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2024-04-07 20:35

令和六年卯月の回『近代文学の夕べ3』1

ガチャを回して出てきたことについて語る「文ガチャ」

卯月の回のお題は「近代文学の夕べ」 らい堂さんが近代文学を読んでの読書感想文を書いて、それについて語っています。

1つめの作品は宮沢賢治の『注文の多い料理店』 青空文庫さんにも掲載されていて、気軽に読める作品です。

まずは、どんなお話なのかを感じていただく朗読から。 みなさんもぜひ、読後の感想を教えて下さいね。


底本:「注文の多い料理店」新潮文庫、新潮社
   1990(平成2)年5月25日発行
   1997(平成9)年5月10日17刷
初出:「イーハトヴ童話 注文の多い料理店」盛岡市杜陵出版部・東京光原社
   1924(大正13)年12月1日
入力:土屋隆
校正:noriko saito
2005年1月26日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

00:04
文ガチャは、ガチャを回して出てきた番組についてのんびりおしゃべりするポッドキャストです。
文ガチャ、令和六年卯月の回、椿雷道です。
咲夜です。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
いつも通り、ガチャを回して今回出た目が、近代文学の夕べという番組になっておりまして、
過去にやってきた近代文学の夕べでは、僕が感想を読む回が先にあって、
その次の週に、咲夜さんがその近代文学を朗読する回っていうのが、後から来る形でやってたんですけれども、
皆さん、多分読んだことない方とかは、それ聞いてから感想を聞く方が聞きやすいかなって、今頃になって思いましてですね。
少なくとも今回は、まずこれから皆さんに咲夜さんによる朗読を聞いていただいて、
来週、私の感想文、椿雷道の感想文とそれについてのお話になっていきます。
1作品目が1週目朗読、2週目感想。
2作品目の朗読、2作品目の感想という順番になっておりますので、ご理解いただければと思います。
では早速、咲夜さんによる朗読をお聞きください。どうぞ。
注文の多い料理店 宮沢賢治
二人の若い紳士がすっかりイギリスの兵隊の形をして、ピカピカする鉄砲を担いで、
白熊のような犬を二匹連れて、だいぶ山奥のこの葉のカサカサしたとこを、こんなことを言いながら歩いておりました。
全体ここらの山はけしからんね。鳥も獣も一匹もいやがらん。何でもかまわないから、早くたんたーんとやってみたいもんだなあ。
鹿の黄色な横っ腹なんぞに二三発お見舞い申したら、ずいぶん痛快だろうね。くるくる回って、それからどたっと倒れるだろうね。
それはだいぶの山奥でした。案内してきた専門の鉄砲打ちもちょっとまごついて、どこかへ行ってしまったくらいの山奥でした。
それにあんまり山がものすごいので、その白熊のような犬が二匹一緒にめまいを起してしばらくうなって、それからあわを吐いて死んでしまいました。
じつにぼくは二千四百円の損害だと一人の紳士がその犬のまぶたをちょっとかえしてみていいました。
03:09
ぼくは二千八百円の損害だともう一人がくやしそうに頭をまげていいました。
はじめの紳士は少し顔色をわるくしてじっともう一人の紳士の顔つきを見ながらいいました。
ぼくはもうもどろうと思う。
さあぼくもちょうどさむくはなったし、はらはすいてきたし、もどろうと思う。
そいじゃあこれできりあげよう。なあにもどりにきのうのやどやで山鳥を十円もかってかえればいい。
うさぎもでていたね。そうすればけっきょくおんなじこった。ではかえろうじゃないか。
ところがどうもこまったことはどっちへいけばもどれるのかいっこうにけんとうがつかなくなっていました。
かぜがどうとふいてきてくさはざわざわ、このははかさかさ、きはごとんごとんとなりました。
どうもはらがすいた。さっきからよこぱらがいたくてたまらないんだ。
ぼくもそうだ。もうあんまりあるきたくないなあ。
あるきたくないよ。ああ、こまったなあ。なにかたべたいなあ。
たべたいもんだなあ。
ふたりのしんしはざわざわなるすすきのなかでこんなことをいいました。
そのときふとおしろをみますとりっぱないっけんのせいようづくりのいえがありました。
そしてげんかんには、レストラン、せいようりょうりてん、ワイルドキャットハウス、やまねこけんというふだがでていました。
きみ、ちょうどいい。ここはこれでなかなかひらけてるんだ。はいろうじゃないか。
おや、こんなところにおかしいねえ。しかしとにかくなにかしょくじができるんだろう。
もちろんできるさ。かんばんにそうかいてあるじゃないか。
はいろうじゃないか。ぼくはもうなにかたべたくてたおれそうなんだ。
ふたりはげんかんにたちました。げんかんはしろいせとのれんがでくんでじつにりっぱなもんです。
そしてがらすのひらきどがたってそこにきんもじでこうかいてありました。
どなたもどうかおはいりください。けっしてごえんりょうはありません。
ふたりはそこでひどくよろこんでいいました。
こいつはどうだ。やっぱりよのなかはうまくできてるねえ。きょういちにちなんぎしたけれど、こんどはこんないいこともある。
06:00
このうちはりょうりてんだけれども、ただでごちそうするんだぜ。
とうもそうらしい。けっしてごえんりょうはありませんというのはそのいみだ。
ふたりはとうをしてなかへはいりました。そこはすぐろうかになっていました。
そのがらしどのうらがわにはきんもじでこうなっていました。
ことにふとったおかたやわかいおかたはだいかんげいいたします。
ふたりはだいかんげいというのでもうおおよろこびです。
きみぼくらはだいかんげいにあたっているのだ。ぼくらはりょうほうかねてるから。
ずんずんろうかをすすんでいきますとこんどはみずいろのぺんきのりのとがありました。
どうもへんなうちだ。どうしてこんなにたくさんとがあるのだろう。
これはろしやしきだ。さむいとこややまのなかはみんなこうさ。
そしてふたりはそのとうをあけようとしますとうえにきいろなじでこうかいてありました。
とうけんはちゅうもんのおおいりょうりでいんですからどうかそこはごしょうちください。
なかなかはやってるんだこんなやまのなかで。
そりゃそうだみたまえとうきょうのおおきなりょうりやだっておおどりにはすくないだろう。
ふたりはいいながらそのとうをあけました。するとそのうらがわに
ちゅうもんはずいぶんおおいでしょうがどうかいちいちこらえてください。
これはいったいどういうんだ。
ひとりのしんしんはかおをしかめました。
うん。これはきっとちゅうもんがあんまりおおくてしたくがてまどるけれどもごめんくださいとこういうことだ。
そうだろう。はやくどこかへやのなかにはいりたいもんだな。
そしてテーブルにすわりたいもんだな。
ところがどうもうるさいことはまたとがひとつありました。
そしてそのわきにかがみがかかってそのしたにはながいえのついたぶらしがおいてあったのです。
とにはあかいじで
おきゃくさまかたここでかみをきちんとしてそれからはきもののどろをおとしてくださいとかいてありました。
これはどうももっともだ。ぼくもさっきげんかんでやまのなかだと思ってみくびったんだよ。
さほうのきびしいいえだ。きっとよほどえらいひとたちがたびたびくるんだ。
そこでふたりはきれいにかみをけずってくつのどろをおとしました。
そしたらどうです。ぶらしをいたのうえにおくやいなやそいつがぼーっとかすんでなくなってかぜがどうとへやのなかにはいってきました。
09:07
ふたりはびっくりしてたがいによりそってとうがたんとあけてつぎのへやへはいっていきました。
なにかはやくあたたかいものでもたべてげんきをつけておかないともうとほうもないことになってしまうとふたりともおもったのでした。
とのうちがわにまたへんなことがかいてありました。
てっぽうとたまをここへおいてください。
みるとすぐよこにくろいだいがありました。
なるほどてっぽうもってものをくうというほうはない。
いやよほどえらいひとがしゅうしきているんだ。
ふたりはてっぽうをはずしおびかわをといてそれをだいのうえにおきました。
またくろいとがありました。
どうかぼうしとがいとうとくつをおとりください。
どうだとるか。
しかだないとろうたしかによっぽどえらいひとなんだおくにきているのは。
ふたりはぼうしとオーバーコートをくぎにかけくつをぬいでぺたぺたあるいてとのなかにはいりました。
とのうらがわにはネクタイピンカフスボタンめがねさいふそのたかなものるいことにとがったものはみんなここにおいてくださいとかいてありました。
とのすぐよこにはくろぬりのりっぱなきんこもちゃんとくちをあけておいてありました。
かぎまでそえてあったのです。
はは、なにかのりょうりにでんきをつかうとみえるね。かなけのものはあぶないことにとがったものはあぶないとこういうんだろう。
そうだろう。してみるとかんじょうはかえりにここではらうのだろうか。
どうもそうらしい。そうだきっと。
ふたりはめがねをはずしたりカフスボタンをとったりみんなきんこのなかにいれてぱちんとじょうをかけました。
すこしいきますとまたとがあってそのまえにがらすのつぼがひとつありました。
とにはこうかいてありました。
つぼのなかのクリームをかおやてあしにすっかりぬってください。
みるとたしかにつぼのなかのものはぎゅうにゅうのクリームでした。
クリームをぬれというのはどういうんだ。
これはね、そとがひじょうにさむいだろう。
へやのなかがあんまりあたたかいとひびがきれるからそのよぼうなんだ。
どうもおくにはよほどえらいひとがきている。
こんなとこであんがいぼくらはきぞくとちかづきになれるかもしれないよ。
12:05
ふたりはつぼのクリームをかおにぬっててにぬってそれからくつしたをぬいであしにぬりました。
それでもまだのこっていましたから、
それはふたりともねいねいこっそりかおをぬるふりをしながらたべました。
それからおおいそぎでとうあけますとそのうらがわには
クリームをよくぬりましたか、みみにもよくぬりましたかとかいてあって
ちいさなクリームのつぼがここにもおいてありました。
そうそう、ぼくはみみにはぬらなかった。
あぶなくみみにひびをきだすとこだった。
ここのしゅじんはじつによういしゅうとうだねえ。
ああ、こまかいとこまでよくきがつくよ。
ところでぼくははやくなにかたべたいんだが
どうもこうどこまでもろうかじゃしかたないねえ。
するとそのすぐまえにつぎのとがありました。
りょうりはもうすぐできます。
じゅうごふんとおまたせはいたしません。
すぐたべられます。
はやくあなたのあたまにびんのなかのこうすいを
よーくふりかけてください。
そしてとのまえにはきんぴかのこうすいのびんがおいてありました。
ふたりはそのこうすいをあたまへぱちゃぱちゃふりかけました。
ところがそのこうすいはどうもすのようなにおいがするのでした。
このこうすいはへんにすくさい。どうしたんだろう。
まちがえたんだ。げじょがかぜでもひいてまちがえていれたんだ。
ふたりはとをあけてなかにはいりました。
とのうらがわにはおおきな字でこうかいてありました。
いろいろちゅうもんがおおくてうるさかったでしょう。
おきのどくでした。もうこれだけです。
どうかからだじゅうにつものなかのしおをたくさんよくもみこんでください。
なるほどりっぱなあおいせとのしおつぼはおいてありましたが
こんどというこんどはふたりともぎょっとして
おたがいにクリームをたくさんぬったかおをみあわせました。
どうもおかしいぜ。
ぼくもおかしいと思う。
たくさんのちゅうもんというのはむこうがこっちへちゅうもんしているんだよ。
だからさ、せいようりょうりてんというのは
ぼくのかんがえるところではせいようりょうりをきたひとにたべさせるのではなくて
きたひとをせいようりょうりにしてたべてやるうちとこういうことなんだ。
15:04
これはその、つまり、ぼくらが
がたがたがたがた、ふるえだしてもうものがいえませんでした。
そ、その、ぼ、ぼくらが
うわあ
がたがたがたがた、ふるえだしてもうものがいえませんでした。
にげ
がたがたしながらひとりのしんしはうしろのとをおそうとしましたがどうですとはもういちるもうごきませんでした。
おくのほうにはまだいちまいとがあっておおきなかぎやながふたつつきぎんいろのフォークとナイフのかたちがきりだしてあって
いやわざわざごくろうですたいへんげっこうにできましたさあさあおなかにおはいりくださいとかいてありました。
おまけにかぎやなからはきょろきょろふたつのあおいめだまがこっちをのぞいています。
うわあああ
がたがたがたがた
がたがたがたがた
ふたりはなきだしましたするととのなかではこそこそこんなことをいっています。
だめだよもう気がついたよ 塩もみ込まないようだよ
当たり前さ親分の柿葉がまずいん だあそこへいろいろ注文が多くて
うるさかったでしょうお気の毒でした なんて間抜けたことを書いたもん
だ どっちでもいいよどうせ僕らには
骨も分けてくれやしないんだ それはそうだけれどももしここ
へあいつらが入ってこなかったら それは僕らの責任だぜ
呼ぼうか呼ぼう おいお客さん方早くいらっしゃい
いらっしゃいお皿も洗ってあります しなっぱももうよく塩でもんで
おきました あとはなた方となっぱをうまく取り合
わせて真っ白なお皿にのせるだけ です早くいらっしゃい
へいいらっしゃいいらっしゃい それともサラダはお嫌いですか
そんならこれから火を起こして フライにしてあげましょうか
とにかく早くいらっしゃい 二人はあんまり心を痛めたために
顔がまるでくしゃくしゃの紙くず のようになりお互いにその顔を
見合わせぶるぶる震え声もなく 泣きました
サラダではフッフッと笑ってまた 叫んでいます
いらっしゃいいらっしゃいそんな に泣いてはせっかくのクリーム
が流れるじゃありませんか 時期もってまいります
さあ早くいらっしゃい 早くいらっしゃいお館がもんな
18:01
布巾をかけてナイフをもって舌 なめずりしてお客様方を待って
いられます 二人は泣いて泣いて泣いて泣いて
泣きました その時後ろからいきなりわんわん
わんという声がしてあの白クマ のような犬が二匹頭突き破って
部屋の中に飛び込んできました 鍵穴の目玉はたちまちなくなり
犬どもはうーんと鳴ってしばらく 部屋の中をくるくる回っていました
がまた一声わんと高く吠えていきなり 次の戸に飛びつきました戸はがたり
と開き犬どもは吸い込まれるように 飛んでいきましたその戸の向う
の真っ暗闇の中でアオコワコロ コロコロという声がしてそれから
ガサガサ鳴りました 部屋は煙のように消え二人は寒さ
にふるえて草の中に立っていました 見ると上着や靴や財布やネクタイ
ピンはあっちの枝にぶら下がった りこっちの根元に散らばったり
しています風がどーっと吹いて きて草はザワザワ木の葉はカサ
カサ木はゴトンゴトンと鳴りました 犬がふーと唸って戻ってきました
そして後ろからは 旦那旦那と叫ぶものがあります
二人はにわかに元気がついて おーいおーいここだぞ早く来い
と叫びました身の帽子をかぶった 専門の漁師が草をザワザワ分けて
やってきました そこで二人はやっと安心しました
そして漁師の持ってきた団子を 食べ途中で十円だけ山鳥を買って
東京に帰りました しかしさっきいっぺん紙くずのよう
になった二人の顔だけは東京に 帰ってもお湯に入ってももう元
の通りになおりませんでした
20:35

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