認知バイアスの基礎
こんばんは。始まりました、TEPPEN.fm。
今日もデザインやマネジメント、日常のあれこれをゆるっと語ります。
私、パーソナリティを伝えますデザイナーのkabuです。
いつもはminioさんとお送りしているTEPPEN.fmですが、
今日はちょっと趣向を変えて、一人語り会をお届けします。
一人で何を話そうかなと考えていたんですけど、
私自身の話をしても、聞いている方にあまり得るものはないのかなとは思うので、
せっかくなら自分の学んだことを共有しながら、
皆さんと一緒に考えられる時間にできたらいいなと思っています。
最近、私が個人的に学んでいるテーマが、認知バイアスです。
これは心理学の中でも、人の思考の癖を扱う分野で、
デザインやマネジメントにも深く関わることがあるのかなと思います。
認知バイアスといっても、その種類はたくさんあります。
一つ一つのバイアスに、それぞれ違う特徴や働きがあります。
なので、今回からいくつかの回に分けて、
それを時たま取り上げながら学んでいけたらなと思っています。
まずは、テーマの土台となる認知バイアスについて少し整理していきます。
認知バイアスとは、人が何かを見たり考えたり判断したりするときに、
無意識のうちに偏った見方をしてしまう傾向のことです。
例えば、同じ出来事を見ても、人によって受け取り方が違うことがあります。
それは、みんなそれぞれ異なる認知フィルターを通して世界を見ているからです。
自分は客観的に見られている方だと思っていても、
その判断の背景には必ず何かしらのバイアスが働いています。
ただ、必ずしもバイアスは悪いものではありません。
限られた時間や情報の中で素早く判断するための、
いわば心のショートカットのような仕組みでもあります。
例えば、毎朝いつもの通勤ルートを何も考えずに歩けるのも
過去の経験や誰に基づくバイアスが働いているからです。
人が生きていく上でバイアスは欠かせない仕組みでもあります。
ただし、その便利さが誤解や思い込みを生むこともあります。
なぜあの人はわかってくれないんだろうとか、
自分は正しいはずと思い込んでしまうとき、
その裏では認知バイアスが静かに働いているかもしれません。
だからこそ、どんなバイアスがどんな場面で起きるかを知ることは、
自分の心の癖に気づくきっかけにもなります。
そうすることで誤解やすれ違いを減らし、
他の人の見方も受け入れやすくなると思います。
今回はその認知バイアスの中でも拡張バイアスというものを取り上げます。
拡張バイアスの影響
拡張バイアスとは、自分の考えや仮説に合う情報ばかりを集めて、
そういった矛盾する情報を無意識に軽視してしまう心理的な傾向のことです。
例えばA型の人は基調面、B型の人は自由奔放といった血液型の話はよく聞きますけど、
実際には性格と血液型の関係に科学的な根拠は一切ありません。
それでもA型の人は丁寧な行動をしているとやっぱり基調面だと感じたり、
逆に大雑把な行動をしていても印象にはあまり残らない。
このように、自分の信じたいことに合う情報だけを拾ってしまう。
これが拡張バイアスです。
この現象を検証した有名な心理学の実験があります。
1978年、心理学者マーク・スナイダーらが行ったものです。
実験では、参加者が初対面の相手にインタビューをして、
その人の性格を判断するように求められました。
その際、この人は外向的です、またはこの人は内向的です、と書かれたカードを渡されます。
カードの内容が正しいかどうかは関係なく、
ただ、その前提情報を与えられた状態で質問するように指示をされました。
結果的にどうなったかというと、参加者はどちらのカードを渡されても
そこに書かれた特徴を裏付けるような質問を多くしていたそうです。
例えば、外向的と書かれた相手には
友達とどんな遊びをするのが好きですか?と聞いたり、
内向的と書かれた相手には
大勢の集いで疲れることはありますか?と聞いたり、
つまり、人に与えられた仮説を確かめるための証拠ばかりを探してしまうということをこの実験は示しています。
拡張バイアスは、過去の経験をもとに効率的に判断できるという利点もありますが、
一方で自分の考えが正しいという安心感を優先し、
異なる情報や意見を排除してしまう危うさも持っています。
では、この拡張バイアスがデザインやマネジメントの現場でどんな形で現れるのかを考えていきたいと思います。
例えばデザイナーの場合、
ユーザーインタビューで自分の設計意図やデザインを口頭にしてくれるポジティブな声を聞くと、
やっぱり自分の仮説は正しかったと安心する一方で、
ここは少し使いづらいといった声は例外的な意見として軽く扱ってしまう?
そんなことはないでしょうか?
けれども、実はその違和感の中にこそ新しい気づきや改善のヒントが隠れているかもしれません。
マネジメントの場面でも拡張バイアスは顔を出します。
例えばこのメンバーはこういう特性を持っていると無意識のうちに決めつけてしまう。
するとその印象を裏付ける行動ばかりが目について、それ以外の面は見えにくくなってしまいます。
議論の場でも同じです。
自分が決めた方向性に確信を持っていると、反対意見が出た瞬間にどこか身構えてしまうことがあります。
でも拡張バイアスを意識していればその意見を否定ではなく、検証のきっかけとして受け止めることもできます。
拡張バイアスを完全に消すことはできません。
けれどもこれを意識していると、周りの人の反対の行動や意外な一面にも目が向くようになります。
これはメンバーの成長をより正しく捉えたり、チームをより公正に見る助けにもなると思います。
自分を少し外から眺めることができるようになると、判断の精度もチームの関係性も一歩俯瞰した視点から見えてきます。
今日の話を振り返ると、拡張バイアスとは自分の考えや仮定に合う情報をばかり集め、
それに反する情報を軽く扱ってしまう思考の癖のことでした。
デザインの現場ではユーザーの声の受け取り方に、マネジメントの場面ではメンバーの見方に影響を及ぼしたりします。
こうした思い込みに気づくことは、相手の可能性をもう一度見直すきっかけにもなりますし、
バイアスを知ることは、無意識に固定化された自分の意識や関係性を少しずつ解き起こしていくための一歩にもなるかもしれません。
以上、今回は拡張バイアスについてお話をしました。
今日もてっぺんFMにお付き合いいただきありがとうございました。
みなさんの明日が少しでも楽しくクリエイティブになりますように。
ではまた次回お会いしましょう。