メディア情報
The Syrian Observer (2025/1/13)
The Final Communique of the Riyadh Meeting; Supporting Reconstruction and Lifting Sanctions While Emphasizing Syria’s Sovereignty
時事通信ニュース(2025/1/13)
サウジ外相、シリア制裁解除訴え 中東・欧州諸国が支援会合
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025011300165&g=int
NHK Web (2025/1/7)
米財務省 シリアへの規制 一部緩和を発表 人道支援を可能に
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250107/k10014686581000.html
ナナさん、前回エピソードへのギフトと応援メッセージ、どうもありがとうございました!
サマリー
このエピソードでは、2024年12月からのシリアの現状とリアドで開催された国際会議の内容をまとめています。特に、シリアの復興支援や制裁解除についての議論が行われ、参加国の連携の重要性が強調されています。最近、経済制裁の緩和が期待されており、シリアでの人道支援が進む可能性があります。特に、北東シリア在住のシリア人スタッフが首都ダマスカスを訪れることができたことは、NGOの活動にとって重要な進展とされています。
シリアの現状とリアド会議の開催
2024年12月8日からの記録。
こんばんは、AKIKOです。
この番組では、2018年より、イラクのドホークにて、NGOによるシリア難民支援や、クロスボーダーでの北東シリア支援に携わっている私の立場から、
2024年12月8日以降に、シリアで起こっていることに関する情報収集をまとめ、所感を語ります。
現在は、ヨーロッパに本部を置くNGOに所属し、シリア人の同僚たちは、北東シリア在住のクルド系のスタッフが多いという立場で情報収集をするため、
中立性を心がけますが、どうしても自分自身の焦点、またはリーチできる情報範囲が偏る可能性が高いと自覚しています。
この番組を聞いていただく場合、その点をご了承、ご注意をいただければと思います。
今回は、2025年1月15日に収録しています。
12月8日からは約5週間が経過しました。
さて、今回は前回のまとめのところでご紹介した、The Syrian Observerというサイトからの記事を紹介したいと思います。
Riyadh Meetings on Syriaという国際会議が、1月12日にサウジアラビアのリアドで開かれたという情報をこのサイトで知りました。
では、タイトルは、The Final Communique of the Riyadh Meeting.
Supporting Reconstructions and Lifting Sanctions while Emphasizing Syria's Sovereignty。
「リアド会議の最終声明:
シリアの主権を強調しつつ、復興を支援し、制裁を解除する」
元記事は、Eneb Baladi・反体制ウェブサイト、2025年1月13日。
以下、私の方で日本語に翻訳し、読みます。
「2025年1月12日、サウジアラビアの首都リアドで、シリアの状況を協議するためのアラブ諸国を中心とした国際会議が開催された。
この会議には、トルコ、シリア、湾岸協力協議会GCC
(訳註:加盟国はサウジアラビア、UAE、バーレン、オマーン、カタール、クエート)の外相、
並びにイラク、レバノン、ヨルダン、エジプト、英国、ドイツの各外務省代表と、米国とイタリアの国務副長官レベルが出席した。
このリアド会議の議長は、この重要な局面において、シリア国民と連帯する必要性を強調した。
当会議は、政治移行プロセスの支援、シリアの主権と統一の維持、そして長年にわたる壊滅的な紛争後の国をシリア国民が再建していくことを支援することに焦点が置かれた。
会議の最終声明では、シリア国民の選択と自己決定権を尊重する必要性が強調された。
シリアの統一、主権、領土の一体性が再確認され、外部からの干渉やシリアの安全と安定を脅かす行為を避けるよう求められた。
また、最終声明の中では、シリア社会のあらゆる構成員を含んだ包括的な政治プロセスの重要性が強調され、すべての政治的及び社会的集団の権利を保護することが求められた。
声明では、関係者の懸念や課題に対話と協議を通じて対処する必要性が強調された。
シリアの独立と主権を尊重する原則が再確認され、シリアの未来はシリア人自身によってのみ決定されるべきであるとされた。
サウジアラビアのファイサル・ビン・ファルハーン外相は、現在課せられている制裁を解除することなど、シリアを支援するための各国間の協調の促進を会議の目的として強調した。
ファルハーン外相は、米国が一部の制裁を免除する決定を既に行ったことを歓迎し、制裁の解除が人道的及び経済的支援を強化し、シリアの再建を促進し、難民の帰還に適した環境を整えると指摘した。
また、同外相は、国家機関の維持、シリアの全党派が参加する包括的な政治プロセスの開始、テロとの戦いへのコミットメントなど、シリアの新政権による前向きな行動を称賛した。
彼は、シリアが全ての市民にとって安全な国家となり、地域の安定に脅威を与えないようにする必要性を強調した。
また、サウジアラビアは、イスラエルの干渉地帯への侵入を国際法及びシリアとイスラエル間の協定への違反として避難することを表明し、占領されたシリア領土から即時撤退を求めた。
会議参加者は、特にヘルモン山やクネイトラ県でのイスラエルの行動に深い懸念を表明し、シリアの領土保全を維持する重要性を強調し、国際法に従ってイスラエル占領軍の撤退を要求した。
この声明は、参加国がシリアの復興と政治的安定への道を支援し、主権、対話、非干渉の原則を強化するという共同の決意を反映している。」
以上、翻訳でした。
アメリカの制裁緩和と支援の取り組み
この会議について、日本語のニュースになっているものがないか探しました。いくつかの記事を見つけています。
共同通信または時事通信の記事を基に各社が配信したものと思われますので、以下、時事通信ニュースの記事から読みます。
以下、読みます。
「カイロ時事
中東や欧州の外相らが集まり、アサド政権崩壊後のシリアに対する支援などを話し合う会合が、12日、サウジアラビアの首都リアドで開かれた。
サウジのファイサル外相は、シリアの再建や難民の帰国に向け、シリアに対する一方的で国際的な制裁を解除するよう訴えた。
国営サウジ通信が伝えた。
会合にはフランスやドイツ、欧州連合、EUに加え、エジプトやカタール、トルコなどの外相らが参加。
シリアからは暫定政府のシェイバニ外相が出席した。
旧政権を支援したロシアやイランは含まれていない。」
以上です。
以下、所感です。
シリアやイラクに滞在している経験を通して、この地域の人々が非常に親日的で、日本への親しみと敬愛を抱いてくれることを日々感じています。
また、1970年代から90年代ぐらいまでは、日本もこの地域の国際協力のアクターとして重要な一端を担っていました。
それを考えると、この国際会議に日本が参加していないことは大変残念に思います。
日本の国力が衰退したことや、多数の難民受入れをしているヨーロッパ各国に比較すれば、日本は利害関係も関心も少ないというのが現実だとは思っています。
さて、シリアへの制裁解除に関連して、2025年1月6日の時点で、アメリカがすでに経済制裁を一部解除する発表をしていました。
このリアド会議の声明の中でもその件に触れられています。
経済制裁については、ざっくり理解したつもりになってはいても、具体的にはよく知らなかったことも多いので、NHKウェブで見つけた日本語の記事を通して理解が深まりましたので、その記事も紹介したいと思います。
「米財務省シリアへの規制一部緩和を発表。人道支援を可能に」2025年1月7日。
「アメリカのバイデン政権は、独裁的な政権が崩壊したシリアに対して、制裁を維持しながらも人道支援を行えるようにするため、一部の規制を緩和すると発表しました。
先月、シリアで独裁的なアサド政権が崩壊した後、暫定政権を主導するシリア解放機構について、アメリカはテロ組織の指定を解除しておらず、制裁を課した状態が続いています。
6日、アメリカの財務省が発表した声明では、制裁は維持しながらもシリアの人たちに対して人道的な支援を可能にするため、6ヶ月間の期限付きで一部の規制を緩和するとしています。
具体的には、制裁の下では禁じられてきたシリアの統治機関との取引や、石油や天然ガスなどのエネルギーの販売、それにシリア中央銀行を通じたものを含む非商業的な個人への送金を認めるとしています。
一方で、武器の輸出につながるものや、シリアの軍と情報機関に関わる取引、資産の凍結解除、それにシリアを介してロシアやイランに関わる取引などは、引き続き認められないとして明記しています。
財務省は、今回の措置について、「公共サービスの提供や人道支援を含む、人間の基本的なニーズを満たすための活動が、制裁により妨げられないようにするというアメリカの決意を強調するものだ。」としていて、
バイデン政権としては、内戦で荒廃したシリアの復興に向けた支援について、前向きに取り組む姿勢を示したものとみられています。」
以上です。
次に、私が所属している団体では、シリア国内でアメリカ政府資金を使ったプロジェクトで、現地の支援を行うことができるようになっています。
私が所属している団体では、シリア国内でアメリカ政府資金を使ったプロジェクトで、現地の業者から購入したり、工事を発注したりという契約が必要になっていますが、
経済制裁の影響と期待
こちらは、北東シリア地域という地域的な制限もあった上で、さらに各国が作っている制裁対象企業や個人のデータベースで対象になっていないか、
照合した上でないと契約を締結することができません。というのが今までの状況でした。
経済制裁は独裁政権として国民を苦しめていたアサド政権関係者への制裁という意味と、テロ資金に資金が流れることへの防止という大きく2つの目的について私は理解していますが、
実際には、先ほど紹介したNHKウェブの記事の中で、アメリカ財務省の発表の中にもあったように、
実際に用心深すぎる制裁を課すことで、復興支援が滞ったり、一般の民間の人々の基本的な生活にマイナスの影響が及ぼされることになるために、
アメリカが素早く一部の経済制裁解除に動いたことを知って、ポジティブな意味での驚きを覚えました。
この12日のリアド会議をきっかけに、ヨーロッパ諸国も同じ方向に動くことが期待されます。
そして、そうなった場合には、日本も遅れを取らないでくれると良いなと思っています。
少なくとも人道支援の実施に支障がない程度には、日本の銀行の送金などについても、制裁が解除されることを願っています。
さて、今回の記事の紹介は以上になります。
最後に、まとめとして、最近非常に嬉しかった情報についてシェアします。
私が今働いているヨーロッパのNGOの北東シリア在住のシリア人スタッフで、
男性のスタッフは今まで首都ダマスカスなどの旧アサド政権の支配地域に入ることができませんでした。
それは旧アサド政権支配地域に立ち入ればすぐにチェックポイントなどで逮捕されて、少なくとも高額の罰金の支払い、
悪くいけば刑務所に拘束されるということが必ず起こっていたからです。
内戦状態にあった段階では、北東シリア在住者の成人男性というだけで旧政権の軍の徴兵に加わらなかったということで兵役拒否、
そしてさらに反体制的であるという罪を負うことになってしまうという状況がありました。
その北東シリア在住のクルド民族のシリア人の同僚が、最近ダマスカスを訪問できたということでした。
私たちのNGOも、ダマスカスにオフィスを作る可能性について調査・検討するための訪問ということでした。
今後シリアが統一していくということになると、首都にオフィスを持って政府にNGOとして団体登録を行ったり、
人道支援プロジェクトの実施に関して、政府機関や他のNGOとの調整に加わっていくことは、人道支援NGOとしては必須のことになってきます。
ずっと首都を訪問すれば逮捕されるという状態にあった同僚たちが、ついに正々堂々と首都訪問ができたというニュースを今大変嬉しく思っています。
このことに関連しますが、旧アサド政権が民主化デモなどに参加したという理由だけで、多くの国民を刑務所に捕らえ、特に悪名高いセドナヤ刑務所での拷問などについては、多くの記事や国際ニュースになっていました。
この記事やニュースを、私自身が特に詳しい情報ではないという理由や、または非常に気が重く沈んでしまう内容であるという理由から、
セドナヤ刑務所に関する記事や、旧アサド政権の非人道的な市民の迫害に関する記事について、今までこの番組の中で紹介しないままできてしまっていました。
しかし、今思うと、アサド政権が崩壊したということにあたって、この重要な一面に触れないということは、情報が偏っているというふうに感じています。
次回にでも、何か自分にとってこれなら紹介できそうという記事を探した上で紹介したいと思っています。
最後に、前回のエピソードにナナさんからギフトをいただきました。しかもスマイルしている猫。楽しみにしていますというコメントもいただいています。本当にどうもありがとうございます。
誰も聞いてくれなかったとしても、自分のために続けたいと思って続けているものではありますが、このように応援してくださることで続けていくために大変励みになります。本当にどうもありがとうございます。
今後、もしかすると毎週ではなくて2週間ずつぐらいまとめてになる可能性もあるとは思うのですが、そうだとしても必ず続けていきたいというふうに思っていますので、これからも楽しみにしていただけると大変嬉しいと思います。どうもありがとうございます。
ではここまで聞いていただいてどうもありがとうございました。
22:14
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