映画「オッペンハイマー」の感想
4月16日火曜日の声日記です。
今日、やっと念願の映画「オッペンハイマー」を観に行くことができました。
IMAX版を観ました。
3時間の長い映画でしたけれども、途中飽きることもなく、ずっと楽しみながらというんでしょうか、
集中して観ることができました。
映画館は200人以上が入れる大きな映画館だったんですけれども、
観客は10人余りぐらいでしょうか、平日の午後ということもあって、
あまり観客は入っていませんでした。
感想ですけれども、監督が言っていた通り、いろいろなことを観た後に考えさせられる、
そういう映画だったと思いますけれども、観た直後の感想としては、
やはりいろいろな意味で恐ろしいと感じました。
核兵器の恐ろしさというものも十分表現されていたと思いますし、
また、科学が軍事に応用されるということ、その結果の恐ろしさということもあります。
また、個人的な人間の様々な感情と、それによってもたらされる様々な悲劇というんでしょうか、
そういったものもありましたし、大きいところから小さいところまでいろいろ考えさせられました。
また私は、科学・技術の歴史を教えているそういう立場ですが、
私が授業で教えているようなことのある意味で説明というんでしょうか、
映像化されたものがたくさん出てきてですね、それも嬉しく思ったところです。
私の授業を受けてこの映画を観たり、あるいはこの映画を観た後に私の授業を受けるなどすると、
なお映画と授業を楽しむことができるものだなとも思いました。
マンハッタン計画における区分化、セキュリティクリアランスの制度
それで、特に私が観た後に感じたこと、あまり他の人が言っていないことをちょっと言いたいと思うんですけれども、
それはこのマンハッタン計画という極秘の軍事技術開発プロジェクトがですね、どういうふうにして進められたかというと、
情報漏洩を防ぐために区分化、英語で言うとコンパートメンタライゼーションというんですが、
要するに関わる人の部署をですね、狭く区切って自分の部署の情報のみにアクセスできるようにして、
それ以外のところはアクセスできないようにする、情報を小さな単位で区分化するという、そういう方法が取られたんですが、
それによって情報がどんどんと流れていかない、漏洩しないという、そういうメリットがあるんですが、
しかしこれは全体を見ることができない、自分の部署のことしかわからないということですから、
そこでの判断というものは非常に視野の狭いものになってしまう。
全体的なことは上層部のごく一部の人しかわからないという、そういうシステムなわけですね。
これの恐ろしさというものをちょっと感じました。
もちろん上層部だって視野は限られているわけですので、
それによってもたらされる非常に大きな力が非常に視野の狭い考え方でもって進められてしまうという、その恐ろしさですね。
それからもう一つは、この映画の一つの大きなテーマであるオッペハイマーの聴聞会。
オッペハイマーがソ連のスパイではないかという権威をかけられて、いろいろと密室での懲問が行われるわけですけれども、
そこではオッペハイマーが国家的な機密情報を知らせていい、信頼できる人間かどうかということが判断されるわけですね。
で、これセキュリティクリアランスというふうに言います。
この制度、つまり国家機密情報をそれにアクセスしていいかどうかということを国が判断するという、そういうシステムがあったわけですけどね。
あったというか、今も多分あるんだと思うんですが。
そういうシステムの中で、かつてはマンハッタン計画を率いていくリーダーであったオッペハイマー、もちろん様々な情報にアクセスできたわけですけれども、
その権利が、その資格が奪われるということ。
それが様々なオッペハイマーの個人的な様々な情報、これはFBIによって集められたような、そういう情報もたくさんあったわけですけれども。
そうやって機密情報を扱って、しかも少し疑われるような側面がある人は、常に国家の監視の下に置かれてしまうということがあって。
この制度、セキュリティクリアランスの制度が日本でも導入されつつあるということですね。
特にこれ、民間人は公務員だけではなくて、民間人にもそういった経済上の安全保障に関わるような重要な情報にアクセスする人には、
そういったセキュリティクリアランスでアクセスしていいという資格が認められないといけないというような制度ができるような方向に行っていますけれども。
そうしますと、非常にこれ、息苦しい社会になるんじゃないかなと。常に何かビクビクしながら生きていかなければいけない、そういう社会になってしまうのではないかなと。
そして一旦疑いをかけられると非常に恐ろしいこともあり得るという、そういうことをこのオッペンアイマーの映画から感じました。ということで、今日の声日記、終わりにしたいと思います。