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ノオト・ブク太郎
まず、彼らの活動の本当にど真ん中にある合言葉が、子育てを町でプラフに、というものなんです。
これ、言葉だけ聞くと、よくあるスローガンみたいに聞こえるかもしれないですけど。
ノオト・ブク子
そうですね。ちょっと抽象的にも聞こえますし。
ノオト・ブク太郎
ですよね。でも込められた意味は結構深くて、子育てを家の中だけの閉じたものにしないで、地域みんなの力で支え合って、もっとポジティブなものにしていこうよ、とそういうことなんですね。
ノオト・ブク子
資料を読むと、彼らが向き合っている課題というのが、すごくリアルなんです。
例えば、ネットで情報はたくさんあるのに、本当に必要な人にはなぜか届いていない、という見えない孤立。
ノオト・ブク太郎
ああ、わかります。情報型なのに孤独、みたいな。
ノオト・ブク子
そうなんです。あるいは、出産とか介護といったライフステージの変化で、急に社会との接点がなくなって、なんていうか、自己肯定感が下がってしまうみたいな。
ノオト・ブク太郎
うーん、ありますよね。あなたも、もしかしたらどこか心当たりがあるかもしれません。
特に産後とか、世界から自分だけが切り離されたような感覚に陥ることって。
そこで、彼らが目指す豊かな子育てという言葉がすごく気になったんですが、これって具体的にどういう状態を指してるんでしょうか。
ノオト・ブク子
いい質問ですね。そこがまさに彼らのユニークなところで、すごく具体的な指標を掲げてるんですよ。
ノオト・ブク太郎
指標ですか?
ノオト・ブク子
はい。資料によると、まず、自己肯定感があること。それから、役立ち感があること。
ノオト・ブク太郎
役立ち感。
ノオト・ブク子
そして、外出の動機や場所があること。最後に、豊かなソーシャルサポートがあること。この4つなんです。
ノオト・ブク太郎
なるほど。子供が健やかに育てばそれでOKという話じゃないんですね。役立ち感とか、まさに親自身の心の状態にフォーカスしている。
ノオト・ブク子
まさに、親自身がまず満たされていてこそ、豊かな子育てができるという視点なんです。
ノオト・ブク太郎
はぁ、不快ですね。
ノオト・ブク子
じゃあ、そのために何が必要か。彼らが出した答えが、対話の場と出番を作ること。
ノオト・ブク太郎
対話の場と出番。
ノオト・ブク子
一方的に何かを与えられるだけの支援じゃなくて、誰もが何かしらの役割、つまり出番を持てるようにする。この三角を促すっていう考え方が、彼らの活動全てのベースにあるんですよね。
ノオト・ブク太郎
哲学はよくわかりました。でも、その三角できる場というのを具体的にどうやって実現しているんでしょうか。カフェという形を選んだのには何か特別な理由があったんですかね。
ノオト・ブク子
ええ、そこが彼らの実践の面白いところです。その答えが心臓部ともいえる2つのカフェにあります。
ノオト・ブク太郎
2つのカフェ。
ノオト・ブク子
はい。まずは原点である小町カフェから見ていきましょうか。
ノオト・ブク太郎
お願いします。
ノオト・ブク子
ここは地域とつながる子育ての居場所というコンセプトで、まさに産後の孤立という課題にまっすぐ向き合った場所です。
ノオト・ブク太郎
写真を見るとすごく明るくて居心地が良さそうな空間ですね。
そうなんです。キッズスペースはもちろんですが、メニューも卵、乳、小麦アレルギーに対応していたり。
あ、それもありがたい。あと個人的にお、と思ったのが見守り付きランチですね。
ノオト・ブク子
気づきましたか。
はい。
15分とか30分とか本当に短い時間ですけど、スタッフの方が子供を見ていている間に、親はゆっくりと温かいご飯が食べられる。
ノオト・ブク太郎
いやもうその数十分の価値、計り知れないですよ。
ノオト・ブク子
そうですよね。
ノオト・ブク太郎
子育て中って誰にも邪魔されずに食事を終えること自体がもう奇跡みたいなものですから、これは物理的なサポート以上に精神的な息継ぎをさせてくれる仕組みだなと。
ノオト・ブク子
本当にそう思います。利用者の方の声にもその切実さが現れていますよね。ベビー連れでも気負わずに行ける場所とか、一人目のママにはなくてはならない存在だったとか、ある方が小町カフェ行こうってすごくライトに誘いやすいと書いていたのが印象的でした。
あーなるほど。
何か特別な悩み相談の場、とより日常の延長線上にあるからこそ、孤立を防ぐ最初のセーフティーネットになるんです。
ノオト・ブク太郎
確かに。相談しに行こうって思うとちょっとハードルが高いですけど、お茶しに行こうなら言えますもんね。
ノオト・ブク子
そういうことなんです。
ノオト・ブク太郎
ところで資料の中に、行政の補助金に頼らない自主財源での運営を目指しているとあったんですが、これって理想的ですけどかなり大変な道じゃないですか。
ノオト・ブク子
おっしゃる通り簡単なことではありません。でも資料から読み取れるのは、だからこそ彼らは本気で持続可能性を考えているということです。
ノオト・ブク太郎
持続可能性。
ノオト・ブク子
寄付だけに頼るんじゃなくて、カフェの売り上げとか独自のプログラム開発で事業として成立させる。
そうすることで外部の都合に左右されない安定した居場所を守り続けられるんです。
はあ。
ノオト・ブク子
この自立性こそが、実は彼らの活動の強さの源泉なんですね。
ノオト・ブク太郎
なるほど。善意だけで終わらせず、地域のインフラとして根付かせようという覚悟の現れなんですね。
ノオト・ブク子
ええ。そしてその小町カフェを運営する中で彼らは大きな気づきを得るんです。
ほう。どんな気づきですか。
あれ?居場所を求めているのって子育て中の人だけじゃないんじゃないかと。
ノオト・ブク太郎
ああそうか。カフェに集ういろんな人を見ていたらそう思いますよね。
そうなんです。
子育てを卒業した世代の人とか、あるいは一人で静かに過ごしたい人とか。
ノオト・ブク子
まさにその気づきが次の拠点、小寄り堂カフェの誕生につながりました。
小寄り堂カフェ。
ええ。子育て支援という枠からもっと普遍的なコミュニティ作りへと、彼らのビジョンが大きく広がった瞬間です。
ノオト・ブク太郎
その小寄り堂カフェ。コンセプトが、町のあちこちに寄りどころを。うわ、この言葉すごくいいですね。
いい言葉ですよね。
対象も高齢の方、一人暮らしの方、障害のある方とぐっと広がっている。
しかも場所がお寺の敬来って、なんだかそれだけで心が落ち着きそうです。
ノオト・ブク子
無垢の木とか土壁を活用した本当に素敵な輪の空間ですよね。
メニューも体に優しい13歳が中心で。
ここもアレルギーに配慮して、卵、乳、小麦粉は不使用なんです。
徹底してますね。
小町カフェが子育て世代の安心に特化していたのに対し、小寄り堂カフェは誰もがどんな理由であれ、ただそこにいていいという、もっと懐の深い場所を目指しているのがわかります。
ノオト・ブク太郎
でもそれだけいろいろな背景を持つ人が一つの場所に集まると、逆に気まずくなったり、うまく混ざり合えなかったりしませんか?
例えば、元気な子供の声が静かに過ごしたい人にとってはちょっとノイズになってしまうとか。
ノオト・ブク子
普通はそう考えますよね。
はい。
でもそうならないのが彼らのデザインの妙なんです。
まさにその点を象徴するような口コミが資料にありました。
ノオト・ブク太郎
どんな口コミですか?
ノオト・ブク子
ある方が、子供の泣き声に周囲が大丈夫だよと優しく見守る光景があった、と。
ノオト・ブク太郎
へえ、それはすごいですね。そんな空気が自然に。
ノオト・ブク子
ええ、これは単に子供に寛容なカフェという話ではないんです。
お寺の境内が持つ包容力や、誰もが頼ったり頼られたりするお互い様の空気。
ノオト・ブク太郎
お互い様。
ノオト・ブク子
ええ、それが自然に生まれるような仕掛けがある。
支援する側、される側という役割が固定されていないからこそ、
多様な人たちが、ただ街の一員としてそこにいられる。
共生の空気が醸成されているんです。
ノオト・ブク太郎
なるほど。名前のこより堂もその思想を表しているんですよね。
ノオト・ブク子
あ、そうなんです。
ノオト・ブク太郎
こよりって、細い紙を何本もにより合わせて作る紐のこと?
その通りです。
ノオト・ブク子
一人一人は弱くて細いかもしれないけれど、その小さな関わりが重なり合うことで、
地域に強くてしなやかな繋がりを育んでいく。
大きな支援プログラムじゃなくて、日々の小さな関わりの積み重ねを大切にするというビジョンが、その名前に込められています。
ノオト・ブク太郎
こうして二つのカフェを比べてみると、思想の進化がはっきり見えてきますね。
小町カフェが、産後の孤立という具体的な課題を解決するためのセーフティーネットだとしたら、
こより堂カフェは、誰もが利用なく立ち寄れる、もっと普遍的で開かれた居場所。
対象を広げただけじゃなく、居場所の質そのものを進化させているんだなと。
ノオト・ブク子
その進化こそが重要なんです。
ノオト・ブク太郎
いろんな方の声を見ていくと、安心とか多様性という言葉と並んで、あるキーワードが浮かび上がってくるのに気づきました。
それは、出番です。
ここって、ただ利用されるだけの場所じゃないんですね。
例えば、利用者だった人が、今度はボランティアやスタッフとして関わっているケースがすごく多い。
ある方は、社会復帰に不安を抱えていたけれど、小町プラスで働く中で、スタッフ同士が自然に助け合う環境に救われたと語っています。
また別の方は、自分の得意なことを活かせるのが嬉しいと。
これって、まさに冒頭で話していた役立ち感に直結しますよね。
ノオト・ブク子
まさにそれです。あなたは、小町プラスの活動の本当に核心の部分に触れています。
ノオト・ブク太郎
そうですか。
ノオト・ブク子
彼らがやっているのは、単なる支援じゃない。それは三角の機械をデザインすることなんです。
ノオト・ブク太郎
支援から三角へ。
ノオト・ブク子
そう。人は、ただサービスを受けるだけの客帯でいるよりも、誰かの役に立っている、社会の一員として役割を持っていると感じられることで、本当の意味で元気を取り戻す、自己肯定感が回復するんです。
なるほど。
小町プラスは、そのための具体的な場と仕組みを、カフェという日常の空間を通じて見事に作り上げているんです。
ノオト・ブク太郎
だから、対話の場と出番を作るっていうのが、あれだけ重要だったんですね。
単に話を聞いてもらうだけじゃなくて、自分にも何かできることがあるっていう感覚。それが人を力づける。
ノオト・ブク子
その通りです。そしてこの視点は、もはや子育て支援という枠を遥かに超えています。
ノオト・ブク太郎
と言いますと。
ノオト・ブク子
高齢化やそれに伴う孤立孤独が深刻な社会問題となっている日本のあらゆる地域にとって、これは極めて重要なモデルケースと言えます。
確かに。
どうやって地域の中に多様な人々が自然に関わり合える緩やかな接点をデザインしていくか、その一つの答えはこの2つのカフェにあるように思いますね。
ノオト・ブク太郎
さて今回は、横浜の小町プラスという一つの実践を通して、現代社会における居場所の意味を深く掘り下げてきました。
代表の方が経験した孤独な子育ての辛さという、とても個人的な悩みから始まって、やがては誰もが受け入れられる普遍的なコミュニティへと、そのビジョンが進化していく様子がリアルに伝わってきました。
ノオト・ブク子
この環境で最も考えさせられるのは、彼らが目指しているのが大きな支援ではなく、小さな安心の積み重ねだという点です。