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2025-06-03 18:34

朝のスパイスで朗読を初めてみた!「注文の多い料理店」・宮沢賢治・まきx OKE

朝のスパイス配信メンバーで火曜日枠を使って朗読配信をしてみることにしました。


<今日の作品>
「注文の多い料理店」・宮沢賢治

1つ目の作品は宮沢賢治の「注文の多い料理店」です。有名なお話しなので、ご存知の方も多いのではないでしょうか?この作品は2人で読んでいます。いくつのドアが出てくるのか、笑、主人公の2人と一緒にワクワク、ドキドキしながらドアをあけてみましょ:)


前半部分:OKE
後半部分:まき




<今日の配信者>

ー まき
まきの自己紹介配信はこちら
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個人配信「言葉で聞く読書」
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ー OKE(おけ) 
カナダ、トロント在住。普段はクラフト講師、ナレーターとして活動中。 2020年4月から個人でも「⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠Hello From カナダ⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠」という番組名で毎週1回配信をしています。この番組ではトロントのライフスタイルをメインに旅の話、我が家の犬、グラの話もたまーにしています。



個人配信 「Hello From カナダ」⁠
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サマリー

宮沢賢治の「注文の多い料理店」では、二人の若い紳士が山奥で迷っていると、美味しい食事を求めて不思議なレストランにたどり着きます。彼らは入店することで、予期せぬ経験と驚きを味わいます。このエピソードでは、登場人物たちが不思議な料理店での体験を通じて恐怖と笑いを体感します。物語は、食材や料理にまつわるユーモアを交えながら、意外な展開を迎えます。

山奥での迷子
注文の多い料理店、宮沢賢治、二人の若い紳士が、すっかりイギリスの兵隊のかたちをして、
ぴかぴかする鉄砲をかついで、白熊のような犬を二ひきつれて、だいぶ山奥の木の葉のかさかさしたところを、こんなことを云いながら歩いておりました。
「ぜんたい、ここらの山はけしからんね。とりもけものも一ぴきもいやがらん。
なんでもかまわないから、はやくたんたたーんとやってみたいもんだな。
鹿の黄いろな横っぱらなんぞに、にさんぱつおみまえ申したら、ずいぶんつうかいだろうね。
くるくるまわって、それからどたっとたおれるだろうね。」
それはだいぶの山奥でした。
あんないしてきた専門の鉄砲うちも、ちょっとまごついて、どこかへ行ってしまったくらいの山奥でした。
それに、あんまり山がものすごいので、その白熊のような犬が二ひきいっしょにめまいをおこして、しばらくうなって、それからあわをはいてしんでしまいました。
「じつにぼくは二千四百円の損害だ。」とひとりの紳士が、その犬のまぶたをちょっとかえしてみていいました。
「ぼくは二千八百円の損害だ。」ともうひとりが、くやしそうにあたまをまげていいました。
はじめの紳士は、すこしかおいろをわるくして、じっともうひとりの紳士のかおつきをみながらいいました。
「ぼくはもうもどろうとおもう。さあ、ぼくもちょうどさむくはなったし、はらはすいてきたし、もどろうとおもう。」
「そいじゃ、これできりあげよう。なあに、もどりにきのうのやどやで、やまどりを十円もかってかえればいい。」
「うさぎもでていたね。そうすればけっきょくおんなじこった。ではかえろうじゃないか。」
ところがどうもこまったことは、どっちへいけばもどれるのか、いっこうにけんとうがつかなくなっていました。
かぜがどうとふいてきて、くさはざわざわ、このははかさかさ、きはごとんごとんとなりました。
どうもはらがすいた。さっきからよこっぱらがいたくてたまらないんだ。
「ぼくもそうだ。もうあんまりあるきたくないなあ。」
「あるきたくないよ。ああ、こまったなあ。なにかたべたいなあ。たべたいもんだなあ。」
不思議なレストラン
ふたりのしんしはざわざわなるすすきのなかで、こんなことをいいました。
そのときふとうしろをみますと、りっぱないっけんのせいようづくりのいえがありました。
そしてげんかんには、レストラン、せいようりょうりてん、ワイルドキャットハウス、やまねこけんというふだがでていました。
「きみ、ちょうどいい。ここはこれでなかなかひらけているんだ。はいろうじゃないか。」
「おや、こんなところにおかしいね。しかしとにかくなにかしょくじができるんだろう。」
「もちろんできるさ。かんばんにそうかいてあるじゃないか。はいろうじゃないか。ぼくはもうなにかたべたくてたおれそうなんだ。」
ふたりはげんかんにたちました。げんかんはしろいせとのれんがでくんで、じつにりっぱなもんです。
そしてがらすのひらきどがたって、そこにきんもじでこうかいてありました。
「どなたもどうかをはいりください。けしてごえんりょうありません。」
ふたりはそこでひどくよろこんでいいました。
「こいつはどうだ。やっぱりよのなかはうまくできているね。
きょういちんちなんぎしたけれど、こんどはこんないいこともある。
このうちはりょうりてんだけれども、ただでごちそうするんだぜ。」
「どうもそうらしい。けしてごえんりょうありませんというのはそのいみだ。」
ふたりはとうしてなかへはいりました。そこはすぐろうかんになっていました。
そのがらすどのうらがわにはきんもじでこうなっていました。
ことにふとったおかたやわかいおかたは、だいかんげいいたします。
ふたりはだいかんげいというので、もうおおよろこびです。
「きみ、ぼくらはだいかんげいにあたっているのだ。ぼくらはりょうほうかねているから。」
ずんずんろうかをすすんでいきますと、こんどはみずいろのぺんきぬりのとがありました。
どうもへんなうちだ。どうしてこんなにたくさんとがあるのだろう。
これはろしあしきだ。さむいとこややまのなかはみんなこうさ。
そしてふたりはそのとをあけようとしますと、うえにきいろなじでこうかいてありました。
「とうけんはちゅうもんのおおいりょうりてんですから、どうかそこはごしょうちください。」
「なかなかはやっているんだ、こんなやまのなかで。」
「そりゃあそうだ。みたまえ、とうきょうのおおきなりょうりやだっておおどおりにはすくないだろう。」
ふたりはいいながらそのとをあけました。するとそのうらがわに、
「ちゅうもんはずいぶんおおいでしょうが、どうかいちいちこらえてください。」
これはぜんたいどういうんだ。ひとりのしんしはかおをしかめました。
「ううん、これはきっとちゅうもんがあまりおおくてしたくがてまどるけれども、ごめんくださいとこういうことだ。」
「そうだろう。はやくどこかのへやのなかにはいりたいもんだなあ。そしてテーブルにすわりたいもんだなあ。」
ところがどうもうるさいことはまたとがひとつありました。
そしてそのわきにかがみがかかって、そのしたにはながいえのついたぶらしがおいてあったのです。
とにはあかいじで、
「おきゃくさまがた、ここでかみをきちんとして、それからはきもののどろをおとしてください。」とかいてありました。
これはどうももっともだ。ぼくもさっきげんかんでやまのなかだと思ってみくびったんだよ。
さほうのきびしいえだ、きっとよほどえらいひとたちがたびたびくるんだ。
そこでふたりはきれいにかみをけずってくつのどろをおとしました。
そしたらどうです。ぶらしをいたのうえにおくやいなや、そいつがぼうっとかすんでなくなって、かぜがどうとへやのなかにはいってきました。
ふたりはびっくりしてたがいによりそって、とをがたんとあけてつぎのへやへはいっていきました。
はやくなにかあたたかいものでもたべてげんきをつけておかないと、もうとほうもないことになってしまうとふたりともおもったのでした。
とのうちがわにまたへんなことがかいてありました。
てっぽうとたまをここへおいてください。
みるとすぐよこにくろいだいがありました。
なるほど、てっぽうをもってものをくうというほうはない。
奇妙な体験
いや、よほどえらいひとがしじゅうきているんだ。
ふたりはてっぽうをはずし、おびがわをといて、それをだいのうえにおきました。
またくろいとがありました。
どうかぼうしとがいとうとくつをおとりください。
どうだ、とるか?
しかたない、とろう、たしかによっぽどえらいひとなんだ、おくにきているのは。
ふたりはぼうしとオーバーコートをくぎにかけ、くつをぬいでぺたぺたあるいてとのなかにはいりました。
とのうらがわには、ねくたいぴん、かふすぼたん、めがね、さいふ、そのほかかなものるい、
ことにとがったものはみんなここにおいてください、とかいてありました。
とのすぐよこにはくろぬりのりっぱなきんこも、
ちゃんとくちをあけておいてありました。かぎまでそえてあったのです。
ははあ、なにかのりょうりにでんきをつかうとみえるね。
かねけのものはあぶない、ことにとがったものはあぶない、とこういうんだろう。
そうだろう、してみると、かんじょうはかえりにここではらうのだろうか。
ろうもそうらしい。
そうだ、きっと。
ふたりはめがねをはずしたり、かふすぼたんをとったり、
みんなきんこのなかにいれて、パチンとじょうをかけました。
ぜんはんぶぶん、いかがでしたか。
こうはんぶぶんはまきさんにバトンタッチして、ろうどくをしてもらいたいなと思います。
すこしいきますと、またとがあって、
そのまえにがらすのつぼがひとつありました。
とにはこうかいてありました。
つぼのなかのクリームを、かおやてあしにすっかりぬってください。
みるとたしかに、つぼのなかのものはぎゅうにゅうのクリームでした。
クリームをぬれ、というのはどういうんだ?
これはね、そとがひじょうにさむいだろう。
ひやのなかがあんまりあたたかいとひびがきれるから、そのよぼうなんだ。
どうもおくにはよほどえらいひとがきている。
こんなとこで、あんがいぼくらはきぞくとちかづきになるのかもしれないよ。
ふたりはつぼのクリームをかおにぬって、てにぬって、それからくつしたをぬいであしにぬりました。
不思議な料理店
それでもまだのこっていましたから、それはふたりともめいめいこっそりかおへぬるふりをしながらたべました。
それからおおいそぎでとうをあけますと、
そのうらがわには、
クリームをよくぬりましたか?
みみにもよくぬりましたか?
とかいてあって、ちいさなクリームのつぼがここにもおいてありました。
そうそう、ぼくはみみにはぬらなかった。
あぶなくみみにひびをきらすとこだった。
ここのしゅじんはじつによういしゅうとうだね。
ああ、こまかいとこまでよくきがつくよ。
ところでぼくははやくなにかたべたいんだが、
どうも、こうどこまでもろうかじゃしかたないね。
するとすぐそのまえにつぎのとがありました。
りょうりはまたもうすぐできます。
じゅうごふんとおまたせはいたしません。
すぐたべられます。
はやくあなたのあたまにびんのなかのこうすいをよくふりかけてください。
そしてとのまえにはきんぴかのこうすいのびんがおいてありました。
ふたりはそのこうすいをあたまへぱちゃぱちゃふりかけました。
ところがそのこうすいはどうもすのようなにおいがするのでした。
このこうすいはへんにすくさい。どうしたんだろう。
まちがえたんだ。げじょがかぜでもひいてまちがえていれたんだ。
ふたりはとうあけてなかにはいりました。
とのうらがわにはおおきなじでこうかいてありました。
いろいろちゅうもんがおくてうるさかったでしょう。
おきのどくでした。
もうこれだけです。どうかからだじゅうにつぼのなかのしをたくさんよくもみこんでください。
なるほどりっぱなあおいせとのしおつぶはおいてありましたが、
こんどというこんどはふたりともぎょっとしておたがいにクリームをたくさんぬったかをみあわせました。
どうもおかしいぜ。ぼくもおかしいと思う。
たくさんのちゅうもんというのはむこうがこっちへちゅうもんしているんだよ。
だからさ、せいようりょうりてんというのは、ぼくのかんがえるところではせいようりょうりをきたひとにたべさせるのではなくて、
きたひとをせいようりょうりにしてたべてやるうちと、こういうことなんだ。
これはそのつ、つ、つ、つまりぼ、ぼ、ぼくらが、
がたがたがたがたがたがたふるえだしてもうものがいえませんでした。
にげ、がたがたしながらひとりのしんしはうしろのとをおそうとしましたが、どうです、とはもういちぶんうごきませんでした。
おくのほうにはまだいちまいとがあっておおきなかぎやながふたつつき、
ぎんいろのほうくとないふのかたちがあって、
おまけにかぎやなからはきょろきょろふたつのあおいめだまがこっちをのぞいています。
うわあああ、かたかたかたかたかた、
さあ、また、じゃあいちばんにしろがたづいて、
おお、いちばんにしろがたづいて、
おまけに鍵穴からは、きょろきょろ二つの青い目玉がこっちを覗いています。
「うわあ、ガタガタガタガタ。うわあ、ガタガタガタガタガタ。」
二人は泣き出しました。すると、その中では、こそこそこんなことを言っています。
「だめだよ。もう気がついたよ。 塩もみ込まないようだよ。
あたりまえさ、親分の柿代がまずいんだ。 あそこへいろいろ注文が多くてうるさかったでしょう。
お気の毒でした。なんてまぬけなことを書いたもんだ。 どっちでもいいよ。どうせ僕らには骨も分けてくれやしないんだ。
それはそうだ。けれども、もしここへあいつらが入ってこなかったら、 それは僕らの責任だぜ。」
呼ぼうか呼ぼう。
「おいお客さん方、早くいらっしゃい。いらっしゃい、いらっしゃい。 お皿も洗ってありますし。」
「なっぱも、もうよく塩でもんでおきました。 あとはあなた方となっぱをうまく取り合わせて、
まっしろのお皿にのせるだけです。早くいらっしゃい。」
「へい、いらっしゃい、いらっしゃい。それともサラドはお嫌いですか? そんならこれから火を起こしてフライにしてあげましょうか。
とにかく早くいらっしゃい。」
二人はあんまり心を痛めたために顔がまるでくしゃくしゃの紙くずのようになり、 お互いにその顔を見合わせ、ぶるぶる震え、声もなく泣きました。
中では、フッフッと笑ってまた叫んでいます。
「いらっしゃい、いらっしゃい。そんなに泣いてはせっかくのクリームが流れるじゃありませんか。」
「へい、ただいま。じき持ってまいります。」
「さあ早くいらっしゃい。」
早くいらっしゃい。親方がもうナフキンをかけてナイフを持って下なめずりしてお客様方を待っていられます。
二人は泣いて泣いて泣いて泣いて泣きました。
その時、後ろからいきなり、
「わんわん、こわっ。」
という声がして、あの白クマのような犬が二匹と突き破って部屋の中に飛び込んできました。
鍵穴の目玉はたちまちなくなり、犬どもはうううと唸ってしばらく部屋の中をくるくる回っていましたが、
また一言、「わん。」と高く吠えて、いきなり次の音に飛びつきました。
戸はがたりと開き、犬どもは吸い込まれるように飛んでいきました。
その向こうの真っ暗闇の中で、
にゃーお、こわーっ、ゴロゴロという声がして、それからガサガサ鳴りました。
部屋は煙のように消え、二人は寒さにブルブル震えて、草の中に立っていました。
見ると上着や靴や財布やネクタイピンはあっちの枝にぶら下がったり、こっちの根元に散らばったりしています。
風がドーッと吹いてきて、草はザワザワ、木の葉はカサカサ、木はゴトンゴトンと鳴りました。
犬がフーッとうなって戻ってきました。
そして後ろからは、「旦那!旦那!」と呼ぶものがあります。
二人はにわかに元気がついて、「おーい!おーい!ここだぞ!早く来い!」と叫びました。
身の帽子をかぶった専門の漁師が草をザワザワ分けてやってきました。
そこで二人はやっと安心しました。
そして漁師の持ってきた団子を食べ、途中で10円だけ山鳥を買って東京に帰りました。
しかし、さっきいっぺん紙くずのようになった二人の顔だけは、東京に帰ってもお湯に入っても、もう元の通りに治りませんでした。
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