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飛鳥山の窓から、TOKYO NORTH MOVEMENT。
本の概要とリスナー取材
東京都北区飛鳥山。暖炉のある小篠光宏さんの部屋には、未来を思う様々な人たちが遊びに来ます。
情熱とアイデアが交錯した素敵なおしゃべり。さあ、今夜はどんな話が飛び出すんでしょうか。
こんばんは、小篠光宏です。
今週も引き続き、ライター・編集者の村上謙三久さんをお迎えしております。
今週もよろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。
さて、前回の最後にも触れさせていただいたんですけれども、
村上さんの著書の中で、気になる一冊がありました。
こちらが一昨年に発行されました。
いつものラジオという本で、今ちょっと手元にあるんですけど、結構厚い本ですよね。
そうですね。インタビュープラスコラムも載ってるんで、ちょっと書きすぎたんじゃないかなっていうのがありますけどね。
インタビューにはプロデュースの記者というお仕事の上でもすごくこだわりがあるというふうにありましたけど、
そういう意味ではこだわりの詰まった本ということなんですけども、ちょっと概要をご説明いただけますか。
いろんなラジオ本があると思うんですけど、基本的にはパーソナリティーかスタッフを取材している本なんですけど、
いつものラジオというのは一般の方中心のラジオリスナーを取材した本なんですね。
リスナーを取材してるわけ?
中には放送作家さんとかパーソナリティーの方もちょこっと取材してるんですけど、
基本的には一般の方、主婦とかサラリーマンとか学生とかにも取材してる本です。
今こちらに取材の内容が見て取れますけれども、
葉書職人と呼ばれる常連投稿者の方にも。
これどういう感じでした?
葉書職人って一緒くたに冴えてるけど、やっぱり人によって感覚が違ったりとかもするんですよ。
本当にそれに命をかけてるような人もいれば、ちょっと趣味感覚の人もいたりとか、
あと結構中年になってから送って、それが人生の楽しみになった方とかいるんですよ。
ちょっと後で個別にピックアップしてお話を伺いたいと思いますけれども。
インタビューの背景
この本、先ほど申し上げたように2023年の発行ということですけれども、
リスナーインタビューっていうのを始めたきっかけは何なんですか?
ラジオ本を作るようになって、その過程でリスナーさんとのつながりが生まれたんで、
ラジオに飲みに行ったりするようになったんですね。
その人たちと。
僕もともとプロレスもそうなんですけど、取材対象と仲良くなりたくないタイプなんですよ。
対象とはね。
だからプロレスラーとも仲良くなるとか、ラジオというとパーソナリティと仲良くなるとかじゃなくて、やらないんですよ。
でもリスナーとかにはそういうのないんで、リスナーさんと飲んだりするときになったときに、
なんかちょっと時間つぶしというか、暇つぶしみたいな感じで、
なんでラジオを聴くようになったの?とか、何の番組が好きなの?っていうのを聞くようになったんですよ。
じゃあこれも文章にしてブログで上げようかなっていうところから始まったんですよね。
2015年にご自身のブログで、その様子を公開された。
そうですね。だから最初は10分とか15分、片手間で聞くみたいな感じだったんですけど、
それを定期的にやるようになったりしてて、今は下手すると1時間半とか聞いてますね。
1万字まとめると、になってますね。
あ、そうか。じゃあ本として以外に、このブログのリスナーに聞いていくっていうのがずっと継続されてるってこと?
そうです。今もやってます。
本の取材も全部本用にやったやつなんで、それ以外に100人ぐらいは今やってます。
じゃあまた続編も十分に。
いくらでも作れるんですよね。ニッチすぎる本なんで、なかなか難しいですけど。
なるほど。でも面白い素材ですよね。
だって世の中に個別のリスナー、リスナーに限らないけど、消費者でもいいしね、ユーザーでもいいんだけど、
それの話をじっくり聞いて、公開されてるってあんまり見たことも聞いたこともないような気がする。
結構いろんなジャンルで使えるかもしれないですね。
例えば建築関係でも、家を建ててほしいって頼んできた人100人に話聞いたら、
たぶん全然こだわりも違うし、お金のかけ方とかいろいろ違いもあるじゃないですか。
だからそういう観点でやるのは他の企画でも流用できないかなとはちょっと思ったりします。
そうですよね。どこかだけど統一してのイメージみたいなのもあるっていうか、
求めてるものの共通性みたいなものもあるんじゃないかなと思うんですけど。
そうですね。リスナーさんをインタビューしてていいのは、
例えば地方の人とかも取材したりするんですけど、地方のあの番組を聞いてたみたいな知識になってくるじゃないですか。
一方でパーソナリティーさんを取材した時に、
学生の時にあの地方であの番組を聞いてきた瞬間に、
あの人と同じだって繋げることができるんで、
そういうリンクを生みながら自分の知識体系になるっていう2点もあるんですよね。
要するに共感を引き出すためのテクニックではあるんだけれども、
そこに村上さん自身の楽しさもあるっていうことね。
この本も見ても、みんな全く状況は違うんだけれど、
同じ番組を聞いてる人がいたりとか、
同じ番組を聞いてるけど楽しみ方が違う人がいたりとか、
そういう面白さがあるんですよね。
一瞬にして空間が一緒の空間になるよね。
時系を越えてね。
それは僕もこういった形で、インタビュアーなんていうのはあれですけれども、
ここが欲しいんだけれども、番組やらせていただいてて、
すごく感じるところですよね。
なるほどな。
じゃあ村上さんの、やっぱり人を選ばないリスペクトの強さとか、
そこに対して素直に投げかける言葉みたいなものが、
共感を引き出してるんですかね。
やっぱり取材するときにその人を好きになるってのが大事だと思ってて、
それは有名人、無名な方限らずですけど、
ラジオに関して言うと、最大で僕取材前に
300時間くらい音声を聞いたことがあります。一つの取材に。
時給にするともう100円もないくらいの取材になっちゃうんですけど、
そのくらい聞くとやっぱり怖さもなくなるし、
その人の考え方とかニュアンスとかも分かりますし、
ヘビーリスナーの気持ちも分かるようになってるんで、
これで取材するといいインタビューになるなって思うんですよね。
前回までの放送の中でインタビューをしたときに、
球がなかなか返ってこなかったっていう話があったけど、
今みたいな形の準備っていうものをすると、
どういう球を投げたらちゃんと返ってくるのかとか、
それからその強さもどういう風に返ってくるのかっていうのをイメージできるから、
怖さはなくなるね。
でもたまにいるんですよ。
準備してって過去の話聞いたら全然覚えてませんって。
俺の時間は何だったんだとか思ったりするんですけど、
でもそういうものじゃないですか。
ラジオの取材する前にいつも大事だなと思ってるのは、
紙解とかだけ聞いても意味ないんですよ。
日常回をいっぱい聞いて、言葉にならない雰囲気みたいなのをつかまないと、
ラジオの取材っていいものにならないと思ってるんで、
そこはすごく気をつけてますね。
なるほどね。
こっちが印象に残ってるから、それをぶつけたところで全然覚えてないよっていうのは、
それは確かにプロであればあるほどそういうことがあるかもしれないよね。
一般リスナーさんを取材するにしても意外と資料ってあって、
Xを5年も10年も遡ったりするといっぱい出てくるじゃないですか。
そういうことを結構やってますね。
そうですよね。
だからそういう意味ではインタビュアーにとって、
やっぱりある意味いい時代で、
昔だったらね、僕も渋谷クロスFMっていうところでもって、
2週間にいっぺんシナリオ作ってしてるんだけど、
これができるのはやっぱりインターネットを始めとした資料を集めるということが、
やっぱり容易になってるからですよね。
そうですね。やっぱり昔だったら国会図書館とか行くしかないですもんね。
僕も結構行ってますけど。
図書館行った挙句の果てにあるかどうかわかんないですよね。
そうですね。
だから今だったら図書館行っても、それを検索するのが比較的容易になってるからとかね。
なるほど、そうか。
じゃあ僕が見よう見まねでやってることも、プロのやり方からして外れてないなってちょっと安心しました。
僕も本当に経験で自分なりに飴出してきた感じなんで、それで間違ってないと思いますね。
なるほどね。
印象的なラジオリスナー
さてですね、このいつものラジオの中から先ほど申し上げたようにちょっとピックアップしてですね。
これ面白い人がいっぱいいてですね。
時藤三郎さん?
これ時忍三郎さん。
あ、そっかごめんなさい。
ラジオネームって面白いラジオネームだと思うんですけど。
そっかそっか。
これはどういう人なのこれ。
この人はハーキ職人だったんですけど、今芸人やってるんですよね。
そうなんですか。
僕この人すごい印象的なのは、アルコアンドピースのオールナイトニッポンゼロっていう。
もう10年前やってた番組なんですけど、深夜ラジオ好きの中ではすごく有名で。
村上さん調べるとアルコアンドピースの写真が出てくるんだよね。
その最終回の出待ちっていうのに僕行ったんですよ。
今出待ちって禁止なんですけど当時はOKで。
そしたら時三三郎君が号泣してたんですよ。
深夜の日本放送の前で号泣してるんですよ。
アルコアンドピースの2人が降りてきて挨拶してるのに号泣してるんですよ。
俺の人生終わったみたいな考えだったんですよね。
リスナーとの絆
だから僕彼の背中を押して、今行かないと後悔するかって言ってアルコアンドピースの周りに行かせたんですけど。
終わった後に人生終わったみたいに絶望してたんですけど。
その瞬間から自分も芸人になろうと思ったっていう。
今ちょっとずつ有名になってきてて、いつかアルコアンドピースさんと仕事をしたいって言ってました。
それからタカチャン・アルマゲドン・セキュウオーさん。
この人は文化放送特化型リスナーみたいな感じなんですよね。
僕は年上の方なんですけど。
深夜放送に限らず。
朝のおはよう寺ちゃんからずっと聞きますね。
その辺も聞いてるのかもしれないですね。
長年ずっと夜退調子に聞いてるんで、今の社長さんも彼を認識してるんですよ。
社長さんがあるラジオ番組に出た時に、タカチャンさんがメール送ったら、
知ってる知ってるってなって、いつもお世話になってますみたいになってて。
社長に知られてるリスナーってすごいなって思いましたね。
なるほどね。
現場主義だからこそ、いろいろな人と関わるようになって、
結果的には番組との付き合いというより、
人と人との付き合いになっちゃってるっていうところがありますね。
サイレントリスナーだったらここまで聞き続けていなかったかもっていうのは、
タカチャンさんの発言なんだけど。
この人、番組聞いてるんじゃなくて、
そこに相手っていうか、人を見てそことリレーションしてるってこと?
ちょっとスタッフ寄りみたいなとこもあると思うんですよね。
文化放送が四谷にあった時には、近くの映術館なんかにいつもいて、
困った時にはそこに行けばタカチャンがいるから、
電話出てもらおうぜみたいなことを言ってたみたいですよね。
なるほど。
さてそれから、鹿児島お小嬢さん。
この人は誰?
鹿児島の人でしょうね。
主婦なんですけれど、旦那さんもラジオ好きで、
学生時代に羨ましいなと思ったんですけど、付き合ってた時に、
二人で番組のジングルとか言い合ってたらしいんですよ。カップルで。
いいね。
僕、来世があったらそんなことやりたいなと思いましたね。
例えばどういうことなの?ジングルを言い合うって。
たぶんジングルを言い合って、
あの番組か別れみたいなことかもしれないですけど、
マニアックじゃないですか番組のジングルなんて。
そんなことを共有できる相手なんかいるんだっていうのはありましたね。
それが夫婦になってるってすごいね。
だから若いパーソナリティさんとかを、
若い覇極職人さんとかが息子みたいな感覚になってくるみたいですね。
でも、たぶん一つの放送局をしっかり聞いてるから、
例えば朝の番組のジングル。
おはようっていう時にジングル口にさびながら声かけてとか、
放送局が作ってるシチュエーションを自分の生活の中に取り入れたとか、
そんな感じなのかな。
夫婦の方もいろいろあって、
この本で取材してる方の中では、
出産中にラジオを聴いたって方もいらっしゃいましたね。
この番組の間だけはなんとか頑張って、
イタオさんをこらえてみたいな感じ?
出産する時に曲とか選べるらしいんですよ。
自分の好きな曲を流していいですよって言ったんで、
じゃあ私あの番組好きだからって言って、
ラジオを流しながら実際に出産したと。
生まれた子供が最初に聞いたのは、
両親の声とかじゃなくて、
ラジオのパーソナリティの声だったっていう。
なるほどね。
意外といるらしいですね。
でもそれってラジオっていう媒体が、
耳だけだからできる。
そうですね。
そのすごい可能性だよね。
この中にも放送作家の伊福部さんっていう方が、
ラジオ好きにはラジオ自体が好きな人と、
人が好きな人の2種類いる気がする。
そういうご発言もされてるんですか?
そうですね。
伊福部さん自体はこの本で取材してるんですけど、
別個の時におっしゃってた言葉なんですけど、
これ結構僕も思うんですけど、
僕はラジオが好きなんじゃなくて、
人が好きだっていつも思ってるんですよね。
映画を知る手段としてのラジオが好きなんですよ。
そこを僕はあんまり変えたくないなと思ってて、
ラジオだけが好きってわけじゃないんだっていうのは、
今いつも考えをしてますね。
ラジオの可能性
人が好きだっていう。
なるほどね。
僕演劇の人とちょっとお付き合いになったりするんだけど、
演劇をやってる人も演劇の演じることが好きな人と、
要するに演劇っていうものをやってる、
劇団にいることが好きみたいな人といるっていう話をね、
ついこの間も話しされてて、
なんかちょっと今そんなことにも通じるなっていう。
やっぱり人が好きっていうのが、
ラジオの本質をついてるところなのかなって気がするね。
そうですね。
意外と身の回りに人のことに興味ない人いるなって、
結構中年になってから気づいたんですよ。
でもこういう仕事、
僕のような仕事は人を好きになることって大事だから、
だからライターとかを目指してる学生さんとかには、
今のうちから人を好きになるっていう感覚、
人に興味を持つっていう感覚を意識して持ったほうがいいっていうのは、
よく言ってますね。
僕は管理職人なんかになっていけばいくほどね、
その要素って必要だと思うよ。
やっぱりサラリーマンずっとやってる人なんか、
どうせならないけど、
むしろ人になんか興味持たないほうが、
自分の仕事が進むんだっていうふうに思ってる人もいますよね。
それは経験値の中で、
それが成功例だからなんだと思うけれども、
ちょっとそれじゃもったいないなっていうのは、
僕なんかの感覚にはやっぱりありますね。
意外と人に興味ない人って優しそうに見えるんですよ。
興味ないから。
なるほど。
何でもいいって言うじゃないですか。
だからそこは難しいとこなんですけど、
結構僕の根っこにあるのは人に対する興味だなって思ってますね。
なるほど。
さて、お時間もおしまいになってまいりましたので、
次はいよいよ最終回ということでございます。
次回もどうぞよろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。