「AIは人間を暇にする」という嘘|ままならジオ(ままなラジオ)#10
2026-05-06 15:52

「AIは人間を暇にする」という嘘|ままならジオ(ままなラジオ)#10

「ままならジオ」は、人生の「ままならなさ」を、『弱さ考』著者であり、オンライン読書プログラムの「問い読」主催者でもある井上慎平が、みなさんと一緒に、もたもた、まったり考える番組です。

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▶︎読む「ままならジオ」(本編の台本・文字起こし)AIで人間が暇になるなんて真っ赤な大嘘やんね。 今日はそんなお話です。ままならジオ。 『弱さ考』著者の井上慎平が、 人生の"ままならなさ"を、 焚き火を囲むように、一緒に考える番組です。 もたもたと、割り切れないまま。 割り切らないまま。最近ね、よく「AIによって人間が暇になるんやー」っていう議論があるやないですか。 人間が暇になって、哲学的なことをたくさん考えるんやないかとか。あれ、「絶対嘘やん」って僕は思ってて。AIは人を暇にはしーへん。 というか、ただでさえ悲鳴をあげている脳が さらに働かされることになるのになあ、と思って、 このAI、AIの大騒ぎをはたから眺めとります。僕がAIが脳を暇にしないと思うには2つの理由がありまして。 ひとつは、「労働密度」の問題ですね。 うん、「労働密度」って聞いたことないですよね? あるっていう人は嘘つきですね。 僕が勝手につくった言葉ですからね。 労働にはね、密度があるんすよ。「昔、24時間戦えますか」っていうエナジードリンクのCMがあったやないですか。 あの高度経済成長期のころって、 労働の「密度」は実は低かったと思うんですよね。 たとえば、電車で先方に書類を渡しに行ったりする時間とかあったやないですか。 そういう実質働いてない時間とかあったし、 スマホもなかったから、会社を出たらしばらく だれとも連絡をとらんでいい時間があったりした。もちろん、当時の人が現代の僕らよりがんばってなかったって言いたいわけではないですよ? 単純に、人を密度高く働かせるテクノロジーがなかったっちゅうだけで。時間を一気に現代まで飛ばしますけど、 スマホが登場して、ちょっと前にZoomとかSlackとかが出てきたでしょ?ちょっと前まではSlackやなくてメールやったんですよね。 んで、メールやと、社内の人とやり取りするにしても 1日2、3回がまぁ限界やないですか。 それがSlackやと20、30回もいけちゃうでしょ? Zoomも、移動時間がなくなって暇ができるって言われてやないですか。 でも、実際コロナ禍のときなんか、 家にいるのにトイレにいく暇もないくらいミーティングが詰め込まれたりしてね。 どこが暇やねんっていう。テクノロジーは、確かに時間を、暇を作り出すんですよ。 でも、僕たちはその空いた時間で休憩するんやなくて 「さらに仕事する」っていう行為で埋めてまうんですね。 なんかすげえ悲しい生き物に思えてきたな。ハルトムート・ローザっていう人が『加速する社会』っていう本を書いてて、 そのなかで 「テクノロジーはなぜ時間を作るのに、我々は忙しくなる一方なのか?」 っていう問いに対して、 「人間は増えた時間以上に活動の量を増やしてしまうから」 って答えてます。 めっちゃ長い本なんで原著は読まんでいいと思うんですけど。人間は歴史上、ずっと時間を余らせるためのテクノロジーをつくりながら、 もっと忙しくなるっていう矛盾を繰り返してきたんよねー。AIが脳を暇にしないと思うもうひとつの理由は「競争」ですね。今の世の中、どの会社が自社のライバルになるかなんてわからんやないですか。 見えない敵と競争している以上は、 つねに敵がこの瞬間も自分たちより努力している可能性があるわけで。 やから暇になったからって社員に「15時に帰っていいよ」っていう会社なんか 基本的にはないんですよ。 基本的に新しい仕事が増えるだけなんよね。 人間はどこまでも無駄な仕事を増やす生き物なんでね。 このあたりは『ブルシット・ジョブ』のデヴィッド・グレーバーなんかが ずっと言ってることですけど。もう一回、働く人の人生に話を戻しますけど、 このテクノロジーの発展がどういうふうに影響するかというと、 一言でいうと労働密度がめっちゃ上がってミチミチの状態になんのよね。 密度の低い仕事がなくなって、 密度の高い仕事ばっかりになってまうんよ。今は労働密度の低い仕事から全部AIがやってくれるわけです。 経費精算とか。 僕、前は経費精算とかめちゃくちゃ嫌いやったんですね。 単調で、退屈で。 でも最近思いますもんね。 経費精算恋しいなあ、みたいな。 経費精算がなくなって、人間はもっと頭を使う、 ハードな仕事だけの状態になっていくわけ。 もう疲れてしゃあない。 まあ、それは僕の脳の体力が人の半分くらいしかなくて疲れやすいから、 余計にそう感じるんでしょうけど。でも、一回働きすぎて脳がぶっ壊れた身からすると、 明らかに現代人の脳は悲鳴をあげてると思いますよ。僕がね、脳に機能障害を抱えてからいろいろ調べてびっくりしたことを 共有したいんですけど、 科学とか神経科学によると脳はすごい可塑的なんですって。 可塑的っていうのはつまり後から形を変えることができるってことで、 つまりぐにゃぐにゃ形を変えて環境に適応するのがめちゃめちゃうまいんですよ! よう例に出るんは、ロンドンのタクシーの運ちゃんの話ですね。 ロンドンって迷路みたいな街やから、 タクシーの運ちゃんは記憶に関するパーツである海馬っていうんが めちゃくちゃ発達してるらしいと。 でも、同じロンドンでもバスの運転手は道を全部覚えんでいいから、 海馬はふつうの人と変わらんらしいです。ほかにもね! 楽しいからちょっと聞いてって。 人間ってこの数百年ですっかり生活が様変わりしたやないですか。 でも、生まれた時の脳の構造そのものは全然変わってないんですって。 だからもし10000年前の人間の赤ちゃんをタイムスリップして現代に連れてきたとしても、 脳は僕たちと変わらんから、僕たちと同じように育つ。 人間は、後天的に、つまり環境の中で 脳のバランスを調整して適応する能力がめちゃくちゃ高いんです。でもこれ以上AIが発展して、全然暇にならずに、 もっと労働密度の高い仕事を詰め込んだりしたら それはさすがに頭がパンクして、 僕みたいな思いをする人が増えてまうんちゃうのっていうのが 僕が最近心配してることです。最後にひとつだけ、じゃあどうしたらええん?っていうことに対して 僕の考えを共有しておくと、 いまAIは、新しいもの好きな人たちがめっちゃ試行錯誤してくれてるんで、 ほとんどの人は、なんも試行錯誤せんでええんちゃうかな、 意図的に遅らせて新しいもの好きの人たちが使い方を確立してから それを教えてもらったらええんちゃうかな。 たとえば一年遅れでAI使い始めても、大した違いなんて出ませんからね。 今使わんとやばいぞ、時代の波に乗り遅れるぞってみんな言うけど、 「へえへえ、私はその波には一年後にぴょいっと乗ろうと思ってますからね」って のんびりかまえてたらええと思います。それでは、今日のままならジオはここまで。 この番組は一緒に考える、をやりたいんで、 質問・感想もフォームから募集してます。 僕が主催している、「ちょいムズ本を、仲間と読み切る」 オンライン読書プログラム「問い読」と一緒に、 詳細を概要欄に置いておきます。 井上慎平でした。 ほんじゃあ、また。

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