クリストファー・ノーラン監督のインタビュー
3月13日水曜日の声日記です。 昨日、NHKの番組「クローズアップ現代」で映画監督のクリストファー・ノーラン監督のインタビューを観ました。
ノーラン監督は、おととい発表されましたアカデミー賞で賞を受けた監督ですが、
7部門で賞を受けたということで非常に高く評価されている、そういう映画『オッペハイマー』、これを作っています。
この映画は日本ではまだ公開されていませんで、 アメリカで昨年の夏に公開された時に、
その映画そのものというよりは、その映画をアメリカ人がどう受け止めているのかということで少し話題になりました。
というのも、同時に公開されました『バービー』、バービー人形を実写化した映画だというふうに言われていますが、
それと合わせて「バーベンハイマー」という言葉を作ったり、あるいは『バービー』と『オッペハイマー』のそれぞれの
イメージを合成したような、そういう写真をSNSで拡散する、そういう人が出てくるわけですが、それに対して配給会社が
好意的と見られるようなコメントをつけたことが日本で批判される、そんなこともありました。
この映画は日本では公開されていないということで、この映画自体に対する評価というものは日本の中ではまだ
十分考えられていないわけですけれども、
やっと、今月末からそれが可能になったということで、とても
私も関心を持っていますので、これが話題になることは良いことだと思っています。
さて、昨日のインタビューですけれども、
私が特に
興味を引いたのは、この監督がこの映画を作ろうとする一つのきっかけにもなったエピソードだと思うんですが、
10代の息子さんが、こういうふうに言ったというんですね。
「今の若者は核兵器にはあまり関心がないし、それを脅威だとも思っていない。
むしろ脅威なのは気候変動のような問題だ」と、そういうふうに言ったというんですね。
これについて監督は衝撃を受けたというふうに言っています。
気候変動もちろん非常に大きな問題なんですが、核兵器の問題も非常に大きな問題だと、多くの日本人は思っていると思うんですけれども、
そういう感覚がアメリカ人には欠けているということ、
特に若い人たちにそれが欠けているというふうに監督が感じたということが、
この映画を作る一つのきっかけになっているようなんですね。
ですので、この映画はそういったことを考えるきっかけになるような、そういう映画にしようと監督は考えたのだと思います。
映画『オッペンハイマー』について
また、この映画について少し話題になっているのは、原爆を落とした後の広島・長崎の惨状、これが描かれていないということ、
これに対するある種の批判のようなものもあったんでしょうか。
ということで、そのことを聞く場面もあるんですが、
監督は、あくまでもこれはオッペンハイマーの視点を通して物事を見ていく、そういう映画なんだということで、
オッペンハイマー自身がその広島・長崎の惨状を自分で目撃したわけでもないので、
そういう映像を出すと、それはある意味での後知恵というんでしょうか。
オッペンハイマー自身が経験したこと以外のものが入ってくるので、そのオッペンハイマーの目を通して見た世界を描くという、
この映画のコンセプトからは外れるということで、それがないのだという、そういう説明で、それはそれで一貫しているなというふうに思いました。
私はこれをアメリカ人の原爆観の一つの例というふうなことで取り上げることができると思いますし、
またそのようなアメリカ人であっても、その核兵器を肯定するわけでもなくて、全面肯定するわけでもなくて、
その脅威というものを十分見通していた、ある種のジレンマですね、そのオッペンハイマーの苦悩、
こういったものを通して核兵器の問題を考えてほしいというのが、この監督の意図なのかなというふうに思いました。
監督は映画を見た後に何らかの「問い」が発生するという、そういうようなことを言っていました。
つまり観て終わりではなくて、そこから何かその問いについて考えてほしいということなんだろうと思います。
そういうことは、この映画を観た人は、原爆が落とされた後、その地では何が起こったのかということを知りたいと思うだろうと。
そのことはこの映画ではなくて、他に多くの情報があるので、そういうところでまた学んでいってほしいということなのかもしれません。
映画ということでいえば、アメリカではもうすでに、やはりアメリカ人の監督ですが、日系3世のスティーブン・オカザキ監督という方が、
『ヒロシマ・ナガサキ』という被爆者に焦点を当てたドキュメンタリー映画を作成していまして、
これはアメリカ人も観ることができるし、実際観てきているわけです。
ですので、そういった様々な作品を元にして、アメリカでも核兵器に関する教育が進んでいくといいなと思いますし、
これは日本人についても同じことが言えると思います。
私はこの4月からまた核兵器の歴史について授業を行いますが、
そういった中でですね、この問題について、あるいは今回日本で公開される『オッペハイマー』という映画についても扱っていきたいなというふうに思っています。
ということで、今日の声日記、これで終わりにします。