過去の講義動画 」をもとに、講義の主要なトピックについて「2人のAIホストがおしゃべりする」というポッドキャスト風の音声概要を作りました。通学中などの予習・復習に活用してみてください。

音声概要は AI によって生成されるため、「不正確な情報」「音声の乱れ」「漢字や記号の読み間違い」などが含まれる場合があります。

講義資料:https://yamlab.net/lect-qc2

サマリー

量子化学の変分原理を深く探るエピソードです。具体的には、波動関数を近似的に求める手法であるLCAOや、エネルギーを最小化する方法、さらに化学結合における結合性軌道と反結合性軌道に焦点を当てています。

変分原理の重要性
やまラボへようこそ。前回に続いて量子化学の世界を探っていきますが、今日は特に変分原理、これを使って分子の状態を探る方法を専門家の方と一緒に深く見ていきたいと思います。よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
早速ですが、この変分原理ってどうしてそんなに重要なんですか?
はい、そこがまさに確信部分ですね。まず原子、例えば水素原子くらいならシュレーディンガー方程式、HψイコールEψという式ですね。これを解けば波動関数ψとエネルギーEがちゃんと求まるんです。
1S軌道とかそういうのが出てくるわけですね。
そうです。でもこれが分子、例えば水素分子イオンH2プラスみたいに原子核が2つ以上になると途端に複雑になって、この方程式を数学的に厳密に解くっていうのが非常に難しくなっちゃうんですよ。
なるほど。電子の動きだけじゃなくて原子核との引力とか核同士の反発とか全部考えなきゃいけないですもんね。
そうなんです。それで直接解くのが難しいと。
はい。
そこで考え出されたのが近似的なアプローチなんです。その代表的なものが原子軌道の線形結合、よくLCAOって略されますけど。
LCAO聞いたことあります。
これは分子全体の波動関数Psiを元になっている原子の波動関数、例えば水素分子イオンなら2つの水素原子の1S軌道、これを解1、解2とすると、これらをある割合で足し合わせたり引いたりして作るという考え方です。
式で書くとPsiイコールC1解1プラスC2解2みたいな形ですね。C1とC2はその混ぜ合わせる割合、係数です。
なるほど。原子軌道っていう部品を組み合わせて分子軌道っていうのを作るイメージですか。
まさにそんな感じです。
エネルギー計算と最小化
その係数C1とC2を変えると、いろいろな組み合わせというか、いろいろな試作品の分子軌道ができるってことですよね。
そうですそうです。係数を変えることで無数の試しの波動関数を作ることができるんです。
でも、たくさんある試作品の中からどうやってエネルギーを計算してどれが本物に近いかを知るんですか。
いい質問ですね。それぞれの試しの波動関数Psiに対応するエネルギーEっていうのは計算できるんです。
具体的にはハミルトニアンHを使ってPsiHPsiをPsiPsiで割るという計算をします。
これはその波動関数Psiの状態におけるKの平均エネルギーを表す式になっていて、結果的に係数C1とC2の関数になるんです。
なるほど。係数を変えればエネルギーの値もいろいろ出てくる。
その通りです。
じゃあその中でどれが一番安定な、つまり一番エネルギーが低い状態を表しているかっていうのが問題ですよね。
そこなんです。ここで登場するのが今日のテーマである変分原理です。
ついに出てきましたね。
これは量子力学の非常に強力でかつ基本的な原理なんですが、どんな試しの波動関数Psiを使って計算したエネルギーEも、
真の最低エネルギー、つまり規定状態のエネルギーE0よりも絶対に低くなることはないというものです。
式で書けばEは必ずE0以上、E小なりイコールE0だということですね。
絶対低くはならないんですか?
そうなんです。
じゃあ、いろいろな係数、C1とC2の組み合わせでエネルギーEを計算してみて、
その中で一番低いエネルギー値を見つければ、それが可能な限り真の規定状態エネルギーに近い値だって考えていいんですか?
まさにその通り。素晴らしい。それが変文原理の賢い使い方なんです。
たくさんの試しの関数の中からエネルギーが最小になるものを探す。それが一番マシな近似解だというわけです。
なるほど。エネルギーを最小にするっていうのが目標なんですね?
はい。エネルギーEが係数C1とC2の関数EのC1、C2ですから、
このエネルギーが最小になるようなC1とC2の組み合わせを見つけ出すというのが我々の戦略になります。
でもその最小値を探すのって、闇雲に係数を変えて計算するのも大変そうですよね。もっと効率的な方法とかって?
化学結合と軌道の性質
ええ、もちろんあります。ここで数学の力、特に微分の考え方が役立ちます。
エネルギーEが最小あるいは極小になる点では、グラフの傾きがゼロになるはずですよね?
はい、そうですね。
それと同じで、エネルギーEを係数C1で変微分したものとC2で変微分したものが両方ともゼロになるという条件を使います。
ΔEΔC1イコールゼロかつΔEΔC2イコールゼロという条件ですね。
微分して傾きがゼロになる点を晒すと。
そうです。この条件を先ほどのエネルギーの式を使って具体的に書き下ろしていくと、永年方程式、セキュラー方程式と呼ばれる連立一時方程式が得られます。
永年方程式。
はい。ただこの方程式にはですね、C1もC2も両方ゼロ。つまり波動関数自体がなくなってしまうという、物理的には意味のない解、致命な解と言います。もう常に含まれてしまうんです。
ああ、それは困りますね。係数がゼロじゃない意味のある解が欲しいわけですよね。
その通りです。そこでこの永年方程式がその致命な解以外の意味のある解を持つための数学的な条件というものがあるんです。
それが永年行列式と呼ばれる係数とか原子軌道間の相互作用を表すエネルギーとかから作られる特別な行列、その行列式がゼロになるという条件なんです。
行列式。なんか線形代数でやりました。あの行列から計算される一つの数値みたいなやつですよね。
そうです。それです。
その行列式がゼロになるっていう方程式を解くと何がわかるんですか。
これが重要で、この行列式イコールゼロという方程式をエネルギーEについて解くとですね、物理的に可能なエネルギーの値がいくつか求まるんです。
水素分子イオンH2プラスのような簡単な二原子分子の場合だと、通常エネルギーの低い解と高い解の2つの解が出てきます。
低い方と高い方。
そしてこの低い方のエネルギーが変分原理によって保証された最も安定な状態、つまり規定状態の近似エネルギーに対応します。
なるほど。
そして高い方のエネルギーはそれよりも不安定な景気状態に対応するわけです。
じゃあ、その規定状態のエネルギーを与える波動関数、つまり特定のC1とC2の組み合わせで作られたψこそが、変分原理に基づいて見つけた最も現実に近い分子軌道の近似解ってことになるんですね。
ごめんと、そういうことです。
その一番安定な規定状態の波動関数って具体的にはどういう形というか性質を持ってるんですか?
それがまた面白くてですね。実際に計算してみると、エネルギーが低い規定状態に対応する波動関数ψでは、元の2つの原子軌道C1とC2が、お互いを強め合うような形で足し合わせられているんです。
強め合う。
えぇ、位相が揃って重なるみたいなイメージです。その結果、2つの原子核のちょうど間の領域に電子が存在する確率が高くなる。これが原子同士を結びつける力、つまり化学結合の元になるので、結合性軌道と呼ばれます。
へぇ、原子の間に電子が集まるんですね。
じゃあ、エネルギーが高い方は?
鋭いですね。エネルギーが高い景気状態に対応する方は、逆に原子軌道がお互いを打ち消し合うように、つまり逆の位相で引かれるような形で組み合わさっています。
そうすると、原子核の間に電子がほとんど存在できない不死、濃度と呼ばれる面ができてしまうんです。これは原子同士の結合を弱める働きをするので、反結合性軌道と呼ばれます。
合ってるんですね。
反結合性軌道もセットで出てくると。
そういうことです。複雑なシレーディングや方程式を直接解かなくても、変分原理と永年方程式という道具立てを使うことで、分子の最も安定な電子状態とそのエネルギー、そして軌道の形を近似的に、でもかなりうまく求められる。これがこの方法の強力なところですね。
いやー、よくわかりました。変分原理っていうのが、ただエネルギーの加減を与えるだけじゃなくて、実際に一番安定な状態を探すための具体的な計算手法、永年方程式につながっている。その流れがすごくクリアになりました。ありがとうございます。
よかったです。エネルギーを最小化するという考え方が鍵でしたね。
では、最後に一つ、ちょっと発展的な問いかけを。今回、LCAOでは、原子軌道XE1とかXE2の形は、原子の時と全く同じものとして使いましたよね?
あ、はい。部品としてそのまま使いました。
でも、もし、原子が分子になるときに、その原子軌道自体の形も、周りの原子の影響を受けて、少しだけ歪んだり変化したりするとしたら、どうでしょう?
そういう原子軌道の変形まで考慮に入れるとしたら、エネルギーの計算結果や、得られる分子軌道の記述は、もっと現実に近づくと思いませんか?
これをどうやって計算に取り入れるか、というのが、実はさらに精密な計算科学の世界への入り口になっているんですよ。
ちょっと考えてみてください。
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